ぼっち、異世界へ行く。   作:オーバーうらら

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第3話 絶賛連行中

 口に「キバシシの肉」をくわえながらも、声の出処を確認すべく振り向く。

 すると、軽装備に槍を片手に携えた男数人が俺に迫ってきた。

 なんだなんだ。皆一様に狂気を発して。

 

「貴様、なんてことを……! 逮捕だ!」

 

 先頭に立って指揮する男が言うやいなや、俺の周囲四方八方を取り囲まれてしまった。

 え、なに。なんですか。あの人、逮捕とか言ってますけども。

 訳も分からず、その場にたじろぎながら口をパクパクしていると、

 

「おい。大人しく、こっちに来るんだ」

 

 男数人が、アイテム欄からロープをオブジェクト化し、俺の両手を固く縛った。

 なんといきなり何するんだ。

 ここは、一発ガツンと言ってやらねばと決意を新たに、恐る恐る声を出す。

 

「え、っと、なんなんでしゅか!?」

 

 しまった。緊張のあまり、噛んでしまった。

 さらには、声も裏返っているし。

 その奇妙な光景に、男たちはさらに俺を疑念の視線で見つめる。

 その後も、自前の今流行りのコミュニケーション能力、いわゆるコミュ力を発揮し、さらに事態を悪い方向へ向かわせるのであった。

 なんだか、喋らない方が良かったかも。

 

 

 

 

 

 しばらくすると、リーダー格の男一人が、なにやら赤い宝石のような結晶をオブジェクト化し、大きく息を吸い、

 

「転移。リーフォーレスト!」

 

 結晶を大きく掲げ、よく解らない言葉を叫んだ。

 すると、突然、視界が歪んだ。

 まるでどこかにワープしているような、そんな感覚に見舞われる。

 これまでに経験したことのない感覚に襲われ、俺は目を閉じる。

 しかし、その感覚は本当であった。

 刹那、肌に触れる外気が変わったように感じた。

 先程までの草原の爽やかな気質から打って変わり、金属のような冷たい空気が俺の肌に触れる。

 ゆっくりと、目を開ける。

 すると、そこは先程までの広々と広がる草原ではなかった。

 目の前には、金属の塊のような建物が立ち並んでいるのだ。

 金属の錆び付いたつんとした匂いが鼻につく。

 そして、周囲には様々な装備をした人々が行き交う。

 皆一様に、俺を一瞥するもすぐに目を合わすまいと背けてしまう。

 人間が多数いる。

 俺はそれだけでも嬉しかった。助かったのだと。

 訳も分からずに連れてこられたわけなのだが、街に連れてきてもらえたのなら、全て良しであろう。

 この際、縛られて連行されたという事実は忘れてやってもいい。

 俺が街に来れたことを嬉しげに考え、ニヤニヤしていると、それに気付いた男が俺の顔を見るなり怪しみの表情を作りながら、俺を縛ったロープを強引に引く。

 

「うひゃっ」

 

「何をグズグズしているんだ。早く歩け!」

 

 なんなんだろう。この感情。

 ここ、強制労働施設なの? 凶悪犯なの、俺?

 これは人権問題、国連に後で文句知ってやるしな、覚えとけ。

 俺がこの悪い待遇について、どう報復してやろうかと思考をフル回転させていると、俺を縛ったロープを引っ張る一行が、急にある建物の前で立ち止まる。

 急に前方の男が立ち止まったため、俺は立ち止まれず、衝突する。

 そして、その建物を見るなり思わず唸る。

 

「いでっ。え、ここ? でっかい建物……」

 

 その建物も、周囲の建造物同様、金属感溢れる建物であったが、他の建物よりも数段規模も高さも別格なほどに大きなものであった。

 高層部には、赤い生地に剣が地面に刺さっている模様のある旗がはためいていた。

 まさかとは思うけど、ホテルですか。

 ち、違いますよね。

 男たちの目を見れば解ります。恐い。

 

 

◆◇◆

 

 

 実に重厚で頑丈な装備をした門番のいる巨大な入口をくぐり抜け、さらに奥へと足を進める。

 すると、中はどこぞの高級ホテルのエントランスかと言わんばかりに広々とした空間が広がっており、俺を連れた一行は、その空間をぞろぞろと突っ切る。

 そして、しばらく歩いた後、部屋の中央にある上部へ伸びる一筋の螺旋階段を上ることとなった。

 うわー、高ぇ……。俺、高所恐怖症だから、帰ってもいいかな。

 しかし、そんなことが強面の男達に通じる訳もなく、俺はそのまま連れて行かれる。

 ああ、しんどいわ。いうなれば、高層ビルの階段をひたすら登る感じ。

 

 そして、どのくらい登ったであろうか。俺がへろへろにヘタっていた頃、重々しくも整った口調で男が告げる。

 

「……着いたぞ。さあ、中に入れ」

 

 目の前に現れたのは、3メートルはあろう巨大かつ重厚そうな印象を与える金属の扉であった。

 一言でいえば、ダンジョンの扉、みたいな感じ? しかも、ボス戦とか……そんなところじゃねえの?

 そこにも、勿論、重装備の門番が配備されており、その門番が、ギーという鈍い金属音を出しながら重々しい巨大な扉を開けてゆく。

 すると、目の前にこれまた広々とした空間が広がっており、その前方には一段高くなった箇所があった。

 そこに、煌びやかな衣装を身にまとった如何にも位の高そうな男と、その傍らには目を吊り上げ、狂気を発しながら俺の姿を凝視している女の姿があった。

 男は、白髪でスマートな体つきをしており、あまり怖そうな印象は持ち得なかった。

 対する女は、長い黒髪を後頭部で束ねており、表情はキリリとした整った様相を呈していた。

 その目を吊り上げているからに、睨みだけで人を殺せそうな大変恐ろしい目つきなのである。

 どちらも歳は俺とあまり変わらないように見えた。つまり、十代後半ぐらいであろう。

 

「早く動け!」

 

「うひゃっ」

 

 ただ呆然と辺りをキョロキョロと見回していた俺を、業を煮やしたのであろう先導男が急かす。

 おいおい、怒鳴るなよ。驚きのあまり、変な声出しちゃったじゃないかよ。

 俺が恐る恐る入室していくと、部屋の傍らに重々しく並んでいた兵士の中からひとりの男が出てきて、俺の手をくくったロープを先導してきた男から受け取った。

 その男は、色白で、やや長髪かつ身長も高く、見るからに世間的に言うイケメン風の容貌をしていた。

 つまり、きっとリア充。俺の敵。

 

「では、俺たちはこれで」

 

「はい。お勤めご苦労様でした。後はこちらにお任せ下さい」

 

 その男は、先導男ににこやかにハニカミながらそう言うと、

 

「では、こちらへ」

 

 とロープを持ちながら手招きした。

 なに、なんなの? そんなにはにかんでどうしたのさ。

 優男アピールですか。そうですか、このリア充め。

 俺は、そんな手には乗らないぞ。

 あら、優しい。私、惚れちゃった、なんていって恋に落ちちゃっていきなりラブコメストーリーに突入! なんてしないんだカンナ。

 第一、俺、男だし。

 

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