仮面ノリダーVSシンデレラガールズ   作:カイバーマン。

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狡猾、ぴにゃ男の卑劣な罠

その時、奴等は突然現れた

 

 

喫茶店アミーゴで泣き崩れる木梨猛をしばらく一人にさせてやろうと思った渋谷凛は、友人の本田未央と共に店の買い出しに出掛けていた。

 

「そっかー、たけさんも青春してたんだねー、けど最終的にタイ人に……人生上手くいかないモンだね~」

 

「未央、今度から猛さんの前で色恋話はNGだよ、あの人ああなったら三日は意地でも泣き続けるから」

 

「み、三日は流石に長すぎない……? てか意地で泣き続けるってどういう事?」

 

買い出しを終えて軽く雑談しながら帰路に着く凛と未央、しかしそんな彼女達に背後からゆっくりと大きなワンボックスカーが車道を走って近づいて来たのだ。

 

「あれ? ねえしぶりん、さっきからあの車、私達の後を追ってきてるみたいじゃない?」

 

「私もさっきから怪しいと思ってた……なんだろ気味が悪い、さっさとお店に帰ろう」

 

窓も見えない仕様になっているし強い警戒心を持った未央と凛は、やや駆け足でその車から遠ざかろうとするも……

 

「見つけたぞー!」

 

「「うわッ!」」

 

突如としてその車の後部座席がガチャと開き、中から現れた異様な格好をした大男が二人に向かって大声を上げる。

 

凛と未央が驚くと、その謎の男は薄く笑みを浮かべながら車から出ようと身を乗り出して……

 

「あ、え? ちょっと出れないんだけどコレ! おいちょっとー! 引っ張って引っ張って!」

 

「「え?」」

 

巨大な頭の部分が車の天井に引っ掛かり、上手く車から出れないことに男が慌てて凛と未央に叫ぶと

 

彼女達は律儀に従って彼の両手を取って引っ張り始めた。

 

「こ、こうですか?」

 

「駄目駄目もっと! 力出してもっと! 思いっきり引っ張らないと出れないから!」

 

「ふん!」

 

「痛い痛い痛い! お前は強いんだよバカ! もうちょっと優しく引っ張れって!」

 

「いたッ! ちょっと! 頭殴る事無いでしょ!?」

 

「うっさい! 早く出せちゃんみお!」

 

凛には強く力を入れと言い、未央には強過ぎだと頭をパカンと叩き、助けて貰ってるクセにやたらと偉そうな男ではあるが、しばらくしてやっとポンと車から飛び出す事に成功した。

 

「よーしやっと抜けたー、いやいやどうもすみませんねーご協力していただきありがとございますホント」

 

「いえ……」

 

「という訳で……はい捕まえたぁ!」

 

「きゃあ!」

 

「しぶりん!」

 

「ぴにゃにゃにゃにゃ!」

 

しかし男はニコニコしながら凛にお礼を言ったと思いきや、次の瞬間豹変して彼女を両腕で掴んで強引に拉致。

 

これには未央も慌てて助けに入ろうとするが……

 

「お前はチェンジ!」

 

「あいた!」

 

お前は必要無いと男は容赦なく未央にアッパーカットをお見舞い。

 

これには軽くアゴを痛めながら彼女も流石に

 

「さっきからなんか明らか私だけ扱い悪くない!?」

 

「知らねぇよバカ! 8代目シンデレラガールズになれたからって浮かれてんじゃねぇ!」

 

「べ、別に浮かれてないよ! でも知っててくれてありがとう!」

 

反論とお礼を同時に叫ぶおかしな未央に向かって、男は凛を捕まえながら改めて話を切り出した。

 

「いいかよく聞けぴにゃ、俺様はぴにゃ男……! この娘を返して欲しくばお前達がよく知っている木梨猛という男に伝えるぴにゃ、今から30分後に346プロの本社にやってこい、さもないとお前の大事な娘を改造して……グヘヘヘヘヘ!」

 

「し、しぶりんをどうするつもりだ!」

 

いやらしく下衆に笑う男、怪人ぴにゃ男に未央が親友に何をされるのかと恐怖していると、ぴにゃ男は少し間を置くと邪悪な笑みを浮かべながら

 

「右利きから左利きにしてやる……!」

 

「お、思ったより地味……」

 

「なんだと? 結構私生活不便なんだぞ、サウスポーは、アレだぞ、小さいバッティングセンターとかだと右打席しか無いとか結構あるんだぞ」

 

