異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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16話 再開

 そして数日後、何とか小型化した通信機を開発に成功した。

 

 ついでに画面越しによる対面も可能になった。これに関してはアザゼルが技術を朧に教えた事が大きい。口頭で説明されて理解する朧も末恐ろしいが。

 

 各勢力でも屈指の技術力を持つ堕天使陣営。そこに各種技術を十全に理解さえすれば即座に再現して工程を短縮化すらできる朧の心具。技術開発的にこの組み合わせは間違いなく規格外だろう。

 

 宝珠は内心「手が付けられなくなるから和平結んでおこぼれもらった方がいいんじゃないか」などと考えている。

 

 朧は朧で「堕天使側に就いたうえで、夢を異形も巻き込んでやってみた方が面白いんじゃねえか?」などと野望を燃やしている。

 

 宝珠は最年長にして保護責任がある教師の立場もあり、アザゼルと会談を有利に進む為の話し合いを行っている。

 

 朧はそれに並行して、アザゼルから話しても問題ない程度の技術を取り込んでいる。

 

 そして、その二人に比べると技量的な問題もあってやることのない渡と弥左は、2人で協力して小型化された通信機を降ろす作業を行っていた。

 

「……ねえ、渡君。先生も朧くんもすごいよね」

 

「私から言えば、弥左も十分すぎるほどに賞賛に値すると思うぞ?」

 

 なにやら劣等感を抱いている節がある弥左に、渡はそう告げる。

 

 実際問題、弥左は十分すぎるほど凄いと思っている。これは本心から思っている事だ。

 

「朧の覚醒は普通は死んでいる状況で、程度はともかく歪んでいる。私や宝珠先生は其の為の訓練を受けている。それに対して弥左は自然と歪まず急激に成長しているのだ。十分すぎるほど賞賛されるべきだとも」

 

 そう、それは天然物の資質だ。

 

 地獄と形容するべき状況で、折れたら死ぬという状況で、生き残りのし上がってきた朧は天然ものだが奇跡的な事だ。

 

 宝珠や渡は、そういう事ができるようになる為の訓練を年単位で詰んでいる。人よりはできるようになっているのだ。

 

 それに遅れながらも引き離されていない弥左は、十分すぎるほど優れている。

 

「まあ、ここまで深入りすると完全な開放は難しいだろうが、それでも安心するといい」

 

「え?」

 

 それは意外だった。

 

 暇なので聞いた説明によれば、優れた異能の持ち主や神器保有者は、大抵どこかの勢力に見つかれば管理下に置かれるらしい。

 

 裏に関わる気がないのなら、表に関わらせるわけにはいかない。それは無用な混乱を生んで、自分達裏のものは愚か、表の世界すら侵すから。

 

 なので、弥左も完全な自由が手に入る事は諦めていた節がある。

 

 だが、渡はそれを否定した。

 

「君の性質なら、問題行動を起こす可能性は低い。少なくともある程度の監視術式と組織の一員としての制約を受ければ、日常生活を送る程度ならそこまで問題はないだろう。私からもそう進言させてもらう」

 

 そう、堕天使は堕ちた者ではあるが、邪悪な組織ではない。

 

 上層部の大半の方針もあり、人間界の政治に深入りする気はない。

 

 神器使いを確保したり暗殺したりするのも、あくまで世界の秩序のための必要悪。それを必要にしないための研究も行われている。和平を結ぶことができれば、技術的な理由以外でもそれらが進むことになるだろう。

 

 和平が結ばれるかどうかは正直不安なのが渡の本音だが、しかしそうでなくても堕天使の勢力圏内なら平穏に過ごせるだろう。

 

 否、させて見せる。

 

「君達は本来被害者だ。少なくとも神の子が見張る者の手が届く範囲ぐらいでなら、平穏を約束せねばいけないだろう」

 

 そう、渡は決意する。

 

