新訳・とある時王のハイスクール   作:海神アグル

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後半で懐かしいシーンが出ます。



episode2

リアス達に宥められ、とりあえず今この場ではディオドラに対する殺意を引っ込めた俺は、リアスの後方で待機していた。

 

部室のテーブルにはリアスとディオドラ、顧問としてアザゼル先生と絵里さんも座っている。

 

朱乃がディオドラにお茶を淹れ、リアスの傍らに待機する。

 

ディオドラがアーシアに何かしてきたら、即殺そう。

 

そんな事を考えつつ、俺はジオウライドウォッチの外枠を無意味に回しまくって弄る。

 

「リアスさん。単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」

 

僧侶。

 

つまりアーシアのことだ。

 

「いやん、僕のことですかぁ!?」

 

「んなわけねぇだろ」

 

俺はツッコミながらギャスパーに軽くチョップを入れる。

 

なんのコントだよ?

 

しかし、こいつも随分逞しくなったもんだ。

 

それはともかく、ディオドラが欲しい『僧侶』はアーシアのことだ。

 

ディオドラが『僧侶』と言った瞬間から、アーシアは俺の手を強く握ってきた。

 

『嫌だ』っていう主張だろう。

 

「僕が望むリアスさんの眷属は―――『僧侶』アーシア・アルジェント」

 

ディオドラはそう言い放ち、アーシアの方に視線を向ける。

 

その笑みは嫌味なくらい爽やかなものだ。

 

「こちらが用意するのは…」

 

自分の眷属が乗っているであろうカタログらしきものを出そうとしたディオドラへ、リアスは間髪入れずに言う。

 

「だと思ったわ。けれど、ゴメンなさい。その下僕カタログみたいなものを見る前に言っておいた方がいいと思ったから先に言うわ。私はトレードをする気はないの。それはあなたの『僧侶』と釣り合わないとかそういうことではなくて、単純にアーシアを手放したくないから。―――私の大事な眷属悪魔だもの」

 

リアスはそう言い切った。

 

元々比べる気もトレードする気も無いからだ。

 

「それは能力?それとも彼女自身が魅力だから?」

 

ディオドラは淡々とリアスに訊いてくる。

 

本当にしつけぇな。

 

いい加減諦めろよ。

 

『相棒の言う通りだな』

 

ほら見ろ!

 

ドライグもこう仰ってるぞ!

 

「両方よ。私は、彼女を妹のように思っているわ」

 

「っ……部長さん!」

 

アーシアは手を口元にやり、瞳を潤ませていた。

 

リアスが『妹』と言ってくれたのが心底嬉しかったのだろう。

 

「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら?私は十分だと思うのだけれど。それに求婚したい女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風に私を介してアーシアを手に入れようとするのは解せないわ、ディオドラ。あなた、求婚の意味を理解しているのかしら?」

 

リアスは迫力のある笑顔で言いかえす。

 

最大限最慮しての言動だったが、キレているのは傍から見ても一目了然だ。

 

しかし、ディオドラは笑みを浮かべたままだ。

 

「わかりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」

 

ディオドラは立ち上がり当惑しているアーシアに近づく。

 

そしてアーシアの前へ立つと、その場で跪き、手を取ろうとした。

 

「アーシア。僕はキミを愛しているよ。大丈夫、運命は僕たちを裏切らない。この世のすべてが僕たちの間を否定しても、僕はそれを乗り越えてみせるよ」

 

そう言って、アーシアの手の甲にキスをしようとする。

 

 

 

 

 

 

ガシ!

