ハリー・ポッターと運命を貫く槍   作:ナッシュ

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 前々から少し段落間が空きすぎかな、と思ってたので少し詰めて見ました。見にくいようでしたら前までのに戻します。


第7話 ハロウィーン

 

 アレステットがホグワーツに入学してから既に二ヶ月が経った。

 アレステットは、杖を使う授業では凄まじい実力を発揮し、今や『ホグワーツ始まって以来の天才』などと持て囃されるほどまでその名を学校中に轟かせていた。

 が、本人はむしろ賞賛や嫉妬の視線が苛立つのか、そう称されることを嫌がった。最近では上級生にも絡まれる始末。はっきり言って迷惑極まりないことこの上ない。75日待つか手を抜くか真剣に悩むほどだった。

 

 しかし今日はそんな頭痛の種も忘れられそうだった。

 本日、10月31日はハロウィーン。学校中に美味しそうなカボチャの香りが充満するという、ある種拷問のような環境でも授業は滞りなく遂行されていた。まあ、大抵の生徒が浮き足立って授業に身が入っていない様子ではあるけど。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

 アレステットは別にカボチャはそれほど好きではない。だが、恐らく普段より輪をかけて腕によりをかけた豪華な料理が出てくるかと思うと口の中がすぐに涎で満たされた。

 

「ウィンガーデイアム・レヴィオーサ!」

 

 上級生の話によると、カボチャ料理以外にもビーフやポーク、チキンなどの肉厚なステーキも出るらしい。むしろそっちの方が楽しみであった。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

(⋯⋯そういや、コールフートはカボチャが好物って言ってたっけ)

 

 かなりの甘党であるシルフィは、カボチャも勿論大好きだった。特に、歓迎式の時に食べた糖蜜パイが大好物になったようで、朝から非常に上機嫌であった。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

 杖の先がアレステットの頬を掠めた。

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 いい加減無視できなくなって来た。

 

 隣でぶんぶん杖をやたらめったら振り回す少女に視線を向ける。

 机の上に置かれた羽根を睨みつけるようにして何度も呪文を唱えるが、羽はその効果を示さない。というか何故かさっきから爆発音を響かせてフリットウィックの頬を引き攣らせていた。

 

「どうなってるの⁉︎ 何で浮かないのよ!」

 

 癇癪を起こしたように金髪の少女が喚く。見るも無残に黒焦げになった羽がフリットウィックの何度目かもわからない修復呪文で再生される。

 

 アレステットは不幸なことに、この呪文学の授業でアイリーンと組まされた。

 絡まれても面倒なので全力でスルーしていたが、涙目で杖を振りたくる姿を見ていると少々良心が痛んだ。

 

「なあ⋯⋯」

「黙ってなさい!」

 

 有無を言わさぬ迫力に思わず口を閉じる。

 

 まあ、慣れないアドバイスをしたところで結局要領を得ないだろうから成功することもないだろう。それを理由に逆恨みされても面倒だ。

 自分を納得させるようにつらつらと考え、ため息を吐く。辺りを見渡せば、どうやらみんなアイリーン同様に悪戦苦闘している様子だった。

 

 が、そんな中でもやはりハーマイオニー・グレンジャーは優秀であった。

 

「オーッ、よくできました! 皆さん、見てください。グレンジャーさんがやりました!」

 

 ハーマイオニーが照れ臭そうに笑う。ただ、その隣ではロンがしかめっ面で不服そうな表情をしていた。

 

「くっ、なんでアイツが⋯⋯⋯⋯ッ!」

 

 アイリーンが焦ったように何度も何度も呪文を唱え、荒々しく杖を振る。だが、そんな精神状態ではうまくいくものもうまくいかない。

 終ぞアイリーンが浮遊呪文を成功させることは無かった。

 

 チャイムの音が響く中でも席を立とうともせず、焦燥に唇を強く噛んで俯く。その大海のような瞳は虚で、迷い子のように揺らめいている。

 色んな授業でハーマイオニーがアイリーンよりも上手くいったとき、決まって彼女はこの表情を浮かべる。アレステットが褒められた時では決して見せない、沈んだ表情だ。

 