 不幸中の幸いか、日本神話体系は比較的友好的な関係を結んでいる。数年前のもめ事で、日本の異能者の中でも排他的かつ保守的な五代宗家の次期当主達とも、ある程度有効的な関係を結べているとも聞いている。

 

 この異世界で得た技術などで交渉すれば、拘束は最低限で納める事ができるだろう。そう、渡は思っていた。

 

「そ、そうなの? もしかして、普通に暮らせる?」

 

「定時連絡や監視役はいるだろうし、海外旅行などは難しいだろうがな。清栄町で暮らす程度なら、十分可能だろう」

 

 渡の言葉に、弥左はほっと息をついた。

 

「そっか。私達、思ったよりも平和に暮らせるんだ……」

 

「ああ、少なくとも、私は其の為に尽力するさ」

 

 この子の期待を裏切るわけにはいかない。渡はそれを決意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その決意は脆くも崩れ去る事になる事を、渡は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして会話が終わった朧と宝珠が続いて降りてきてから、渡達は通信機を運んでニコラジョセフを停車させたところまで来ていた。

 

 幸いな事に、ここからトリアーチュル遺跡まで言ってから、王都まで移動するのが一番楽だ。若干迂回するルートだが、しかし山脈などがあるので、結果的にこれが一番早い。

 

「流石に飛行船とか作るのは材料が必要だからな。作る手間でマイナスだ」

 

 そう言いながら、朧は通信機を車に乗せる。

 

 念の為に荷台を用意して正解だった。おかげで、通信機程度なら簡単に運ぶ事ができる。

 

 それによって、通信しながら移動する事もできる。アザゼルが気を利かせて、地球のカーラジオと繋がる事ができるようにしてくれたのだ。雰囲気重視らしい。

 

 気分は長距離トラックの運転手だ。なんとなくテンションが上がっている。

 

「先生、持ってるのは普通自動車の免許で大型四輪じゃないんだけどなー」

 

「四輪の免許があるだけで十分だろ、八重垣先生」

 

 朧の言うとおりである。

 

 道路法も存在しないのなら、運転の仕方がわかっていればいい。少なくとも、この人里離れたところなら交通事故の可能性も低い。開けたところで移動するのだからなおさらだ。

 

 ちなみに、停車中は堕天使経由の魔法で隠してある。最大手の魔法使い組織と繋がっているので、それぐらいは渡も教えられるのだ。そして朧の化生万手があれば簡単にできるのである。

 

 すさまじき技術チート。正直渡は、堕天使側の組織に加わる気を朧が見せていることに歓喜している。

 

「ですがよろしいので? このままいけば、朧は確実に堕天使(我々)と繋がりを持つ事になりますが」

 

 そこで懸念するのは、当然宝珠である。

 

 和平を結ぶ気満々なのがアザゼルだが、それが上手くいくとも限らない。

 

 仮にも教会の悪魔祓いだった宝珠からしてみれば、まだ敵対組織である堕天使に教え子が所属するのは避けたいのが本当ではないだろうか。

 

 だが、宝珠は苦笑交じりでやれやれと首を横に振った。

 

「いや~。流石に信仰の大前提が崩壊してるからねー。なによりこれ以上戦争続けない事が一番だと先生思うー」

 

「「?」」

 

 よく分からない渡と弥左が首を捻るが、朧は宝珠に同情心を込めた目線を向けながら、言いづらそうに言った。

 

「……あ~。総督さんから聞いたんだけどよ? 聖書の神さん、死んでるらしいんだわ」

 

「「……はぁ!?」」

 

 思わず大声を上げた二人は間違ってない。当たり前の反応である。

 

 三大勢力のある意味で最大派閥。信徒二十億人を従え、いくつもの有力国家にすら影響力を持つであろう、聖書の教えを広める、天使と教会。その長である聖四文字の神。

 

 その神が、既に死んでいる。

 

 聖書の教えは一神教。唯一の存在である神を信仰する宗教だ。

 

