異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

12 / 24
はい、トリアーチュル遺跡における激戦勃発。

しかし、インフレの最高クラスは山脈すら消すD×D世界なわけで……。


11話 最終試練、開始

 

 朧の銃撃を開幕の合図として、戦端が切って落とされる。

 

 朧自身、相手が難敵である事は確信していた。

 

 魔法によって発射する大口径銃「ターニャ」を開発した事で、朧は何とかここまで下りてくる事ができた。

 

 魔法で発射するため弾丸を込める為の構造を簡略化できた事が大きい。そのため単純に威力を大きくするだけなら、かなり効果的だったのだ。

 

 近距離でなら対物狙撃銃に匹敵する火力の弾丸によって、当たれば一撃で魔獣を殺す事ができた。

 

 元々平和な国で育ったとはいえ、トリーアチュル遺跡深層部を単独で突破しかけたのは伊達ではない。其の戦闘能力は、武器を大量に運べるという利点があるからとは言え歩兵一個小隊程度なら対処可能だろう。

 

 だがしかし、それでも認識が甘いのだ。

 

 一月以上前から階層を徐々に下げてきた朧にとって、深層部の魔獣との戦いは苦戦の連続だった。

 

 それに対し、渡と宝珠は環境で苦戦した事はあれど、魔獣との戦いは三人がかりで挑んだ事を考えても、そこまで言うほど苦労したものではなかった。精々が「歯応えがちょっとある程度の敵」でしかないのだ。

 

 朧の戦闘能力は急激に高まっている。そして、対物ライフル並みに火力を運用する事もできる。

 

 だがしかし、それだけでは渡はもちろん宝珠にとってもそこまで言うほどの脅威ではないのだ。

 

 中級クラスの堕天使である渡は、其れこそ戦車だって破壊する事ができる。上級クラスになれば爆撃撃の一斉射のように山肌を削る事もできる異形達の世界の出身である彼にとって、対物ライフルなど分かっていれば無傷で防げる程度のものでしかない。

 

 宝珠にしても似たようなものだ。先ほども言ったが、上級クラスは山肌をごっそり削れるような火力の持ち主が多い。それに人の身で対抗する職業訓練を受けていた身としては、この程度ならまだまだ楽な部類だと言ってもいい。

 

 はっきり言おう。朧に勝ち目は全くと言っていいほどなかった。

 

「クソが! 弾丸を切るんじゃねえよ、お前らルパ〇の五右〇か!」

 

「先生はメタルギ〇の雷〇の方がいいなー」

 

 宝珠の余裕のある言葉に、朧は青筋を浮かべる自分を自覚する。

 

 さっきから対物狙撃銃クラスの弾丸を連発しているのに、曲芸のように切られればイラつきもする

 

 実際問題、上級クラスになれば山肌を削る砲撃をぶっ放せる悪魔と戦う事を前提としている悪魔祓いなのだ。弾丸程度でビビっているわけには行かいのが実情だった。宝珠がこの程度に対応できないわけがない。

 

 渡も中級堕天使だ。戦車ぐらいなら随伴歩兵事吹き飛ばせる戦闘能力を発揮している。十分撃破可能といえる。

 

「だったらこれでどうだ!!」

 

 即座に取り出して投げつけるのは、明らかに金属製の粒粒が付いたハンドボール台の物体。

 

 そして、導火線に火がついている。

 

 断言してもいい、あれは爆弾だった。

 

「なるほど、そうきたかー」

 

「くたばりやがれ!!」

 

 言うが早いか、即座に朧は鉄板を取り出して身を隠す。

 

 その瞬間、爆発音が発生した。

 

「……手こずらせやがって」

 

 流石に四方八方から襲いくる鉄球の雨を凌ぐ事は不可能だろう。

 

 死体がミンチになっているだろうが、仕方がない。

 

 せめて化けの皮が剥がれている事を願って、朧は金属板を異空間に戻そうとして―

 

「これで終わりか?」

 

 その瞬間、金属板がバターのように切断された。

 

「なっ!?」

 

 条件反射でバックステップを行い距離を取る。

 

 そして、相手の姿を見て目を見張った。

 

 そこにいたのは墜落天渡。彼は一切傷一つなく、先ほどの爆弾攻撃に耐えて見せたのだ。

 

