異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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とんでもない情報を聞く羽目になった渡たち。

そして、渡たちの判断はいかに……。


14話 トリアーチュル遺跡、攻略

 その思念が終わった後、なんとなく彼らは食事をとる事にした。

 

 ゴーレムによって育てられる野菜や果物で料理を作り、遺跡の攻略中は簡易的にしかできなかった料理をしっかり作った。

 

 米まであったのは奇跡だろう。凄まじく様々な食環境を維持できるこの空間を最大限に利用して、渡達は久しぶりの日本食を食べる事に成功した。

 

 しかし、どうしても箸が進まない。

 

 誰もが細々と箸を進め、一番食べている朧ですら、三人を気にしてがっついて食べる事ができない。

 

 そして、意を決して朧が口を開いた。

 

「で? どうする気なんだ、墜落天達は」

 

「……ズバッと聞いてきたな」

 

 苦笑する渡に、朧は頬杖を突きながら半目を向ける。

 

「俺は帰る為の手段を探したいな。この遺跡を作った奴には悪いが、無理やり連れてこられて命がけの戦いに参加させれた時点で迷惑だ。親身になってくれたイーンさんにゃ悪いが、この世界の為に命まで賭けてやる義理はねえ」

 

 バッサリと、朧は言い切った。

 

 イーンに対して若干の後ろめたさこそ感じさせるが、しかしそれでもこの世界を救うなどとは口が裂けても言えはしない。

 

 彼にとって、重要なのは生きる事だ。

 

 その邪魔になるのなら誰であろうと殺す覚悟がある。だからこそ、あの心具を生み出した。

 

 生き残る為なら何でもする。必要な者なら何でも用意する。手段を選ぶつもりはない。

 

 ゆえにこそ、化生万手(デモニック・ファクトリー)。化生と化し、万の手段をもって生き残る決意表明。文字通り悪鬼(デモン)工場(ファクトリー)となる能力。

 

 それを心の形とした朧は、イーン達の為とはいえ、何の利益もない命がけの戦いになど参加する気は断じてなかった。

 

 しかし、朧は視線を逸らすと、少しだけ頬を染める。

 

 微妙に恥ずかしい事を言おうとしているのが、丸分かりだった。

 

「だが、お前らは別だ。他の連中はどうでもいいし、瀬間の奴は死んでほしいが、ここまで来てくれたあんた達まで無下にする気はねえ」

 

 それは、変わり果てた彼の中にある数少ない善意。

 

 命がけで助けに来てくれた。勘違いで銃を向けたのに、すぐに許してくれた。そして、共に難敵と戦った戦友でもある。

 

 そんな彼らまで無下にする事は、朧にもできなかったのだろう。

 

 そして、朧はそれが件の悪魔に対抗する事だと確信していた。

 

 守る為の力を手にした墜落天渡。守る者になるという決意を形にした八重垣宝珠。この二人は、少なくとも確実に動くと思っていた。

 

 咲花弥左はどうだか分からないが、しかし彼女も善良で、この世界を救う戦いをする事に賛同した者だ。なんとなく動いても仕方がない。

 

 だから、この発言は事実上この世界を救う事を受け入れるという発言だった。

 

「いや、最優先は帰還の手段確保である事に反論はない」

 

「そうね。それが最優先だわ」

 

 なので、渡と宝珠の返答には正直耳を疑った。

 

「え、でも……」

 

 むしろ弥左が困惑しているが、それを制するように宝珠は告げる。

 

「咲花さん。はっきり言って、私達にこの世界を救う義務はないわ」

 

 宝珠は、まっすぐに弥左の目を見つめながらそういう。

 

「この世界の問題は基本この世界で何とかするべき。手を貸すのは良い事だし否定はしないけど、だけど民間人(あなた達)が命を懸ける義務はないの」

 

 そう告げる宝珠に、渡も頷いた。

 

「八重垣先生に同意だ。それに、現実問題として難易度が高すぎるのも実情だろう」

 

 その言葉に、朧は察する。

 

 ……この二人は、薄情な事を言っているのではない。

 

 現実をきちんと見極めたうえで、最善手を探そうとしている。

 

 それも、この世界の事ではない。なによりも、自分達やクラスメイトの事を考えていた。

 

