俺と智音が付き合い始めてから1週間が経過した。
あれから俺たちは、大変仲の良い素敵なカップルとして学校全体に受け入れられていったのと同時に、俺と智音は毎日登下校から休み時間まで、一日の大半を一緒に過ごすようになった。
しかし、智音と付き合い始めたあの夜、俺が想像していた不安は未だ拭いきれずにあり、智音に勇太の事を直接尋ねたとしても、何故俺が知っているのかという話になってしまうので、一人悶々と考えざるを得なかった。
「おーい、魔法使い。一緒に帰ろ!」
帰りのHRが終わるとすぐに、智音は俺の席までやって来て、そう誘う。
「よーし、それじゃあ帰るか」
俺は机の横に掛けていた鞄を手に持ち、もう片方の手で智音の手を取る。
すると智音は嬉しそうな表情をしながら、俺の手をぎゅっと握り返してくれた。
「こうやって魔力はちゃんと補給しないとね!」
本気なのか照れているのか判別がつきにくい言葉を言う智音だったが、どちらにしろ喜んでくれているようなので良しとしよう。
そうやって、教室の中から二人で恋人らしくイチャついていると、まだ帰っていなかった同級生達が、
「ヒューヒュー、今日も暑いね」
「結婚式には招待しろよー!」
といった風に、俺と智音を囃し立ててくる。
流石の智音もこれは恥ずかしかったらしく、また耳まで真っ赤に染めながら、あぅあぅ言って狼狽えている。
そういう俺も、クラスメイト達からほっこりした眼差しを向けられてしまうのは大層恥ずかしい。
結局、俺たちはそんな生暖かい目から逃げるように教室を飛び出したのだった。
「そうだ智音、明日何か予定が入っていたりする?」
学校から出てすぐ、俺は智音に明日の予定を確認する。
「ううん、明日は特に何も無いよ?」
俺が自分の予定を聞いた事を不思議に思ったのか、智音は少し首を傾げながら答えてくれた。
何故俺がそんな事を聞いたかというと、
「ならさ、明日俺とデートしてくれないか?」
智音をデートに誘う為だ。
その俺の誘いを聞いた智音は、最初は頭の中で繋がらなかったようで頭にはてなを浮かべていたのだが、すぐに理解をしたようで、口をあわあわさせて慌てている。
「で、で、デート!? 私と柊くんが?」
「あ、嫌だったら別に良いんだけど……」
「ううん、全然嫌なんかじゃない! 私も柊くんとデートしたい!」
あまりの驚きに、思わず柊くん呼びにもどってしまっている智音。
俺が嫌だったかな? と考えていると、智音はそれを否定して自分も望んでいる事を教えてくれた。
「じゃあ、決まりだな! 明日は学校休みだし、朝10時に迎えに行くから」
「うん! 楽しみにしてるからね!」
満面の笑みで、俺にそう伝える智音。
それを見た俺は明日、何としてでも智音を楽しませようと、心の中で強く決意したのであった。
翌日、いつも通り日が昇る頃に起きた俺は、今日の予定について考えていた。
「あ〜、智音って何好きなんだろう? そういえば俺、智音の事全然知らないんだな」
彼氏としては、初デートは何としてでも成功させたいところ。
しかも、俺には『ルーラ』という瞬間移動魔法があるので、基本的にはどこにだって連れていく事が可能だ。
でも、だからこそ、あまりにも多い選択肢に俺は頭を悩ませる。
「というか、そもそもプランもたてずに、智音をデートに誘ったのは良くなかったな」
後悔先に立たずとはよく言ったものであり、デートの約束を取り付けてからあれこれと考えてしまい、非常に残念な感じになってしまった俺なのであった。
さて、時刻は午前9時30分。
結局あの後考え続けた結果、目的地を動物園へと決めた俺は、まだ約束の時間にならないのかと、待ち遠しい気持ちで荷物を確認していた。
「携帯よし、財布よし。後、必要な物があるとすれば、『ふくろ』の中になんでも入っている、と」
雨具から防災道具まで、俺は全て『ふくろ』で管理している為、たとえ災害が起きたとしても、きっと大丈夫である。
「智音、どんな格好で来るのかな?」
残り30分弱、時間を持て余してしまった俺は、それからしばらくの間、智音の格好について妄想しながら時間を潰すのであった。
ガラガラ
「おはようございますー! 智音、来たよー!」
例の引き戸を開け、玄関から大声で告げた俺。それを聞いて、智音は居間の方から急いでこちらに走ってきた。
「お待たせ! さぁ、魔法使い、冒険の旅に出発しようではないか!」
そう言って、にっこりと微笑んだ智音。
俺はその時、智音の履いているデニム生地の短いパンツから覗く、真っ白で綺麗な太腿をまじまじと見つめてしまっていた。
「あの、魔法使い? えっと、そんなにじっと見られちゃうと、ちょっと恥ずかしいよ……」
「あ、あぁ、ごめん! あんまりにも綺麗だったから、つい目がいっちゃって」
気付いた時には、既に心の声がそのまま口に出てしまっていた。
俺のその心の声を聞いた智音は、更に一段と恥ずかしそうに足を手で隠そうとしている。
そのいじらしい智音の姿を見た俺は、再度口から流れ出るようにして、
「智音、めちゃくちゃ可愛い。マジ天使」
と、言ってしまうのであった。
「はぅ!?」
仰け反って大きく反応する智音。
俺が何がする度に、智音には追い打ちをかけてしまっているようであり、もう降参ですと言わんばかりに智音は両手でバツ印を作っている。
「ま、魔法使い、私の負けだよ……。だから、お願いだからこれ以上私に追撃をかけないでぇ!」
涙目になりながら上目遣いで懇願してくる智音、もとい魔法魔王少女。
このままもっと責め立てれば、一体智音はどうなってしまうのだろうかという好奇心に駆られてしまう俺であったが、今日の目的は楽しいデートであるため、それはさすがにやめておこう。
「ごめんごめん、もうしないから。大丈夫かい智音、動ける?」
「魔法使いに悪気が無いのは分かっているけど、そんなにいっぱい嬉しい事言われたら、私壊れちゃうよ……」
あぁ、もう可愛いな!
このままだと、また同じ事を繰り返してしまいそうになった俺は、空気を一旦変えるようにして、
「よし、じゃあ行こうか智音! 今日は一緒に目いっぱい楽しもうな!」
と、言った。
智音もようやく落ち着いてきたようで、それに対して、
「うん! 魔法使い、よろしくね!」
と返してくれるぐらいまでには回復した。
それから智音に忘れ物は無いかを確認した俺は、智音の手をしっかりと握りながら、『ルーラ』を唱えて目的地に向かうのであった。
『中二病でも愛してる!』第6話をお読み頂き、ありがとうございました。
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