 そして、アレステットが嫌いな表情だ。

 

 率直に言って、アレステットはアイリーンのことを好ましく思っていない。純血主義で、マグル嫌いで、差別的で、高慢。親友のシルフィに悪口を言うことも理由の一つだ。

 

 だが、その表情。自分の信じるものが折れてしまいそうな時の顔。いつかどこかで見たことのある苦悶。

 それを前にした時、アレステットはどうしようもなく彼女を放っておけないのだ。

 

「シャフィク」

「何よ──ッ⁉︎」

 

 アイリーンに教科書を投げつける。本当はシルフィに渡すつもりだったが、まあ、もう一度作ればいいだけの話だ。

 

「何のつもり? 教科書の読み込みが足りたいって言いたいわけ?」

 

 どうやら、コケにされたと思ったようだ。今にも爆発しそうな怒りで肩をプルプルと震わせている。

 

「まあ、精々それを読んで練習することだな」

 

 皮肉げに口の端を吊り上げ、教室を後にする。

 ブチ切れて飛びがかかってくるかとも思ったが、相当凹んでいるらしく、力無くこちらを睨んでくるだけだった。

 

 

 次の授業に向かう途中、肩に衝撃が走った。

 ぶつかって来たのはハーマイオニーだった。結構な衝撃だったのだが、彼女はアレステットを一瞥することもなくそのまま彼女は走り去っていってしまった。

 

 新手の嫌がらせかとも思ったが、横をすり抜ける際に宙を舞った雫と、背後に呆然と立つハリーとロンの姿を見て大体状況を察した。大方、デリカシーのない彼らが彼女を傷つけたのだろう。

 

 その後、午後の授業でハーマイオニーの姿を見ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハロウィーン。由来を辿れば元はケルトの収穫を祝う祭りだったようだが、現代社会ではもっぱらパーティーやお祭り騒ぎの口実にされるイベントに成り下がっている。

 それはこのホグワーツでも変わらないらしく、大広間はいつにもまして素晴らしい飾り付けがされていた。

 

「あ、アレステット、シルフィー。こっちだよぉー」

 

 ぶんぶんと手を振るハンナの下に苦笑を浮かべながら向かう。普段なら結構目立つ声量も、今は広間の喧騒にたちまち掻き消された。

 

「ね? 言った通りでしょ? 今日ならみんな気にしないと思ったんだー」

「ええ。本当にありがとうございます、アボット」

 

 

 

 それは、昼休みのことだった。

 いつものように二人で歓談をしていた時、ひょっこりとハンナが顔を出したのだ。久々に会った友達に挨拶を交わしたのも束の間、申し訳無さそうな顔をしたハンナがある提案をしてきた。

 

『ごめんねぇ、シルフィ。ちょっとだけいいかなあ』

『? いえ、勿論構いませんよ。どうしましたか?』

『二人はハロウィーンのディナーどうするの?』

 

 どうするも何も、特に何も考えていなかった。二人は顔を見合わせ、困惑する。話が見えて来なかった。

 

『一緒にご飯食べないのぉ?』

『いえ、まあ、たしかにそう言われればそうしたいのは山々なのですが⋯⋯』

 

 今まで、二人で夕食をとったことは一度もない。シルフィは何度かグリフィンドールのテーブルに来ようとしたことがあるが、アレステットが制してきた。

 

 夕食の時間は授業とは数の上で別次元だ。片方がもう片方の寮のテーブルに行くというのは、いわば敵の本拠地に丸腰で突っ込むのと同じだ。

 アレステットとしてはスリザリンで浮いているシルフィをグリフィンドールからも敵視されるような状況にはしたくなかったのだ。

 アレステットもスリザリンのテーブルに来て席を共にするということもしない。グリフィンドール生を招いたスリザリン生となれば、シルフィへの嫌がらせが加速度的にエスカレートすることも目に見えていたからだ。

