風のガンファイターと氷の狙撃手   作:シュツルム

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書く気はあるんです。続ける気もあるんです。でも書けないんです……!


GGO その5

「ふうん、新川がそんなことをねぇ……」

 

 GGOでシノンと合流したヴィントが、シノンから恭二が出場を望んでいると知らされた。が、反応はシノンの想像よりはるかに乏しかった。

 

「で?」

「で、って……」

「新川がそう思ってるのは分かった。その上で、お前は俺にどうしてほしいんだ?」

 

 フードの影で見えないが、ヴィントが真っすぐに自分を見ているのがシノンには分かった。

 下手な誤魔化しは要らない、とヴィントが告げているに感じ取れたシノンは、純粋に自分の望みを口にする。

 

「…………BoBに出て、私と戦ってほしい」

「ん、わかった」

 

 そして、それに対するヴィントの返答はあっさりした物だった。

 

「……へ?」

「いやだから、出るよ。BoB」

 

 つい間抜けな声が出てしまったシノン。だが無理もない。アレコレ考えていたのは何だったのか、と言いたくなるほどに、望みの答えを出されたのだから。

 

「……ねぇ」

「ん?」

「もしかして、初めから私が頼めば出てくれたの?」

「かもな。俺がPvP好まないって知ってるお前がわざわざ頼むんだから、それだけお前の中で大事なことだろ? だったら、出場って選択肢も出るさ」

 

 茶化す様子もなく、ごく当たり前のように言ったヴィントに、シノンは気恥ずかしさを覚えた。

 

「そ、そうなんだ。けど新川くんじゃダメなのに、なんで私なら良かったの?」

「……ま、こっちの事情だよ」

「? それってどういう……」

 

 曖昧な返答にシノンが問い返したが、ヴィントが持っている飲み物を口に運び、中身を全て空けるように容器を傾け、それ以上話す気は無いのだと察した。

 

「じゃあ、出ることにしたわけだし、行くか」

「どこへ?」

「どこって、総督府だよ。登録」

 

 容器を空にしたヴィントが立ち上がり、目的地へ赴こうとするも。

 

「登録は当日にした方がいいわよ」

「? なんでだ」

 

 シノンから、やんわりと制止された。

 

「予選のトーナメント表は登録したプレイヤーがすぐに表示されるから、前もってやっておくと出場するって周りにバレちゃうのよ。で、始まるまで偵察の目が増えちゃうわけ」

「なるほど。けど、お前含めて、前の本大会出場者とかはもう今更じゃないか? お前だってダインの偵察してたし」

「まあ、ある程度はもう仕方ないけど、確定させて増やす必要もないでしょ」

 

 実際あんたもマークだけはされてたと思うわよ、とシノンは告げた。

 

「あ~~時々こっちを見てた奴らはそれか…………暇なのか?」

「身も蓋もないわね、あんた。第一、あんたが出るんだから無駄にならなかったわよ」

「そりゃそうだ」

 

 シノンの返答に、ヴィントが納得したように頷いた。

 

「なら、どうする? BoBに備えて、俺に手の内見られないようにしばらく離れとくか?」

「あんまり意味がない気がするけど……やれることはやっておくべきね。お願い」

「ん、了解」

 

 一時的なコンビ解消が決まり、BoBが始まるまで、互いに牙を研ぐことにしたシノンとヴィントであった。

 

 

 

 

 

「朝田、掲示板に『遺跡ダンジョンでレアモンスター目撃情報あり』、ってあるぞ」

「行く」

 

 なお、リアルではごく普通に会っている2人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 BoB予選当日、シノンはサンドカラーのマフラーこそ変わらずだが、シャツにジャケット、ズボンという私服風の装備で総督府に向かっていた。少し遅れると告げたヴィントが、合流と同時に受付ができるよう、総督府を待ち合わせ場所に指定したためだ。

 

「あのー、すいません、ちょっと道を……」

 

 そんな中、不意にシノンは後ろから声を掛けられた。

 

「(またか……)」

 

