ハリー・ポッターと運命を貫く槍   作:ナッシュ

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 感想や評価が嬉しくて投稿。しかしペースが早すぎてストックに不安が出て来たので長くは保たないと思われます。


第3話 組み分け帽子

 

 ホグワーツ城内の石畳を歩く列の最後尾で、シルフィは苛だたしそうに地団駄を踏んでいた。

 

「全く、なんなんですか、あの女は‼︎」

「あんなのは純血の家系にはゴロゴロいる。あの手合いと馬鹿正直に付き合ってやる必要はない。無視すればいい」

 

 それが賢い選択だし、アレステットもそうするつもりだ。

 だが、シルフィは一方的に色々言われたのが相当腹に据えかねたようで、遠目に見えるアイリーンの背を睨むようにしてブツブツと文句を言い続ける。ハンナは苦笑いで相槌を打っていた。

 

 

 大男───ハグリッドというらしい───から新入生を預かった背の高い年老いた魔女、マクゴナガル教授に連れられて来たのは、小さな空き部屋だった。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会が間も無く始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組み分けはとても大事な儀式です」

 

 寮に関する説明は、大体アレステットが彼の母から聞いていた話と同じだ。学校生活の大半を寮で過ごすこと、4つの寮のこと、寮杯とそれに関するポイントのこと。

 シルフィもアレステットから聞いたことと殆ど同じだった為か、暇そうだ。

 

「────間も無く全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていて下さい。それから、できるだけ身なりを整えておくように」

 

 エメラルド色のローブを翻し、マクゴナガル教授が部屋から出て行く。途端に新入生はざわざわと思い思いに話し始めた。

 

「⋯⋯あれ、そういえば、寮ってどうやって決めるんですか?」

「いや、俺も知らない。それは伝統的に教えない決まりになっているらしい。俺の母も入学してからのお楽しみ、の一点張りだった」

「テストとかあるのかなあ? 私あんまり教科書とか読んでないからダメかもー⋯⋯」

 

 眉を八の字に曇らせてハンナが肩を落とす。

 

 見回して見れば、テストがあるとか、トロールと一騎打ちするとか、物凄い苦痛を伴う、などという眉唾な噂話が横行していた。中にはブツブツと呪文を早口で暗唱する見覚えのある少女もいた。

 

「いや、それはないだろう。寮に貴賎は無いというし、何かの評価が関係するとは思えない。何かするとしたら、性格診断とかの適性検査だと思う」

 

 ハンナは見るからにホッとして頬を緩めた。

 

「えっと、グリフィンドールは騎士道、ハップルパフは忍耐強さ、レイブンクローは機知、スリザリンは狡猾さ、でしたね」

「ママとパパはスリザリン以外ならどこでも、って言ってたなあ。でも、本当はグリフィンドールかハップルパフに入って欲しいみたいだったよー」

 

 相変わらず嫌われ者のスリザリンだ。

 特に彼らの親世代はモロ闇の帝王時代を生きたわけだから、歴代でもその嫌われっぷりは相当だろう。当時のスリザリン生の殆どの就職先は死喰い人だった。

 

 対してグリフィンドールは大人気だ。何せ、校長であるアルバス・ダンブルドアを始めとした闇の陣営に敵対した多くの英傑たちがグリフィンドール出身だった。

 

 とはいえアレステットからしたらどっちもどっちだ。スリザリンは兎も角、グリフィンドールの騎士道も聞こえはいいが、実際には頑固で思い込みが激しい者も多い。独善を振りかざして暴走することもあり、時と場合によっては純血主義よりも邪魔な存在になり得る。

 

「アボットはハップルパフな気がしますね。フォウリーは⋯⋯⋯」

「俺はスリザリンだろうな」

 

 シルフィを遮ってそう言うと、二人は当惑したようにこちらに視線を向けた。

 

「フォウリーがスリザリン、ですか?」

「ああ。あの寮は血統で生徒をとるところがある。俺の知る限り、ウチの家系はほぼ全員スリザリン出身だ」

 

 あの全くスリザリンらしからぬ母を想起する。闇の陣営に真っ向から歯向かった稀有なスリザリン出身生だった。

 

「⋯⋯そうですか。私はきっとグリフィンドールです」

「だろうなぁ」

 

 スリザリンに組み分けされたアイリーンとグリフィンドールに組み分けされたシルフィが授業の度にいがみ合う姿が容易に想像できた。

 

