強敵ブラックぴにゃ男を相手に苛烈な激戦の上で勝利をもぎ取った仮面ノリダー
しかし未だ凛を攫った本人であるぴにゃ男は健在のままだ。
ブラックぴにゃ男をプールの中に沈め、ついでに神崎蘭子も一緒に沈めると
ノリダーは急いでぴにゃ男がいるであろう346プロ本社へと戻るのであった。
「あ、いたぞ怪人!」
そして彼はすぐに見つけた、社員やアイドルが利用してい本社直属の喫茶店で
物凄く目立つ格好であるぴにゃ男が優雅にコーヒーを飲みながらくつろいでいたのだ。
店員らしき女性と妙に親し気に会話しながら
「え~うっそだ~!」
「う、嘘じゃないです! ナナはホントにずっと前からお二人のファンだったんです!」
コーヒー片手にヘラヘラと笑うぴにゃ男に、この店のバイト店員兼アイドルの安部菜々が、やや必死な様子で彼に向かって叫んでいる。
「この作品も最初からずっと観てました!」
「え~~~~!? 待って奈々ちゃん年いくつ?」
「ナナは17才です、キャハッ!」
「17!? いやそれなら絶対観てないでしょ~! 結構昔だぜコレ~!」
腰に手を当てキラッとポーズを取って自分の年齢を言う奈々にぴにゃ男はすぐに彼女を怪しむ視線を向けると
そこへノリダーが何食わぬ顔で平然と歩み寄って行き
「なになに? なんか盛り上がってるみたいだけど」
「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!! 本物の仮面ノリダーぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うん、本物だけど、なに? なんの話してたの二人で?」
急に後ろからやってきたノリダーに奈々は驚きと歓喜が入り混じった叫び声を上げて大混乱。
するとぴにゃ男は敵である筈のノリダーに「いやさ~」ときさくな態度で口を開き
「この子、ずっと前から俺達のファンらしいんだけど、17才なんだって」
「17? いやあり得ないでしょ、17才の女の子が俺達のファンだなんて、お父さんが好きだったとかでしょきっと」
「ホントです! だってナナは子供の頃からお二人の好きなようにやっていく破天荒なスタイルが大好きだったんです!」
17才の少女が自分達の事などよく知る筈が無いとノリダーが断言するが、奈々は首を横に振って本当に昔からファンだったのだと叫ぶ。
「お二人が野猿として活動していた頃もずっと観てました! CD全部持ってます!」
「野猿知ってんの!?」
「お二人の本も買いました! 『天狗のホルマリン漬け』から!」
「天狗のホルマリン漬けって……確か俺達が最初に出した奴じゃなかった!?」
興奮した様子で話す奈々にノリダーもぴにゃ男も戸惑った様子で仰天する。
なにせ今時の若いアイドルが、年代も違う自分達の事などよく知っている筈が無いのだ。
そしてぴにゃ男はピーンと来た様子で険しい表情を浮かべて奈々を問い詰めにかかる。
「お前、さては17じゃないだろ」
「うぇ!? な、何言ってんですか! ナナは17才です! 本当です!」
「ナイナイの岡村君とタメじゃないよね?」
「さ、流石にそこまではいってないです!」
「そこまでいってない? じゃあちょっとはサバ読んでるって事?」
「読んでません! ナナは17才、ウサミン星からやって来たアイドルなんです!」
アイドルの年齢詐称疑惑があると睨むぴにゃ男に、動転した様子でかなり必死になって弁明する奈々。
「というかナナの年の事なんて今はどうでもいいじゃないですか! 仮面ノリダーと怪人がこうして出会っているんですから! やる事は一つです!」