 

 

 

 

 

 

俺はディオドラの手を掴み、無理矢理立ち上がらせる。

 

「悪いな。アーシアは嫌がってるんだ。お引き取り願うぜ」

 

俺が手を掴みながらそう言う。

 

すると、ディオドラは爽やかな笑みを浮かべながら言った。

 

「離してくれないか?薄汚いドラゴンにして胡散臭い仮面ライダーに触れられるのはちょっとね」

 

とうとう本性を出しやがったな、こいつ。

 

「本性出してくれてありがとー。これで心置きなくテメェを殺れる」

 

そう言った瞬間、パンッ!! と部室内に何かを叩く破裂音が聞こえた。

 

見てみると、そこにはディオドラの頬を平手打ちしたアーシアの姿があり、ディオドラは殴られた頬を抑えていた。

 

そして、アーシアは俺に抱きつき叫ぶように言った。

 

「そんなことを言わないでください!」

 

これには俺とレイヴェル以外の全員が驚いていた。

 

まさかアーシアが誰かを叩くなんて思ってもみなかったからだろう。

 

「なるほど。……では、こうしようかな。次のゲーム、僕は…」

 

「いい加減気づけよ。アーシアの顔を見てもわからねぇのか?アーシアはお前の所にはいかない。何があってもな」

 

ディオドラの言葉を遮って俺は言った。

 

「大方、ゲームに勝てたら、自分の愛に応えて欲しいとか言うつもりだったんだろ?バカだろお前。どれもこれもアーシアの気持ちを無視して一方的にやってるだけじゃねぇか。そんなのはただのストーカーだ」

 

「……僕をバカにしてるのか?」

 

「ああ、してるね……いや、殺したい程憎んでると言った方が正しいか。なぁ、シスターをレイプするのが大好きな変態の裏切り者さん?」

 

そう言った瞬間、部室内はザワザワとした空気に包まれ、ディオドラに至っては爽やかな笑みを消して、最大の殺気と憤怒を俺にぶつけて来ている。

 

けど温い。

 

温すぎる!

 

俺はダメ押しとばかりに言う。

 

「丁度いい。お前みたいなアーシアに害をなす者はここで吊るし上げてやる。リアス、絵里さん、アザゼル先生、それに他の皆も聞いてくれ。こいつは禍の団と繋がってる裏切り者だ」

 

『っ……!?』

 

するとまたもや部室内は先程以上にザワザワとした空気に包まれ、ディオドラはアタフタと顔に焦りを浮かべる。

 

リアス、絵里さん、アザゼル先生が俺に確認してくる。

 

「何ですって!?」

 

「一誠君、それは本当なのかしら?」

 

「イッセー、詳しい話を聞かせろ」

 

「いいですよ」

 

そして話そうとしたら、ディオドラが割って入ってくる。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!たかが下級悪魔が言う世迷い言を信じるって言うのかい!?」

 

「少なくとも貴方より信用できるわ」

 

しかしそれをリアスがバッサリ切り捨てる。

 

悔しそうに歯噛みするディオドラを尻目に、俺は話す。

 

「先ずこいつはそれほど強い悪魔じゃないのに、アガレスを圧倒的力で倒した。その謎は簡単。オーフィスの蛇を貰ったからですよ。そしてこいつが禍の団にいる理由は、己の欲望を満たす為。アーシアとの間に起きた事件だってこいつの自作自演なんだよ」

 

すると図星なのか、ディオドラはものすごい形相で俺を睨んでくる。

 

しかしアーシアがいる手前、下手に攻撃を仕掛けられない。

 

そうすればアーシアに決定的に嫌われ、目的が達成できなくなるもんな。

 

哀れだな~オイww。

 

一方でリアスやアーシア達はディオドラを疑惑の目で見つめ、それにたじろいだディオドラは醜く言い訳をする。

 

「デタラメだ……全部こいつのデタラメだ!」

 

しかしアーシア達からの疑惑の目は解けない。

 

そして絵里さんが決定的な質問をする。

 

「そう言えば、アーシアさんからその辺りの話を聞いてずっと疑問に思ってたのだけど、教会は悪魔にとって敵地。これは常識。それなのに、その教会のそばで大怪我を負って倒れていたなんて、ディオドラさん。あなたは当時教会の近くで何をしていたの?」

 

ディオドラがピクリと硬直した。

 

「私は、天使かエクソシスト、堕天使の攻撃を受けたものかと思っていたわ。だけど、天界、堕天使陣営のどちらに問い合わせても、その当時にアーシアさんのいた教会のある土地で悪魔との交戦があったなんて記録は無かった。そうですよね、アザゼル先生」