「さっきアレステットはグリフィンドールとスリザリンは互いに不倶戴天の関係だと言ってましたが⋯⋯」

「結局は、俺たち次第だろう。少なくとも、俺はコールフートのことを大切な友人だと思ってる」

「⋯⋯私もですよ、フォウリー」

 

 照れ臭そうに笑って答えるシルフィに、アレステットも思わず笑みが零した。

 

 それを見てハンナがキラキラと目を輝かせた。頬を赤く染めてうっとりとしている。

 

「勿論アボットのことも────」

「私はいいのー!」

「えー⋯⋯⋯⋯」

 

 もしかして、嫌われてるのだろうか。

 がくりと肩を落としたアレステットを無視して、ハンナは満面の笑みでシルフィに親指を立てた。目をパチクリとさせ、シルフィも困惑した表情で取り敢えず親指を立てる。

 

「応援してるよぉ、シルフィー」

「あ、あの、アボット? 貴女何か勘違いしてませんか⋯⋯?」

 

 何を誤解してるのかは分からなかったが、これは後に引きずると間違いなく面倒なことになる、とシルフィの勘が囁いていた。

 

 分かってるよ。本人の前だもん、恥ずかしいんだよね。

 だが、シルフィの言葉はそんな生暖かい視線の前ではすべて曲解されてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マクナガルに連れられて大広間に入る。

 

 視界いっぱいに広がった幻想的な雰囲気に、組み分けの緊張感も忘れて本日何度目か分からない感嘆の声が上がった。

 

 何千という蝋燭が空中を浮かび、4つの長テーブルを照らしている。そのテーブルにはそれぞれの寮の上級生が着席し、穴が空くほどこちらをジッと見つめている。広間の上座には教授達が座っていた。

 かなりの広さだ。1000人以上が一堂に会してもなお余りある。豪邸に住むアレステットをして目を剥く広さだ。

 高い天井には空を映す魔法がかけられているようで、ため息が出るようなほどの満点の星空が見える。

 

 だが、この場に似つかわしくないものが新入生たちの前に置かれた。

 

 マクゴナガルが持ってきた四つ足の小さな椅子の前に置かれた小汚い帽子。ところどころにツギハギのされたとんがり帽で、叩いたら埃が舞いそうなほどの年季ものだった。

 

 勿論、ただの帽子ではない。

 ピクピクと帽子がその身を震わし、口のようにぱっくりと割れた破れ目から歌声が響き渡った。

 

 回りくどい言い回しだったが、要するにこの組み分け帽子はその人の資質や性格を見抜く力が宿っており、これを被れば自分に一番合った寮に入れてもらえる、ということらしい。

 

「フォウリーの言う通りでしたね」

「帽子を被るってのは予想してなかったけどな」

 

 小声で囁き合っていると、マグゴナガルがジロリとこちらを睨みつけてきた。思わず背筋を伸ばし、慌てて正面を向いた。

 マクゴナガルが羊皮紙の巻紙を手にして前に進み出た。順繰りに生徒を一人一人見渡す。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けて下さい」

 

 ABC順。アレステットは、ここにいる3人の番が早めに来ることに気づいた。

 

「アボット・ハンナ‼︎」

 

 びくり、とハンナが肩を揺らし、緊張した面持ちで前に出て行く。

 まさかの一番手だ。

 

 椅子に座り、帽子を被る。ハンナの小さな頭は帽子にすっぽりと隠れてしまった。

 一瞬の沈黙の後、帽子が高らかに叫んだ。

 

「ハップルパフ!」

 

 向かって右側のテーブルから歓声と拍手が上がる。ハンナがはにかみながらこちらを振り向いたので、アレステットとシルフィも微笑みながら小さく手を振った。

 

「ボーンズ・スーザン!」

「ハップルパフ‼︎」

 

「ブート・テリー!」

「レイブンクロー‼︎」

 

 着々と新入生が組み分けられていく。たしかにこれならペーパーや面接よりも明らかに迅速で正確だ。

 

「コールフート・シルフィ!」

 

 硬い顔をしてゆっくりとシルフィが前に出る。励ますようにシルフィの肩を叩いてやると、小さく頬を緩めた。

 

 帽子を被る。

 これまでよりも少し長めの沈黙の後、帽子が高らかに宣言した。

 

「スリザリン!」

 

 思わず、アレステットは目をパチクリとさせた。

 別にスリザリンだから、と偏見があるわけでは無いが、これはかなり意外だった。シルフィは間違いなくグリフィンドールに組み分けされると思っていたからだ。

 

 シルフィも予想していなかったのか困惑した顔を向けてきた。とりあえずアレステットは笑って応えた。

 