「いや俺は番組の段取りよりもまず先に君の本当の年齢を教えて欲しいんだけど」
「た、助けて仮面ノリダーァァァァァァァ!!!」
強引に打ち合わせ通りの段取りを進めようとする奈々だが、ここでぴにゃ男、まさかの段取り無視。
それでも奈々はこれ以上年齢の事を指摘されない為に、有耶無耶にしようと勝手にノリダーに向かって助けを求めた。
するとノリダーはすかさず彼女の前に立ち塞がり
「サバ読み疑惑の件でアイドルを執拗に質問攻めするのは止めろ! 怪人め!」
「ナナはサバなんて読んでませんったら!」
「店員さん、俺がコイツを食い止めてる間に早く逃げなさい、急いで逃げないと、コイツは収録後すぐ君の所へ駆けつけてまたしつこく聞いて来るぞ!」
「そ、そんなぁ!」
これ以上深く年齢について斬り込んで欲しくない奈々は、ノリダーの忠告を聞いて慌てて店の方へと逃げ出していく。
「え~ん! ずっと前から憧れていた人と念願の共演できたのに~!」
「終わったら一緒に写真撮ってあげるから!」
「ありがとうございます~!」
最後にノリダーのフォローにお礼を言いながら、奈々は何処へと去っていくのであった。
「よーし、これで俺とお前だけになったな、怪人・ぴにゃ男!」
「ぴにゃにゃにゃ! おのれ仮面ノリダーめ、あの女の実年齢をカミングアウトさせて全国テレビで放送するチャンスだったのに、よくも邪魔したぴにゃね!」
彼女が去った後、ノリダーは改めてぴにゃ男と対峙する形を取り、それに応えるかの様にコーヒーを飲み終えたばかりのぴにゃ男もすぐに席から立ち上がって彼を睨みつける。
「ここでお前を殺してやりたい所だが……ここではちょっと丁度いい坂道とか無いし、爆発も出来ないんで、場所を変える事にするぴにゃか」
「それもそうだな、じゃあいつものお約束の場所に……」
彼の提案にノリダーもすぐに頷いて承知すると、その場で両足を踏み込んで
「とぉ!」
「ぴにゃ!」
ぴにゃ男と共に空高くジャンプするのであった。
すると一転して、辺り一面が丁度戦いやすい広々とした荒れ地に着地するノリダーとぴにゃ男
「あ~ここに来ると帰って来たって感じだな~、よし! いっちょ派手に暴れてやるぞぉ!」
「そうやって懐かしむのも今の内ぴにゃよ……あの坂の上を見ろ! ノリダー!」
「なに!? は! アレは!」
懐かしき場所に思いを馳せるノリダーに、ぴにゃ男はすぐ近くにそびえ立つ急斜面の坂の上へと指さす。
足を踏み外せばすぐに転げ落ちそうな、危なっかしい頂上にいたのは……
「フ、フハハハハ! よくぞ来ましたね仮面ノリダーさん! 初めまして! 私は新生ジョッカーの新たな将軍! しまむー大佐です!」
「な、なんだってぇーッ!?」
新生ジョッカー率いる親玉、しまむー大佐が慣れてない様子で笑い声を上げながら立っていたのだ。
「今回は我等ジョッカーの悲願が達成する瞬間をこの目で見届ける為に! 私も陰ながらここでぴにゃ男を応援しようと思ってやって来ました!」
「くっそ~! こっちは一人なのにそっちはアイドル連れてきやがって~! ウチも未央ちゃんぐらい呼んどけば良かった~!」
明らかに向こうの方が華があるではないかと悔しがり、せめて本田未央でも呼べば普通に来たんじゃないかと考えてみるが、そこへぴにゃ男が手を横に振って
「いや、ちゃんみおは無理、しまむーがアイツにNG出してるから」
「マジっすか!?」
「だ、出してません! 未央ちゃんとはずっと仲良しです!」