「そうなんだ、今度美嘉姉に聞いてみよ……左利きだって言ってたし」

 

改造と聞いて一体どんな恐ろしい事をやるのかと思いきや、単に利き腕を変えるだけと聞いてガクッと肩を揺らす未央。

 

そんな彼女に向かってぴにゃ男に捕まっている凛が必死な様子で

 

「駄目だよ未央! コイツきっと私を餌にして猛さんを殺そうとしてるんだよ! きっとコイツ等、ずっと昔から猛さんの命を狙っている悪の秘密組織だよ!」

 

「悪の秘密組織!? それってまさか、私達が生まれる前にあったとかいうあの……いっつ!」

 

「つべこべ言ってないでさっさと行けちゃんみお!」

 

何やら重要そうな会話をしている彼女達であったが、尺がもったいないとぴにゃ男が半笑いを浮かべながらまた未央をぶっ叩く。

 

「早く伝えてこいよ! どんだけ引っ張るんだよちゃんみお~!」

 

「あ、あのホント……叩き過ぎだから! アイドルそんな叩くもんじゃないからね!」

 

「いいから! ほら早く! 走れちゃんみお!」

 

「わかったから叩かないでよも~!」

 

ぴにゃ男にせかされて思わず自分も苦笑してしまう未央であったが、すぐに猛のいるアミーゴへと向かった。

 

「ぴにゃにゃにゃにゃ、もう少しだ、遂に我等ジョッカーの悲願が達成する時が来たのだ……!」

 

そして去っていく彼女を見送りながらぴにゃ男は一人ほくそ笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方そんな事が起きているのも露知れず

 

猛はまだ喫茶店アミーゴでカウンターにうつ伏せになって泣いていた。

 

「マリナさ~ん! どうしてなんだよ~!」

 

「たけさんたけさんたけさ~~~ん!」

 

しかしそこへ乱暴にドアを開いて、必死の形相で未央が駆けつけて来た

 

「聞いてたけさん! しぶりんがたいへ……!」

 

「マリナさぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

「いやマリナさんじゃなくてしぶりんが変な怪人に捕まって……!」

 

「夫婦でCM出やがってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「ダ、ダメだ……しぶりんの言う通り意地でも泣き続ける気だこの人……」

 

すぐにでも凛の事を伝えなければいけないのに、泣きながら絶叫を上げるだけで聞いてもくれない猛。

 

かくなる上はと、未央が繰り出した最終手段は……

 

「あ! マリナさんを奪ったタイ人!」

 

「なぁにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

咄嗟にドアの方を指さして未央が口から出まかせで叫んでみると、その瞬間超反応で泣くのを止めて鬼の形相で振り返る猛。

 

しかし当然、そこには愛すべきマリナさんを奪った男はいない。

 

「っていねぇじゃねぇか! あの野郎! さてはネプリーグの収録に逃げやがったな! 今度ゲストで出てやる!」

 

「猛さん、しぶりんが大変だよ! しぶりんがぴにゃ男とかいう変な怪人に誘拐されたの!」

 

「なぁにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

哀しみよりも怒りが勝ってしまっているみたいだが、ようやく泣き止んでくれた彼に未央がすぐ様凛の事を再び伝えると、やっと聞こえたのかさっきと全く同じ反応で動転する猛。

 

「凛ちゃんが連れ去られただって! しかも誘拐犯は怪人だと!? まさかそいつは……ジョッカー!」

 

「そうかもしれないんだけど……でもジョッカーってもう随分昔に壊滅したんじゃないの?」

 

「まさか再び奴等が復活したというのか……! おのれジョッカー! スペシャルだからって凛ちゃんを攫うとは……! 絶対に許せん!」

 

かつて自ら滅ぼした筈のジョッカーが再び蘇った事に激しい憤りを覚える猛。

 

やはり自分は奴等と戦い続ける運命にあるようだ……

 

「未央ちゃん! その凛ちゃんを攫った怪人がどこへ行ったかわかるかい!」

 

「確か346プロの本社で待ってるって!」

 

「346プロ!? あの沢山のアイドルが所属している大企業じゃないか……どうして奴等がそこに……」

 

集合場所を聞いて猛は何か裏があるのではと思いながらも、とりあえず急がねばと店から出ようとするが、そこへ未央から呼び止められた。

 

「あと! 30分以内に猛さんが来なかったらしぶりんを左利きに改造するって!」

 

「地味だな~!」

 

