風のガンファイターと氷の狙撃手   作:シュツルム

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ようやく投稿。

続ける気はあるけど、書く気力が沸かない……。


GGO その2

 生体兵器が闊歩すると設定された、とあるダンジョン。その最奥に、このダンジョンのボスが存在する。

 ボスは一見ヤドカリの様なモンスターだ。ただし、巻貝状の殻はまるで岩石のようにゴツゴツとしており、殻から出ている部分はモンハナシャコそのもの、そして体の大きさがまるで違う。ハンマーだけでも、小柄なプレイヤーなら隠れてしまえるほどに巨大だ。

 

 そしてそんなボスモンスターの前面に陣取り、ヴィントが光弾を撃ち込んでいる。防護フィールドが無いモンスター相手の為、距離を取っても光学銃の威力が削がれる事は無い。しかしヴィントは、あえて近距離で戦っていた。

 

「おっとぉ!」

 

 ボスがハンマーの腕を僅かに引いたかと思えば、直後に凄まじい速さで振り抜かれた。ヴィントはボスの挙動から攻撃を察知し、全力で回避する。

 

「うっかり食らったら、俺じゃ一撃死だな。かといって距離取るともっと面倒だしなぁ」

 

 このボス、一定以上の距離を取ると目から極太ビームを撃ったり、殻から棘が生えて追尾ミサイルを放ったりとしてくるのだ。ボスの後方には攻撃が飛んでこないが、殻で覆われていて碌にダメージが入らず、結果ほぼ真正面戦闘を強いられているのだ。

 さらに

 

「で、ある程度ダメージ与えると、殻に籠って電撃纏いながら回転と回復、か」

 

 しかも回復に制限がない。即座にではなく、時間経過による回復なので中断させれば止まる。だが、中断方法がこの状態で表れる本体とは別のHPバーを0にする、というものなのだ。

 通常時に比べてダメージが通る様にはなっているが、それでも頑強なため高い破壊力が必要になる。できなければ回復を繰り返され、こちらが息切れしてしまうのだ。

 だが実は、HPを0にし、かつ殻ごと破壊できる方法がある。殻の頂点部が宝石のルビーのようになっており、それもボスが殻に籠った状態になるとHPバーが出現する。それを破壊するのだ。しかも破壊できるとボス撃破のドロップアイテムにボーナスが付く。

 しかし、殻は正三角形ではなく、殻に籠っても傾いた状態であるため、回転すると一カ所に留まらないのだ。近づこうにも攻撃判定のある回転でできず、おまけに遅くではあるがボス自体が移動もする。

軌道上に撃っても全てが当たる訳ではない上に、ルビー自体もやはり硬い。ならば殻自体を攻撃して回復を中断させた方が堅実なのだ。もちろんルビー破壊を優先するプレイヤー達もいるが、大概は失敗する。

そして残念ながら、ヴィントには高速で動く物を撃ち抜けるだけの狙撃能力は無い。そう、ヴィントには。

 

――――ヴィントの視線の先で、そのルビーが撃ち抜かれて粉々に砕けた。

 

それに呼応するようにルビーのあった場所からヒビが広がり、最後には殻も先程のルビーの様に砕けた。

 

「ギイイイイイイイイッ!?」

 

殻が無くなった事に動揺したのか、ボスが金切り声を上げる。殻の中にあったボスの体も外に投げ出されている。

 

「ナイススナイプ」

 

 呟いたヴィントがボスの後ろに回り、二丁拳銃を向け、そのまま連射した。頑強な殻の中にあった体は防御力が無いに等しく、今までが嘘のようにダメージが通る。

 ヴィントの正面に体を向けようとするボスだが、それを待ってやる義理は無い。常にボスの背後を取り、連射を続ける。

そして撃破までもう少しというところでボスの挙動が変わる。ぶるぶると震えだし、体の色が赤く染まり始める。

このボス、HPが一定値以下になると自爆し、ヤシガニのような小さなモンスターを無数に撒き散らすのだ。地味にダメージを与えてくるのに倒しても何もドロップせず、全て倒さないとボス撃破にならないというボスの最後の攻撃、というより嫌がらせだ。

だが、爆発する寸前に再びの狙撃がボスに命中。HPが0になり、オブジェクト片となって爆散した。

 

 ヴィントがそれに何も言わず、銃を腰に戻しながら狙撃元に身体を向け、サムズアップする。

 その先では、ヘカートⅡを撃ったばかりのシノンが、ヴィントにサムズアップを返していた。

 

 

 

 

 

 ダンジョンから戻り、グロッケンの酒場の1つでヴィントとシノンが成果を確かめている。

 