 声を掛けてきた相手に気付かれぬよう、シノンは静かに、だが面倒そうにため息を吐いた。

 ソロで活動していた時期、シノンは何度もナンパされたことがあるのだ。自身が実力者として名を知られ、ヴィントとコンビを組んでいることを知られてからは、そんな猛者は激減したが(代わりに嫉妬に駆られたプレイヤーがヴィントに襲撃を掛けることは増えたらしい)。

 今度はどんな男だ、と振り返った。

 

 

 

 そこにいたのは、透き通るように白い肌と長い睫毛に縁とられた眼、艶やかな長い黒髪と、シノンとは別系統で美少女と呼べるだろうプレイヤーだった。

 明らかに男ではない。また、現在のVRゲームのほとんどは、精神・肉体双方に無視できない悪影響が出るとされているために、アバターを異性に変更することはできず、GGOも例外ではない。

 

「…………このゲーム、初めて? どこに行くの?」

 

 女性プレイヤーならば、周りにちらほらいる男性プレイヤーではなく自分に声を掛けるだろう。そう納得したシノンは警戒心を解き、少女に微笑を浮かべながら質問した。

 

「えっと……はい、初めてなんです。どこか安い武器屋と、総督府っていうところに、バトルロイヤルイベントのエントリーに」

 

 少女がどこか躊躇いながらも目的をシノンへと話す。

 

「バトルロイヤルって…………まさか、BoB? え、でもこのゲーム始めたばかりなんでしょ?」

「まあ、はい。あ、でもステータスは大丈夫です。これ、コンバートなので」

「あ、そうなのね」

 

 コンバートとは、『ザ・シード』で生成されたゲーム間でキャラクター・データを移動させることである(『ザ・シード』による生成ではないが、同じシステムを使っているALOもコンバート可能)。

 データはコンバート先のステータスに適応されるので、仮に『レベル1000が上限のゲームでレベル800のキャラ』がレベル100が上限のゲームにコンバートした場合、自動的にそのゲームでは『レベル80』のキャラとなり、ステータスもそれに応じたものとなる。

 コンバートしたからと、ステータスに+αが付くわけではない。にも拘わらず「コンバートだから大丈夫」と言うこの少女は、元のゲームではそれなりの猛者なのだろう。

 

「けど、コンバートしてすぐにBoB出ようなんて、根性あるね」

 

 始めたばかりのゲームの最強決定戦に出るのは、ある意味そのゲームのプレイヤー達を舐めているともとれるが、シノンは素直に少女の度胸を称賛した。

 

「いいよ、ついてきて」

 

 

 

 

 

 

 

 少女が連れてこられたのは、まるでアミューズメントパークのような店だった。店の中は様々な色の光や音楽で溢れ、店員は露出の多い衣装を纏った美女NPC達だ。

 彼女たちの手や、壁に映し出されているメニュー・ウインドウにずらっと並んでいる黒光りする銃が無ければ、ここがガンショップだと気づかないだろう。

 

「初心者はここでまず好みの系統の銃を、って感じかな。初心者向けな分、レアな掘り出し物とかはまずないけど」

「なるほど」

「さてと、あなたのステータスタイプは? 少しだけど、アドバイスするわよ」

「えっと、筋力優先、次が素早さ……かな?」

 

 ゲームが変わっているためか、少女はやや疑問形になりながらもシノンの質問に答えた。

 

「STR-AGI型かぁ。BoBなら、光学系じゃなくて実弾系。となると……」

「あの、光学系って……」

「ああ、このゲームの銃はね、大まかに分けて2種類あるの」

 

 シノンが少女に、簡単な説明をする。

 1つは『光学銃』。軽量で安価、射程も長く、命中精度も良いが、『対光弾防護フィールド』で防がれるデメリットがある。しかもフィールド発生器の販売価格もそこまで高くなく、形状もベルト型など様々だがいずれも軽量かつ動きを阻害しないものが多く、現在のGGOではプレイヤーの標準装備状態になっているため、対人戦では基本使われない。逆に、フィールドを持たないMob用装備としてはかなり有用。

 もう1つは『実弾銃』。威力も高く、防護フィールドを貫通できるが、弾倉などが重く嵩張り、さらに風や湿度によって弾道が影響を受ける。価格も光学銃に比べてかなり高い。

 また、光学銃は形状も名称もすべて架空。反対に実弾銃は現実に存在している・した銃がそのまま使われている。

 