「躱しやがったのか!?」

 

「いや? 魔法で障壁を作って防いだだけだ。私もそこまで詳しいわけではないが、戦車の正面装甲程度の壁なら作れるのでな」

 

 とんでもない事を言われて、朧は絶句する他ない。

 

 戦車の正面装甲レベルの障壁。普通に考えても確実におかしいだろう。インフレが過ぎる。

 

 流石に対戦車兵器はまだ()()()いない。というより、崩落の可能性も考慮すると必要以上の火力という他ない。

 

 となれば、勝つ為の手段はたったひとつ。それも、難易度が非常に高い事である。

 

 すなわち、対戦車兵器クラスの火力をここで用意する。

 

 だが、それがどうした?

 

 元より死中に活を求めてここまで下りてきた身だ。可能性は低い事を知っていても、意地と執念でここまでやってきて、勝ち取ってきたのだ。

 

 そうだ、自分はそういう力を手にしたのだ。なら、心の形が紡いだままに、やってのけるしかないだろう。

 

「……心具顕現!!」

 

 祝詞を紬ぎ、そして願った通りの力が具現化する。

 

 展開されるのは手袋。それも、サイバーチックな意匠が施されたものだ。

 

 それを見た瞬間、渡と宝珠は警戒心をあらわにする。

 

「……やはり神器か!」

 

「いや、違う!!」

 

 渡と宝珠がそれぞれ目を見開き、そして、その隙をつくべく行動を開始しようとした、その時だった。

 

「……一ノ瀬君、上!!」

 

 そう叫びながら、弥左が朧に飛び掛かった。

 

 思いっきりぶつかってそのままもろとも地面に投げ出されながら、朧は己の愚行を叱咤する。

 

 ショックを受けている振りをしていたので、無意識に優先順位を下げ切っていたらしい。その所為で、そもそも存在を忘れていた節がある。

 

 これは致命的な隙だ。下手をすればここで死ぬ。

 

 嫌だ。それは嫌だ。死んでなど溜まるものか。

 

 自分は、ここで生き残る為に戦う事を決意したのだから―

 

「くっ! この―」

 

 なので強引に振りほどこうとして―

 

「―あん?」

 

 抵抗が全くない。

 

 あまりに軽く跳ね除けれそうだったので、思わず腕を止めてしまうぐらいに、抵抗がない。

 

 ないといえば、追撃もない。

 

 渡も宝珠も、このチャンスに追い打ちをかけてこない。それどころか、見れば顔を青くして衝撃を受けている。

 

 ……それがどういう事か分からず、なんとなく朧は弥左を見て。

 

「……一ノ瀬君、大丈夫……?」

 

 ―その背中が、大きく切り裂かれている事に気が付いた。

 

「………は?」

 

 唖然となる中、しかしそれを赦してくれはしないほどにこの世界は残酷だった。

 

 そして、足音が響く。

 

 まるで獣に鎧を付けたらこうなるといわんばかりの、鋼のゴーレム。

 

 鋭い爪には血が滴っており、その一撃が弥左を傷つけたのは言うまでもない。

 

『心具顕現能力者、第二段階到達者一名及び、第一段階到達者三名確認。これより、最後の試練を開始する』

 

 その外見の通り、機械的な感情の無い声を紡いで、そのゴーレムは身を一瞬だけかがめる。

 

 そして次の瞬間、まるでレーシングカーのような速度で朧と弥左に迫り―

 

「させると―」

 

「―思う!?」

 

 ―横からの渡と宝珠の飛び蹴りをもろに喰らい、起動がそれる。

 

 其のまま朧達にぶつかる事に失敗した鋼の獣は、しかしすぐに方向転換すると再攻撃を開始。

 

 それより早く、渡と宝珠は鋼の獣に迫ると攻撃を開始する。

 

 朧と戦った時のように機動力で翻弄を試みたりはしない。むしろ、足を止めての泥仕合に持ち込もうとしていた。

 

「……一ノ瀬!! 咲花を連れて距離を取れ!!」

 

「ここは先生達が引き受けるから!! あなたは咲花さんをお願い!!!」

 

 鬼気迫る表情の2人に気圧されて、朧は言われるがままに弥左を抱えて距離を取る。

 

 ……既に血はかなり流れ、血色が悪くなっている。

 