「やっぱ地味だよね!」

 

「どうせなら両利きにさせろよな~! ピアノ弾く時とか便利なんだよ~!」

 

「いやそういう所じゃないと思うよ!」

 

未央といつものボケとツッコミを終えると、猛は店のドアを開けて外へと駆り出すのであった。

 

しかし

 

「あーーーしまったーーー!」

 

「今度はどうしたのたけさん!?」

 

「バイク車検に出したままだったー!」

 

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

なんという事であろう、いつもは店の外に置かれていた長年愛用しているバイクが今はどこにも見当たらない。

 

何故なら猛が点検に出してしまっていたからだ。最近すっかりオンボロになってしまい車検審査が通るのも時間がかかるのである。

 

「くっそぉここからじゃ走っても30分じゃ間に合わないぞ! 一体どうしたら……あ!」

 

このままでは絶体絶命だと思ったのも束の間、ふと周りを見渡すと……

 

ちょっといかついピンク色のバイクがあるではないか、しかもキーが差しっぱなし

 

「いよっしゃあ! コイツを借りれば346プロまでひとっ飛びだぁ!!」

 

「い、いいのたけさん!? それ明らかに怖い人が使ってそうなバイクだよ! 勝手に借りちゃマズイんじゃない!?」

 

「大丈夫大丈夫! パパッと行ってパパッと凛ちゃん取り返してパパっと怪人倒してパパッと戻しとけばいいんだから!」

 

勝手に乗って大丈夫なのかと心配する未央をよそに、楽観的な猛はなりふり構わずそのバイクの上に颯爽と跨る。

 

しかしそこへ

 

「くおらぁぁぁぁ!! てんめぇアタシのバイクになに乗ってんだゴラァァ!!」

 

「たけさんヤバい! バイクの持ち主もう戻ってきちゃった! しかもかなりのヤンキーだ!」

 

「ホントだ! しかも古い! スケバン!」

 

キーを回して早速出発しようとしたその時、背後から猛スピード駆け寄って来る柄の悪い姉ちゃんが、物凄く怒りながら猛に詰め寄った。

 

彼女は向井拓海、この辺じゃ名の知れたちょっと古めのヤンキーである、結構義理堅い。

 

「おいおっさん! 人のバイクに勝手に乗ってんじゃねぇよ! 返せ!」

 

「あの! いた! すみませんちょっと!! いた! ちょっと貸してくださいすぐ返しますんで!」

 

「ふざけんじゃねぇ! 返せつってんだろオイ!!」

 

「いやもうホントすぐ返すんで! 勘弁して下さい! 誰か! おやじ狩り! おやじ狩りされてるんで助けて下さ~い!」

 

「ってオイ! 人聞きの悪い事言ってんじゃねぇよ!!!」

 

勝手に人のバイクをパクろうとしている猛を拓海は執拗に彼のローを攻めながら無理矢理下ろそうとするも

 

猛は猛で通行人に向かってややこしくなる事を叫びながら激しく抵抗する。

 

おかげで猛は彼女との不毛の争いのおかげで、この場で15分費やしてしまうのであった……

 

「ま、間に合うのかなぁ……」

 

不安になっている未央をよそに、猛と拓海は争い続ける光景をしばらく彼女に見せつけるのであった。

 

「返せ!」

 

「ヤダ!」

 

「返せったら!」

 

「誰か助けてぇ! ヤンキーにおやじ狩りされるぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして約束の時間になってしまった頃、ここは346プロ本社、敷地内。

 

多くの社員やアイドルが見受けられる中、一際浮いた格好をしているぴにゃ男がしきりに時間を確認していた。

 

「おっそいなー、約束の時間10分前に来いよな普通ー、俺この後ゴルフなんだから早くして欲しいんだけど」

 

そんな事をぼやきながらぴにゃ男はゴルフスイングするポーズを取りつつ、歩いていたアイドルに握手を求められながら、時には一緒に写真を撮ってあげながら時間を過ごしていると、そこへ

 

「うおぉぉぉぉぉジョッカー!」

 

本社入口の門から豪快なバイク音と共に、木梨猛が大声を上げながらようやくやって来た。

 

ヤンキー姉ちゃんのバイクの後ろに乗せてもらった状態で

 

ヤンキー姉ちゃん、向井拓海がぴにゃ男の前で乱暴にブレーキを踏んで止めると、木梨猛がすぐにバイクから降りた。

 

「あざーす姐さん! マジあざーす!」

 

