風のガンファイターと氷の狙撃手 作:シュツルム
あいつの事が知りたい? 確かにあんたと同じ本大会初出場だけど、ずいぶん喰い付くわね。違う? あいつが知り合いに似てる気がする?
…………あんた、リアルの詮索はマナー違反よ。え? あいつのリアル知ってるのかって?
だからマナー違反……リアルじゃなくて
そうね、あいつを一言で言うなら…………『奇人』かしら。
あいつを最初に見た、というより戦ったのは、一時的に加入したスコードロンとの戦闘よ。過去にあいつにやられた、というか返り討ちにされたプレイヤーが一時的に組んで、私はその助っ人として参加したの。
なんで参加したのか? ……そうね、普段の私なら、そんなお礼参りみたいな真似をするスコードロンに入ろうとは思わないわ。けど集まってたプレイヤーが、それなりに名前が売れてた面々だったからよ。なのにわざわざ徒党を組む必要があるプレイヤーに興味が出てね。
騙し討ち目的でスコードロンに誘われる例もあるけど、この時の私にそこまでの価値があるか、と問われたら『微妙』って答えられる程度だったから、早々に考えから外したわ。
「目標確認」
その時の私は、スナイパーとして指示された位置でターゲット、要はあいつね。あいつを待ち続けてたの。
『よし、射程に入ったら一発頼む。できたらそれで仕留めてくれ』
「…………了解」
その時はムッとしたわね。私の腕を知ってて、『できたら』なんて言うんだから。
けどそれはそれ、私は撃ち殺すだけって自分に言い聞かせて、あいつが近づくのを待ったわ。射程に入って、引き金を引いた時も「当たった」って感触があった。けど
あいつ、その弾丸を避けたのよ。
「外した!!?」
状況的に予測線が見える筈ないから、後でなんであの時避けられたのか聞いたんだけど、なんて答えたと思う?
【なんか嫌な予感がした】
よ。まあ実際大袈裟って呼べる位な避け方だったから嘘じゃないでしょうけど、その時の私はすごい顔してたわね、きっと。
「ごめんなさい、避けられたわ!」
『あいつだからな、責めねえよ。シノンはポイント移動、着き次第再狙撃だ』
「了解!」
すぐに銃を担いでその場を離れて、予測線が見えなくなるまでの時間稼ぎ。その間は他のメンバーの弾幕。二射目も避けられたら、そのまま援護が当初の予定。
当のあいつは、得物を抜いてこっちに向かって来てたわ。
「本当に、光学拳銃の二丁持ち」
光学銃はモンスター相手にこそ有効だけど、対人じゃフィールド装置のせいであまり役に立たないっていうのは話したわね。
あいつは基本Mob狩りをしてるから、光学銃自体はおかしくないわ。
問題は二丁拳銃。このゲームは予測円の中にランダムで着弾するから、二つ持てばそれぞれでタイミングを計らなきゃいけない。
そんな手間をかけるくらいなら、はじめから軽機関銃とかで弾をばら撒いた方が確実。なのに、あいつは光学銃で二丁拳銃なんて地雷……とまでは言わないけど、戦い辛い方法やってたのよ。
もちろんメリットも無いわけじゃないわよ? 光学銃なら実弾銃に比べて命中率が良いから二丁拳銃もやりやすいし、銃二つだから単純計算でダメージ二倍。いる方向が全く違う複数ターゲットも狙える。
エネルギーパック……光学銃のマガジンね、これも小さいから嵩張らない上に大した重さじゃないから、二丁使っても十分な量が持てるし。ただ、それ以上にデメリットが大きすぎるのよ。
さっきも言ったけど、機関銃で済んじゃうし。しかも光学銃にもそういうタイプはあるし。おまけで光学機関銃もそこまで重く無いから、STRにある程度割り振れば普通に二丁持てるわ。じゃあなんで拳銃使ってるのか? ああ簡単よ。
【二丁拳銃の立ち回りってロマンないか?】
ですって。AGI特化型のアタッカーは珍しくないし、光学銃装備のプレイヤーも普通にいる、二丁持ちは…………かなり珍しいけど、いないわけじゃないわ。けど、全部合わせてそれをさらに煮詰めてトップクラスなんてあいつ位よ。堅実かなぐり捨てて、『ピーキー』より『ネタ』って言葉の方が似合うようなプレイスタイルなのに、理不尽よね。足を止めて重火力を撃ちまくるスタイルも考えてたらしいけど。
……話が脱線したわね。あいつが向かってきたから、当然メンバーも迎撃し始めたわ。
