異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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そして、ナンシキュウゴウン遺跡へと。

ここで一気に話が進み始めます。



15話 ナンシキュウゴウン遺跡

 

 そして三日後、ナンシキュウゴウン遺跡に到着する寸前まで、渡達は到達した。

 

 心具からのエネルギー供給により、ある程度の速度でいいなら半永久的に走り続ける事ができる。加えて燃料を投入する事で、180km以上の時速で走る事が可能。とどめにオフロードでできる。

 

 そんな、材料費などを度外視した高性能オフロード車両。その名をニコラジョセフ。

 

 初めて自動車と呼べる代物を作ったと言われる男の名前にあやかったオフロード車両によって、あっさりと一同は数千km離れた距離を移動に成功。その結果として、すぐ近くにまで行く事に成功したのだ。

 

 そこからは山脈地帯なので流石に徒歩だったが、しかし心具と祝才によって超人じみた身体能力を得た朧と弥左なら、そこ迄苦労はしない。そこに悪魔祓いの特訓を詰んだ宝珠は更に楽に進めた。堕天使である渡は言うまでもない。

 

 だが、それでも時間はいくらかかかってしまった。何故なら―

 

「うむ。とりあえず周囲に魔獣の影はない。……とりあえず命綱を下すから、登ってくるといいぞー!」

 

 とのちょっとだけ間延びした渡の声が、彼の真下百メートルに届く。

 

 そしてそれと共に降ろされたロープを括りつけながら、朧はため息をついた。

 

「なあ宝珠先生。飛行魔法とかなんで教えてくれなかったんだよ」

 

「先生、陸戦型だから習得してないの。渡君も、元から飛べるから習得する必要性ないから知らないと思うわよ」

 

 そういう事である。

 

 元からそうなのか、数百年の間に地崩れでも起きたのか。ナンシキュウゴウン遺跡は切り立った断崖絶壁にあった。

 

 上る為にはロッククライミングが必要不可欠。其の為、飛べる渡が先に上に上がってロープを降し、それを利用して三人が上る事になったのだ。

 

 そして十分以上の時間が経ち―

 

「くそ、普段使わねえ筋肉使ったから疲れた」

 

「し、下……! 底が見える分トリアーチュル遺跡より怖い!」

 

 ぜえぜえとへたり込む朧に、下を見て震える弥左。

 

 この辺り、如何に心具顕現者になろうとも存在する、祝才の差による身体能力の違いが見て取れる。

 

 ちなみに弥左も朧も帰宅部であるから、元の体力的にはそこ迄違いがない。朧の男の沽券はズタボロである。

 

「これ、降りる時は先生もちょっと肝が冷えるかも。落ちた時のカバーよろしくね、渡君」

 

 そして、そんな事を言いながらも全く持って平然としている宝珠はスルーする。

 

 この女はいわゆるマーベ〇とかの世界の人間であるのだ、元から。流石に比較対象にするのはあれだろう。そこまで馬鹿ではない。

 

「さて、とりあえず潜入するぞ? どうやら魔法による封印が掛けられているようだが、これなら強引に破る事もできるだろう」

 

「いやいやー。それやったら防衛システムとか働きそうだし? もうちょっと開錠する方法がないか調べた方がいいって先生思うかも」

 

 と、若干強引に開けようとする渡を宝珠が止める。

 

 いきなり魔獣に襲われたら、後ろに下がれない現状では大変だ。飛べる朧はともかく、飛べない三人は命がけにもほどがある。

 

 故に、朧の心具による開錠の試みが行われ、三十分後、漸く開いた。

 

「……ここもあの化け物みたいなのがいるのかな?」

 

 スローイングダガーを構えながら、弥左がちょっと肩を震わせる。

 

 だが、開けたところで特に反応は全くなかった。

 

 数秒間警戒して、四人は意を決して中へと入る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは、廃墟としか言いようがなかった。

 

 仮にも遺跡としての機能があり、入ってきた者に与える試練として機能していたトリアーチュル遺跡深層部とは違う。まごうこと亡き廃墟がそこにはあった。

 

 死体も残り、骨となっている。それが埋葬されているどころか、隅にのけられている様子もない。

 

「……死体の位置や集まりからして、これは集団自殺ね」

 

 宝珠がそれを確認して、静かに告げる。

 

 その言葉に、弥左は息をのんだ。

 