「こんなところ………あれ、待って。あなたコンバートしてきたばかりなのよね? じゃあ、お金」

「あ」

 

 説明が終わったと同時に、シノンが無視できない大きすぎる問題に気付いた。『コンバート』で移動できるのは『キャラクター・データのみ』で、装備や所持金は対象外となる。

 つまり

 

「せ、1000クレジット……」

 

 コンバート先での所持金は、初期金額となってしまうのだ。

 

「…………光学で小型のレイガンならいけるけど、実弾系にすると中古のリボルバーも怪しい、かな」

「せ、性能は……」

「ゲーム始めたばかりの初心者が買えるくらいだから……」

 

 ちなみに、中古は新品より割安で買える代わりに、『ランダムで弾詰まりが起こる』『命中率にマイナス補正が掛かる』『銃自体の耐久度が低い』などのデメリットが付与されている。

 整備・修復でそういった物は取り除けるが、別途で素材や資金が必要なので、滅多に出回らないレア品でもなければ中古で購入するプレイヤーはまずいない。

 

「…………ねぇ、もし良ければだけど、お金貸そうか?」

「え!? い、いえいえ、さすがにそこまでしてもらうのは」

 

 初対面の人間からというのもだが、ベテランからの過剰な援助は褒められる物ではない。困っているとはいえ、さすがに少女もその申し出は断った。

なにか、手っ取り早く稼げる手段はないか、と少女はシノンに問いかける。あることはあるけど、と前置きし、シノンは少女を店の一角に案内した。

 

 

 

 

 

 そこにあったのは、西部劇に出てくるような建物の入り口部分と、その前に立つ、明らかにロボットとわかるガンマンを模したNPC。さらにNPCの前には、両端に柵を建てられた幅3メートル、長さ20メートル程の細長い木製(のように見える)通路が伸び、NPCと通路を挟んだ反対側にゲートと認証用の掌紋スキャン端末がある。

このゲームは簡単に言えば『弾避けゲーム』だ。プレイ料金は500クレジット。

NPCの放つ弾丸を避けながら細道を進み、10メートル進めば1000クレジット、15メートルで2000クレジット、NPCに触れることができれば、ゲームクリア賞金+今までの参加者がつぎ込んだ金額が全額バックされる。現在の合計金額は28万クレジットだ。

 結構貯まったわね、とシノンが呟く。

 

「す、すごい金額ですね」

「金額は、ね。クリアできるかは別だけど」

「え?」

「ちょうどプレイする人がいるから、見てて」

 

 少女とシノンの視線の先で、帽子込みの迷彩軍服とサングラスを付けた男がゲート前でスタートを待っている。少し離れた場所で2人の男が声援を送り、本人もやる気が満ちているのがわかる。

 ゲートが開いたと同時に男は勢いよく駆けだす。が、数歩程度で急静止、片足立ちの間抜けなポーズを取ったと思えば、その身体を避けるように、ガンマンから放たれた銃弾が通り過ぎた。

 それを見た少女にシノンが『弾道予測線』の説明をしている間も、男は別のポーズを取ったり、屈んだりしながら進んでいく。

 だが7メートルまで進んだ時、ガンマンの動きが明確に変わった。リロードが秒に満たないほど高速になり、一定間隔だった射撃が変則的になったのだ。

 2発は問題なく躱せたが、3発目で姿勢を崩され、続けて3発の弾丸が男を貫き、ゲームオーバーとなった。

 街中のミニゲームなのでプレイ料金以外なにも失っていない男だが、肩を落としてトボトボとゲーム範囲から出て行った。

 

「ね。左右にあまり動けない中で、あのインチキ染みたリロード速度と早撃ちに変則リズムのおまけ付きで、ほとんどの人はあの辺りが限界。進めば進むほど、予測線と実射撃のタイムラグも無くなっていって、予測線が見える頃には手遅れ。15メートルラインを超えると、ノーモーションでレーザー攻撃してくるし」

「れ、レーザーですか!?」

 

 さすがに予想外だったのか、少女が驚いたように声を上げ、シノンは予想通りの反応にやや笑いながら続きを話す。

 