 

 その旨を伝えると、ハンナがコクコクと頷いた。

 

『でもね、ハロウィーンのパーティーはすっごい盛り上がるらしいんだよお。いつもより違う寮のテーブルでご飯を食べる生徒も多いんだってー』

『だから目立たないと? ですが、それでもスリザリンはスリザリンで固まってるでしょうし⋯⋯』

 

 たしかに、ハロウィーンだからと言って悪目立ちするのは確実だろう。

 

『たしかに、グリフィンドールとかスリザリンのテーブルだと目立つかもねー。でも、ハップルパフのテーブルだとどうかなぁ?』

『⋯⋯⋯いいのか?』

 

 言わんとすることは分かった。だが、それでは今度はハンナに迷惑がかかってしまう。シルフィも眉を下げてハンナの顔色を伺う。

 

『勿論だよぉー。私、二人のこと応援してるもん。友達にも事情話したら協力してくれるって言ってたくれたんだぁ』

 

 ハンナはパンと手を叩き、自分のことのように嬉しそうに破顔した。

 

『⋯⋯応援?』

『ちょ、アボット! だから違うと何度も⋯⋯』

『分かってる、分かってる。じゃあ、夕食の時また会おうねえー』

 

 まるで嵐のように去っていったハンナを二人して呆然と見つめる。心なしかシルフィの頬が熱を帯びていたが、アレステットは気づかなかった。

 

『どうしますか?』

『そうだな⋯⋯。せっかくの厚意だし、お言葉に甘えようか?』

『こ、こここここ好意⁉︎』

『えっ?』

『あ、いえ、何でも⋯⋯』

 

 

 

 こうして二人はハップルパフのテーブルで夕食を頂く運びになった。彼女に迷惑をかけるのは忍びないので、こういった騒ぎに乗じれる時だけだが。

 ハンナの友人達──特に女子勢──は概ね好意的に二人を迎え入れてくれた。

 

「悪いな」

「そう思ってるなら来ないでくれるかい?」

 

 約1名以外。

 丁度正面に座るザカリアス・スミスという男子生徒はハップルパフらしくない性格をしているのか、まるでマルフォイのような表情でアレステットを鬱陶しそうにしている。

 

「スミス! ⋯⋯すみません、彼も根はいい奴なのですが⋯⋯」

「いや、気にしていないさ」

 

 その横に座るジャスティン・フィンチ=フレッチリーが申し訳なさそうに詫びた。実際、迷惑をかけているという自覚はあったので、アレステットは気にしていないと首を振った。

 

 そんなやりとりなどどこ吹く風、いつになくハイテンションなシルフィがグイグイとアレステットの袖を引っ張った。

 

「フォウリー! ほら、見て下さい! こんなに大きな糖蜜パイは見たことがありませんよ!」

「おお、本当だ。⋯⋯え、いやデカすぎるだろ。まさか本当に一人で食べるつもりか?」

 

 凄まじい速度で小柄なシルフィの胃に次々と甘菓子が詰め込まれていく。見ているだけで胸焼けしそうな光景に、思わず頬を引き攣らせた。普段は小食だというのに、甘いものは別腹のようだ。

 

「ほら、これもとても美味しいですよ! フォウリーも一口どうです?」

「どれどれ⋯⋯」

 

 差し出されたカボチャのケーキに舌鼓を打っていると、隣で(生暖かい目で)見守っていたハンナが眉を顰めた。

 

「二人はいつまでファミリーネームで呼びあってるの〜?」

「「えっ」」

 

 二人して思わず顔を見合わせる。

 アレステットもシルフィも、基本的にファーストネームで誰かの名を呼ぶことはない。ファーストネームを言ってくれる友人、例えばハンナ相手でもファミリーネーム呼びだ。

 

「いや、今更なぁ⋯⋯」

 

 長いことファミリーネームで呼びあって来たからか、すっかりそっちで慣れてしまった。今頃になって呼び方を変えても違和感があるだろう。

 

