青春の生徒会日誌   作:深き森のペンギン

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少し前に投稿した小説の作り直しになります。


第1話 俺、生徒会に入ります。

いつもと変わらないホームルーム、いつもとあまり変わらない担任の話、いつもとあまり変わらないこの眠気。

 

正直、俺は代わり映えしない日常に退屈している。

授業中、俺は空を見上げて呟いた。

 

「ああ、暇」

 

「そうか、暇ならこの問題を解いて貰おうか?」

 

「うわぁ!ってなんだ先生か」

 

「なんだじゃないだろ、神代。放課後、職員室に来い」

 

「はーい」

 

めんどくさ。

俺の貴重な放課後を返せよ。

今日がNFOのイベント最終日なのに、こんな下らない用事で貴重な時間を奪われたくないんだ。

 

そして、チャイムが鳴る。

俺含め多くの生徒達は授業から解放されて何人も脱力している。

 

3年生が卒業し、少し人の数が減った校舎の中を歩く。

階の奥にポツリと置かれている自販機に百円玉を一枚投入する。

 

俺はガタリと無機質な音を立てて出てきたココアをとり、おつりを取り出す。

まだ寒さが少し残っていて、少し冷えた俺の手をココアの熱がじわじわと暖める。

 

フタを開けて少しずつココアを口に含んでいく。

体の芯がほぐれていく気がする。

だが、心はあまり解れた気はしなかった。

 

視線を感じて、後ろを向くと女子生徒が立っていた。

その女子生徒は少し困り気味にこちらを見ていた。

どうやら、邪魔だったらしい。

 

俺は少し頭を下げてから、すぐに自販機の側を離れた。

 

それにしても、うちの学校って結構女子がかわいい。

どの学年にも10人ほどかわいい人がいる。

 

さっきの女子も結構かわいかった。

彼女は確か同じクラスだった気がする。

 

名前は、市ヶ谷だったっけ。

前に男子生徒に告白されていたのを見たことがある。

 

まあ、そんなことはどうでもいいけど。

どうせ俺と関わることなんて、一切無いだろうし。

 

教室の前まで戻ってきて、教室の様子を伺う。

案の定、俺の席が見知らぬ女子に占領されていた。

 

はぁ、どいてくださいって言うのもめんどくさいし、また自販機戻るか。

 

こうして俺はまた自販機の前まで戻ろうと踵を返した。

すると、誰かがポスターを貼っている姿が目に入ってきた。

 

黒髪を長く伸ばした美人だ。

そして制服の上からでもわかる核兵器は男ならば自然と目が行ってしまうだろう。

 

そして、その外見。

俺の好みのタイプにどストライクだった。

 

やばい、一目惚れしたかも。

俺は一旦自分を落ち着かせるためにトイレに向かった。

蛇口から出てくる水を掬って顔にぶっかける。

古典的な顔の冷し方だが、俺の頬の熱は増していくばかりだ。

 

結局、一目惚れした美人の名前も、貼っていたポスターの内容も、わからず仕舞いだった。

 

それから、授業中ずっとその人のことが頭から離れなかった。

昼休み。

 

多くの生徒にとって最も心待ちにしていたであろう時間がやって来た。

俺は屋上で朝購買で買ったメロンパンを齧る。

 

可もなく不可もなく、といった感じのメロンパンをベンチに寝転びながら食べる。

何にも遮られずに向かってくる太陽の光が心地よい。

 

その時、屋上のドアが勢いよく開く。

そして、何人かの女子生徒が屋上に入ってきた。

 

女子生徒達は俺の場所とは少し離れた所で皆で座って弁当を広げ始めた。

なんだか、見ていて悲しくなってきた。

本来、昼休みは友人と弁当を食べるのがセオリーだろう。

 

だが、俺の昼休みは一人でメロンパン齧って終了。

いかに俺が充実していないのかがすぐにわかる。

 

少し屋上に居辛くなってきたので図書室にでも行こう。

俺は図書室に入った。

そして本棚から本を取ろうと手を伸ばすと、誰かの手に当たった。

 

「あ、すみません」

 

「こちらこそ……すみません」

 

え、待って。

幻覚じゃあないよな。

 

さっきの人だ。

 

お互い無言になり、少し気まずい空気になる。

 

「あ、あの……先、どうぞ……」

 

「いえいえ、先輩が先にどうぞ。俺はもう行きますので」

 

俺は逃げるように図書室を出た。

 

「はぁ、はぁ……、まったく、心臓に悪いぜ」

 

その後、結局放課後まで俺の心臓はバクバク鳴り続けていた。

 

さて、職員室行ってこよ。

さっさと帰れるように頑張ろうっと。

 

「神代、お前最近浮わついてるぞ。何かあったのか?」

 

「いえ、特に何も。むしろ無さすぎて最近おかしいです」

 

「そうか。それじゃあ、生徒会に入らないか?神代。今生徒会のメンバーを募集してるんだがだれも入ってこないんだ」

 

「やめときます」

 

「それじゃあ、今日の仕事を手伝ってくれ。今日の授業の罰だ」

 

俺の貴重な放課後が丸潰れだ。

めんどくさ。

 

「は~い」

 

俺は先生と生徒会室に向かった。

 

「お前ら、今日は助っ人が入った。神代、自己紹介しろ」

 

「神代雅です。今日はよろしくお願いします」

 

「神代、今日は市ヶ谷の仕事を手伝ってくれ」

 

「わかりました」

 

はぁ、何が関わることなんて無い、だよ。

盛大にフラグを回収しちまったぜ。

 

「そ、その、神代君、よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく。俺は何をすればいいんだ?」

 

それから、仕事の手順を教えて貰ってすぐさま終わらせた。

その作業スピードに、先生まで驚いていた。

 

「神代、生徒会に入らないか?」

 

「結構です」

 

すると、生徒会室のドアが開いた。

 

「お仕事……終わりました」

 

またあんたか。

今日はフラグを回収しまくってる気がする。

まあ、このフラグ回収は悪い気はしないんだけど、心臓に悪い。

 

「白金、早かったな」

 

「今日お休みの部活が多くて……。続きは明日になりますけど」

 

「おう。それじゃあ、明日も頼んだぞ」

 

この人も生徒会のメンバーだったのか。

なら、俺に断る理由は無い。

 

「先生、気が変わりました。俺、生徒会に入ります」

 

「本当か!?ありがとな、神代」

 

すると、突然俺の携帯が鳴り始めた。

 

「すみません、一旦外します」

 

俺は生徒会室を出て、電話に出た。

 

「神代、雅さんですか?お父さんが……」

 

え?




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