「私も初めて見たときはそんな反応だったわ。まあ、レーザーを見たのはアイツがプレイした時だけだけど」

「アイツ?」

「知り合いがね、このゲームをクリアしてるの。1回目は反応はできたんだけど、掠っちゃってね。後続が居なかったから再プレイして、そのままクリア」

 

 勢いつけて叩いて、NPCの頭が数回転してたわ、と、シノンが思い出し笑いしながら少女に話した。

 

「今のところクリアしてるのはアイツだけ。それだけ難易度が高いのよこのゲーム。クリアできるってわかったからか、一回リセットされた賞金があそこまで貯まるまでプレイされてるのにね」

「なるほど」

「……え、ちょっと」

 

 一通り説明し、少女も別の手段を考えるだろうと思ったシノンだが、少女はそれと裏腹にゲームに向かおうとしていた。

 

「ちゃんと聞いてたの? これ、難易度が高いって」

「いやぁ、物は試しと言いますし、もしかしたらって」

 

 どうやら少女はプレイする気満々のようだ。これは止めても無駄かな、とシノンは思った。だが、アドバイスを申し出たのは自分なのだ、形は違うがこれも範疇だろうと、シノンは考えを変えた。

 

「…………このゲームはNPCの目線である程度射線を読めるわ。レーザーは、撃つ瞬間に薄ら笑いするそうよ」

「え?」

「がんばって」

 

シノンがポンと少女の肩を叩き、少女を送り出す。少女は何か引っかかる物があったのか、数瞬シノンを見ていたが、すぐにゲームへと向かい、参加料を支払ってスタートを待った。

 

 

 

 

 結論から言えば、少女はゲームをクリアした。先ほどの男の様に立ち止まることなく、射線の隙間を縫う様に駆け抜け、変則リズムやレーザーもスライディングや跳躍を駆使して躱し、そのままNPCにタッチ。

 クリアを祝うファンファーレが鳴り響き、シノンを含めたギャラリーからも、それに被せるように拍手や指笛が響いた。

 その最中にシノンの前にウインドウが開き、それを見たシノンが目を見開いたが、キーボードを少し操作した後、すぐにウインドウを閉じた。

 

 

 

 

 資金を得たことで、少女の装備選びを再開。選り取り見取りとまではいかないが、良い性能の銃が買える現状で少女が選んだ物は、しかし。

 

「このゲームでそれをメインにする人は初めて見たわよ。まあ、最終的には好き好きだけど」

「そうそう。普通に売ってたんだから、これだってちゃんと戦えますよ」

「…………そりゃ、使えそうな人は知ってるけどね、私も」

 

 シノンがやや呆れたような顔をしながら、ソレを持つ少女を見る。

 片手でも握れる太さの長さ25センチほどの筒状の金属から、1メートル程のエネルギーの刃を発生させているソレの名は、『フォトンソード・カゲミツG4』。

 正式名称以外にも『光剣』『ビームサーベル』『ライトセーバー』『レーザーブレード』などなど、プレイヤーが好き勝手に呼んでいる武器である。

 軽量かつ高い威力を持つ武器なのだが、銃メインのこのゲームでは斬る前にまず撃ち殺されてしまうため、メインとしてはまず選ばれない武器である。

 しかもこのフォトンソード、やたらと高い。カゲミツG4、お値段15万クレジットである。また『エネルギー切れ』や『オーバーヒート』などのデメリットもあり、近接用のサイドアームだとしても、大概は堅実にコンバットナイフなどが使われているのが現状である。

 少女が具合を確かめるように剣を幾度も振るい、その堂に入った動きにシノンが感心しながらも、装備選びを続ける。

 

「メインはそれだとして、サブに何か牽制用で欲しいかな。他の装備の購入とかも考えるとハンドガン…………」

 

 少女はシノンの助言に従い、ハンドガンの『FN・ファイブセブン』をはじめ、防弾ジャケットやフィールド発生器など小物装備を購入した。

 賞金は綺麗さっぱり消え、少々足が出たが、その分はシノンが出した。本人曰く

 

『良い物見せてくれたお礼よ』

 

らしい。

 