 マグル生まれだからとスリザリン内でイジメにでもあったらどうしようか、と気を揉んでいると、アレステットもすぐにその名前を呼ばれた。

 

「フォウリー・アレステット!」

 

 前に進み出ると、特にスリザリンの方から視線を感じた。大方同志が来たとでも思っているのだろう。思わず辟易とする。

 

 ふと先生たちが座る席に目を向けると、何人かがこちらを観察するように見ていた。

 その中に嫌な顔を見つけて顔を顰めるが、立派なヒゲを蓄えた老賢者───ダンブルドアには会釈をしておいた。彼もニコニコと笑いながら小さく頷いてくれた。

 

 帽子を被ると、周囲の音が遠ざかり、脳内がクリアになった。

 かなり強力な開心術をかけられているようだ。脳に直接触れているこの至近距離では、生半可な閉心術では意味をなさないだろう。

 

『ふむ、難しい⋯⋯非常に難しい。溢れんばかりの勇気を持っている。誰かを思いやる誠実な心も持っている。勉学は嫌いのようだが、学ぶ心と素晴らしい頭の良さもある。敵と見なした者に対してはどこまでも残忍になれる。

 どこに入っても君はうまくやっていけるだろう。ここまで難しい生徒は珍しい。いやはやどうしたものか』

 

 即決でスリザリンに選ばれると思っていただけに、アレステットはうんうんと悩む帽子の声を聞いて少しだけ驚いた。

 

『いや、君の才能を考えれば、スリザリンが一番いいだろう。スリザリンに入れば、君は間違いなく偉大で強力な魔法使いになれる。君にはそれだけの力が眠っている』

 

(なら、そこにすればいい)

 

『だが、それは君の才能に限った話だ。君はどうしたい? 何を望む?』

 

 望みは何か、か。ここで嘘を言っても仕方がないし、帽子を被っている以上すぐに見破られるだろう。

 

 力も名誉も興味はない。でも、強いて望みを言うのであれば───

 

(そうだな。ここで一番、楽しめる寮がいい)

 

『ふむ、よろしい。であれば───』

 

「グリフィンドール!」

 

 わああ、と割れんばかりの大歓声が響いた。そのあまりの喝采に、珍しくぽかんと間が抜けた表情を浮かべてしまった。

 

 帽子を椅子に起き、グリフィンドールのいるテーブルに向かう。

 これでアレステットはフォウリー家で初めてグリフィンドールに組み分けされたことになる。時代が時代なら家系図から抹消されていたかもしれないと思うと、あまり笑えない。

 

 スリザリンのテーブルの方を向くと、シルフィが少し寂しそうな顔をしていた。一緒の寮になれるかもしれないと思っていたのだろう。それがまさか立場が入れ替わってしまうとは。

 それでも、先程言ったセリフを覚えているのか、シルフィは笑顔を浮かべて祝福するように小さく手を振ってくれた。

 

 席に着くと、周りの上級生が強めに肩を叩いたり、頭をわしゃわしゃしてきた。

 

「組み分け困難者だ! 組み分け困難者が来たぞ!」

「組み分け困難者?」

 

 先輩が言うには、組み分け帽子が5分以上どこの寮にするか迷った新入生のことを組み分け困難者と言い、非常に珍しい存在らしい。アレステットは10分近く悩んでいたそうだ。

 大抵が優秀な生徒らしいので、こんなにグリフィンドールは喜んでいるらしい。まあ、反対にスリザリンからはこれでもかというくらい睨まれているが。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

 アレステットの次に呼ばれた女子生徒は、ホグワーツ特急の中で見た高圧的な茶髪の少女だった。ハーマイオニーという名前らしい。

 

「──グリフィンドール!」

 

 これまた意外だ。あの少女はレイブンクロー向きだと思っていたのだが。

 その後、ネビルもグリフィンドールに組み分けされた。人は見かけによらないということだろうか。

 因みにドラコ・マルフォイという少年は凄まじい速さでスリザリンに組み分けされた。純血の中でもかなり排他的なマルフォイ家らしいと言えばらしい。

 

 その後もつつがなく組み分けが進んでいく。そしてついに、ほぼ全ての生徒や先生が待ち望んでいた名前が呼ばれた。

 

「ポッター・ハリー!」

 

 皆が前のめりになって固唾を呑んで見守る。

 

 暫くして、帽子が叫んだ。気のせいか、これまで以上に神妙な声音の気もする。

 

「グリフィンドール‼︎」

 