 だが、そう思ったのはアレステットだけだったらしい。

 

「⋯⋯その、フォウリーが良いと言うなら、私は⋯⋯」

 

 頬を染めてチラチラと伺うような視線を向けるその姿に、アレステットの鼓動が微かに高鳴る。

 

「あー⋯⋯」

 

 何故かアレステットに圧力すら伴った視線が方々から突き刺さる。

 

「えっと、じゃあ、シル────」

 

 気恥ずかしい気持ちを押さえ込みながら、口を開いたアレステット。

 だが、それを遮るように大扉が勢いよく開かれた。

 

 広間の生徒がみなそちらを向く。駆け込んで来たのは『闇の魔術に対する防衛術』の担当である、クィリナス・クィレル教授だ。

 顔を恐怖で歪ませ、息も絶え絶えにダンブルドアの席にもたれかかる。

 

「大変です! トロールが⋯⋯地下室に⋯⋯お伝えしなくてはと思って⋯⋯」

 

 それだけ言うと、パタリと気を失い、倒れてしまった。

 最初は困惑していた生徒たちのざわめきは徐々に大きくなり、大広間は大混乱に陥った。シルフィも不安げにアレステットに話しかけて来た。

 

「と、トロールとは⋯⋯?」

「マグルの世界で知られているのと大体同じだ。知力は低いが、その膂力と皮膚の厚さで並みの魔法使いなら圧倒するレベルの魔法生物だ」

 

 しかし、それはあくまで一般的なレベルの魔法使いに限った話だ。ホグワーツの、しかも『闇の魔術に対する防衛術』に携わる教授であれば本来なら一捻りの筈である。

 違和感を感じなくもないが、普段の授業でのクィレルのきょどりっぷりを思い出せば情けなくは思うものの納得してしまった。

 

「だ、大丈夫なんですか⋯⋯?」

「ああ、それは問題ないだろう。ダンブルドア先生がいる以上、この学校内で死人が出ることは無いさ」

 

 安心させるように肩を叩くと、丁度ダンブルドアが監督生に生徒たちを寮へと引率するように言った。

 

「み、みんな! お、おおおお落ち着いて!」

「アレは大丈夫でしょうか?」

「あの人がまず落ち着くべきだろうな」

 

 気弱そうな監督生が涙目でどもりながらハップルパフ生を引率する。見るに見兼ねたのか、アレステットたちより僅かに年上らしきハンサムな少年が代わりに生徒たちを纏め上げていた。

 まさかこの流れに乗るわけにはいかないので、アレステットとシルフィはハンナ達に別れを告げ、こっそりとそこから抜け出した。

 

 

「⋯⋯あれ、あの二人、どこへ行くつもりでしょう?」

 

 二人の脇をすり抜け、ハリーとロンは人のいない廊下へと走り去った。

 その焦ったような表情に、アレステットは二人の目的を大体察した。

 そういえば、グリフィンドールのテーブルで今夜はいつもの喧嘩が見えなかったな、と。

 

「──コールフート、ちゃんと寮に戻れよ」

「⋯⋯えっ? ちょ、フォウリー⁉︎」

 

 慌てたように叫ぶシルフィを背に、アレステットは目くらまし呪文と認識阻害呪文を併用し、二人の後を追って駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 二人に追いついた頃には、既にトロールとの戦闘が始まってしまっていた。ロンがトロールの注意をハーマイオニーから引き剥がすように落ちてる物を投げつけていた。

 

 なぜ地下にいたはずのトロールがこの女子トイレまで一直線に来たかは甚だ疑問ではあるが、今はそれを気にしている場合ではない。

 ハリーがハーマイオニーを起こして逃げようとするが、彼女は突然のことに腰を抜かしてしまっている。トロールの意識はハーマイオニーからロンに移り、棍棒を振り上げんとしていた。

 

「プロテゴ、護れ!」

 

 突如として目の前に現れた透明な盾に顔をぶつけ、トロールはふらふらとその巨体を揺らして後退した。

 これならトロールを吹き飛ばしてもロン達に被害は出ない。

 

