異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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トリアーチュル遺跡攻略成功。

そして、攻略したその先にあるのは―


13話 クリフォー×クライシスの真相

 

 

 

 

 

 鋼の獣が砕け散り、そして光となって消えていく。

 

 それを見て、全員が一応周囲を確認する。

 

 残心は重要である。此処で不意打ちを喰らって戦死など、誰にとっても得しない展開だった。

 

 そして一分ほど周囲を警戒するが、しかし動きは見えない。

 

 そんな中、合成音声が響き渡る。

 

『心意具現者四名の第二段階到達及び、心具の具現化を確認。是より最終試練を終了する』

 

「……し、試練? 終了?」

 

 ナイフを構えながらそう呟く弥左の声を聴いて、宝珠はため息をついた。

 

「どうやら、先生達は試されてたみたいね」

 

「この力……心具と行ったか? それを得る為にこの遺跡は存在するという事か」

 

 渡はそう状況を推測するが、しかし状況は殆ど分かっていない。

 

 心具と呼ばれたこの異能はどういったものなのか。

 

 そもそも、心具を得る為の試験がこの遺跡の目的なのだろうが、ここ迄危険な遺跡を用意する必要性が分からない。

 

 色々と疑問符だらけの状況下で、誰もが沈黙してしまい、気になってしまう。

 

 そんな中、一ノ瀬朧は頭をがりがりとかきながら、実に複雑な表情を浮かべていた。

 

 そして、意を決すると勢いよく頭を下げた。

 

「悪い。勘違いで殺しかけちまった!!」

 

 それにきょとんとした三人は、ふと顔を見合わせる。

 

 そして、どこからともなく吹き出した。

 

「……おい、俺は真剣に謝ってんだぞ?」

 

「あ、ごめんごめん。なんか一ノ瀬君変わったと思ったけど、意外といい子なままみたいで安心しちゃって」

 

 憮然とする朧に、弥左はそう言って頭をなでる。

 

 そして満面の笑みを浮かべながら、弥左はほっと息をついた。

 

「一ノ瀬君が無事で、本当によかった」

 

「お、おう……」

 

 照れているのか、顔を少し赤らめる朧を、弥左は撫で続けている。

 

 それを見守りながら、渡と宝珠はとりあえず周りを再確認する。

 

 粉砕された鋼の獣は溶けるように消えていった。どうやら、神器の一部と同じく何らかの異能で具現化する類の能力らしい。

 

 心具顕現者。心具。第二段階。いくつもの単語が聞こえてきた。

 

 おそらく、この遺跡は心具顕現者を育て、第二段階に到達する者を育成する為の施設なのだろう。その最終試験として、攻略に相応しい難易度の鋼の獣が召喚される仕組みになっていた……という事らしい。

 

 実にはた迷惑な話である。おかげで誤解が解けた節はあるが、それで死にかけたのだから実質プラスマイナスはゼロだ。

 

「まあ、おかげで脱出も可能っぽいけどね」

 

 そう言う宝珠の視線の先には、魔法陣が具現化されていた。

 

 おそらく転移用なのだろう。この遺跡を攻略した者だけが、脱出する事を許されるという事らしい。

 

 流石にこの後、更に新しい階層が出てくる……などというのは勘弁である。念の為に周囲を確認して、文字がないか調べてみる。

 

 そして、宝珠が調べている間に、渡は弥左に撫でられて顔を赤くする朧を見る。

 

 その雰囲気は昔の、奈落に堕ちる前の朧の面影が残っていた。

 

 変わってしまったのは仕方がない。そも、これだけの地獄にもまれて生き残るのには、それ相応の代償が必要だろう。

 

 渡や宝珠のように、戦う力を鍛え上げてきたわけでもない。弥左のように、与えられたわけでもなければ、頼りになる者がいたわけでもない。

 

 たった一人で、あの過酷な環境を生き残ってきた。それは、変質するには十分すぎるのだ。

 