 アレステットの時を遥かに上回る、雄叫びじみたグリフィンドールの大歓声と他の寮の落胆の声。

 上級生と固く握手を交わし、ハリーは熱烈な歓迎を受けた。照れ臭そうに頬をかく姿は、どこからどう見ても普通の男の子だ。とても闇の帝王を打ち倒した英雄には見えない。

 

 

「シャフィク・アイリーン!」

 

 聞き覚えのある名前に、ハリーから視線を移す。緊張なぞ微塵もしていないのか、自信満々な表情と堂々とした態度で椅子に腰掛ける。振る舞い一つ一つが洗練されており、育ちの良さを伺わせた。

 その揺らぐことのない姿勢は、自分がどこにいくか確信している様子だった。アレステットも勿論検討がついていた。

 

 やはり、帽子はすぐに答えを弾き出した。

 

「───グリフィンドール‼︎」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?」

 

 聞き間違いだろうか。

 

 しかし、金髪の少女は可哀想なくらい顔を真っ青に染めてフラフラと覚束ない足取りでアレステットの隣に座った。

 

「私が、シャフィク家の次期当主たるこの私が、グリフィンドール⋯⋯? そんな⋯⋯お母様たちになんて言われるか⋯⋯。これは何かの間違いよ⋯⋯。いえ、悪い夢に決まってるわ⋯⋯」

 

 ⋯⋯⋯⋯もしかしたら、組み分け帽子は意外と間違いも多いのかもしれない。

 ブツブツと暗い顔で呟くアイリーンと、信じられないという顔でこちらを見るシルフィを見ながらそう思った。

 

 組み分けが終わり、校長であるアルバス・ダンブルドアが立ち上がる。

 もう110歳だというのに、腰一つ曲がっていない。見事な白髪にキラキラと光る青色の瞳が特徴の神秘的な老人だ。

 

「おめでとう、ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

 

 爆発するような歓声と拍手が上級生を中心に沸き起こった。

 

「⋯⋯意味がわからないわ⋯⋯」

 

 全くの同感だった。

 

 

 その後、突然テーブル上に所狭しと現れた豪勢な料理に舌鼓を打った。不味いとされるイギリス料理であるが、腕のいい屋敷しもべ妖精が沢山いるのか、実家に勝るとも劣らない素晴らしい味だ。

 特に、ビーフステーキのスパイスの効いたソースは絶品だった。もし厨房に行く機会があったらレシピを聞いておこう。

 

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 どんよりと落ち込んだ雰囲気を垂れ流す隣の少女が気になってしまい、アレステットはため息をついてフォークを置いた。

 本音を言えばこの典型的な純血主義のお嬢様のようなタイプは嫌いだ。それでも、横で目を潤ませる少女を放置しておくのも嫌だった。

 

「⋯⋯食べないのか?」

「⋯⋯⋯余計なお世話よ」

 

 鼻を鳴らし、そっぽを向いてしまった。しかしその様子はどこか弱々しい。

 はあ、とまたため息を吐いた瞬間に、アレステットの右腕が閃いた。ステーキの切れ端を刺したフォークを彼女の口に突っ込んだ。素晴らしい早業だった。

 

「むぐぅ⁉︎」

 

 目尻を吊り上げ、青色の瞳が刃のような切れ味を持ってアレステットを睨みつける。

 だが、怒鳴ろうして口の中の肉を咀嚼すると、だんだんと目尻が下がってきた。

 

「何するのよ!」

「美味いだろ?」

「それは! ⋯⋯そうだけど。でも、レディの口にいきなり食べ物を突っ込むなんてどんな神経してるのよ! なんて野蛮な⋯⋯」

「まあ、組み分けされてしまったものは仕方ないだろ。それに、悩むなら食べてからでもできるだろ? 取り敢えずはこのご馳走を楽しもうぜ」

 

 アイリーンは無言で睨んできたが、そこに先ほどまでの圧力はない。

 フン、と大きく鼻を鳴らし、アレステットの皿を奪い取ってステーキを食べ始めた。

 思わず苦笑いを零す。本当にいい意味でも悪い意味でも子供のような少女だ。

 

 ふと視線を感じる。

 シルフィが抗議するようにこちらをジト目で睨みつけていた。言語化するなら『なんでその女と仲良くしてるんですか!』といったところか。勿論、思春期にありがちな初々しい嫉妬心とかではない。友達が嫌いな奴と仲良くしていたら誰でもいい気分はしないだろう。

 

 困ったように頬をかく。

 

 

