仮面ノリダーVSシンデレラガールズ   作:カイバーマン。

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対決、ブラックぴにゃ男

木梨猛がようやく346プロ本社で監禁されている渋谷凛の居所を突き止めた頃

 

そうとも知らずに怪人・ぴにゃ男はというと

 

「あ~智絵里ちゃん可愛ぅい~い~」

 

「そ、そんな私……! 可愛くなんてないです~!」

 

「や~照れてる所も可愛い~」

 

また別の所でアイドル達と仲良くお喋りをしている所であった。

 

ここはアイドルユニット・キャンディアイランドの待機室

 

偶然やってきたぴにゃ男は、そこにあった巨大なウサギの形をした背もたれ付きクッションにドカッと座り込んで

 

四葉のクローバーを愛する引っ込み思案の緒方智恵理の可愛さにすっかり骨抜きにされているのである。

 

「智恵理ちゃんの、将来の夢は何ですか?」

 

「え、えと……温かい家庭を守るお母さんになりたいです……」

 

「やだー! もう超可愛い~!」

 

「そんなに言われると恥ずかしいです~!」

 

「恥ずかしがるのも可愛ぅい~~~!」

 

顔を赤面させておどおどしながらテンパる彼女の反応に満足げにヘラヘラ笑うぴにゃ男

 

するとそんな彼の下へもう一人のアイドルが、満面の笑みを浮かべながらお皿にお菓子を乗せて持って来てくれた。

 

お菓子をこよなく愛する者・三村かな子である。

 

「ぴ、ぴにゃ男さん! もしよろしければクッキーどうぞ! 私の手作りです!」

 

「え、ほんとぉ!? これ君が自分で作ったの!?」

 

「は、はい!」

 

「うわ~ぴにゃこら太が描かれてるし、すげぇ上手~」

 

相手があの大御所なので、智恵理と同様かなり緊張しながらも勇気を振り絞ってクッキーを差し出すかな子。

 

表面には生クリームをこれでもかと盛り付けられ、その上にチョコペンでぴにゃこら太が描かれている彼女御手製手作りクッキーを、驚いた様子で受け取りながら、ぴにゃ男はそれをすぐ口の中へと一口でほおばる。

 

 

すると彼はすぐに「ん?」と首を傾げて

 

「あのね、かな子ちゃん」

 

「はい!」

 

「甘過ぎ」

 

「えぇ!?」

 

「あのね、クリームの量が多過ぎ」

 

いくら相手が可愛いアイドルであろうが味については別。

 

その辺については一切妥協せずににハッキリと言う、それがぴにゃ男なのだ。

 

「君等ぐらいの年の女の子なら平気かもしれないけど、おじさんぐらいの年になるとねぇ、胃がもたれちゃうんだよ~」

 

「す、すみませんでした!」

 

「これならさ、クッキーじゃなくて、お煎餅に盛り付けた方が良いかもしんない、甘さとしょっぱさでいい感じになるかもしれないから」

 

「なるほど……なら次はお煎餅作りに挑戦してみます!」

 

中年男性向けのお菓子をアドバイスしてくれたぴにゃ男に、かな子はめげずに今度こそ彼に美味しいと言って貰えるお菓子を作ろうと強い意気込みを見せるのであった。

 

「じゃあ俺が満足出来るお菓子を作ってくれるのを待ってるんで、今後も頑張ってください」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「良かったねかな子ちゃん」

 

「うん!」

 

いつでも待っているとクッションに身を預けながら約束してくれたぴにゃ男に

 

嬉しそうにお礼を言って智恵理と一緒に微笑みあうかな子

 

怪人がいるとは思えないなんともほんわかしたムードが流れていると

 

それをぶち壊すかのように、待機室のドアが開かれた先から何者かが勢いよく……

 

「あーーーーーー!! 杏のうさぎがーーー!」

 

入るなりいきなり大声を上げてぴにゃ男を睨みつけるのは、智恵理やかな子と同じキャンディアイランドのメンバー、働かずに生きていけるニートライフを夢見るアイドル・双葉杏である。

 

彼女が現れるとキョトンとした様子で目を丸めるぴにゃ男に、杏子は機嫌悪そうな様子でズンズンと彼の方へ歩み寄り

 

「そこは杏が安らぐための杏専用特等席なんだよ! 勝手に座るなぁ!」

 