「な、なんでですか? トリアーチュル遺跡の人達は、少なくとも最期まで色々動いていたのに……」

 

「ああ、理由は分かった。……絶望したんだろうな」

 

 冷静に、ただ客観的に、朧は事実を認識した。

 

 それは、技術再現に長ける心具に目覚めたからこそ分かる、朧の観察眼だった。

 

 その目は、遺跡にある一つの装置に向けられる。

 

 その装置を解析しながら、朧は分かった事を告げる。

 

「この装置は通信装置だ。それも、次元を超えて異世界と通信する事を目的として開発されているな」

 

 その言葉で、渡はある程度のことを察した。

 

「なるほど。自分達では敵わないから、助けを求める。情けないかもしれないが、当然の判断だな」

 

 そう言いながら解析に加わる渡を目で追いながら、宝珠も何かに納得したらしい。

 

 しきりに頷きながら、その装置に視線がずれる。

 

「逆に言えば、もう手詰まりだと考えたのがこの人達だったのね。先生思うんだけど、それが集団自殺したって事は、失敗したの?」

 

 その宝珠の言葉に、朧は頷いた。

 

「ああ。厳密にいえば、異世界の座標を掴む事ができなかったみたいだな。そりゃ、最後の手段がとん挫すりゃ死にたくもなるか」

 

 流石に少しは同情する……といった感じの態度で、朧はとりあえず両手を合わせる。

 

 しかしこれは問題だ。

 

 この世界の真実を調べるか、せめて連絡が取れればいいと思ったのに、結果はこのざまだ。

 

 死体蹴りをする趣味はないが、朧としては肩透かしといった感情を覚えてしまう。

 

 だが、その時渡が声を荒げた。

 

「いや、これはいけるかもしれんぞ!!」

 

 その言葉に、三人の視線が渡に集まる。

 

 そしてそれに気づかず、渡はすぐに装置を起動させる。

 

 トリアーチュル遺跡の技術をある程度取り込んだ事で、渡はある程度この世界の魔法道具の扱いができる。

 

 その渡が、何かの希望を掴んだかのように、装置を調整する。

 

「朧! 手を貸してくれ、この装置を調整する!! ……行けるかもしれんぞ!!」

 

「マジか!? どうするんだ!?」

 

 朧だけでなく、宝珠と弥左も希望の光を見つけた表情になる。

 

 それほどまでに、渡は確信があった。

 

 そう、この装置の失敗は、異世界の座標を知る事ができないという事。その一点にこそある。

 

 裏を返せば、座標さえ知る事ができれば通信をとど変える事も不可能ではない。

 

 それはすなわち―

 

「……堕天使側で使っている通信コードと、知りうる限りの座標の位置を組みこむ。あとはこれで発信すれば、この装置の通信限界距離次第なら―」

 

「……届くかもしれないってか!!」

 

 その言葉に、朧の動きが鋭くなる。

 

 化生万手の力が、希望を見出した事で出力を向上させる。

 

 精度が、速度が、出力が、大幅に上昇して効率までもが一気に高まる。

 

 そして改良された装置が機能した。

 

 固唾をのんで、十分ほど誰もが沈黙し―

 

『誰だ? 堕天使側の緊急通信コードを知ってる上に、んな辺鄙な場所にいる奴は?』

 

 凄まじく怪訝な声色の、しかしどこか威厳と気安さを同居させた声が聞こえる。

 

 其の声を聞いて、渡は涙すら流して跪いた。

 

「……アザゼル様、我ら堕天使の総督閣下の声を聞けるとは、思いませんでした……っ」

 

「え、マジで? 先生、法王猊下や天使長、主の声を聴く前に堕天使の長の声聞いちゃってるの!?」

 

 歓喜の涙を流す渡に、宝珠があわあわし始める。

 

「おいマジか! マジで地球から届いてんのか!?」

 

「ホントに!? ホントに地球と繋がったの!?」

 

 そして朧と弥左に至っては、手を取り合って動揺するなり歓喜するなりだ。

 

 その反応に、通信の先の声の主は、一瞬沈黙し、問い質す。

 

『そこにいる奴。名前と任務を名乗れ』

 

「ハッ! 墜落天渡、任務は清栄学園におけるリチャード・西堂の警戒任務であります!!」

 

 ためらいなく、間髪入れず、即座に返答した渡の言葉を聞き、其の声の主は―

 

