ぼっち、異世界へ行く。   作:オーバーうらら

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第5話 我が願いは届かない

 ぼっちは、人類史上最強の人種である。

 例えば、よく話題になるアニメや漫画といった仮想の物語において、近年、ソロで世界を救う、ということが流行になっている。

 つまり、ソロ最強伝説である。

 例えば、ソロは自分の時間を有意義に過ごすことができる。

 自分の使いたいように時間を有効活用できるのだ。

 もし、誰かと一緒になってつるんでいるとしよう。ならば、友情の名のもとにあっちこっちに振り回された挙句、結局いいように使われるのだ。

 そして、最後の締めの言葉は、「俺たち、友達だろ?」である。

 つまるところ、「友達」「仲間」の2語で様々な事象が事足りてしまうのだ。

 

 さらに、集団というものには、「空気」と呼ばれる大変厄介なものがある。

 集団に属している以上、場の空気を皆一様に読み合い、自分が仲間はずれにならないように神経を尖らせあっているのだ。

 そして、もし空気の読めない行動をとった奴がいた場合、皆から、空気読めない、通称「KY」と連呼されるのである。

 ああ――。これは実証済みだから、確証が持てるぞ。ソースは、小六の時の俺。

 ホントなんなの? 空気読めないって。空気が読めるわけないだろ。超能力者か。

 であるからに、そのような集団に属さないソロは最強なのである。

 また、ソロ=ぼっちであるからに、ぼっち=最強という式も成り立つわけである。

 結論を言うと、ぼっちな俺=最強。

 

 

 そして、いつもの通り、ぼっち精神を研ぎ澄ますべく、本日もソロプレイを楽しもうとしていたのだが……

 

「で、お前ら、なんでいんの。ストーカーなの? 俺、忙しいからついてこないでくれない?」

 

「はあ? 誰がストーカーよ! これがアンタの仕事よ。クエスト!」

 

「だから、それは解ってるから。な、なんでいるのでございましょうか?」

 

 またしてもスズカの威勢に拍子を抜かし、噛んでしまっていると、横からひょこっとひとりの微笑を浮かべた男が顔を覗かせた。

 

「つまり、こういうことです。ダンジョンは、大変難易度が高いため、僕たちも同行するというわけです」

 

「……はい? 全く解らん」

 

 もしかして、俺の日本語能力がないせい、じゃないだろうな。

 俺が理解不能になっていると、スズカが面倒くさそうに付け加える。

 

「だから、アンタじゃ務まりそうにないから、アタシたちも手伝うって言ってるの!」

 

 やっと、解りました。

 で、なんでまた?

 

「なんで、って。もういいわ! だから、ついていくって言ってるのよ。オーケー?」

 

「いや、本当にわけワカメ状態なんだけど」

 

 もしやこれはあれか? 部下の営業に口出しの多い厄介な上司がついてくる、胃が痛くなるパターンのやつか。

 もう既に、先が思いやられるんですけど。ああ、胃が痛い。

 

 重たい足取りで街を出た俺たち一行は、しばらく渓谷を歩いた後、ダンジョンの入口にたどり着いたのだった。

 案外近いな。徒歩10分ってところか。

 もしや、街からのアクセスが便利! っていうのがこのダンジョンの売りなの? なにその不動産広告。

 

「さあ、さっさと攻略しちゃいましょう!」

 

 スズカ副リーダー閣下の掛け声のもと、俺たちはダンジョンへと足を踏み入れるのだった。

 え、本当についてくるの? そろそろ被害届でも出そうかしら。

 

 

◆◇◆

 

 

 ダンジョンは、多くの木々に覆われた森林という極めて探索しにくい地形であった。

 上空を一瞥しても、そこは木々の葉に覆われており、その合間から微かに日差しが差し込む程度のもので、日中であるにもかかわらず大変薄暗い。

 つまるところ、いつモンスターが現れるか解らない、ということでもある。

 もしや、このダンジョンの難易度が高いというのはこのことが原因しているのであろうか。

 そんなことを考えていると、俺の一歩前を進むスズカが俺の思考と呼んだかの如く、呟く。

 