「ううん違うよ? コレは俺のうさちゃんだよ」

 

「はぁ!? なに訳わかんない事言ってんのさ! いいからそこをどけー!」

 

さっきからずっとぴにゃ男が座っていたウサギの巨大クッションは、杏の完全私物だったらしい。

 

しかしそれを聞いてもなお彼は動く気配を見せず、あまつさえ自分の所有物だと言い張る始末。

 

更に動く気配を見せない彼に杏は無理矢理にでもどかせようと、小さな体でなんとか彼を追い払おうとする時

 

「ってあぁー! 私がいつも持ってる携帯用うさぎ! どこにも見当たらないと思ったらアンタが持ってたの!?」

 

「ううん違う違う、これも、俺のうさちゃん」

 

「何言ってんだそれも返せー!」

 

杏は彼の腕の中にある大事なものが抱かれている事に気付いた。

 

それはよく自分が持ち歩いていたどことなくウサギとは認識しづらいぬいぐるみ、無論これも彼女の私物である。

 

しかしぴにゃ男、それもまた絶対に離そうとせずに断固として彼女から死守。

 

みを乗り上げてきた杏子の顔面に、右手を伸ばしてガシッと掴んで近づく事さえ拒む。

 

「やだー! コレ俺のうさちゃんー!」

 

「もがが! 横暴だー! 大御所だからってそんな真似許されると思ってんのかー!」

 

「ど、どうしようかな子ちゃん……」

 

「う、うーんと……とりあえずお菓子食べようか」

 

「このタイミングで!?」

 

顔面を鷲掴みにされてもなお杏は「ギャラを上げろ」だの「もっと楽な仕事をさせろ」だのドサクサに勝手な事を言い出しながら、半笑いを浮かべるぴにゃ男の子供じみた嫌がらせに立ち向かおうと懸命に両腕を振っていた。

 

そして同じアイドルとして杏に手を貸すべきか、大先輩であるぴにゃ男に協力するべきなのかという難しい選択を強いられた智恵理とかな子

 

とりあえず作り立てのぴにゃこら太を二人で食べ終えてから考えようという結論に至ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃、木梨猛はというと本社内を猛ダッシュで駆け抜けていた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

偶然出会ったアイドルのアーニャに渋谷凛がいる場所を教えてもらう事に成功した猛は

 

遂に彼女がいると思われる、シンデレラ・プロジェクトの専用部屋の前へと辿り着くのであった。

 

「ここに凛ちゃんがいるのか! よーし今助けに行くぞぉ!」

 

ドアの前で強く叫ぶと、猛は豪快にドアを蹴破り……とはいかず、キチンとドアノブを回してガチャリと開けて

 

「失礼しまーすってあぁ!」

 

丁寧に一礼して中へと入る猛だが、すぐに予想だにしない衝撃的な光景が目に前に現れたのだ。

 

なんとこの部屋で監禁されている筈だったと思われていた……

 

「そんな馬鹿な……! 凛ちゃんが……!」

 

「逃げて猛さん!」

 

 

 

 

 

 

「普通にロケ弁食ってやがる!」

 

部屋に入って来た猛に向かって慌てて声を掛けて来たのは、ソファにのんびり座って支給された弁当を綺麗に食べる凛であったのだ。

 

「凛ちゃん! なに呑気に弁当なんて食っているんだ! 君はジョッカーにこの部屋に監禁されていた筈じゃないのか!」

 

「ああうん、一応そんな感じだけど、別に縛られてもいないし部屋の中なら自由に動き回れるよ」

 

「爆弾は!? ジョッカーは君とこのビルもろとも吹き飛ばす爆弾を仕掛けていると言っていたぞ!」

 

「え? そんなのどこにもないけど?」

 

「なぁにぃ~~!?」

 

ここに来てまさかの新事実、仕掛けた爆弾など本当はどこにもなく、全てあの策士・ぴにゃ男のガセであったのだ。

 

しかしそれならどうして奴は自分に凛を探し回させたのか……だがそれを考える暇なく、凛自身が手早くその答えを教えてくれた。

 

「それより早く脱出して猛さん! ここには今、爆弾なんかよりも恐ろしい奴が潜んでいるんだよ! アイツ等が私をここに閉じ込めていたのはきっと! 走り回って疲れている筈の猛さんをここで難なく始末させる為なんだ!」

 