『いよっしゃぁ!! よく頑張ったお前ら!! なんか勝手にきちまったが、とりあえず連絡だけは繋がったぞぉおおおおお!!!』

 

『『『『『『『『『『うぉおおおおおおおお!!!!』』』』』』』』』』

 

 その通信機越しに聞こえる歓喜の声に、誰もが程度はともかく涙を浮かべる。

 

 地球との通信が繋がった。これが意味する事は非常に大きい。

 

 なにせ、向こうの言葉を信じるならば座標すら把握されているのだ。位置が分かると分かっていないのとでは、救出が来る可能性は桁を通り越して次元が違う。分かっているかいないかで、能動的に救出ができるかどうかが分かると言ってもいいのだ。

 

 最大の問題がクリアされた今、地球への帰還の目処が立ったと言ってもいい。その事実は、誰もが歓喜する事だった。

 

「いやったぁああああああ!!!」

 

「うわぁあああああん!!!」

 

「うぉおおおおおおっしゃぁああああっ!!!」

 

 宝珠も、弥左も、朧も。三人揃って歓喜の叫びをあげる。

 

 それはそうだろう。

 

 異世界に強制的に転移されて、数か月もの間過ごしてきていた。しかも、召喚した者達はどうも性質が悪い可能性がある。

 

 そんな中で、漸く地球との連絡が取れたのだ。これは叫ぶ。

 

 通信機の先も色々と騒がしい。

 

 混乱もあるだろう。しかし、それ以上に要救助者との連絡が付いた事は、救出の為に動いていた者達からすれば歓喜の叫びをあげるに相応しい事でもあった。

 

『墜落天だったな。そっちの状況は分からねえが、大変だったな。だが安心しろ、清栄学園を調査して、転移された場所の方向とそこが異世界である事は掴んでた。術式の残滓を解析して、グレートレッドの目を掻い潜れる移動方法も掴んだ。そっちの近くに探査及び救出の為の船を送って探査しているし、そっちに位置情報を含めて状況を連絡している。……後一週間もありゃぁ、そっちに救出部隊が到着するはずだ』

 

 その言葉に、四人は歓喜のあまり声もあげられない。

 

 想像以上に状況は進んでいたらしい。それも、この通信がきっかけになって救出の目処が立っている。しかも、想像以上にすぐに救援が来るという事も含めて、凄まじい事だ。

 

 弥左に至ってはわんわん泣いてしまっているし、最年長の宝珠もやさぐれた朧も、子供のように歓喜の表情を浮かべている。

 

 渡もまた踊りだしたくなるほどの歓喜に実を震わせながら、しかし勢力のトップとの会話による緊張感もあって、何とかすぐに冷静さを取り戻した。

 

「……あ、失礼しました。少し我を忘れてしまって」

 

『気にすんな。前代未聞のトラブルに巻き込まれて、状況が好転すりゃ我も忘れるだろ』

 

 通信越しのアザゼルはそう気安く答える。

 

 器が違う。そう感じるほどの大物の貫禄を見せながら、アザゼルは口調を和らげる。

 

『だがまあ、こっちは完全に状況を掴めたわけじゃねえ。すまねえが、事情を説明しちゃくれねえか?』

 

「は! こんなこともあろうかと、四人で、最低限の説明ができるレポートを作成しました!!」

 

 歓喜のあまり少々口調が乱れながらも、できる限り正確に、そして分かり易く報告する。

 

 あの日、清栄学園二年A組の教室で何が起こったのか。

 

 今日までに体験した出来事や見聞きした事の数々。

 

 そして朧が奈落の底に堕ちて、その為に三人だけで救出に向かった事。

 

 それら全てを、要点を捉え無駄なく迅速に渡は告げる。

 

 念の為に、そういった事に比較的慣れている宝珠を中心に四人で相談して作ったレポートだ。

 

 むろん、トリアーチュル遺跡で知った事も、仔細漏らさず報告。心具顕現者についても伝えている。

 

『なるほどな。ったく、通信が繋がってひと段落ついたと思ったら、想定以上に大事になってるな、オイ』

 

「……あー、アザゼルさんだっけ? さっき説明に上がった八重垣宝珠だけど、先生的には総督さんの意見を聞きたいなーって思うんだけど?」

 

『おお、アンタが先生さんか。渡が世話になったな』

 

 宝珠の言葉に、アザゼルははっきりと答える。

 