「ええ、そうね。薄暗い上に、四方八方視界が悪い。たいした悪条件のオンパレードよ、全く」

 

「確かに、このダンジョンの条件は厳しいものがありますね。ですが、視点を変えてみれば、モンスターからも同様のことが言えます。つまり、モンスターにもそう簡単には見つからない、というわけです」

 

 スズカの呟きに、優男が微笑を浮かべて前髪をツンと弾きながら、いちいち解説する。

 全く、こいつ解説マニアかよ。えらく物知りだな。教師にでもなれば?

 

「教師ですか。それもいいですね。しかしながら、ギルドに属すものとして考えるのは当然のことですよ」

 

「ギルド、ねえ……。大体、なんでギルドなんてものがあるんだ?」

 

「ギルドとは、組織としてこの世界ではかかせないものです。例えば、ひとりでは攻略のできない難易度の高いダンジョン。それが、集団でかかればクリアすることも可能なのですよ。確かに、少人数パーティもありますが、如何せん数が少人数ですからね」

 

 つまり、ダンジョンクリアには欠かせない組織っていうことか。

 よくゲームで耳にする少人数で組むパーティもあるようだが、少人数では満足いかないってわけね。

 難易度の高いモンスターであっても、数打ちゃ当たるってか。悪く言えば、数の暴力ってやつだな。

 

「ええ、言ってしまえばそうですね。モンスターを倒せば、アイテムが手に入ります。それを市場で売って生活するわけですから、当然難易度の高いモンスターを倒して、高レベルのアイテムを獲得したいというのは当然なのではないですか」

 

 そうか。ギルドっていうものは、この世界では生活をするための収入源を得るために働く場、ってわけね。つまり、俺の世界で言う会社。

 

「会社……? はて、聞いたことがありませんね。どこかの新設ギルドの名前なのですか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 首をかしげる優男に、会社を説明する気にはならず、そのままはぐらかす。

 って、そう言えば、コイツの名前、なんだっけ? やっぱいい。どうでもいいわ。

 しかし、聞きたくないという念が通じてしまったのか、その男は思い出したかの如く呟く。

 

「ああ、そう言えば、僕の自己紹介がまだでしたね。僕は参謀長のシルバです。どうぞ、お見知りおきを」

 

 だから、覚えないって。

 し、シルバなんて知らないから。参謀長とか知らないし!

 大体、人の名前覚えても相手が覚えてなくて、え、アンタ誰? なんで私の名前知ってんの? ストーカー? とか言って、白い目で見られるだけじゃねえか。

 だから、覚えないかんな。特にリア充は要注意だ。

 

 

◆◇◆

 

 

 俺たち、ギルド幹部二人。そして、ぼっち一名の一行は尚もダンジョンを進む。

 先程、優男もといシルバがひとり解説していたことによると、どうやらこのダンジョンは4フロア構成になっているようだ。

 ひとつのフロアごとにボスが配置されており、ボスを倒すことによってその部屋の奥にある次のフロアへの扉が開く。

 それが3フロアで、4フロア目のボスを倒すことによって、クリアということらしい。

 つまり、最初3フロアのボスが中ボスで、最後が大ボスね。

 

 会社にすれば、最初が平で、2フロア目が係長。3フロア目が課長で、最終ボスは部長。うわ、3フロア目から管理職かよ。恐い。

 ボスはボスで大変な作業になりそうであるが、ここらで開始1時間ほど。しかし、一向にモンスターと遭遇しない。

 なんか、こうも遭遇しないとちょっと不気味だよね。

 もしかして、ここのモンスター方はひきこもりで人見知りなの? だから、人前に出てこない。つまり、俺なの?

 とまあ、いらぬことを考えていること暫し。

 先頭を我が先にと突き進むスズカの足が、急に止まる。

 スズカは俺たちの方向を見ずにある林の一点を見つめたまま、俺たちに囁いた。

 

「……ほら、あそこ。モンスターよ」

 

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