「そのロケ弁、俺が食った奴より高そうなんだけど」

 

「いいから急いで! アイツが現れたらきっと猛さんだって無事じゃ……!」

 

慌てて猛に向かって奴等の作戦の真相を説明口調で話す凛であったが、それよりも彼女が食べてるロケ弁が自分が貰った奴よりも豪華なのでは?と気になってしょうがない猛

 

すると突然、そんな隙だらけの彼の背後から、正確には凛の向かいの方にあるソファの裏側から

 

ヌッと大きな人影が現れたのだ……

 

「ぴ! ぴにゃー!」

 

「うわ! な、なんだお前は!」

 

いきなり現れたのはノーマルぴにゃ男よりも黒くてやや大きいぴにゃ男であった。

 

突然ぎこちない奇声を上げながら現れた大男に、猛は困惑した様子で慌てて凛を庇うかのように盾になる。

 

「お前は誰だ! まさかジョッカーの怪人か!」

 

「ぴ、ぴにゃにゃ……わ、私はブラックぴにゃ男……」

 

「ブ、ブラックぴにゃ男だとぉー!? なんかどっかで! 収録前に挨拶に来た企画担当に似ている気がするんだけど!」

 

「まんまと騙されてノコノコとやって来まし……来たぴにゃな……散々走り回ってつ、疲れているお前を、わ、私が倒して……」

 

「プロデューサーさっき私と打ち合わせした通りちゃんとやって」

 

「す、すみません……」

 

「打ち合わせしてたのー!?」

 

棒読みというかかなり緊張した様子で覚えたての台詞をなんとか言い切ろうとする大男、ブラックぴにゃ男

 

だがあまりにも恥ずかしそうにやっているのが見え見えだったのか、凛は腕を組みながら静かにダメ出し。

 

今まで自分が来るまでずっとこの二人は段取り手順を練っていたのかと知り猛はちょっとビックリするのであった。

 

「とにかくお前がブラックぴにゃ男というジョッカーの怪人で! 凛ちゃんを餌にして俺を本社内を走り回せ! そのおかげで疲れ切った俺を容易に始末するという狙いだったという訳だな!」

 

「その通りです、あ! その通りぴにゃ! 渋谷さ……その娘はお前を釣る為のただの餌なんだぴにゃ!」

 

「……う~ん、なんかやっぱ堅いんだよなぁ……」

 

こちらが代わりに台詞を言ってあげるも、やはり表情が硬いブラックぴにゃ男

 

それに首を傾げる猛に凛も真顔でブラックぴにゃ男を見つめながら

 

「それに娘って所もちゃんと私の名前で呼んだ方が良いと思う、プロデューサー、一回私の事凛って呼んでみようか」

 

「君は君でなにを言ってるの凛ちゃん」

 

ボケなのか素なのか、それとも何か別の狙いでもあるのか、真顔で自分の名前を呼べとブラックぴにゃ男に要求する凛に、猛は困惑した様子でツッコミを入れると改めて振り返り

 

「凛ちゃん! この男の相手は俺がやる! その間に君はここから脱出するんだ!」

 

「待って猛さん! ブラックぴにゃ男はまださっき打ち合わせの時に私が考えた「私がお前から凛を奪い! 彼女の人生を一生プロデュースするのだ!」ってセリフがまだ出てないよ!」

 

「凛ちゃん! そういうのはプライベートで言って貰いなさい!」

 

早く逃げろと促しているのに断固望む言葉を聞くまで出て行きそうにない態度の凛に、猛は思わず吹き出してしまいそうになる。

 

ブラックぴにゃ男もそんな彼女に困った様子で首に手を置くような仕草をしながら

 

「い、いやそれは流石にちょっと、打ち合わせの時にも言いましたがその台詞はちょっと問題が……」

 

「とりあえず今までのやり取りから察した俺は! この情報を文春に売るって来るけど良いかな!?」

 

「お、お待ちください! それはただの誤解です!!」

 

「よし! いい声出て来たよー!」

 

ここに来て思わぬスキャンダルをゲットした猛は、どこぞの雑誌に売り込みに行こうかと企み始めると

 

ブラックぴにゃ男はようやくハッキリとした強い口調で叫ぶことが出来た。

 

「こ、ここは狭いしうまく動けません! 木梨猛! 今からお前の墓場に連れてってやる! ついて来い!」

 