「そもそも件の悪魔とやらの能力は、洗脳能力もあるのだろう? 神権政治で支配権を握っているものを敵に回せば、確実に世界の大半が敵に回る。部外者がどうこう言ったところで素直に信じる方が少ないしな」

 

「やるならそれこそ、こっちだって大陸規模で動かなきゃダメ。だけど、そうなれば事は下っ端堕天使と悪魔祓い擬き如きでやっていい事でもないわ」

 

 二人は冷静に、客観的に、俯瞰的にものを見ている。

 

 それは、弥左や朧とはまったく異なる視点。一つの世界そのものが敵になりかねないという事を、しっかりと痛感している者の言葉だった。

 

 静かに首を振りながら、渡は沈痛の声を続けた。

 

「そも、私が所属する神の子を見張る者(グリゴリ)は愚か、八重垣先生の古巣であるバチカン法王庁も動けんだろう。一つの世界そのものを敵に回しかねない行為をする余裕は、各勢力が睨み合っている地球の勢力にはない」

 

 それが現実的な問題だった。

 

 大陸規模で絶対的な権力を持っている悪魔に対抗するには、それこそ大陸規模の勢力が必要だ。それも、下手をすれば闇大陸の魔獣達にすら手が回ているのかもしれない、文字通り世界規模かもしれない敵だ。

 

 地球の勢力は、根本的に冷戦状態だ。

 

 渡が所属する堕天使勢力。宝珠が所属していた天使・教会勢力。そして、それと睨み合う三すくみが一角である悪魔勢力。この三大勢力ですら、単独で挑むのは困難だろう。

 

 そも、異世界そのものを敵に回せば、その隙を他の勢力につかれる可能性がある。うかつに手を出して逆に攻撃を喰らえば、その責任追及で挟み撃ちに合う。

 

 しかも他の神話勢力もどう出るか分からない。場合によっては逆にこのクリフォー×クライシスに手を貸す勢力すら出てくる可能性がある。

 

 大局を見る目があるからこそ、組織との繋がりがある二人は動けない。少なくとも、動くには上と連絡を取る必要があった。

 

「するにしろしないにしろ、先ずは情報を上層部に持ち帰ってからだ。その為にはまず帰還が最優先だ」

 

 そう告げる渡に、宝珠も頷いた。

 

「そうね。まずはそっちが最優先。その後咲花さんがどう動くかは上の判断に任せるしかない。……ちょっと可哀想だけど、私達は上の判断も抜きに手を貸せないわ」

 

 そう苦笑いする宝珠に、弥左は何も言えない。

 

 そして、宝珠は朧にも視線を向ける。

 

「だから、朧くんは私達に気を使わなくてもいいわ。世界の命運を賭けた争いなんて、一学生には荷が重すぎるもの」

 

「う……」

 

 どうやら、そこまで見透かされていたらしい。宝珠も腐っても教師という事だろう。

 

 そして、二人はその上で静かに目を伏せる。

 

「ゆえに、すぐにみなと合流するのも危険だ」

 

「そうね。こんな遺跡を残してるって事は、その悪魔ってのはこの遺跡の本質に気づいていないもの」

 

 気づいているならば、真っ先に破壊しているはずだ。

 

 つまり、相手の悪魔とやらは、この世界の真実を隠し通せていると思っている。普通に考えて、こんな反乱分子を生み出しかねない遊びは遺さない。

 

 もし迂闊にこの情報をもたらせば、確実に本腰を入れられる。

 

 敵の勢力がどれほどかも分かっていない状況下。見方によっては清栄学園二年A組全員が人質になっているともいえるのだ。

 

 うかつにこの事実を伝えるわけにはいかない。それが、宝珠と渡の共通認識だった。

 

 まずは慎重に帰還方法を探す。そのうえで、上に連絡して指示を仰ぐ。それがこの状況下における最善手だった。

 

「それに、この遺跡作った人の目線だけだと本当か分からないでしょ? もしかしたら私達視点だと悪行をしていて、異世界召喚されたその悪魔ってのがより良い世界にしたって可能性もあるわよ、先生からすれば」

 

 更に宝珠が続けた言葉は盲点だった。

 

 確かに、あくまでこの遺跡を作った者達の側の意見ぐらいしか聞けていない。

 

 これだけで全てを判断するのはあれだろう。地獄のような試練を与え、しかも規定値に達していなければ死ねといわんばかりの最終試験。性格が悪いと言ってもいい。

 