 

「ああ。はぐれエクソシストの記録も漁ったが、そっちにもな。第一、悪魔の上級貴族の次期当主を攻撃したなんて大事が起きたら、俺の耳に入らんわけがない。てっきり天界側の仕業だと思っていたんだが……」

 

絵里さんの発言により、完全にディオドラは針のむしろ状態になっていた。

 

リアスが言う。

 

「そういえば……。私もアーシアの助けた悪魔が貴方だなんてこと、駅のホームで初めて知ったわ。ディオドラ、あなたはそのとき教会の近くで何をしていて、誰に攻撃されたのかしら?あなた自身は、当然知っているわよね」

 

「それは……少し込み入った事情があってね……」

 

どもるディオドラに、絵里さんが畳み掛ける。

 

「言えないのかしら?これはアーシアさんにも関わりのあることなのに、彼女にも?やっぱり……一誠君の言う通り自作自演なのかしら?」

 

「そんな事あるわけ無いだろう!! とにかく、これで失礼させてもらおう!」

 

ディオドラは激昂した後、そそくさと去っていった。

 

だがディオドラ、お前のその行動は自分で黒だと言ってるようなものだぜ?

 

現にリアスが、

 

「ディオドラ、どうにも怪しいわね。これはいよいよ警戒した方がいいかも」

 

と言ってるくらいなんだからな。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ディオドラが部室に来た日の夜。

 

俺は近くのコンビニに来ていたのだが、そこで偶然にも冬麻と出会った。

 

だがそこは日常的に不幸な冬麻。

 

財布を何処かに落としたらしく、商品を買えなくてアタフタしていた。

 

仕方ないので俺が代わりに立て替え、今は近くの公園のベンチに座って2人仲良くアイスを食べていた。

 

「いや~、助かったよイッセー。感謝するぜ」

 

「お前は相変わらず不幸に愛されてるな」

 

そう軽口を叩きつつ、俺達はアイスにかぶりつく。

 

「そういや、最近レイナーレはどうだ?」

 

不意に気になった質問をすると、冬麻は普通のトーンで答える。

 

「う~ん……まぁよくやってくれてるよ。家事は今まで親父がやってくれてたけど、今は長期不在で疎かになりがちだった。だけどレイナーレが来てからはいい食事と暮らしをさせて貰ってるよ。後、あいつ中々勉強教えるの得意なんだよ」

 

「へえ~」

 

そっか……レイナーレも変わったもんだな。

 

出会った頃は自分の欲望ばっかり優先してた悪い女だったのに、今は立派なメイドか。

 

冬麻のお説教が響いたおかげだな。

 

しかしここで俺は2つの気配に気づいた。

 

なんかこそこそ隠れて見てるな。

 

多分ヴァーリかもしれないし、声かけてみるか。

 

「そこで何してんだよ、ヴァーリ、美猴」

 

そして闇夜から姿を現したのはラフな格好の男。

 

「やっぱりバレてるみたいだぜぃ、ヴァーリ。おひさ、ジオウ」

 

美侯のその声を聞き、もう一人の青年が暗闇から現れる。

 

「二ヶ月ぶりだな、緋村一誠」

 

白いシャツ姿のヴァーリが出てきた。

 

冬麻は「よく気づいたな?」と俺に問いかけつつ、ヴァーリ達を警戒する。

 

「ガタックもいるのか。まぁいい。今回は戦いに来た訳じゃない。1つ忠告をね?」

 

多分ディオドラの事だな。

 

「……話してくれ」

 

「レーティングゲームをするそうだな?相手はアスタロト家の次期当主だと聞いた」

 

「はぁ……やっぱりそれか」

 

「フッ……やはり未来の事を知っているだけはあるな。なら話は早い。簡潔に言うと、奴には気を付けろ」

 

「おう、わざわざありがとな」

 

そう言うとヴァーリは目をパチクリさせた。

 

そんなに予想外な反応するなよ。

 

すると冬麻が俺に聞いてくる。

 

「なんだ?そのレーティングゲームで戦う奴はそんなにヤバイのか?」

 

「ヤバイなんてもんじゃない。次戦う奴は禍の団に下った奴だよ」

 

そう言うと、冬麻は何かを考えるように顎に指を当てる。

 

あ、こりゃ首を突っ込む気だな?