「おっしゃあ望む所だ! よぉし凛ちゃん! 俺は奴と戦ってる間に君は逃げるんだ! お願いだから!」

 

「……………………わかった」

 

「いや凄い残念そうだな!」

 

 

戦うべき場所はここではない、いい感じにそう叫ぶとブラックぴにゃ男は猛を何処かへ連れて行こうとする。

 

それに猛も了承し、彼と共に一旦場所を移す事にするのであった。

 

 

名残惜しそうにちょっとしょんぼりしている凛をその場に残して

 

 

 

 

 

 

数分後、ブラックぴにゃ男と猛は

 

346プロの敷地内にある、アイドルが撮影の時やプライベート等で使う為の大きなプール場にやって来ていた。

 

「臆せずによくやって来たな、木梨猛!」

 

「おーおーおー! 来てやったぞブラックぴにゃ男!」

 

油断すればすぐに滑って転びそうなぐらいに濡れているタイルの上で

 

隣に大きなプールがあるという状況で、二人は真っ向から向かい合っていた。

 

「俺をおびき寄せる為だけに凛ちゃんを利用するとは……許さん、ジョッカー! 絶対にぶっ飛ばすぞぉ!」

 

「かかって来るがいい! 木梨猛、いや仮面ノリダー!」

 

「なんか武内の演技が上手くなってて俺ちょっとビックリしてるけど! よ~し! 変身だぁ!」

 

段々やってる内に様になって来たのか、それとも凛の叱責を受けた事が影響なのか、さっきまでとは打って変わってまともになっているブラックぴにゃ男の前で、遂に猛はビシッとポーズを決めて変身しようとする。

 

「か~いわれ巻き巻き、ね~ぎトロ巻き巻き、巻いて巻いて……!」

 

腕をグルグル回しながら変身前の口上を久しぶりにやろうとする猛

 

だがその途中で

 

 

 

 

 

 

「待つのだ! 光をも吸い込みかねん大きな鼻穴を持つ呪われし戦士よ!」

 

思いがけないアクシデントが起こる。

 

猛が口上を叫んで変身する前の動作をしている時に、突如として彼女の傍へ勢いよく

 

ゴシックロリータの衣装に身を包んだおかしな少女が駆けつけて来たのだ

 

「闇に飲まれよ!」

 

「……なに?」

 

「か、神崎さん……?」

 

いきなり変な事を自分とブラックぴにゃ男に向かって叫ぶ少女に、猛は思わず動作を中断してポカンとする。

 

彼女は神崎蘭子、その独特的な口調は結構有名であり

 

Rosenburg Engelというユニットをソロでやっているアイドルである。

 

「しばし時を待つのだ呪われし戦士よ……この者を闇へと還すのは断じて許さぬ、我が友に必要なのは暗黒に堕とす罰でなく魂の救済なのだ!」

 

「ねぇ……急に出て来てなに言ってんのこの子?」

 

「す、すみません……とりあえずしばらく彼女に話をさせてあげて下さい……」

 

「深淵の暗闇から友の魂を救い上げるのは! 共に闇夜を舞い続ける事を誓い合った我だけの役目!」

 

ロシア語は出来ても彼女の言葉だけはどうしても理解出来ないでいる猛、思わずブラックぴにゃ男に彼女を指さしながら尋ねるが、彼もまたどうしていいのかわからない様子で、とりあえず彼女の話を聞いて欲しいと猛に頼む。

 

「ククク……かつて我の秘められし力を覚醒に導いた我が友よ……されば今宵は我がその迷える魂! 闇夜の底から拾い上げ導いてやろう!」

 

蘭子は力強くそう叫ぶと、ブラックぴにゃ男をビシッと指さし、猛の隣で真っ向から対峙する。

 

しばらくそれを観察していると、猛は眉間に眉を寄せながら凝視して

 

「え、もしかして……俺と一緒に戦ってくれるの?」

 

「うむ! 共に我が友を救い出そう! 呪われし戦士よ!」

 

「え~全然わかんなかった……」

 

右手に持った傘を畳んで得物の様に構える蘭子の真剣な表情を見ながら、まさか彼女が一緒に戦ってくれるとは思っていなかった猛は思わずブラックぴにゃ男の方へ振り返り

 

「……今のでおたくわかった?」

 