「フォウリー⁉︎」

 

 怒り狂ったトロールが、ハリー達の視線の先にいるアレステットを思いっきり睨みつける。おまえがやったのか、とでも言いたげな目だ。

 今度は標的をアレステットに変え、滅茶苦茶な足取りで棍棒を振り回しながらこちらに迫ってくる。

 

「ステューピファイ!」

 

 だが、トロールの動きはあまりに遅い。アレステットの元に来るよりも早く、黒い杖から真紅の閃光が放たれた。

 

 鮮血のように赤い光が唸りを上げながら直進し、トロールの胸を穿つ。着弾と同時に空気が圧されて衝撃波を撒き散らした。

トロールは勢いよく吹き飛び、地面で大きくバウンドして後ろに張られた魔法の壁に激突した。そのままうつ伏せに倒れ、ピクリとも動かなくなる。その巨体からはぷすぷすと焦げたような煙が吹き出していた。

 

 本来の麻痺呪文の範疇を超える威力だ。普段は抑えている魔法力を自重せずに解き放ったが故である。その結果は正しく瞬殺と言うべきものであった。

 

「ふぅ⋯⋯」

「フォウリー⋯⋯何でここに⋯⋯?」

 

 ハリーが困惑した表情で問いかけてくる。

 

 ハリーとロンは、アレステットにいい感情を向けていない。理由はごく単純なことで、スリザリン生と仲良くしてるのを見て裏切り者だと思っているから。おおよそのグリフィンドール生と同じである。

 寮内でも話すことはない。それどころか、これ見よがしに陰口を叩くこともあった。アレステットとて、二人に嫌われているのは気づいている筈だ。

 

 では、なぜ助けたのか。そんなことは言うまでもなかった。

 

「じゃあ逆に聞くが、なんでお前たちはグレンジャーを助けたんだ?」

 

 今度はハーマイオニーも加えて3人は顔を見合わせた。

 

 

 その時、ドタバタと忙しない足音が響いた。騒ぎを聞きつけて先生方がやってきたのだろう。ハリーとロンは誇らしそうに頬を緩めているが、アレステットとハーマイオニーは現状を正しく認識していた。

 

 トイレに飛び込んできたのはマグゴナガル、スネイプ、クィレルだった。スネイプが静かにトロールの様子を観察するのに対し、クィレルは腰を抜かして身体を震わせた。

 マグゴナガルは困惑したように倒れ臥すトロールと4人のグリフィンドール生の間で視線を彷徨わせた。

 

「一体全体貴方がたはどういうつもりなのですか」

 

 青白い顔で震えるように唇を動かす姿からはハリーたちの想像していたような賞賛の色はない。

 

「殺されなかったのは運がよかった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

「それは────」

 

 真実を告げれば、ハーマイオニーがなぜここにいたのか話さなければならない。それはハリーとロンが彼女に言ったことを話すということ。

 

 アレステットにはなかなかうまい言い訳を思いつかなかった。

 助け舟を出したのは、なんと当のハーマイオニーだった。

 

「マグゴナガル先生、聞いて下さい。三人は、私を探しにきたんです。

 私が、トロールを探しに来たんです。私⋯⋯一人でやっつけられると思いました──あの、本で読んでトロールについて色んなことを知っていたので」

 

 あまりの衝撃に、ロンが杖をからりと取り落とした。ハーマイオニーが、自分たちを庇うために先生に嘘をついているのだ。しかも、己を犠牲にしてまで。

 

「もし三人が私を見つけてくれなかったら、今頃死んでました。ハリーとロンがトロールの注意を引きつけてくれて、アレステットが魔法で倒してくれたんです」

 

 ハーマイオニーのその配慮を無駄にはできない。三人はさもその通りですと言わんばかりの顔を取り繕った。

 

「はあ、ミス・グレンジャー、なんと愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようなんて、そんなことをどうして考えたのですか?」

 

 がくりと項垂れるハーマイオニー。その様子に思わずハリーとロンが口を出そうとしたが、アレステットが視線で制した。

 

