~尾張 那古野城~
俺は巨漢の男と対面に座っている
三好優駿
関西と四国の殆どを手中に収めた三好家の四男
商人経由で噂話は聞いていた
明朝との貿易や四国の開発、堺と京を中心とした配下の商家を使い莫大な利益を皆に振り撒く素晴らしい方だと
ただ目の前の男はそんな噂の様な素晴らしいだけの人には見えなかった
数ヶ所ある切り傷、効率的に鍛えたであろう肉体、動作一つ一つに美しさがあり、詫び錆びを表す
そしてどこか達観し、狂気を含んだ瞳をしていた
「初めまして、三好四郎坊優駿と申します」
この男を見極めなければ
「私は転生者で、あなた達は転移者不思議ですよね」
石田殿と幾つか問答を行った後、私は転生や転移について話になった
なぜ私達は戦国に肉体があるかないかの違いは有れど来てしまったのか。
正直今は早く戻らないと四国が崩壊する可能性が高いので、早急に手を打たなければならないのに……
織田家
多数ある織田氏が尾張の覇権を握るべく蠢く現状
話からすると多数の転生者と絶対の忠誠を誓う親衛隊、一部の忠臣により、史実よりまともな状態で勢力下の産業の育成をしているらしい
(あと8年後信長の覚醒が始まる……この様子だと今川を倒したら、返す刀で美濃の斎藤氏も下せるだろう……1562年頃には決着すると仮定して、三好政権は現状でも崩壊の可能性がある……とりあえず余裕が出るまで金での繋がりを作っておき、自身が四国を自由に動かせる段階で同盟を組む形にしなければいけませんね)
石田殿は一応身の安全は保障しますと言っていましたが、信長の気分で殺されかねませんからね
「非公式でも良いので上総守と会話することはできませんか? 勿論私はこの非武装で良いので」
「確認してきます。ただ、会話できても長くはできませんよ」
「心得ています」
約2時間石田殿との会談後、信長本人への会談となる
天下人とはどのような人物なのだろうか
「……」
「……」
5メートル先に信長がいる
周りには信長の家臣達が座る
信長……日本史のターニングポイント、特異点とも言える硬直した時代という時計の針を一気に進めた人物
私はいつになく興奮していた
質問したくてしかたがない
彼の思考を知りたい
「上総守殿、貴殿は日ノ本を治められますか?」
「できぬわけ無かろう。余だぞ」
ざわつく評定の間
尾張の国の統一もまだな信長が断言した
家臣たちの顔色は青くなる
捕まっているとはいえ、三好政権の中枢に言いきったのだから……うん、面倒事は彼に投げよう
「私は天下を治める気は無いので日ノ本なら四国を頂ければ、関西の領土的利権は全て手放しましょう」
「まぁそれだけでは足りないでしょう。一筆書きます。これを今回の件の手打ちとして頂きたい」
~伊予 三好本城~
「金杯様!! 優駿様が!! ……大将が!! 帰還いたしました!!」
「父上が!! ……よし! 賭けに勝った!」
生存絶望とまで思われた三好優駿の帰還
城の中は大騒ぎとなった
家老と子供達が中心となり自身が不在の約4ヵ月見事職務を全うした
「ご迷惑をかけましたね。……ただいま戻りました。始めに松永兄弟殿と話し合いをしましょうか」
疲れも癒えぬまま伊予三好家の家長たる優駿は松永兄弟に爆弾を投げ込む
「帰参遂にご兄弟に兄上からこちらを渡すよう指示されました」
現在京の三好軍は京で応仁の乱の再現といえるの様相となっていた
東部を支えていた軍団の壊滅により北部の朝倉氏と西部の尼子を支えきれず、最終防衛線を突破され市街地戦に突入
混乱の為陣頭指揮をしている長慶兄様がこの様な手紙を逃走中の私に送ることなど不可能……なのですが、混乱の極み過ぎて私も商人経由で偶々知り得た情報を繋ぎ併せ、書類を偽装
松永兄弟に紀伊にて兵の再編及び援軍を送るよう指示
伊予三好家は今回の敗北の責任は追って指示を出すという内容だった
松永久秀は疑いながらも私の偽書を見抜くことができず、海を渡ることとなる
そして……
「讃岐、阿波を切り取る。出陣準備をしなさい」