「道中の雑魚モンスターで各種弾薬にエネルギーパック、レア雑魚からコルトM1892、ベレッタM1915、と」

「ボスは売却専用のボーナスジュエルと、ブローニングM2重機関銃……全部売りね」

「売りだな」

 

 結果、全て売却が決定した。

 

「まあM2がそこそこで売れるだろうし、悪くないだろ」

「そうね」

 

 ブローニングM2はGGOのレアリティとしては高い方だが、さすがに2人のプレイスタイルには合わな過ぎた。その重量から、移動すら捨ててその場に留まり続け、弾丸を撃ち続けるスタイルしか取れないからだ。

 

 ――――なお、このブローニングM2、2人の予想に反して高値で売れ、さらに買ったプレイヤーが第3回BoBで使用する事になる。

 

 

 

 

「この後はどうする? 下のダンジョンか、フィールドでMob狩りでもするか? それともショップ回って掘り出し物探すか?」

「それもいいけど、ちょっと話いいかしら」

「? おう」

 

 ヴィントがいくつか候補を挙げるが、シノンがそれを遮り、話題を挙げる。

 

「スコードロンに入ろうと思うの」

「……………………そうか」

 

 シノンの突然の発言に、ヴィントは返答に数秒を擁した。

 

「いやうんまあ、俺も前に解散切り出したし、お前が俺と組む理由が無くなったってことだから、喜ばしいことだよな、うん」

「え? …………いや違うわよ!? 別に用済みになったとかじゃなくて!?」

「気にするな。元々そういう関係だったんだから」

「だから違うわよ! 省略した私も悪いけど、ちゃんと話を聞いて!!!」

 

 

 

 

 

「第2回BoBで9位だったダインがリーダーのスコードロンに誘われて、自分より上位だったダインの偵察がてら入ろうと、か」

 

 と言われても、ヴィントにはダインの姿は浮かばなかったのだが。そもそもBoB自体、シノンと闇風が出場しなければ暇つぶしで見ていたかもしれない程度だったので、他の出場プレイヤー達を特に気にしていなかった。

現在ヴィントの頭に残っている本戦出場プレイヤーは『シノン』『闇風』『ゼクシード』の3人だけである。

 

「そう。向こうから誘われたんだから、堂々とできるでしょ? 向こうにしたら、ついでにあんたも、って思惑もありそうだけど」

「パス」

「でしょうね」

 

 シノンが言うにはPvPがメインのスコードロンらしく、わざわざ入る理由もヴィントには無かった。

 

「となると、俺は当面はソロに戻りだな」

「別にスコードロン所属になったからってコンビ活動しちゃいけないわけじゃないけど、どうしても私はあっち優先になっちゃうわね」

 

 ゲームとは言っても、組織に所属しているのにその組織を蔑ろにするのは褒められることではない。となれば、シノンがスコードロンとしての活動を優先するのはごく自然なことだ。

 リアルの方の問題であればまた別だが。

 

「それはそうとヴィント」

「ん? …………なんだよ、その顔」

 

 シノンがニヤニヤしながら、ヴィントを見ている。

 

「さっきは随分と動揺したわね。私がコンビ解消すると思って、そんなに淋しかった?」

「…………そうだな。勘違いだったけど、結構応えた」

 

 からかうつもりだったシノンだが、ヴィントの予想外の返答に間の抜けた表情を晒した。一瞬からかい返すつもりかと考えたが、ヴィントの様子から本心だと分かる。

 

「…………あんた、熱でもあるの? 大丈夫? ログアウトしたほうがいいんじゃない?」

「おい」

 

 あんまりな言葉に、ヴィントが声を低くして返す。

 

「ったく、下のダンジョンで雑魚狩り、決定! 行くぞ!」

「あ、ちょっと待ちなさいよ、ヴィント」

 

ヴィントが苛立たしげに席を立って酒場の外に向かい、その後をシノンが追い駆ける。

 シノンの顔には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。

 

 なお、Mob狩りはヴィントの無双状態だった。

 

 

 

 

 

 

 シノンとのコンビ活動を休止してから1週間、とある高難度ダンジョンにヴィントの姿があった。

 ソロ時代からヴィントは時折様々な高難度ダンジョンに潜り、マッピングやボス戦を行っていたのだ。

 装備は全てショップで買えるもの(高価な物込み)で統一し、死亡時のドロップ品を補充できるようにしている。

今のヴィントはフード付きの黒コートは着ておらず、GGOでスタンダードな防具装備となっている。また、コート入手前に装備していた防毒機能付きのフルフェイスマスクを被っているので、やはり顔は見えない。