「「ったくよぉ、アイツ8代目シンデレラガールになって天狗になってんだよぉ……! ウチ等のシマ荒らした落とし前ぜってぇ取らしたるからなぁ……!」って楽屋でしまむーがね?」
「言ってません! 私そんな酷い事企んでません!」
「指の一本や二本で済むと思うなよぉ……!」
「いい加減にしてください!」
その場で便所座りしてタバコ吸う仕草をしながら、ドスの利いた低い声でしまむー大佐の物真似を披露するぴにゃ男だが
事実無根の出まかせであると坂の上から必死に否定する彼女。
「んも~私で遊んでないでさっさとノリダーを始末しちゃって下さい! ジョッカーのみなさーん!!」
ぴにゃ男を怒鳴りつけるとしまむー大佐はすぐにこちらに向かって号令をかける。
するといつの間にか、ノリダーを取り囲むかのようにジョッカーの戦闘員がゾロゾロと集まって来る。
「ぴにゃ男と一緒に! そいつをやっちゃって下さい!」
「「「「「イー!!!!」」」」
「くっそー、出たか戦闘員~!」
ズラリと並んで一世に声を上げるジョッカーの戦闘員を見渡すノリダー、しかし数が不利だからといって、カメンノリダーはここで逃げる真似は絶対にしない。
「えーい全員かかってこーい! みんなまとめて、ぶっ飛ばしてやるぞぉ!」
一斉に襲い掛かって来る戦闘員にノリダーは怯む様子も見せずに、果敢に正面から立ち向かう。
「せい! せい! は、どっこいしょう!」
「イー!」
「あっち向いて~……そい!」
「イー!」
「こっち向いて~……よいしょ!」
「イー!」
一人、また一人を相手に華麗に舞うように戦いながら倒していくノリダー、必要以上に派手に吹っ飛んでくれる戦闘員に心の中では感謝しつつ、ノリダーはクルクルと全身を回転させながら
「ノリダ~! フィステバ~ル!!」
「「「「「イー!!!!!」」」」」
戦闘員達に向かってフニャフニャに歪む光線を撒き散らす。
それを食らった戦闘員達は皆耐え切れず、声を上げて綺麗に背中から倒れていくのだ。
「よし! これで後はお前だけだ! ぴにゃ男!」
「フッフッフ……そう上手くいったと思うぴにゃか……?」
「なに!?」
雑魚は片づけ、残すはぴにゃ男だけだと意気込むノリダーだが
ぴにゃ男はそんな彼にニヤリと笑うと、坂の上にいるしまむー大佐を見上げて
「我等がジョッカーの新たな力を見るが良い! しまむー大佐!」
「はい!」
彼が叫ぶとしまむー大佐はビシッと敬礼し、すぐにこちらに向かって元気よく手を振って
「皆さ~ん! 頑張りましょう~! 頑張れば夢は叶うんです! 頑張って皆さんでノリダーを倒しましょう~!」
倒れた戦闘員達にしまむー大佐からの熱い声援が降り注いでいく。
すると戦闘員達は次々に何事も無かったかのように立ち上がって行き
「「「「「イー!!!」」」」」」
「なぁに~!? 倒したのに全員蘇っただとぉ~!?」
彼女の声援が強い力と生命力になったのか、再び復活して来た彼等に流石にノリダーも驚く。
まさかこれがしまむー大佐の力だというのか……
「イー!」
「うッ!」
「イーイー!!」
「ぐわぁ! ま、まさかコイツ等! 復活しただけじゃなくて強くなってる~!?」
しかも復活した戦闘員達は以前よりも更に力が増しており、彼等の攻撃に耐え切れずにノリダーは拳で殴られ吹っ飛ばされてしまう。
しまむーの声援の力で敵全員の士気が上がっており、とてもじゃないが彼一人では対処できない。
「フッフッフ~! これで年貢の納め時ですね仮面ノリダー!」
「ぴにゃにゃにゃにゃ! どうやら俺様が出る必要もないみたいだぴにゃな!」
「くっそ~こうなったら……!」
