「あ……」
声はもう出ない。耳も聞こえず、さっきまでは敏感に感じていた下半身の痛みも、もうなかった。
視界はもうほぼ消えかかっている。
ああ、そうか。死ぬんだな…私…。
なんでこうなったんだろう…。
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失敗した。
「ない…ないよ…」
合格者一覧と銘打ってディジタル・ディスプレイは番号を映している。
そこに、手元の紙に書いてある371という数字は載っていない。
五周はした。しかし、何回見ても数字はないのだ。
周りの少女達は己の数字を見つけては喜んでいる。
…不合格だった。私はこのIS学園の入試に落ちたのだ。
「母さんになんて言おう…」
「なんて」も何も伝えられる事実は1つしかない。
しかし直球に「不合格しました」では唯でさえ最近不安定な母には一撃で致命傷となりうる。
「…どうしよう」
私は帰路へつく。今まで一番長い帰路であった。
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モノレールを降りて在来線に乗り換え二駅。
駅からは歩いて二十分。
そうして着く私の家は築40年は経っているであろうアパート。
「ただいま…」
ドアを開けると母さんが目に入った。いつもこの時間は寝ているはずの母さんが起きていた。
「あぁ、椿ちゃん。お帰りなさい。」
今にも崩れてしまいそうな危うい足取りで母さんは私を出迎えてくれた。
そうして母さんは私の目を見た途端力を失い、床に座り込んだ。
「…………そう。」
母さんは一瞬にして全部を察した。
もともとそういうのが得意なのだ。と、言うより母さんの職場ではそんな能力が必須だった。
「ごめん…なさい…」
私は言った。涙がこぼれた。しかし私の目からではない。
「……椿ちゃん。ちょっと一人にしてもらえる?」
思えばここが岐路だったのかもしれない。
意地でも母さんに反抗して一緒にいれば、こんな事にはならなかったのかもしれない。
でもその時私は…。
「うん。落ち着いたらケータイにね?」
そう言って出て行ってしまった。
その後確か私は手持ちの1000円でハンバーガーか何かを食べたはずであった。
そうして母さんから電話が来て、もう死ぬ寸前みたいな声だったから家まで走って…。
それで……
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大型トラック暴走し、歩道へ突っ込む。 ドライバー死亡 少女一人重体
3月14日午後4:00頃、大型トラックが歩道へ突っ込み、ドライバーは死亡。少女一人が意識不明の重体。
当時トラックは解体予定のISを運搬していたとされる。
運転手は当時居眠り運転をしていた様子が車内レコーダーに録画されており、警察は現在所属している運送会社に対し過労の調査も行っている。
巻き込まれた少女の身元は現在不明だが当時着ていた制服から身元の特定を行っている。
関係各所への取材によれば少女は一命を取り留めており、意識回復を待っているという。
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目を覚ますとそこは病院だった。
上手く声は出ないが手はなんとか動かせる。
私のベッドの隣で椅子に座っていた男の人へコンタクトを取る。
「あ、待っててください。今先生を呼んできます。」
そう言ってスーツを着た真面目そうな男の人は走っていく。
(私…生きてるのかな…)
右手、左手、右足、左足。それぞれ動かしてみても特に異常はなく動く。
しかし顔にだけは包帯か何かがまかれているようである。
(なんだろ…?)
左手に違和感を感じた。私のではないピンク色の腕輪がはめられている。
その時勢いよく扉が開いた。よくよく見ればこの部屋には私しかいないようだ。
「目を覚ましたのかい!」
50手前だろうか。入ってきたのは女医であった。
「……話せるかい?」
「なんとか…」
少しまだこもる感じはあるが意思疎通はできそうだ。
「しかし驚いた。もう身体は完治してるじゃないか」
「私…なんで…?」
「暴走したトラックに飛ばされたんだよ。それもすごい勢いでね。」
そう言って彼女はスマホを開きネットニュースの画面を見せた。
「これ…私……?でも…」
「なんだい?」
「三日前…なってます…」
「ああ…おかしかないよ。実際
私は俗に昏睡のような状態に陥っていたらしい。
「さて、善は急げ。アンタの確認だ。簡単にでいいから答えてくれよ。」
そう言って女医はクリップボードを取り出した。
「森本椿。現15歳。住所は--。母親と二人暮らし。」
「間違いないです…」
「で、なんであんなところに?」
「それは…」
「まだ言いたくないかい?」
「いえ…言います。あの日はIS学園の合格発表の日でした。」
「確かに、そこを受験してるね。」
「はい…。結果は不合格で、家に帰ったら母が…」
「一人にしてくれとでも?」
「…そうです。」
女医は私の言ったことを逐一書き込む。
その後数分間質問は続いた。
「起きて早々悪かったね。次で最後だ。」
「はい…」
「アンタ、
「別に…ないです……?」
質問の意図が分からなかった。
少なくとも私は人間で、それ以外と思ったことはなかった。
「…………ありがとう。とりあえず、今は深夜の12時だ。精密な検査は明日やるから今日は寝な。寝れないかもしれないけどな。」
彼女は部屋を去ろうとする。
「あっ、あの……母は?」
「お母さんかい?さぁ、私は面会の担当じゃないから聞いておくよ。」
そう言って扉を開け出ていった。
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「そうか彼女が目を覚ましたか。」
「…ほんとに伝えなくてよかったんですかい?」
部屋には大人が四人。内訳は刑事二人に医者一人。そして刑事とは違うスーツを着た男が一人。
「伝えないのではない。後から伝えるだけだ。」
「しかし、彼女も不幸ですね。」
女医の質問に答えたのは刑事である。後輩らしき男は言葉を続けた
「高校不合格に事故。そして…」
「
声を発したのはもう一人のスーツを着た男だった。そしてそのまま発言を続ける。
「それで、見てもらえました?」
「ああ。しっかりと左手についてたさ…」
「そうですか…」
時計は既に深夜の一時をさしていた。
「……今日はとりあえず終いにしないかい?」
女医の一言で四人の大人たちは席を立った…。
神様転生ではないです。
~~~は場面転換を表します