ぼっち、異世界へ行く。   作:オーバーうらら

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第4話 ギルド副リーダー閣下登場

 そういって優男に言われるがままに部屋の中央部に連れて行かれると、正面の上座から先の少女が俺を呼んだ。

 

「アタシは当ギルド『聖赤騎士軍』副リーダーのスズカ。情報は全て承知しているわ。アンタが規律違反を犯して、稀少レア動物《モンスター》である『キバシシ』を倒したのね」

 

突然に指差してそう叫ばれた俺は、驚きの余り声を裏返しながら言う。

 

「ひえっ!? お、俺がなにか?」

 

「何が、じゃないわ。『五大ギルド合意協定』における保護動物(モンスター)である『キバシシ』をアンタは倒した。これは、密猟にあたる罪なのよ」

 

「は、はあ」

 

 ええ、と。整理しておこう。

 つまり、彼女曰く、俺が連れてこられたこの場所は、ギルドの建物であり、そして、目の前にいる少女が副リーダーだというわけだ。

 そして、俺が連れてこられた理由は、倒してはいけないレアな「キバシシ」――あのザコシシのことね――を倒してしまったから、ということらしい。

 なに、保護 動物《モンスター》って? 俺の世界で言う天然記念物かなにかであろうか。

 まあ、なにはともあれ、相手方はご立腹の様。はて、どうしたものであろうか。

 だってさあ、俺、そんなこと知らなかったんだよ。全く。

 俺がどうしたものかとため息をついていると、一方の副リーダー閣下はそんなことには目もくれず、粛々と尋問らしきものを開始する。

 

「アンタ、どうして規律を犯したりしたの? 答えなさい」

 

 俺を指差しながらそう尋問する。

 なに、この上から目線。嫌になっちゃう。

 まるで、上司に嫌な仕事を散々押し付けられるような不憫な会社員の気分。

 ああ、働きたくないな。いっそのこと、起業しちゃおうかな。そうしたら、上司いないし。はじめから、俺が上司! 社長!

 でも、社長って責任取らなきゃいけないんだよね。じゃあ、やめた。

 やっぱり、働かないぞ。

 って言っても、ここでは会社なんてないんだけどな。

 

「……アンタ、さっきから何ブツブツ呟いてるの。言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」

 

 しびれを切らしたかのように、足を鳴らしながら叫ぶ。

 ああ、事情を取り敢えず話さねばならんな。刑に服したくないし。

 俺は取り敢えず、事態を説明することにした。

 

「あ、あの、ですね。俺はただ単に、お腹が空いていただけでありまして、その……あのですねぇ――」

 

 駄目だ。言葉が見つからない。だって、人に説明とかできないし。

 俺、そういうの苦手だから。

 

「……っ!」

 

 しかし、副リーダー閣下は業を煮やしてしまった。

 

「はやく言いなさいよ! こっちもアンタにそんなに時間を割くほど暇じゃないんだからね」

 

「す、すみません! は、話します!」

 

 その後、俺はなんとか自慢のコミュ力を発揮し、事態の収集を図ったのだった。

 そんで、たった今、解ったこと。

 ――あの人、恐い。

 

 

◆◇◆

 

 

 そうして、なんとか紆余曲折を経て事情を話したところ、やや不満気味にも副リーダー閣下はコクりと頷いた。

 

「ふーん。アンタ曰く、『キバシシ』が保護 動物モンスターに指定されていることを知らずに、空腹の余り倒してしまった、ということね。つまり、不慮の事故であって、無実である。そう言いたいのね?」

 

「……は、はい。そうです」

 

 なんかこの人に睨まれると、萎縮しちゃう。今の返事だって、語尾が消えてるし。

 あれ? 違うな。初対面の人なら誰でもそうだわ。

 俺、人見知りなんだよ。心が汚れていない。つまり、ピュアなんだよ。清楚系キャラで売り出してるんだよ。うわ、価値高え。俺こそ、保護人間、または人間国宝として祀るべきだろ。いや、マジで。

 

「そんなこと、あるわけないでしょ」

 

 俺をジト目で一瞥しながらそう言うと、副リーダー閣下もといスズカはさらに興奮しながら続ける。

 

「馬鹿なこと言ってないで、謝罪とか弁明の言葉もないわけ? もういいわ。刑に服してもらうまでよ!」

 

「刑、といいますと……?」

 

「刑は刑。罰は罰。そうねえ……、規定によると、牢獄行きね。ハイ決定! 被告人は禁固3年。以上!」

 

「……えっ?」

 

 ちょっと待って。序盤から、俺、牢獄行きですか!? こんなMMO見たことない。確かに新感覚だわ! でも、こんなの望んでないし。

 ええと。まさか、これが属に言う冤罪でしょうか。

 ちょっと、弁護士! 弁護士呼んできて!