 高難度ボスをソロで戦うのは当然無謀に近い。ヴィントも幾度となく死亡している。

 だが、稀に戦いが上手く嵌まり、時間を掛け、装備をほとんど消費して倒せる事がある。そしてその場合、ヴィント自身が使えるかどうかはともかく、ほぼ確実に高レアアイテムが落ちる。

 この日は、その上の物だった。

 

「…………今これ出るか」

 

 ウインドウに表示されたドロップアイテムは、間違いなく激レアに分類され、ヴィントよりもシノンが扱うべき銃だ。ヴィントが後ろを振り返るが、当然そこにシノンの姿はない。

 

「………………俺、こんなに女々しかったのか」

 

 というかシステムにも見抜かれてるのか? と、ヴィントが自己嫌悪しながらウインドウを消す。

ドロップアイテムは一度オブジェクト化する、またはストレージから移動させると重量が発生する仕様なので、今はそれを避けた。

ちなみに、先日行われたアップデートで、プレイヤーのデスペナのドロップが既にオブジェクト化されていた物はその場に落ちる仕様に変わった。一定時間内は撃破したプレイヤーのみ拾える仕様にはなっているが、取りに行く手間とドロップ品の重量が無視できなくなっている。

 

「どうか死にませんように、と」

 

 装備は殆ど使い切ってしまったので、モンスターと出会っても逃げの一択だ。ボスのいた場所から移動を開始。高いAGIと軽業スキルをフルに使い、ヴィントはダンジョン脱出を目指す。

 

 

 

 

 

 

「で、無事にグロッケンに辿りつけたわけね」

「そう」

 

 何度かモンスターと遭遇し、その内数体と交戦が避けられなかった結果、全ての装備がエネルギー切れを起こすも、ヴィントはなんとかグロッケンに到着。

 ドロップ銃の保管とエネルギー補充をするために移動しようとした時、スコードロンの集会を終えたシノンと偶然に遭遇。そのまま互いの報告会と移行した。

 

「けど久しぶりね、そのマスク。1か月以上着けてなかったわよね」

「性能はいいんだけど、それはあっちも同じだしな」

 

 ヴィントが自身のマスクを指で突きながら苦笑する。今ヴィントが着けているフルフェイスマスクは、現実のサバイバルゲームなどでも着けられるようなデザインなのだが、赤外線ゴーグルを兼ねているためなのか、目のグラス部分が赤く光るのだ。

 夜間戦闘でも使う事ができるが、その発光によって相手に位置がバレるというデメリットも持ってしまっている。

 目を赤く輝かせながら狙ってくる様は、中々恐怖を煽るかもしれないが。

 

「まあマスクは置いといて、ダインのスコードロンはどんな感じだ?」

「…………はぁ」

「まて、なんで溜息」

 

 ダインのスコードロンは確かに対人メインではあった。だが、自分達が確実に優位に立てる相手だけを狙い、危機らしい危機もなく撤退する安全第一の、と注釈が付いたらしい。

 堅実とも言えるし、プレイスタイルを否定する気は無いが、どう考えても強プレイヤーと戦える可能性は低い。早まったと直ぐに後悔し、偵察のためとシノンは割り切る事にしているそうだ。

 この点で言うと、シノンとヴィントのコンビは互いが有名プレイヤーである事もあり、ドロップ目当て以外にも名を上げる目的で襲撃するプレイヤーもいるので、さほど困っていなかった。

 

「それで、その銃ってなんなの?」

 

 シノンの疑問に、ヴィントは無言でウインドウを操作し、それを見せる。

 

「…………え、これ、実装されたの?」

「バグじゃなければ、実装されたってことだな」

 

 ヴィントが続けてウインドウを操作し、今度はシノンのウインドウが展開される。そこには、銃をシノンへ譲渡するというメッセージと承諾・拒否ボタンが表示されていた。

 

「…………いいの?」

「俺じゃあ使えないことは無いけど活かしきれないし、過重ペナルティ受けてまで持つ程じゃないしな。そいつもお前が持ってる方が喜ぶだろ」

 

 いらないのなら売るけど、とヴィントは言う。シノンは少し悩んだが、承諾ボタンを押して銃を受け取った。

 

 

 

 

「シノン、集会終わったってことは、今日はもうスコードロンの活動ないんだろ?」

「まあね。銃のお礼も兼ねて、用があるなら付き合うわよ」

「なら、ショップ回り同行しないか? たぶん、今日の俺はツいてる気がしてな、なにか掘り出し物見つかるんじゃないかって思うんだ」

「へえ、あんたがそう言うなんて初めてじゃない? OKよ」

「よし」

 

 シノンの同意を得て、ヴィントはグロッケンに存在する専門店を頭の中でピックアップしながら席を立つ。

 

