ぼっち、異世界へ行く。   作:オーバーうらら

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第2話 さっそく問題発生

 俺が異世界に来てしまったという、アニメ的ラノベ的ファンタジーのような奇妙なる事実に遭遇してから一体どのくらいの時が過ぎたのであろうか。

先程まで直線上にあった太陽――この世界でもその名称なのかは不明――が、少し傾いている。

 

 ふっと何かを思い立ち、立ち上がる。

 そして、目の前の空間を再び手当たり次第に触れる。

 すると、先程と同様にメニューコマンドが表示される。

 まさに、以前どこかのアニメで目にした、俺のいる時代には存在しない次世代ゲームVRMMOの仮想世界のようである。

 さらに、右上にある自身のものと思しきプロフィールを再び覧ずる。

 そこには、技種『剣士』と記されている。

 ということは、つまり、だ。

 ここがゲームのような世界なのであるとすれば、どこかにあるはずだ。

 剣士が身につけるであろう、――剣《ソード》、が。

 

 

 俺は片っ端から体のあちこちを手探りで探す。

 しかし、特にない。ただ俺が先程まで身につけていた服の生地に触れるのみだ。

 そして、メニューコマンドを探しまくり、その中から所持アイテム欄を見つける。

 すると、あった。

 ――剣と思しき名のアイテムが。

 そのアイテムをオブジェクト化してみる。

 その刹那、俺の手元に光の粒が集まり、剣の形をつくりだした。

 

「うわっ」

 

 その途端、俺の手にずしりと重みがのしかかる。

 手には、ずしりとした重みとともに、金属らしい冷淡な感触が伝わった。

 

「これが、本物の剣、か」

 

 実際に実物の剣を持ったことなどなかっただけに、興味津々に見つめる。

 それにしても、ここまで来ると夢とも思えない。

 ならば、これが現実である。

 うーん、と唸りながらその場で立ちすくみながら思考を巡らせる。

 だが、一向に考えが浮かぶわけもない。

 

 その刹那、ぐぅぅという雑音が腹部から鳴り響いた。

 

「……お腹、空いた」

 

 朝から何も口にしていないのであるからに、お腹が空くのも当然である。

 といっても、食べ物など持っているはずがない。

 先程アイテム欄を全て閲覧した時に、アイテムに食材がないことは確認済みだ。

 ならば、どうすれば良いのであろうか。

 なに? 近くで通行人見つけて、近くにファミレスありますか、って聞きゃいいわけ?

 なにそれ、超難易度高いじゃん。

 第一、俺、見知らぬ人に話しかけるなんてことは絶対にしないいい子だから。

 ほら、小学生の頃に習ったじゃん。見知らぬ人について行ってはいけません、って。

 

 

 だが、見るからにこの場所一体は何もない草原地帯のど真ん中であり、俺の求めるファミレスなどありそうになかった。

 なんて不便な土地なんだ。

 今度ファミレスに行った時、お客様の声のところに苦情を書いとかねば。

 そう、これは善良なる消費者の務めである。断じて、クレーマーじゃないから。

 

 

 とまあ、くだらないような思考でぐるぐると脳内をかき回していると、草原の脇からガサリという何かが擦れる音と共に、影がこちらに迫ってきた。

 まさか、ライオンでも襲ってきたの?

 いや、ちょっと来ないで。近づかないで。

 俺、そんなに肥えてないから美味しくないぞ。

 

 

◆◇◆

 

 

 段々と近づいてくる影。

 そして、俺が震えながら持っていた剣を恐る恐る構えているうちにその影の姿は肉眼ではっきりと見えるまでに近づいていた。

 その姿は、明らかにイノシシのような容貌だ。

 イノシシのような丸みを帯びたボディに毛をふさふさと生やしており、口元には鋭い牙を構えている。

 もし、牙で一突きでもされたら、右上に映っている俺の体力ゲージは一瞬で吹き飛んでしまうかもしれない。

 ちなみに、俺の体力値は100であり、極めて少ない。

 そして、イノシシらしきモンスターの頭上にもコマンドが浮かび上がった。

 

 

 モンスター名:キバシシ

 レベル:1

 HP:100

 

 

 うわっ。体力値、一緒だわ。

 きっと、雑魚キャラだろ。ネーミングセンスなさすぎだろ。ていうか、絶対手抜きレベルだわ。

 代わりに俺が命名してやろう。

 お前は今日から、「ザコシシ」だ。うむ、我ながら素晴らしいネーミングセンス。

 

 俺は牙をこちらに向けながら突進してくるザコシシの迫力に少々押され気味になりながらも、剣を構え、振る!!

 とにかく、振る!!

 なにいってんだ。俺の運動真剣なめんなよ。

 学年で3位になったことのあるレベルだし。……ただし、下から数えてな。

 

 剣なんて画面上のMMOぐらいでしか扱ったことがない――つまり、ボタン操作を連続するだけの簡単なお仕事――経験無しの俺に、まともに剣が使える訳もなく、ただ単に怖がって剣を振り回すだけであった。

 ああっ! 死にたくない、恐い!!

 

「おりゃあ、おりゃあ」

 

 そんな乱暴な剣が当たるはずもなく――、「ギャオッ」という悲鳴らしき雄叫びを聞き、直後にバタリと何かが倒れた音を聞くのみだった。

 

「って、倒れてる!?」

 

 音に気づき、振り回していた剣を止め、恐る恐る様子を伺ってみると、そこには先程まで暴れまくっていたはずのザコシシがHPゲージをゼロにして無残にも倒れているのみだった。

 そして、直後に倒れていたザコシシは光の粒子となって消えたのだった。

 あ、あれ? この状況は、勝ったということでよろしいのかしらん。

 俺が状況を読めずに頭を抱え込んでいると、目の前に突如WINと銘打たれたコマンドが現れたのだった。

 あっ、勝ったんですね。ようやく解りました。

 

 

 俺は初勝利の感傷にしばらく浸る。

 なんだ、この胸が踊るような高揚感は。

 そして、勝利表示のすぐ下に「レアアイテム獲得」の表示を見つけ、所持アイテム欄を開く。

 初戦からレアアイテムとか、最先が良いのではなかろうか。しかも、雑魚キャラっぽかったぜ? 現に弱かったし。

 

 表示を確かめるためにアイテム欄を人差指でスクロールすると、そこには俺待望のものが。

 

 

『キバシシの生肉』

 

 

 幸運に次ぐ幸運。

 なんとドロップしたレアアイテムとは、食材だったのだ。

 すぐさまアイテム詳細から説明事項を確認する。

 

「ええっと、なになに……。――『キバシシの生肉』。キバシシから捕れる肉。その味はとても美味であり、焼くも良し、煮るも良し、ってか。一応、生でも食べられるみたい」

 

 勿論、様々な食べ方を試してみたいのは山々なのだが、何しろ調理器具がない。

 ならば、生で食べるほかあるまい。

 もう、食べられるのならなんでもオーケーだ。

 

 そのレアアイテムである生肉をアイテム欄からオブジェクト化すると、すぐに口を大きく開いてかぶりつく。

 肉だけに憎らしいほどの美味であった。

 例えるならば、高級な生ハムみたいな感じ。

 

 こうしてようやく食事にありつけて安堵していていると、突然背後から、人間の悲鳴にも似た驚愕の叫び声が轟いた。

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