既に勝利を確信した様子でこちらに高らかな笑い声を上げるしまむー大佐とぴにゃ男。
しかしまだ打つ手はあると、ノリダーは腰に巻いてるベルトに付いている、ガチャポンサイズのカプセルを取り出した。
「来い! チビノリダー!」
助けを求めるかの様にそう強く叫ぶと、ノリダーは勢いよくそのカプセルを地面にぶつける。
するとその瞬間、カプセルの中から何かがスモークに巻かれながら勢いよく現れたのだ。
「ふわぁー、ちびのりだー……」
「なに!? チビノリダーだとぉ!?」
出て来たのはノリダーと同じ格好をした小さなノリダー、通称チビノリダーである。これにはぴにゃ男もビックリ
妙にのんびりした口調で力なく自己紹介しながら、軽く手を上に上げてポーズだけは取るチビノリダー。
「ちびのりだーもねぇ、のりだーといっしょにたたかうのー……」
「なんか思ってたのより大分違う子が来ちゃった! まあいいや! 一緒に戦うぞチビノリダー!」
「うん、ちびのりだーがんばるー」
聞いてるだけでこっちも力が抜けてしまいそうな喋り方をする不思議な子に戸惑うノリダー
本来、チビノリダー役は南条光という子がやる予定であったのだが
当日に彼女が風邪をこじらせてしまった為に、急遽代役として呼ばれたのがこの子、遊佐こずえなのである。
しかしそこへ、ぴにゃ男の恐るべき魔の手がチビノリダーに忍び寄る。
「ん~? チビノリダーはさ~、お名前なんと言うのかな~?」
「こずえ~」
「こずえちゃんか~、え、こずえちゃんはいくつなの?」
「11さい……かなー?……」
「へーそうなんだー」
妙に友好的に話しかけながらチビノリダーにジリジリと近寄って行くぴにゃ男。
「あれ? こずえちゃん? 鼻水出てるよ鼻水」
「ほんとぉー?」
「ほら出てる、ちょっとこっち来てみ、拭いてあげるから」
そう言ってチビノリダーの方からこちらに向かってこさせるぴにゃ男、そして彼女がフラフラしながら寄って来たその瞬間
「うほーい!」
「チビノリダー!」
近づいてきた彼女にぴにゃ男の顔面パンチが炸裂。
軽く小突かれた程度の威力ではあるが、してやられたチビノリダーに苦笑いを浮かべながら駆け寄る仮面ノリダー。
「おいぴにゃ男! お前! お前流石に限度を考えなさいよ!」
「いたーい……」
「そうですよ! 私達ならともかくそんな小さな子供相手に!」
ノリダーだけでなくしまむー大佐からも非難されるぴにゃ男
しかし彼は目の前で鼻を押さえて痛がるチビノリダーを前にしても、全く悪びれる様子無く
「甘ぇ事言ってんじゃねぇ……! 芸能界ってのはな……! 常に狩るか狩られるかの世界なんだよ……! 覚えとけこずえ……! 俺達は常に生と死の狭間を彷徨いながら地獄の戦場の上に立ってるんだ……! 戦いの中で敵に隙を見せたら死ぬと思え……!」
「ふわぁ、わかったー……」
「いや子役に教える事じゃねぇだろそれ!」
凄味のある表情でチビノリダーに厳しい芸能界での戦い方を教え込むぴにゃ男。
しかし子役アイドルである彼女にそんな修羅場を叩きこむのは早過ぎるだろと
ノリダーはツッコミを入れながら彼女を両手で抱き抱えるのであった。
「よしチビノリダー! あの酷いおじさんをぶっ飛ばす為に合体技を使うぞ!」
「うん、ぶっとばすー……」
そう言うとノリダーはチビノリダーを両手で抱えたまま、再びグルグルと回りだし
「ノリダ~!」
「ちびのりだー……」
「ダブ~ル!!」
「ふぃすてば~る」
ノリダーとチビノリダーの合体話、ノリダーダブルフィステバルが炸裂
「ぬ、ぬおぉ! なんて力だコイツ等!」
「「「「「イー!!!!!」」」」」