 どうやら動脈をやられたらしい。このままだと、じきに死ぬ。

 

 そして、そんな状況になってもなお、弥左は朧を見るとほほ笑んだ。

 

「へへへ。今度は、私が一ノ瀬君を守った……よ」

 

「お前、まさかマジで咲花なのか……?」

 

 漸く、朧は彼女達が本物だという事を認められた。

 

 少なくとも敵じゃない。敵ならば、あの状況下でこちら迄庇う必要などないのだから。

 

 まさか、本当に来たというのか。誰にも行けないと言われた霧を超えて。地獄のような深層部を潜り抜けて。一ノ瀬朧という少年を助けに来たというのか。

 

「馬鹿野郎!! てめえ、だったらなんで死にかけてやがる!!」

 

 意識が朦朧となっている弥左に、朧は叫んだ。

 

 なにがなんだか分からない。だがしかし、分かる事もある。

 

 このままだと、弥左は死ぬ。

 

 それは嫌だと、朧の何かが告げていた。

 

 自分が助けた少女が、自分を助けに来てくれた。

 

 にも関わらず、彼女は自分を助けて其のまま死んでしまおうとしている。

 

「おい、ふざけんな! しっかりしろ!!」

 

 慌てて治療道具を取り出そうとするが、そういった者は治癒術士達が中心になっていた事に気づいて、朧は歯ぎしりする。

 

 うかつだった。はぐれた時の為に最低限の包帯ぐらい貰っておくべきだったのだ。

 

 何とかしてでも助けようと思うが、自分の力は生物そのものをどうにかする事はできない。

 

 そういう風に心が叫んでしまったのだ。自らの光は光であるがゆえに、シンプルにしか行動できない。それが多様性あふれる能力であったとしても、今の朧にできるとも思えなかった。

 

「おい、咲花がヤバイ!! 何とかできねえのかよ!?」

 

 戦闘中の二人に懇願するが、しかし二人は動く事ができない。

 

「……動脈数本の断裂なんて、神器がないと! 神の子を見張る者(グリゴリ)は!?」

 

「無理です! 治癒の力が私達の世界でどれだけ貴重か、知っておられるでしょう!?」

 

 どうやら期待薄らしい。

 

 それどころか、その隙をついた反撃の攻撃を喰らい、2人は思いっきり吹き飛ばされる。

 

 渡は爪で切り裂かれて足をやられ、宝珠は骨折したのか腕がだらりと下がる。

 

 このままではまずいと、朧はターニャを甘えて銃撃を何度も叩き込むが、しかし鋼の獣には通用しない。

 

『心具顕現者第二段階到達者の戦力が規定値を満たさず。第一段階到達者三名と同じく、到達者とみなせず』

 

「ぐ……っ」

 

 よく分からないが、どうやらこの獣を作った者のお気に召さないのが自分らしい。

 

 それに歯を食いしばるが、しかし余裕は欠片もない。

 

「ざけんな。ざけんなざけんなざけんな!!」

 

 何度も銃撃を叩き込みながら、朧は吠えた。

 

「ふざけんなこの野郎! ここで咲花を死なせて溜まるか!!」

 

 心から、叫んだ。

 

「俺が助けたんだぞ!? それなのに、こんなところで死なれたら、それこそ俺があの野郎に突き落とされただけじゃねえか、ふざけるな!!」

 

 心の底から、吠えた。

 

「墜落天も、八重垣先生も死なせねえぞ!! 助けに来てくれたってのに、俺は銃向けちまったんだぞ!?」

 

 何度も何度も何度も何度も、銃撃を叩き込む。

 

 しかし、それは魔獣の前には何の意味もなく―

 

『対象の戦闘能力の上限を確認、対象を規定値以下とみなし、排除を敢行する』

 

「―ここで死んだら、借りも貸しもなにも返せねえだろうがぁああああ!!」

 

 其のまま、鋼の魔獣は突撃を敢行した。

 




因みにこの最終試練、D×D原作でいうとフェニックス編ラストバトルぐらいですね。ライザーや疑似赤龍帝状態のイッセーなら、手こずるけど勝てます。

所詮中級堕天使クラスとその相方が務まるレベルに、対物狙撃銃レベルの火力ではそれでも苦戦なのだよ……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。