 うかつに鵜呑みにするわけにもいかない。それで喧嘩売って実は真相は違ってましたなんてことになったら最悪だ。とどめにそれが原因で地球が異世界に喧嘩売った扱いになったら、極刑の可能性がある。

 

 朧も弥左も顔を青くし、渡すら盲点だといわんばかりに頭を抱える。

 

「……ぬかった。その可能性も考慮しなければならなかったか」

 

「ふふふ。墜落天君も迂闊よのぉ」

 

 などと得意げに笑ってから、宝珠は一枚の地図を取り出した。

 

「で、ちょっと調べてみたんだけど、どうも同じように戦った人達が別の場所に逃げていたっぽいのよねぇ」

 

 そう言って示した地図は非常に古ぼけていたが、しかしきちんと見る事ができるぐらいには無事だった。

 

 そこに書かれている地図には、どうもいざという時に避難場所とも割れる場所が二つ書かれていた。

 

 一つは此処、トリアーチュル遺跡。そしてもう一つがナンシキュウゴウン遺跡と書かれている。

 

「とりあえずは、こっちを調べてみるべきだわ。そして、万が一を考慮して私達だけで動くべきだと思う」

 

 その言葉に、渡はすぐに頷いた。

 

「そうですね。うかつにクラスメイトに伝えて、変に騒がれてはその悪魔とやらに勘付かれます」

 

 下手に情報を漏らせば、反って状況が悪化しかねない。万が一責任を負うにしても、それは自分達だけでとどめるべきだ。

 

 そう言外に告げる渡の言葉に、弥左と朧も戸惑いながらも頷いた。

 

 それを同意とみなし、宝珠は視線を朧に向ける。

 

「……というわけで、私達の方針としては墜落天君と変わりないわね。どうかしら?」

 

「ま、問題ねえな。どっちにしてもそれぐらいしかあてがねえ」

 

 そう肩をすくめる朧にほほ笑みながら、宝珠は告げる。

 

「さっきも言ったけど、この一件はスケールが大きすぎるわ。変な手出しをすれば、それこそ異世界間戦争が勃発しかねないぐらい」

 

 だから、先ずするべきは情報提供。

 

 自分達の世界にそれを伝え、ちゃんと大局的にものを考えられる人の判断を伺う事が最重要だ。

 

 自分達の勝手で動くわけにはいかない。これは、手出しを間違えれば桁違いの人命が失われる複雑な問題なのだから。

 

 弥左はその事実に少し震えながらも納得する。

 

 朧は、その冷静な視点でものを考えられる宝珠に感心し、そして同意を示す。

 

 帰還最優先ではあるが三人を無下にする気もない朧としては、好都合な塩梅だ。

 

 それに……。

 

「………ま、それがあんたらの意見だっつーなら、こっちも問題ねえ」

 

 そう告げながら、朧は渡に視線を向ける。

 

 どこか調子が悪く、頬も少し赤くなっているその言葉に―

 

「言っておくが、私は普通に異性愛者だ」

 

 ―渡は頓珍漢な返答を返した。

 

「……え゛。一ノ瀬君、そっちだったの!?」

 

 そして、弥左は勝手に勘違いして絶望の表情を浮かべる。

 

「おや~? まさかの三角関係? 先生困っちゃうわ」

 

「撃ち殺すぞ、ダメ教師!!」

 

 本気で撃ってやろうかと思った朧は、決して悪くないと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから即座に出発したのかというと、そういうわけでもなかった。

 

 なにせ、真実なら世界全てを敵に回しかねない情報を知ってしまったのである。それ相応の下準備は必要だし、かなり疲れていた事もある。

 

 休息と鍛錬の為に、二週間近くを費やした。

 

 そしてその間も皆が努力を詰んでいた。

 

 朧の心具はいわば道具作成能力。自分の知識で仕組みを完全に理解できている技術を再現し、それを超高効率で運用する能力。極端に例えれば、人間型の各種工業施設となる能力で、魔法関係までカバーする。

 

 それを最大限に利用する為に、渡も宝珠も自分達が知るその手の技術を全部教え込んだ。

 

 一ノ瀬朧の化生万手を最大限に発揮するには、一ノ瀬朧が加工技術の類を完璧に習得する必要があるのだ。当然といえば当然だろう。

 