 

 

 

 しかし、ここは異世界。日本国憲法は通じないようで、弁護士も登場しない。

 つまり、決定事項。

 権力を持つ者こそが正義、というわけだ。理不尽極まりない。

 

「さあ、この者を早く牢獄へ連れて行きなさい」

 

 スズカがそう告げると、近くにいたガタイのよい男ふたりが俺の肩を掴み、連行しようとする。

 もはや、これまで、か。

 思えば、俺の人生って理不尽の塊だったな。

さらば、友よ。あ、よく考えたら、俺友達いねえわ。このセリフ、使えない。

 俺が半ば諦め、そのまま連れて行かれようとした刹那、救世主が。

 

「お待ちください、副リーダー閣下。この者は、密猟を目的としていたわけではありません。ならば、少しは情状酌量の余地があるのではないでしょうか」

 

 そう言って、スズカに意見を述べたのは先程の優男だった。

 あ、なんかごめん。敵とか言っちゃって……。ホントはいい奴だったんだな。

 

「解ったわ。言われてみれば、そうね。情状酌量の余地はあるわ――」

 

 優男の意見に耳を傾け、うんうんと納得したように頷くスズカ。

 じゃあ、無罪ってことですよね。俺、帰ってダラダラして過ごしたいんだけど。

 

「――罰金刑に処すわ! 10万ゴールドで手を打ちましょう」

 

 ゴールド? 何それ、美味しいの?

 まあ、多分この世界における通貨のことであろう。

 ゲームで、この手の通貨はよく見かけられるからな。

 

「アンタ、まさか持ってないとか言うんじゃないでしょうね?」

 

 なにいってんスカ。10万ゴールドですよね。ええ、と。10万、10万……

 

「……持ってない」  

 

 

◆◇◆

 

 

 偉そうかつ横暴たる副リーダー閣下もといスズカに、なんとか情状酌量にて当人の顔つき曰く不服ながらも納得してもらった後、罰金刑で収まることとなったわけなのだが、残念ながらというべきか当然の如くというべきか、俺は通貨を所持してはいなかった。

 ましてや、10万などという単位の通貨を持っているはずもない。

 つまり、罰金刑に服すことも不可能、ということだ。

 第一、お金も食料もなく、上に苦しんだ上でやむなく食事を手にしたという事情であるのに、その上罰金とは、いかに貧者に厳しい世の中であるかがよく解る。

 やはり、お金を持つ者こそが強者となるという原則は、どの世界でも共通のようだ。

 全くもって、世の中は優しくない。

 

「当然のことよ。お金だって、沢山持っている人はその分努力したからなのよ。つまり、努力の証ってわけ。……って、さっきからなにブツブツ言ってんのよ。早く、10万ゴールド払いなさい!」

 

「いや、だから持ってないって」

 

「持ってない? じゃあ、どうしようもないじゃない。やっぱり、実刑に服すしか道はないようね」

 

 嘘……!? お金なければ情もなし、かよ。

 これも、実社会にはよくあることだよな。つまり、「世の中の理不尽あるある」ってことね。

 絶望、というべきか。

 俺は再度の助けを求めて、先程の優男を見るが、当の優男は微笑を浮かべながら肩をすくめるだけだった。

 おい、謝って損したわ。やっぱり、オマエ、テキ。

 

「でもまあ、仕方ないから罰金刑のままにしてあげるわ」

 

「金なら一銭も持ってないぞ」

 

「誰が、今、支払えって言ったの?」

 

「え……?」

 

「働いて返してもらおうじゃない!」

 

 スズカは胸を張ってそう言い放ったのだった。

 返せないなら、働いてでも返してもらいまひょっか? まるで、強制労働。

 俺が超不安な顔をしていたのを察したのか、スズカは慌てて訂正する。

 

「まあ、働くって言っても、このギルドでしばらく働いてもらうだけだけどね。そうね、食事も出すし、寝床もあって、とてもいい条件だと思うけど」

 

「……それ、思いっきり社畜じゃねえか」

 

 いや、この場合は会社じゃねえから社畜ではないか。

 じゃあ、なに? ギルド蓄、略してギル蓄なの?

 かくして、俺は立派な社会人、いや、ギル蓄になり仰せたのであった。

 

 

◆◇◆

 

 

 立派なギル蓄として、働かされるわけになったわけなのだが。

 

「で、なにをすればいいの? 激務ノルマ達成必須の営業っすか?」

 

 体力ないのに。俺は、お仕事楽チン時給激高の求人を求めます。後、週休二日、有給休暇も追加ね。

 

「はあ? 営業? アンタには、ギルドのためにひとつ重要なクエストに取り組んでもらうわ」

 

 クエスト? そう言えば、MMOでやったことあるな。

 与えられた基準を満たせば、報酬が得られるんだよな?

 でも、難易度によって報酬のレベルも変わるんだよな。

 俺なんか、低難易度のばっかやってたから報酬も低レベルのやつばっかだったし。

 

「で、クエストってなに? できるだけ、簡単なのにしてくれよ。インスタントラーメンの待機時間と同じく3分で終了とか。俺、基本仕事しないタイプだから」

 

「……大丈夫。この街のそばにあるダンジョンを攻略して、ボスを倒すだけだから。確か……、これまでも挑戦した奴らが10人ぐらいいたけど一人も成功しなかったわね」

 

 そう言って、ニコリと微笑みかけるスズカ。

 さっきまで微笑みの欠片もなかったのに、ここでだけ微笑むな。ホント、悪女だな。

 それにしても、俺、ホントに行かなきゃダメなの? 超行きたくないんだけど。

 

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