二人の力が融合したその必殺技は、かつてない程のパワーが生まれ
瞬く間に辺り一帯に凄まじい竜巻を発生させ、ぴにゃ男含めジョッカーの戦闘員もまとめて吹き飛ばす。
「死ねぇ雑魚共ぉ!」
「ざこどもー」
復活したばかりの戦闘員でさえ成す術なく、次々と倒れておきそして
チビノリダー抱き抱えるノリダーの周囲から物凄い爆発が発生したのであった。
「「「「「「イー!!!!!」」」」」
「ちょ! 今回爆発デカいって!」
「うるさーい……」
ドゴォン!ドゴォン!と派手になり続ける爆発音に思わずノリダーもビックリし、抱き抱えられているチビノリダーも両耳を押さえた。
そしてようやく爆発が収まると、ノリダーは彼女を下ろして
「よし、じゃあ戦闘員はみんなぶっ飛ばしたし、チビノリダー! 撤収!」
「目が回ったのー……」
役目を終えたチビノリダーをまたぴにゃ男に酷い目に遭わされない為に、ノリダーは手早く彼女をカプセルの中に戻し出番を終わらせてあげるのであった。
「さあラストバトルだぴにゃ男! あの坂の上で決着を着けるぞ!」
「フフフ、良いだろうノリダー、今回こそ貴様の方をあの坂の上から転がり落としてやるぴにゃ!」
そう言って二人は再び真上にジャンプ、そして一転して一瞬でしまむー大佐のいる急斜面の坂の上にそびえる頂上に着地
「いよいよ最後の戦いですね! よーし私も頑張って応援しちゃいます! 負けるなぴにゃ男!」
「うおぉぉぉぉぉ!! テンション上がって来たぴにゃあ!」
後ろに回って笑顔で声援を贈ってくれるしまむー大佐の力でぴにゃ男がパワーアップ。
すると事前に頂上に用意しておいた、テーブルの上から彼はあるモノを取り上げる。
「食らえノリダー! ぴにゃ男必殺! 手投げパイ爆弾!」
「いや古いよそれ!」
ぴにゃ男が得意げに右手で持っているのは、お皿に乗ったパイ、ホイップクリームを塗った白いパイだ。
思わぬ攻撃方法に思わず抗議するノリダーだが、それを聞かずにぴにゃ男はパイを持ったまま彼に突撃
「死ねぇノリダー!」
「今時のバラエティじゃもう使わないって! あぶね!」
「頑張れぴにゃ男ー!」
パイを持ったぴにゃ男に追い回されながらかろうじて彼の攻撃を避けていくノリダー。
そしてまだぴにゃ男に声援を贈っているしまむー大佐の前でピタリと足を止めると
「よっしゃ! パイぐらい屁でもねぇ! 思いきり来いや!」
「へ、だったらお望み通り本気で食らわしてやるぴにゃあ!」
ぴにゃ男の渾身のパイがノリダーの顔面に勢いよく飛んでいく。
だが寸での所でノリダーはヒュッと身を縮めてギリギリ回避して
「あれ? きゃあ!」
彼が避けた事により後ろにいたしまむー大佐の顔面に、まさかのぴにゃ男のパイが炸裂。
「あ、あ~……顔にパイが~……」
「おのれノリダー! よくも俺を誘導してしまむー大佐に当てさせたぴにゃね!」
「いやそっちも、そのつもりでぶつけたでしょ」
顔面にヌチャアとパイのクリームが塗りたくられて必死に拭おうとするしまむー大佐を尻目に
ノリダーはぴにゃ男が用意していた大量のパイが置かれたテーブルに駆け寄り
「ノリダーパイ投げ!」
「っておい! パクんじゃねぇよこっちの技!」
「う~前が見えない……あふ!」
勝手に向こうの技を利用して、ノリダーもパイ投げで応戦。
しかし彼の攻撃は全てぴにゃ男にではなく、まだ顔を拭っているしまむー大佐を襲っていく。
「ノリダー! 顔面パイ塗り塗り攻撃~!!」
「あぁぁぁぁぁ!!」
遂には手に持ったパイを持ったまま直接しまむー大佐の顔面に浴びせ、そのまま彼女の首に手を回して逃げられないようにしながら念入りに顔にパイを塗りたくるノリダー。