 そんな3人の様子を遠目に見ていたハンナは、目を輝かせてうっとりと頬を染めていた。誰も知らない間に彼女の中で誤解は加速しているのであった。

 

 

 

 

 

 

 ダンブルドアから学校で立ち入ってはいけないところや注意点を説明された後、歓迎会は幕を閉じた。立ち入ったら死ぬ場所など何だか聞き捨てならない忠告があったような気がしたが、ホグワーツでは当たり前のことなのかもしれない。

 

 

 グリフィンドールの新入生は、監督生のパーシー・ウィーズリーの後ろをカルガモのように続いて寮へとやってきた。途中でポルターガイストのピーブズに遭遇したが、追い払う元気があったのはパーシーだけだった。みんな満腹感と疲労で眠そうだった。

 アレステットも一も二もなく悪霊退治の魔法でピーブズを追い払そうになるくらいには精神的に疲れてしまっていた。

 

「さあ、着いた」

 

 太った婦人の肖像画に合言葉を告げると、肖像画が前に開いた。その先に、グリフィンドールの談話室が続いていた。

 パーシーに促されて男子寮に続くドアから螺旋階段を登る。一年生は高いところに部屋があるのか、かなり階段を登る羽目になった。

 

 黙々と歩いていると、隣を歩いていたネビルが遠慮がちに話しかけてきた。

 

「あ、アレステットだよね。僕、ネビル・ロングボトム。覚えてるかな?」

「いや、勿論覚えてる。トレバーはちゃんといるか?」

 

 そう答えると、ネビルは嬉しそうに破顔した。トレバーをポケットから出すが、どうやら眠りこけているようだった。夜だというのに、本当にカエルかどうか疑わしいものである。

 

「ネビルの友達?」

 

 前を歩いていた赤毛の少年が振り返り、アレステットを見た。釣られるように、隣にいたハリー・ポッターもこちらを向く。ハリーはアレステットの顔を覚えていたのか、小さくあっと呟いた。

 

「ポッターとは久しぶりだな。アレステット・フォウリーだ。よろしく」

「僕、ハリー・ポッター」

「僕はロン・ウィーズリー。ハリーとも知り合いなの?」

「杖の店でな」

 

 すると、ロンは小さく肩を落としてため息を吐いた。

 

「いいなあ。僕なんてチャーリーのお下がりの杖だよ。凄くボロいし」

 

 ロンが取り出したトネリコの杖は、たしかにフォローのしようがないくらいに不良品だった。一角獣の毛が脇から跳ねだしてしまっている。

 

 ウィーズリーの名は聞き覚えがあった。アレステットの家にたまにやってくる母の友人たちがよく貧乏人とバカにしていた家系だ。それに同調する気は無いが、せめて魔法使いにとって生命線とも言える杖くらい新しいのを買ってやれよ、と思わなくもない。

 

「それに、ペットも制服もお下がり。⋯⋯そういえばキミのペットは?」

「俺は連れて来ていないな。本当は猫が欲しかったんだけどな⋯⋯」

 

 雑談をしながら登っていくと、天辺高くに自分の名前のプレートが書かれたベッドを見つけた。

 

 彼らと別れ、ルームメイトたちと挨拶を交わすと、みんなすぐにベッドに潜り込んだ。アレステットも清めの呪文で全身を綺麗にしてから布団を被った。

 

 瞼の重みに逆らうことなく目を瞑る。

 

 

 眠りに落ちる寸前、何故か組み分けが決まった後のことを思い出していた。

 

 コウモリのような見た目の陰険そうな男。思い出すだけでムカムカする奴。

 

 だが、彼より強い印象を受けたのは、その隣にいたターバンを巻いた男。こちらを凝視するその姿を想起すると、アレステットは言いようのない胸のざわつきを覚えるのだった。




 
フォウリー家はみんなスリザリン出身
→主人公とその母以外みんな純血主義。

ハンナの誤解
→まったくのかんちがい。

シルフィがスリザリン
→ちゃんと理由があります。後々明らかになるかと。

勉強が嫌い
→命令されて勉強するのが受け付けないタイプ。

グリフィンドールへ
→組み分け帽子の直感。

アイリーン・シャフィク
→そういえばネットで調べてたらスネイプ先生の母がアイリーンという名前らしい。だけど作中でもトムの名前被りとかあったし気にしないことに。

アイリーンのグリフィンドール行き
→これも後々語られます。

ダンブルドアの二言三言
→そんなキャラだったっけ?

ネビル・ロングボトム
→誰かコイツが予言の子だったルート書いてくれないかな。


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