「その前に保管ルーム寄らせて。過重ペナルティ受けちゃってるの」

「…………悪い、頭から抜けてた」

 

 と同時に、シノンから至急の案件が飛んできた。

 GGOでは各プレイヤーに『保管ルーム』というアイテム収納スペースが与えられ、拠点となる街に配置される。

 GGOのプレイヤーにはストレージ内のアイテムも含め、装備の合計重量に制限があり、これを越えると過重状態となり、ペナルティで移動速度が極端に遅くなってしまう。それを回避するために、今は使用しない銃や弾丸、素材アイテムなどを格納しておくのだ。

 STRを伸ばせばその制限の上限を上げられるが、制限自体が消えるわけではない。STRが伸びていない、または重量のある武器を持つプレイヤーは、油断すると制限をあっさり越えてしまう為、保管ルームには大変お世話になる。

 余談ではあるが、この保管ルームへは直接赴く事も出来る為、ガンマニアなコレクターはここで揃えた銃器を眺めて恍惚としているという話もある。

 

ヘカートは今回のスコードロン活動に必要なかったので所持していなかったが、代わりにアサルトライフルをメインに据え、その上のドロップ銃はさすがに重量制限オーバーだったらしい。

場所考えて渡すんだった、と後悔しながら、シノンと共に歩みを進める。だがその足取りは、とても軽かった。

 

 

 

 

 

「……………MP7にP90が新品でこの値段、とんでもない掘り出し物ね」

 

 いくつもショップを回り、大型ショップではなく個人経営と称せる様な小さな店で、シノンの目に大安売りのレア銃が止まった。

 

「買うか?」

「う、どうしよう……。サブで使うにしてもゴツすぎる気もするし」

「でも他のプレイヤー見たら買われるよな、これ」

「……………………買うわ!」

 

 シノンはありえる未来を見て、購入を決意。安くない買い物ではあったが、十分な戦果だ。

 

「ヴィント、あんたは何かあった?」

「スカ」

 

 どうやら今日運が良いのはヴィントではなく、シノンだったようだ。

 

「ま、出会えるかは運次第。素材にできる銃も安いし、手持ちをカスタムしてグレードアップするさ」

 

 ヴィントが指差したのは、壁に展示されている1丁のリボルバー実弾拳銃。

 

「……………………いや待ってプファイファー・ツェリスカってあんた」

「冗談だよ」

 

 そもそもコレ素材にしたって俺じゃ使えない物にしかならんって。ヴィントは笑いながら手を下ろす。

この銃、世界最強の拳銃の称号を持ってこそいるが、使う銃弾は象などの大型動物を狩猟するための大口径マグナム弾で、本体もそれを撃ち出す為に超大型化し、反動こそ機構の工夫でそれなりに軽減できているが、『重量及び巨大さ』『拳銃としては過剰な威力』『安全性の欠如』から拳銃として扱うには『全く』適していない代物である。

 もともと称号のために実用性を完全無視して造られた銃だから当然ではあるが。

 ステータス次第で運用自体はできるだろうが、そうまでしてこの銃を使う価値はおそらくない。

 が、やはり『最強』という肩書の強さか、それなりの人気がある銃である。現実ではハンドメイドの受注生産の銃だが、その実用性からか、GGOでは価格こそ高いがレアリティはそれほどではない。

 

「本当はこっち」

 

 次にヴィントが出した銃は、きちんと『拳銃』と呼べるものだった。また、かなり有名な銃でもある。

 

「…………弾は?」

「.50AE」

「そっちも大概じゃない」

 

 だが、質問の返答に、シノンは呆れたように呟く。

 

「ほんと、あんたに撃たれるプレイヤーが気の毒ね」

「シノン、鏡持ってないか? お前の前にかざそうと思うんだが」

「…………真っ黒い影が弾幕の中を高速で寄ってきて、近づかれたら死ぬのよ? まるで死霊じゃない」

「前に、遮蔽物ごとプレイヤー狙撃したよな? 狙われたら死ぬって意味はお前も相当だぞ」

 

 なお、2人を知る第三者、例えば闇風などがこの場面を見たら、こう呟くだろう。

 

【どっちもどっちだ】

 

 と。なおも軽い言い合いを続けた2人だが

 

「やめるか。不毛だ」

「そうね」

 

 簡単に話を止めた。互いに悪感情はないため、引き下がる時もあっさりしたものだった。

 

 この後さらに2人は2、3軒ショップを回り、それでもまだ時間の猶予があったことも手伝って、シノンが譲られた銃の試射がしたいという事で地下ダンジョンに赴くのだった。

 




アリシゼーション後半の放送始まる前に、GGO終わらせたかったんだけどなぁ……。
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