「ミス・グレンジャー、貴女には失望しました。グリフィンドールから5点減点です。怪我ないならグリフィンドール塔に帰った方が良いでしょう」

 

 トボトボとハーマイオニーが去っていく。その様子を見つめるマグゴナガルの瞳にはしかし、彼女が言うほど失望の色があるようには見えなかった。先の厳しいセリフは愛の鞭、とでも言うものなのだろう。

 

「先ほども言いましたが、あなた達は運がよかった。しかし、大人の野生のトロールと対決できる一年生はそうざらにいません。一人5点ずつあげましょう。ダンブルドア先生に報告しておきます。帰ってよろしい」

 

 そして何だかんだグリフィンドールには甘いのだった。

 スネイプが鬼の形相でこちらを見ていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 前を歩くハリーとロンが何事かを話しているのをぼんやりと眺めつつ、アレステットは思考する。

 

(トロールはどこから入ってきたんだ? ホグワーツの敷地内にトロールは生息していない筈だ。⋯⋯ってことは)

 

 誰かがトロールを招き入れた、ということだ。しかし一体誰が、何のために。動機は皆目検討もつかないが、状況的に騒動の犯人が内部犯なのはおそらく間違いないだろう。

 

「なあ、アレステット」

「ん、何だ?」

 

 チラチラと視線を送っていたハリーとロンが立ち止まり、アレステットに向き合った。いつになく神妙な顔つきに疑問符を浮かべる。

 

「その、僕たちキミのことを誤解してた。キミって意外といい奴なんだな」

「意外とは失礼なことを。俺はもともといい奴だ」

 

 ロンのむず痒くなるセリフに、茶化すようにして返す。照れ隠しだとでも思ったのか、二人は顔を見合わせて小さく笑った。

 

 

 談話室では、先ほどのパーティーの続きが行われていた。寮生たちは運び込まれてきた料理を食べ、思い思いに談笑を楽しんでいる。

「あ、アレステット、その⋯⋯⋯⋯ありがとね」

「気にするな」

 

 入り口の側に立っていたハーマイオニーの感謝のセリフに後ろ手をあげて応え、テーブルの上に置いてあった糖蜜パイを口にする。久々の本気の魔法行使に熱くなっていた身体から力が抜けていく気がした。

 

 

 

 それから、アレステットは時たま彼らと行動を共にするようになった。というよりも、アレステットが一人でいる時にトリオが彼の下にやってくることが増えた、と言うべきか。

 別に友達が欲しくてあんな行動に出たわけではなかったが、シルフィといる時に睨まれるようなこともなくなったのは都合が良かった。

 

 しかしなぜか肝心のシルフィから少し当たりが強くなったのかについては永遠の謎であった。

 

 




 
ホグワーツ始まって以来の天才
→一部の教師陣に警戒されているもよう。

浮遊呪文で黒コゲの羽
→フィネガンくんが親近感を覚えてそう。誰か彼が虚無の使い手設定の2次創作書いてくれないかな。

教科書を投げつける
→アイリーンへの嫌がらせだと周りのグリフィンドール生達は認識した。

甘党
→魔法界の食べ物って甘いものに偏ってますよね。

ファミリーネーム
→仲良くなった友達を名前で呼ぶのってかなり恥ずかしいですよね。

ダンブルドアがいる以上、死人は出ない
→秘密の部屋しかりダンブルドアは本当に裏で凄く暗躍してそう。

先輩の金髪イケメン
→自分は死の秘宝後の時間軸の書籍を読んでいないが、作者の友人曰く別の世界線だと死喰い人になるらしい。けど聞いた限りその流れがあまりにギャグじみているので信じられない。

ステューピファイ
→色々と魔法を駆使して動きを封じるのも考えたけど、やっぱ安全を期するなら魔法力任せの即時瞬殺。

当たりのきついシルフィ
→友人が他の友人とつるんでるの見ると面白くないですよね。それが親友ならなおさら。
 



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