『ま、そのエルルってのは胡散臭いな。なんつーか、遊びが入っているっていうか、悪意を感じるっつーか……』

 

 アザゼルは考え込んでいるようだが、しかすすぐにぽんと手を打った。

 

『とりあえずお前ら、その通信装置の小型化か、持ち運びはできるか?』

 

 その言葉に、三人は一斉に朧に視線を向ける。

 

 通信装置は大型すぎる上、質の悪い事に立地条件が悪すぎる。運ぶ事は不可能に近いだろう。やるならせめて大型のヘリがいる。

 

 なので、可能性があるとするなら朧の化生万手による小型化したうえでの再現なのだが―

 

「ああ、仕組みは分かったから、やろうと思えば数日でできると思うぜ?」

 

 ふふんと得意げな表情を作りながら、朧はそう言った。

 

 その返答に、アザゼルはうんうんと頷いているらしい。

 

 そして数秒後。

 

『分かった。捜索部隊がクリフォー×クライシス(そっち)に到着してから、王国の連中と会話させろ。その通信機があればできるだろ』

 

 そう、真剣な口調で告げる。

 

『俺達異形側も、色々と人間世界からすると強引な形で協力させたり監視体制に持って行ったり、危険な連中を暗殺したりしている。そういう意味じゃあ人の事は言えねえ』

 

 そう前提として告げてから、アザゼルはしかし、僅かに不満をにじませる。

 

『だが、ここまで派手な手段はちょっと黙っちゃいられねえ。とりあえず俺達で話をつけて、ちゃんとした等価をもらったうえで神の子を見張る者(ウチ)から戦力を提供する取引を成立させて、加えて帰還を望む連中を帰還させるって条件を付けさせる』

 

 実際問題、以下に異形が人間社会とは異なる価値観や行動様式を持っているにしても、その観点から見てもこれは強引だ。

 

 更に自陣営や敵対陣営の人間を無断で連れていく所業は、下手をすれば三大勢力の戦争再開もありうる事態。最低限のけじめはつけるべきだろう。

 

 少なくとも迷惑料は徴収するし、帰りたい者は何としてでも連れて帰る。そして、対応に関しても基本的には専門家である自分達が行う。

 

『ま、これに関しちゃ教会の連中やミカエルとも話をしねえとな。ついでに変な疑いがかかった悪魔側にも連絡をしねえといけねえ。ある意味好都合な展開になってきた』

 

 と、アザゼルは含み笑いを浮かべているらしい。

 

 どういった事かと思っている中、アザゼルは更にとんでもない事を告げた。

 

『いい機会だ。俺はこの機会を利用して、三大勢力で和平を結べないか提案する』

 

「「はいぃ!?」」

 

 渡と宝珠は絶叫した。

 

 不倶戴天の中といえるだろう、悪魔と堕天使と天使・教会。

 

 その三大勢力で和平を行うなど、空前絶後の出来事になるだろう。

 

 そもそもできるのか。そんなレベルで心配になるレベルの非常事態だった。

 

 だが、アザゼルは平然と言葉を続けてきた。

 

『安心しろ。ミカエルは現状を考える脳があるなら、()()()()で戦争もくそもねえって事は分かってるだろう。悪魔側も、四大魔王は戦争そのものを嫌がってるってのはコネがある奴との経由で知ってるからな。こっちがしたでにでりゃ十中八九行けるだろ』

 

 と、かなり成功を確信しているレベルでアザゼルは告げる。

 

 そして、その上でアザゼルはこう言った。

 

『だからまあ、ちょっと異世界の連中と話させてくれや。下手に戦争になったり、戻したとたんに再召喚されたりしたらやってられねえ。……ケジメはきっちり付けねえとな』

 

 その最後の言葉は、凄みがあった。

 

 どうやら、アザゼルもまた多少の怒りを覚えているらしい。

 

 これは色々と忙しい事になりそうだと、四人は四人なりに確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……実際のところは、既に手遅れと言ってもいい状況で事態は進んでいたのだったが。

 




頼れる技術者アザゼル先生。なんだかんだで役に立つマダオです。

そして万能工具である化生万手の力もあり、速攻で連絡がついたことで事態は大きく動くことになります。

第一部はあくまで序盤も序盤。D×Dの本編とリンクすらしていません。

こっからです。こっからどんどん話は加速していきます。
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