光学銃はプレイヤーには通じないのに、どうして逃げずに距離を詰めたのか? ああ、言って無かったわね。防護フィールドの攻略というか無効方法は、大まかに2つあるの。
1つ目、実弾を用いること。これは言ったわね。
2つ目が距離を詰めること。
防護フィールドが光学銃を完全に防ぐのは、ある程度以上の距離から放たれた物。それが縮まる毎に能力が減衰して、最終的には無効。距離を詰めたことで予測円も小さくなるから、銃をあさっての方向に向けない限りは外す事は無くなるわね。
と言っても、無効になるのは光剣の間合いほどじゃなくても、相当に近い距離だから、まずその前に蜂の巣だけどね。
まあ、あいつもあんたと似た様な奴だったわけだけど。
私は移動中だったから、この時は見てなかったわ。代わりに通信でメンバーの悲鳴と銃声は聞こえてたけど。
『ちくしょう、相変わらず早ぇ!?』
『嘆いてる暇あるなら撃ち続けろ! 牽制にはなる!』
『やってるっての! でもこうも当たらねぇんじゃ叫びたくもなるだろ!?』
後から聞いた話だけど、この時は射線から外れる様に右に左にジグザグに移動してたらしいわ。平地だったからそれだけど、これで天井とか壁とか、まあ要は他に足を着けられる場所があると
続けるわよ。ポイントまでもう少しって所で、通信から聞こえたのよ。
『やべえっ!? 散』
リーダーの焦る声と、それに被せる様に連続した光学銃の発射音が。こっちからメンバーに呼びかけても、何の応答も無いっていうおまけ付きでね。
ポイントに着いて直ぐに確認したけど、メンバーは誰もいなくなってたわ。
今まで横に動きながらだったのが、突然弾幕の中を真っ直ぐに突っ切ってきたんですって。それもさっきよりも速くね。
要は、加減した動きと速さにこっちの目を慣れさせて、そこから本領発揮ってこと。で、あっさり無効距離に詰められて、速射スキル込みの連射で纏めてジ・エンド。
迎撃してたメンバーが誰もいなくなったから、次のターゲットは私なのは自明の理よね。でもアイツの姿も見えなくて、数秒探しちゃったのよね。
後ろから音がして、咄嗟に動こうとしたんだけど、その前に頭に衝撃がきて私も死亡。勿論あいつの銃撃。
なんで私の居場所がバレたのか? ……メンバーの一人が、撃たれる前にポイントに視線向けたんですって。私がポイントに着いていて、援護してくれるって願望が出ちゃったのね。で、そこからは見えないだろうルートで行ってみたらドンピシャだった、らしいわ。
始めがこんな感じだったから、感想が「たぶん凄い奴」だったのよね。私は直接にあいつの戦い見てなかったから。
機会があって、あいつの戦いを直に見てからあいつは強いって確信したわ。詳細は省くけど、それから少ししてあいつと組むようになったのよ。前衛・後衛で分けられるし、組み続けられるくらいには相性も悪く無かったし。
あと、あいつ自身はPKは積極的じゃないけど、狙ってくる奴は多いから迎撃でPvPも多くできたし。PK積極的じゃないかって? さすがに襲ってくる奴は別よ。
剣は使ってないのか? …………少なくとも、私の前で使ってるのは見た事ないわ。なに? あいつが剣使わないのがそんなにおかしいの?
…………はぁ。あんたがあいつを誰と重ねてるのか知らないけど、そんなに気になるなら直接訊けばいいじゃない。少なくとも、余程のことでなければ答えてくれる奴よ、あいつは。
……そう、躊躇う位余程のことなのね……なんで謝るのよ。聞かせてもらってるのに答えられないから? あのね、あんたにも事情があるのはもうわかってるし、プライベートに関わる事でしょ? ならこれ位じゃ怒らないわよ…………そもそも、私には怒る資格ないしね。
ん、なんでもないわ。
そろそろ時間ね。言っておくけど、事情があるからって私は昨日の決勝のこと許してないわよ。もし今日も同じような事したら、絶対に許さないからね。
……へぇそう、ずいぶんな自信じゃない。なら私は、本気のあんたを昨日みたいに撃ち抜いてあげるわ。楽しみにしてなさい、キリト。
…………あなたにも、今日こそ勝つわ。私はあなたの『相棒』なんだって、胸を張って言う為に。『私は強い』って言ってくれたあなたの言葉を証明するために。だから
「首を洗って待ってなさい、『ヴィント』」
続かない