 そして、この最深部にはいくつもの本が残っており、その中には魔法の教本や魔法道具の作り方も書かれていた。

 

 それら全てを頭の中に叩き込み、覚え違いに対処する為一生懸命頑張って、朧以外が写本を作った。

 

 そして朧もターニャを改良。習得した雷撃魔法の変換で低規模だが電磁加速を行える様にした、二段加速方式により、弾速が向上。弾丸そのものも魔法による付加や錬金術による補佐を受けて、威力を数段高めた仕様に進化させた。

 

 加えて最深部にあった魔法道具も利用して、装甲車擬きまで開発。徹底的な準備を行った。

 

 そして、二週間後―

 

「よっしゃ。できる事は全部やらせてもらったぜ、渡」

 

「ああ、お前には苦労を掛けたな、朧」

 

「朧くんも渡くんも、宝珠先生もご苦労様です」

 

「いやいやー、弥左さんも頑張ったと思うわよ、先生は」

 

 いつの間にやら名前呼びになった一同が、身支度を整えて集合していた。

 

 過酷な戦いを乗り越えて、共同生活迄した。その所為か、なんとなく全員の距離感が短くなった事が理由だ。

 

 こと弥左は朧に名前で呼び合う関係を求めており、それに引っ張られたという側面もあるが。愛の力は偉大である。

 

 不幸中の幸いか、この最深部には温泉まであったのが幸運だった。

 

 遺跡の中で風呂に入れなかった事もあり、誰もが歓喜した事は言うまでもない。日本人は風呂民族なのである。あと女性陣は涙すら流しているのも言うまでもない。

 

 そして素晴らしい生活環境だった此処から出るのには後ろ髪を引かれるが、いつまでもいるわけにもいかなかった。

 

「……さて、まあ手だけでも合わせとくか」

 

「そうだな。真相はともかく、ここ迄成し遂げたこの死者達の意思は、強いと認めるべきだろう」

 

「うん、凄かったよねぇ」

 

 と、朧に引っ張られるように渡と弥左は墓に向かって手を合わせる。

 

 色々苦労させられたし、実際のところは分からない。

 

 だが、これだけの遺跡を作り上げたその意志力と技術には評価するべきところは多いだろう。

 

 それが、黙祷の意思を三人に抱かせていた。

 

「……久しぶりにこの言葉を使うわ。アーメン」

 

 宝珠もまた、十字を切って鎮魂の祈りをする。

 

 そして一分ほど経ってから、四人は転移用の魔法陣に向かう。

 

「ったく。面倒だが、これも帰る為だ。手は貸してやるから成果をくれよな?」

 

 朧はそう、ふてくされたかのような演技をしながら。

 

「うん。みんなの足を引っ張らない程度には、頑張るよ」

 

 弥左は静かに胸にある想いに従うと決めながら。

 

「はいはーい。引率の言う事をよく聞くように。そうすれば、責任の一端は先生に押し付けられるからねー」

 

 宝珠は先生として、責任を最も取るべき立場である事を告げていざという時の逃げ道を三人に与えながら。

 

 そして―

 

「……この遺跡を作った者達よ。私達にも立場と都合があり、貴方方の願い通りには生きられないし、全てを信用したわけでもない」

 

 そこは言う他ない。全てを判断するには、信用できる情報源がない。情報の数も足りていない。

 

 というより過酷すぎる試練に放り込まれて、怒りもある。そうでもしなければ悪魔とやらに勝てないと思ったのだろうが、限度がある。ちょっと思い出したら殺意も少し湧いた。

 

 だが、それでもいうべき事はある。 

 

「少なくとも、貴方方に対して恥じ入るような結論だけは出したくない。その為の努力をする事だけは、我らが神の子を見張る者(グリゴリ)総督、アザゼル総督の名に懸けて誓おう」

 

 その言葉を最後に、渡は背を向けて転移した。

 




渡・宝珠「とりあえず上に報連相」


実際問題、冷戦状態の当時の地球の勢力で、一世界丸ごと支配しちゃってるクリフォー×クライシスと揉めるのは大問題。その隙をついてほかの勢力に挟撃されたらそれで堕天使も展開も終わりますし、この二勢力の共闘も、2人の視点から見れば困難極まる状況。うかつに末端だけで動いていいことでもないですしね。
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