 

何処までもヒーロー気質な冬麻ならやりかねない。

 

そう思ってると、ヴァーリがこちらに背を向けるのが見えたので、呼び止めてある物を投げ渡す。

 

「ヴァーリ!!」

 

「むっ?」

 

「受け取れ!」

 

それは『ゲンムライドウォッチ』だ。

 

「これは……?」

 

「一応忠告してくれた礼だよ」

 

マジマジとゲンムウォッチを見るヴァーリにそう答える。

 

ヴァーリはそれを聞くとフッと笑い、「本当に君は面白い。一応礼は言っとこう」と言って、美猴と共に姿を消した。

 

 

一誠sideoff

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎side

 

 

氷城冬麻は一誠と別れると、すぐに自宅に帰った。

 

「ただいま~」

 

ドアを開けて帰ってきた事を伝えると、氷城家のメイドに再就職した堕天使・レイナーレが出迎えに来た。

 

「お帰り。遅かったじゃない」

 

「まぁ、ちょっとな……」

 

何処と無く夫婦にも、姉弟にも見える会話をする2人。

 

「母さんは?」

 

「助っ人呼んで新しい動画の作成中」

 

レイナーレがリビングに向かって親指を指すので、冬麻はそちらに歩いて行きチラ見する。

 

そこでは……。

 

 

 

「闇の炎に抱かれて眠りなさい。はぁい、リトルデーモンの皆。堕天使ヨハネよ。今回は特別にヨハネの上級リトルデーモンを呼んでるわ。ほら、挨拶なさい」

 

「ヨハネ様のリトルデーモン、花丸ずら~。よろしくずら~」

 

「お、同じくヨハネ様のリトルデーモン、ルビィです。一番小さい悪魔、可愛がってね!」

 

 

 

いい年した見た目20代前半の母親達がノリノリで痛いポーズを決めていた。

 

それを見た冬麻はそっと見なかったことにして、レイナーレに向き直る。

 

「ところでレイナーレ。今度イッセー達のゲームがあるみたいなんだが、お前は見に行くのか?」

 

「ねぇ、あの状況になんか一言言いなさいよ。スルーしてんじゃないわよ」

 

一通りツッコミを入れると、レイナーレは深く溜め息を吐く。

 

「まぁ、アザゼル様のお付きで行くわよ。皮肉よね。アザゼル様の為にと動いてた時は、何もかも上手くいかなかったのに………あんたに説教されて、ここで働くようになってから全てが上手くいくようになったんだから」

 

自嘲するレイナーレ。

 

確かにアザゼルの為にと嘯き、自分を高める為に人を一人殺めかけたレイナーレ。

 

しかしその計画は目の前の少年を含んだ者達に阻まれ、敢えなく殺されそうな所を冬麻の便宜もあり、ここで住み込みメイドをすることで逃れた。

 

が、それが転機だったのか、三大和平には思いがけず引っ張られ、その後はアザゼルのお付きに任命され、駒王町を守る堕天使メンバーにも任命された。

 

今までの必死の背徳行為は何だったのかと、レイナーレは時折思い出しては自嘲に走る事が多くなっていた。

 

「レイナーレ……」

 

「だから……あんたには感謝してる。……ありがと」

 

頬を気恥ずかしさで赤く染め、そっぽを向いて感謝するレイナーレに冬麻は微笑ましく笑うと、

 

 

 

 

 

「イッセーが出るゲームで何か起こるみたいだから、俺も連れてってくれ」

 

「あんた、私の感謝返してよ」

 

 

 

 

感動的なその空気(幻想)を見事にブチ殺したのだった。

 

 

 


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