しかしそこへ
「その辺にしなさいノリダー! ぴにゃ男キーック!」
「ぐわぁ~!」
もがき苦しむ彼女を救わんと、ぴにゃ男がノリダーに制裁のキック。
食らってしまったノリダーはパイをほおり投げて地面に倒れる。
「くっそ~! もう少しで鼻の穴の中に突っ込めたのに!」
「あぁそれは俺も見たかったかも、それよりアレを見ろノリダー!」
「なに!?」
悔しがるノリダーにぴにゃ男は軽く鼻で笑うと、即座に坂の下へと指を差す。
ノリダーが差した方向に目を向けるとなんとそこには……
「お前をきっちり落として殺す為に! ヌルヌルローション地獄スライダーを用意しておいたぴにゃ!」
「あぁもう! また古い奴!」
そこは普通の坂ではなく、なんとビニール製の巨大滑り台が完成してあったのだ。
おまけにローションがふんだんに塗られているので滑りも抜群で、一度落ちたら瞬く間に奈落へと落ち、一番下に設置されているこれまた大きなビニールプールの中にドボンする仕掛けが施されている。
「おら落ちろぴにゃノリダー! ヌルヌルになりながら地獄に堕ちるがいい!」
「く! イヤだ! ヌルヌルはイヤだー!」
ぴにゃ男の執拗な蹴り連打を浴びせられてどんどん後ろに後退していくノリダー。
背後にあるヌルヌルスライダーの方へジリジリと追い詰められていく。
「さあこれでトドメだ! ジョッカーの宿願を! 今ここで叶えるぴにゃあ!」
「くっそ~! このままじゃ! このままじゃ俺は!」
勝利を確信した様子でほくそ笑むぴにゃ男、そして瀬戸際まで追い詰められた状態で打つ手が残されていないノリダー。
このまま彼が負けてしまうのか……
と思ったその時
『猛さ~ん!』
「は! こ、この声は!」
それは突然空から聞こえた懐かしい声。
かつて毎日のように聞こえていたこの女性の声を、ノリダーが、木梨猛が聞き間違える筈が無かった。
空を見上げるとそこに浮かんでいたのは
『猛さん! 頑張ってー!』
「マ、マリナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
年月経ってもなお健在の美しさ、かつての猛の恋人、マリナが空から熱いエールを贈ってくれたのだ。
予想だにしなかった彼女のゲスト出演に、ノリダーは心の底から喜んで、彼女の声援の力を借りて奮起しようとする
のだが……
『私の旦那様も見てるよー!』
「え!?」
次の瞬間、嬉しそうに手を振ってくれるマリナの隣に、妙に顔が濃い色黒の男が現れ
『あ、どうもお久しぶりです、あの時はウチの家内がお世話になりました』
「お、俺からマリナさんを奪ったタイ人!」
なんとそこに出て来たのはマリナを奪った憎きタイ人、相変わらずエラが深い
『今こっちは幸せにやっているんで、これからも、家族で応援したいと思ってます』
『子供達みんなで観てまーす!』
『あとそれと失礼やと思うんですけど、ウチの家内、マリナが……誰やっけ?』
『高垣楓ちゃん!』
『その楓ちゃんって子のサインが欲しいみたいなんで、今度ウチに送って下さい』
『待ってまーす!』
物凄い幸せアピール全快で笑いながら、更に図々しくアイドルのサインを送ってほしいと催促した後、あっさりと消えて行くマリナ夫婦。
すると仮面ノリダーは全身からワナワナと力が沸き上がり……
「タイ人貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
マリナからの声援ではなくタイ人に対する憎悪、それがノリダーの新たな力となったのだ。