 だが、変わってないものもある。だからこそ、彼は頭を下げる事ができた。

 

 なら、少しずつ癒していけばいい。

 

 完全には治らないだろう。それは仕方がない。変わらないものなど、普通はないのだから。

 

 だが、それでも、もしかしたら。

 

 もう少し、面影ぐらいは戻ってくるのかもしれない。

 

 それに、変わった方がいいところも数多いのが一ノ瀬朧という少年だった。

 

 なら、少しぐらい変わってもいいだろう。少なくとも、凄みがあるのは良い事かもしれない。

 

 たくましくなったのもいい。是ならいじめられる事もないだろう。

 

 というわけで―

 

「では一ノ瀬に咲花。そろそろいちゃつくのはやめたまえ」

 

「な、え、ええ!?」

 

 渡の茶化し半分の言葉に、弥左は顔を真っ赤にして慌て始める。

 

 そして半目になった朧は、なんとなくターニャを向けてきた。

 

「墜落天。そういう茶化しをするんじゃねえ。咲花が嫌がってるだろうが」

 

「いや、流石に銃迄向けられるほどの事はしてないのだが」

 

 すっかり過激になった庇護対象に、渡は呆れ顔になる。

 

 いや、たくましくなったのは良い事なのだが、それはそれとしてこれはどうだろうという感じになって、複雑な気持ちがよぎってしまう。

 

 そして、それと同じぐらい呆れ果てる理由が―

 

「むぅ……」

 

 半目になって朧を睨む弥左を見れば、一目瞭然だろう。

 

「ん? どうした、咲花」

 

「なんでもない」

 

 ぷい、とそっぽを向く弥左に、朧はどういう事か分からず、首を傾げる。

 

 ……自分の窮地を救った、普段は弱そうな少年の男気。

 

 普通に考えてあれである。心を撃ち抜く姿である。

 

 それが死んだと思った状況で生きて、そして一緒に窮地を潜り抜けたのだ。

 

 厳密には渡と宝珠もいる。だが、乙女心とは都合の悪い部分を無意識にシャットアウトするものだ。いないも同然である。

 

 好意を寄せるには十分だろう。その辺り、恋愛経験がろくにないだろう朧には分からないだろうが。

 

 自分も恋愛経験がないくせに、したり顔で納得する渡だった。

 

「青春だねー。よきかなよきかな」

 

 などと宝珠は宝珠でなにやら生暖かい目線を朧と弥左に向けていた。

 

「……なんだよいったい」

 

 そんな姿を見て、朧は首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして転移魔方陣で転移した先は、再び地下だった。

 

 一瞬、「今度は第三段階か!?」などと身構えた一同は悪くない。それぐらいには、過酷な環境を潜り抜けた事で荒んでしまっていたりしているのだ。

 

 だが、その光景は明らかに試練とは異なった者であった事で、誰もが戦意を削られる。

 

 花々で彩られた庭園。

 

 滾々と正常な水が湧き出る泉。

 

 そして、色とりどりの植物を育てている細いゴーレム。

 

 更に、それらに守られ維持されている、大きな屋敷が一つ。

 

 そして、片隅に創られた墓地が異彩を放つ。

 

 そんな、隠れ里とでも形容するべき光景に、誰もが寂寥感と共にどこか安らぎを覚えていた。

 

「なんだろう、なんていうか、きれいなところなのに寂しいっていうか悲しいっていうか……」

 

 弥左の感想が全てだろう。

 

 渡も宝珠も、その優しい光景であるのに悲しさを感じさせるこの場所に目を伏せた。朧ですら、一瞬だが黙とうの表情を浮かべていたほどだ。

 

 だが、それらもすぐに霧散するように、声が響く。

 

『……よくぞ、ここまで辿り着いた』

 

 其の声に、全員が再び戦闘態勢をとる。

 

 だがしかし、其の声からは敵意が感じられない。

 