 その紙がすでに死んでいるなど、最早の前提が崩壊している。知られた時点で世界恐慌が起きてもおかしくない。

 

 なにせ、一神教は基本的に聖書の教えだ。ユダヤ教とイスラム教も、解釈違いなだけでありその神を信仰している。

 

 金融関係の根幹をなしたともいえるユダヤ教。石油産出国の多くで信仰されている、イスラム教。そして宗教の最大手であるキリスト教。その影響力は世界で最大級だ。

 

 それが大混乱に陥るこの情報。もし流れれば、数億人レベルの使者が出る可能性もある。混乱のあまり第三次世界大戦すら考えられるだろう。いかれた時代がようこそするかもしれない。

 

「だから、先生としては大して悪い事してない一般人の為にも、和平結んでほしいのよねー」

 

「ま、俺も平穏にゲーム造りながら異形技術を使いたいから、和平結んでくれる分には好都合だな。金くれんなら、バイト感覚程度いいならなんか作ってやってもいいしよ」

 

 などと、先に事情を知っている二人は割りとのんきな事を言っているが、聞かされた方は堪ったものではない。

 

「わ、和平結んでくれないと刺客とか放たれそうなんだけど!?」

 

「和平を結んでも下っ端には知らされないだろう事を、下っ端()に言わないでくれないか!?」

 

 正直気が気でない。

 

 それに苦笑して同情の視線を宝珠は向ける。

 

 そして、そのタイミングが悪かった。

 

 たまたま曲がり角に差し掛かっていた。たまたま一瞬だけだが先が見えなかった。そして、普通に最高速度は百キロを超えていた。

 

 そしてニコラジョセフには、緊急ブレーキ機能などという最新AI技術などは積んでいない。それは堕天使の技術の管轄外なのでアザゼルは教えてなかった。朧は車に乗らないので、そもそも知識としてあまり把握できていない。

 

 ゆえに―

 

「ヤベえ止まれ先生!!」

 

「へ?」

 

 朧が叫ぶが、この速度では無意味と言っても過言ではなかった。

 

 ―ドガッシャアアアアアン!!

 

 擬音で形容するならばまさにそんな感じの音が響き、全員が肩をすくめて一瞬目を閉じる。

 

 これは、完璧である。

 

 完璧に、交通事故である。

 

 そう、運転中によそ見をするとこうなる。特に見通しの悪いところだと、こうなる。速度が出ているとなおさらだ。

 

 だから高速道路は急カーブの類が無いようにできているのだ。高速で移動する為の道路として、その為の環境が作られているのだ。

 

 完璧に人災であった。まごうことなく宝珠のミスである。

 

 思わず額に汗を浮かべながら、朧はぽつりと呟く。

 

「……死んだよな、コレ」

 

 沈痛というべき表情を浮かべて目を伏せながら、渡は額に手をやる。

 

「時速百キロ越えの戦車並みの頑丈な物体。この世界の戦士達でも基本即死だろう。……宝珠先生、なんというかその、連帯責任は取ります」

 

 顔を真っ青にしてぶるぶる震えながら、弥左は半泣きになる。

 

「ほ、宝珠先生。自首しましょう?」

 

「君達希望的観測を持たせてほしいと先生お願いしたいなー!!」

 

 三人の諦観と哀愁漂わせる言葉に、宝珠は泣いた。

 

 とは言え交通事故で殺した以上、責任は負わねばならない。

 

 ましてや此方の前方不注意だ。日本的に考えて断罪ものだろう。重罪確定だ。

 

 この世界だとどうなるかなどと現実逃避的に考えながら、宝珠はとりあえず死体を運ぶぐらいしなければならないと思って車から降り―

 

「こ、鋼鉄の猪!? いったい何者ですか!?」

 

「……はえ?」

 

 あっさり立ち上がったイーンを見て、ぽかんとした。

 

 

 

 




車を初めて見た人が「鋼鉄の猪!?」とビビるのは定番ネタwww
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