「はい、なんとなくは……恐らく私が悪者になってしまったのは何者かの洗脳であり、神崎さんはその洗脳を解く為に己の身を挺して私と戦おうとしているのだと思います」

 

「すげぇ理解力だな! よくわかったねさっきので!」

 

「……勉強させて頂きましたので……」

 

 

何を勉強すればあんな訳わからない言語を翻訳する事が出来るのだろうかと思いつつも、とりあえず一緒に戦ってくれるのであればそれでいいかと、猛は改めてブラックぴにゃ男と対峙し

 

「よーしもう一度行くぞジョッカー! 今から変身するから見とけよ見とけよ~!」

 

「ぴにゃにゃ! ならば見せてみろ貴様の力を! 仮面ノリダー!」

 

「……プロデューサーカッコいい……」

 

隣に立ってる蘭子が今まともな言葉を使った気がしたものの、猛は再び両腕をグルグルと回し

 

「か~いわれ巻き巻き、ね~ぎトロ巻き巻き、巻いて巻いて、手巻き寿司、とぉー!!」

 

やや早口でようやく口上を言い切る事に成功すると、そのまま勢いよく天高くジャンプ

 

改めて言うが木梨猛は改造人間、上空でグルグルと回りながら腰に付いている変身ベルトに強い風力を与えていくと……

 

 

 

 

 

 

「仮面~~~~~ノリダーッ! ニィ☆」

 

悪しき怪人との戦う事を宿命づけられた戦士、仮面ノリダーになるのだ。

 

 

カッコ良く腕を伸ばしてビシッと決めながら、キラリと歯を光らせて笑うノリダー。

 

そしてすぐに対峙するブラックぴにゃ男に拳を構え

 

「待たせたなジョッカー! ここで貴様をぶっ飛ばしてやる!」

 

「待たれよ呪われし戦士よ!」

 

「ってまたかよ!」

 

ようやくまともに戦えると思った瞬間、またしても蘭子が口を挟んで来た。

 

「其方は今一度魂の休息を挟み! ここはまず我が力に頼るが良い!」

 

「通訳!」

 

「えー……あなたは一度下がっていて私が代わりに戦います、だと思います」

 

「ご苦労!」

 

ブラックぴにゃ男の通訳を聞いてようやく理解したノリダーは

 

楽が出来るからと思い、早速彼女に任せてみる事に

 

「よし! 頼むぞ変な子! お前の力であの野郎を八つ裂きにしてそのまま腸をほじくり出して目の前でムシャムシャ食ってやれ!」

 

「ぴぃ! わ、我はその様な猟奇に満ちた残虐に手は染めぬ! 行くぞー我が友ー!」

 

にこやかに笑いながら何気にえぐい事を言ってのけるノリダーに、一瞬怯えた表情を浮かべる蘭子であったが

 

すぐに威勢良く叫びながら単身でブラックぴにゃ男に向かって突撃を開始する。

 

「さあ我が放ち矢を胸に撃たれ! 己の真名を取り戻すのだー!」

 

「う! 神崎さん!?」

 

さほど衝撃も無さそうな彼女の体当たりを素直に受け止めたブラックぴにゃ男であったが

 

「あの、すみません……何をやっているのでしょうか?」

 

「クックック、これこそ我が前世の頃より秘めていた禁術……! 漆黒と純白の翼に包まれ! 我と共に安息の地で眠るがいい!」

 

「いやこれは流石に……」

 

蘭子の繰り出した技は単なる攻撃などではなく、むしろそれ以上に厄介なモノであった。

 

「すみません、この体制はあまりにもよろしくないと思うのですが……」

 

「へへへ……否! これぞ我が望みし聖なる結界なり!」

 

アイドルでありながら両腕を伸ばして勢いよく自分に抱きついて来たのである

 

彼女自身はどこか嬉しそうだが、こちらとしては色々とマズイ……

 

すると蘭子の背後で休憩していたノリダーは、急ぎこちらへと歩み寄って行き

 

「そこだ! そこで一気に押せ! 変な子!」

 

応援するかのように彼女の下へ近づいてくノリダーであったが、既にブラックぴにゃ男に抱きついて夢心地である彼女の耳には届かない。

 

するとノリダーは「だ~か~ら~!」と彼女の背中に向かって

 

「もっと押せっつってんだろ!」

 

「ふぇ? ひぎゃあぁ!!」

 

「神崎さん!」

 