「こんな所で負けてたまるかぁ!」
「うおぉ! ノリダー! お前まだこんなにも力が残っていたのか!」
収まりきらない怒りと共に、ぴにゃ男を弾き飛ばすと、ノリダーは
「ノリダージャンプ!」
天高く飛び上がり、空中でグルグルと高速回転した後……
「アンドキィークッ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
トドメの一撃、ノリダーキックを豪快に炸裂させ一気に逆転
追い詰めて来たぴにゃ男を反対にヌルヌルスライダーの所へ吹っ飛ばす。
「ヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌル! どっぼーん!」
哀れぴにゃ男はそのままローション付きスライダーの上を滑らかに滑りながら大きな音を立てて着水
そして同時に彼が落ちたプールの周囲が大きく爆発。
「じ、次回があるとしたら……ふみふみと絡ませてください……」
そう遺言を残すと、プールにもたれながらガクッと息を引き取るぴにゃ男。
激戦を終えて、遂に仮面ノリダーが強敵・ぴにゃ男を倒した瞬間であった。
「俺はまだ……こんな所で絶対に倒れる訳にはいかないんだ……!」
勝負に勝ち、ゼェゼェと呼吸しながらノリダーはそっと呟く。
「ジョッカー……! いやそんなのよりもまず! あのタイ人だけはを絶対にこの手でぶっ飛ばしてやる!」
「ぐぬぬぬ~! ぴにゃ男がやられるなんて~!」
ジョッカーよりも先にあのマリナを奪ったタイ人に対して強い殺意を燃やしている中
ぴにゃ男がやられたことを確認しに来たしまむー大佐が、ようやくパイを拭き落とせた様子で歩み寄って来た。
「ですが次こそ負けませんよ仮面ノリダー! 次はもっと強い怪人を作って! もう一度あなたを倒しに……」
「せぇい!」
「え、ちょ! 止め……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こちらを指差しまだ台詞の途中であった彼女を、ノリダーは容赦なく腕を掴んで目の前のヌルヌルスライダーにほおり投げる。
しまむー大佐は悲鳴を上げながら、そのままあえなくローションまみれになりながらプールへとドボンと滑り落ちてしまった。
「うぇ~パイの次はヌルヌルで最後に水びだしなんてぇ~……」
「かめ~ん! ノリダー! ニィ☆」
プールの中で全身ずぶ濡れになりながら、すっかり疲れてヘトヘトになってしまった彼女をよそに
坂の上でノリダーはバシッと決めポーズを取って見せるのであった。
こうして新たなる強敵・新生ジョッカーとの戦いを見事に勝利で飾った仮面ノリダー。
しかしジョッカーの壊滅と、マリナを奪ったタイ人を倒すまで、彼の戦いは決して終わらない
頑張れ仮面ノリダー
この世界の悪に立ち向かえるのは、君しかいないのだから
「よし、マリナさんが欲しがってたサイン貰いに行ってこよ!」
「おい武内! 楓さんって子どこ!? ちょっとサイン頂戴サイン!」
仮面ノリダーの戦いはこれからも続く。
という事で本作はこれにて完結です、ここまで読んで下さった読者の皆様、ありがとうございました。
本作を書いていく内に最近の子の間では仮面ノリダーってあんまり知られてないんだなと、世代の違いにちょっぴりショックを受けた私ですが
正直やりたい放題に最後まで書けたので個人的にはそれだけで大満足です。
感想を書いて下さった方もありがとうございました、無事に完結できたのは皆さんのおかげです。
それではまたどこかで