「てめぇ人助けだったならさっさと言えよな! 頼めば乗せてってやるんだから! じゃあな!」

 

「しゃーせんした! 次回から気を付けやーす! おつかれっしたー!」

 

ここまでわざわざ乗せてってくれた拓海に猛はすっかり舎弟の様な感じでお礼を言いながら何度も頭を下げ終えると、彼女はまたバイクを走らせて何処へと行ってしまうのであった。

 

そして残された猛にさっきのやり取りを無言で見つめていたぴにゃ男はキョトンとした様子で

 

「え、なに? 連れて来てもらったの? スケバンの女の子に?」

 

「今俺、バイク車検に出してるんで……」

 

「あ、そう……まあ別に良いんだけど来てくれたんだし……いやぁでももうちょっとカッコよく来て欲しかったなぁ」

 

正義の味方としてそれでいいのかな~と、怪人側のぴにゃ男が腑に落ちない様子でいるのをよそに

 

猛は仕切り直しするかのようにバッと彼に向かって指を突きつける。

 

「よーし約束通り来てやったぞジョッカー! しかし凛ちゃんが見当たらないぞ! どこへやった!」

 

「ぴにゃにゃにゃにゃ! よくぞ地獄に舞い戻って来たな木梨猛! 俺様はぴにゃ男! 貴様を抹殺する為にしまむー大佐が差し向けた超改造人間だぴにゃ!」

 

変な笑い声を上げながらぴにゃ男は軽く自己紹介を済ませた後、体をのけ反らせて本社ビルを短い腕で指す。

 

「お前の大切な小娘がどこにいる教えてやるぴにゃ! 今あの娘はこのビルのどこかの部屋に閉じ込められている!」

 

「なんだと! こんな大きな場所の中で、一体どこにいるというんだ……!」

 

「もし娘を2時間以内に見つけられたらちゃんと返してあげるぴにゃ! けど間に合わなかったら……」

 

そこでぴにゃ男はニヤリと笑みを浮かべ

 

「あの娘の体に取り付けた時限式爆弾が起動し、このビルもろとも木っ端みじんだぴにゃぁ……!」

 

「きっさまぁ! 凛ちゃんだけじゃなくここにいる人達をも巻き込むつもりかぁ! 許せん!」

 

何という恐ろしい事を企んでいたのだろう、最初からこのぴにゃ男の狙いはコレだったのだ。

 

今もなお絶好調で、多くのファンがいるアイドル達

 

そんな彼女達が中にいるこの本社ビルを爆破せば当然彼女達が犠牲となる。そうなればファン達は絶望の淵に陥り、生きる気力を失くし当然仕事も出来なくなってしまう、そうなればつまり、日本全土の景気を下がってしまうのだ。

 

「お前だけは絶対にぶっ飛ばすぞぉ!! 後で覚悟しておけ!」

 

「ぴにゃにゃにゃ! 俺の相手をするよりもやるべき事があるんじゃないかな木梨猛!」

 

「わかってる! 一刻も早くこのビルから凛ちゃんを探さねば!」

 

この国の為に、人々に希望を与えて明るく照らすアイドル達を誰一人失う訳にはいかない

 

そして何より猛にとって凛は大切な家族の一員だ、絶対に救い出さねば

 

「うおぉぉぉぉぉ!! 待っていろ凛ちゃん! 猛! いっきまーす!」

 

喉の奥から熱い咆哮を上げながら男・猛は脇目も振らずに本社ビルへと突っこんで行くのであった。

 

「おはようございまーす! おはようっす! おつかれーっす! あ! 君前にテレビで見た事あるよ! 頑張って!」

 

律儀に出勤している社員やアイドル達に挨拶しながら

 

「クックック……! 木梨猛、残念ながらお前がかりに時間以内に娘がいる部屋を見つけたとしても、助け出す事は出来ないだろうさ……!」

 

そしてビルの入り口から中へと駆け込んでいく猛を見送りながら、ぴにゃ男はまだなにか隠している事があるらしく、一人静かに笑みを浮かべていた。

 

「何故ならあの娘のいる部屋には……!」

 

 

 

 

 

「このぴにゃ男の相方、ブラックぴにゃ男がいるのだからな!! ぴにゃにゃにゃにゃにゃ!!」

 

果たして、恐るべき策略家・ぴにゃ男の計画を、仮面ノリダー木梨猛は打破する事が出来るのか。

 

次回へ続く。

 

 

 

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