思いきり両手で押し飛ばしたのだ。

 

しかしその勢いの先はまさかの隣のプール。

 

彼女は天国から一気に地獄に落とされたかのように、悲鳴を上げながら音を立ててプールの中に落とされてしまった。

 

「な、なにを! ごぼごぼ!」

 

「あーごめん、ちょっと強く押しちゃった、すぐ助けるから」

 

突然水に落とされ慌てふためく蘭子であったが、そこへノリダーがすかさず手を差し伸べ、彼女を優しく引き上げてあげる。

 

そして

 

「はいドーン!」

 

「ひやぁぁ!!」

 

「神崎さん!?」

 

助けてあげたかと思いきやまた両手でプールに突き落とすノリダー、今度は完全にわざとである。

 

またもやプールに背中から落ちて悲鳴を上げる蘭子に、ノリダーはゲラゲラ笑いながら「ごめんごめん!」と両手を合わせて平謝り

 

「もうやらない! もうやらないから!」

 

「い、いかに天の上に立ち高名な賢者であれど! 我が衣を濡らすとは如何様な真似だ!」

 

まさか二度も連続で落とされるとは思っていなかった蘭子は、プンプンと怒った様子で彼によってまた引き上げられるのであった。

 

するとノリダーはふとプールの奥の底を覗き込みながら「ん?」と目を細めて

 

「あそこに落ちてるのって……君のじゃない?」

 

「え?」

 

もしや先程の落下のせいで何か落としたのかと、彼が指さした方向に蘭子は屈んで目を凝らす。

 

するとノリダーは油断してお尻を突き出している状態の彼女の背後にそっと回って

 

「ノリダーソフトキック!」

 

「へ? ふんぎゃあ!!」

 

「神崎さーん!!」

 

まさかの三回目の突き落としである、しかも今度は足で彼女のお尻を軽く蹴って。

 

プールに何か落ちている事も真っ赤な嘘、完全にノリダーの悪意だ。

 

「た、たしゅけてプロデューサー!」

 

「こちらに!」

 

もはやノリダーになんか絶対に助けて貰いたくないと、パニクりながらブラックぴにゃ男に向かって叫ぶ蘭子

 

それにすかさず反応し、ブラックぴにゃ男はこちらに伸ばした彼女の小さな手を掴み、水面から一気に引き上げるのであった。

 

「ゲホッゲホッ!」

 

「申し訳ありません……神崎さんをこんな目に遭わせてしまい……」

 

「こ、これしきの事では我は動揺せぬ……それに」

 

彼女の両手を取りながら申し訳なさそうに謝るブラックぴにゃ男、しかし蘭子は全身ずぶ濡れになりながらも彼の手を取りながら健気に微笑んで

 

「プロデューサーさんが持ってきた仕事なら、例えどんな事でも一生懸命やるって決めてますから私……」

 

「神崎さん……」

 

そのひたむきで純粋にどんな仕事でも全力で頑張ろうとする姿勢を見せてくれた蘭子に

 

ブラックぴにゃ男は彼女の輝かしい笑顔を前に思わず言葉を失い感動さえ覚えてしまっていると……

 

 

 

 

 

「ノリダーやみのまッ!!」

 

「ぬぐ!」

 

「プ、プロデュ……きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

蘭子と手を取り合い、なんかいい感じになって完全に隙だらけであったブラックぴにゃ男の背中に向かって

 

ノリダーは正義の鉄槌を咥えるべく、華麗なる飛び蹴りを後ろから思いきりかますのであった。

 

その衝撃で彼はプールの中へ派手に着水、一緒にいた蘭子も巻き添えとなり、やっぱり彼と共に落ちるのであった。

 

「ハァハァ……! 勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

そして一人その場に取り残されたノリダーは天高くガッツポーズを掲げ、苦しい戦いだったとわざとらしく疲れた表情を浮かべながら勝利宣言し、早々にその場を立ち去るのであった。

 

「皆さーん! 346プロのPが担当アイドルに手ぇ出してますよー! しかも二股だよ二股!」

 

「してません!!」

 

 

かくして、神崎蘭子の尊い犠牲によって無事にブラックぴにゃ男を倒す事が出来た仮面ノリダー

 

しかしこれはほんの前座に過ぎない

 

いざ決戦の舞台へ

 

次回、最終対決

 

仮面ノリダーvsぴにゃ男

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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