「とりあえず、最低限必要なものはこれで終わりかな」

「すいません、すっかりお世話になっちゃって」

「いいよいいよ。私も予選まで予定はなかったし。それじゃ」

 

 突然シノンが少女の手を取り

 

「え?」

「急ぐよ!」

 

 そのまま少女を連れて店の外へと走り出した。

 

「わ!? ちょっ、急にどうしたんです!?」

「大会のエントリーは3時までで、出来るのは総督府だけ! 距離は3キロちょっと!」

「え、ええ!?」

 

 少女が店の中にあるデジタル時計に目をやると、ちょうど時間が変わって『14:47』と表示されていた。シノンが言うには、エントリー操作に5分ほどかかるらしく、最低でも8分で到着しなければならない。

 

「て、テレポート的な物は無いんですか!?」

「死んで蘇生するときに総督府近くに転移されるけど、街中じゃHPは減らないから使えないわ! でも大丈夫! 足は来てもらってるから!」

 

 店を出て、シノンはそのまま何かを探す。数秒もすると、目的の物を見つけたシノンが少女を連れてソレに近づく。

 そこには、アイドリング状態のMT3輪バギーと、その運転席にヴィントがいた。先ほどシノンの前に開かれたウインドウはヴィントからの物で、待ち合わせ場所に現れないシノンに確認のメッセージが送られてきたのだ。

 その返答に、シノンは今いる場所と『バギーに乗って来てほしい』という旨のメッセージを送ったのだ。

 

「ごめん、お待たせ!」

「………待ち合わせ場所来ない上にバギーに乗って来させるとかいった…………だれ?」

 

 シノンだけかと思えば見知らぬ少女がいたことに、ヴィントが言葉を切って疑問を呈した。

 

「話はあとで! あなたも乗って!」

「は、はい!」

 

 シノンに急かされ、少女がバギーの後部座席に乗り込む。間髪入れずに、シノンも少女の隣へと乗り込んだ。

 

「お願い!」

「……ったく、しっかり掴まってろよ、お2人さん!」

 

 ヴィントが何か言いたそうにしたが、BoB登録終了まで時間が迫ってることもあり、2人に注意を促し、即座にバギーを発進させた。

 

 GGOでは乗り物が複数あり、その中で3輪バギーは乗りにくい部類に入る。馬力も速度もあるのだが、その分扱いが難しく、加えて現実でもマニュアルシフトのガソリン車が少なくなっている昨今、このバギーを運転できる人間は少ない。

 逆に言えば、現実や他のゲームでMTバイクに乗ってる人間はGGOでもこのバギーは運転自体は可能ということであるが、ヴィントはその例には当てはまらない。

 デスペナ対策として装備も最低限に、Mobを障害物代わりにし(よけ損ねたら轢き逃げアタックになる)、広大な荒野を練習場にして乗り回し、練度を上げたのだ。そのおかげで、シノンとコンビを組んでからも遠出がしやすくなった。

 

「私が言うのもおかしいけど、間に合いそう!?」

「問題ない! 適正2人乗りに3人乗ってるから速度遅くなってるけど、十分間に合う!」

 

 バギーの爆音に負けない様、大声で言い合うシノンとヴィント。GGOでは乗り物にも過重ペナルティがあり、プレイヤーと違って大幅な制限が掛かるわけではないが、それでも速度低下は免れない。

 だが、登録に必要な時間を確保できる程度の速度は出すことができる。

 

「そう! でも早く着くに越したことないから、思いっきり飛ばしちゃって、ヴィント!」

「了、解!」

 

 ヴィントがギアを上げ、バギーがさらに速度を上げながら他の車の間を縫うように駆け抜ける。

 

「あはは、すごいすごい!」

 

 それにシノンが軽い歓声を上げる。普段は道なき道の荒野をぶっ飛ばしているが、今のスリル満点の運転もシノンには全然アリだった。特にヴィントは街中では基本的に安全運転なので、こんな機会は滅多にないのも拍車を掛けた。

 

 

 

 その横で、少女がヴィントを見定めるように視線を向けていたことに、シノンもヴィント本人も気付くことはなかった。

 




次はどれだけ掛かっちゃうんだろう……。
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