『試練を乗り越え、そして心の形を具現化させた者よ。君達がこの地に到達した根幹が負であれ正であれ、その意志の強さに敬意を払おう』

 

 その賞賛には熱が籠っていた。しかし同時に、寒気も籠っていた。

 

 期待と歓喜が籠っていながら、どこか諦観が籠っている。

 

 そんな言葉に、誰もが一瞬気圧される中、声は静かに語り始める。

 

『……まずは、私達のつまらない愚痴に付き合ってほしい。その後どうするかは、君達の好きにすればいいと言っておこう』

 

 そして、この遺跡を作り上げたと思しき者の声が、響き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずはこの力を説明しよう。

 

 後半のトリアーチュル遺跡は、間違いなく前半より脅威になるように設計されていたのだが、ここまで生き残った君達なら、どちらかというと楽に攻略できただろう。

 

 それは君達の戦闘能力が上昇しているからだ。君達の身体能力が文字通り大幅に上昇し、そして君達の心の形を具現化した武器があるからだ。

 

 其の技術を、心具顕現という。それが、この世界の固有の技術の一つだ。

 

 本来この技術は、意志の強さに応じて能力を上昇させるだけのものでしかなかった。しかし、とある悪魔の熱意によって、新たな段階へと成長を遂げたのだ。

 

 それが第二段階。心具を具現化する技術だ。

 

 心具とは文字通り心の形を具現化したものだ。信念、矜持、覚悟などといった正の感情。憎悪、嫉妬、絶望などといった負の感情。一つの一定水準を超えた心の形を具現化し、自身の武器として運用する段階だといえる。

 

 私達は魔法と二分するこの技術を研究し、ある悪魔によってそれを発展させる段階にまで至った。

 

 その悪魔は、この世界のものではない。

 

 魔法使い達が概念としてあった異世界の存在を呼び寄せようとする、酔狂じみた儀式の末にたまたま召喚された存在だ。

 

 その彼によって、この世界は変わってしまった。

 

 より厳密に言おう。彼はこの世界を侵略したのだ。

 

 彼はこの世界の魔法を研究し、心具に目を付け、そして配下を呼び寄せてこの世界を侵略した。

 

 具現化した心具の力で当時の有力者達を支配し、そして急速に大陸そのものを己の主柱へと収めたのだ。

 

 私達はそれに抵抗したものだが、しかし圧倒的な力によってたやすく蹂躙されてしまった。

 

 心具の力は心の強さ、その心となる想いの深度によって決まる。彼の深度は桁違いに深く、私達の心では勝ち目がなかった。

 

 この遺跡は元から存在していたものだが、私達はそれを隠れ蓑に更に深い遺跡を作ったのだ。

 

 ……偏にそれは、奴に対抗できる存在が生まれる事を祈ってだった。

 

 だが、それは結局私達の悲願でしかない。

 

 君達には君達の信念や矜持、願いがある。それがあの悪魔と共感するものである可能性だってあるだろう。

 

 だから、私達は君達に何も願わない。

 

 具現化した心具の根幹のように生きるのだ。抵抗するにしても、追随するにしても、そうでなければあの悪魔に並ぶ事などできはしないだろう。誰かに強制されて誘導されて放つ心の輝きでは、あの悪魔に対抗するなどできはしない。

 

 ……とはいえ、ここ迄苦労した君達に報酬がないのは失礼だろう。

 

 この施設は好きに使ってくれてかまわない。中には物質創造を行う心具や、私達の魔法で作り出した魔法道具がある。いくつかなら持って行っても構わない。

 

 では、この思念はもう聞こえなくなるだろう。

 

 最後に一つ。

 

 ……攻略、おめでとう。

 




この辺まではありふれをかなり参考にしていますが、こっからだいぶ変わってきますね。

第一部であるクリフォー×クライシス編は、そろそろ後半ですね。それが終わってから本番突入で、D×D本編とリンクし始めます。
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