異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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はい、イーンと再会した一向たち。

しかし普通に人をミンチにできる人身事故レベルの打撃を受けてなぜ無事なのか……



17話 前代未聞

 

 

 

 

「い、イーンさん! あの遺跡攻略したんですか!? 一人で、しかも心具覚醒しないで!?」

 

 トンデモな事を聞いて、弥左は絶句した。

 

 銃火器をこの世界で実現した朧。中級堕天使というそもそも種族的に人間越えている渡。そんな存在を討ち取る為の戦闘技術を詰め込んだ宝珠。

 

 そのシャレにならない存在三名ですら苦戦し、自分がサポートに回ったりして何とか全員生存を勝ち取った、苦戦必須の強敵。

 

 三大勢力の上級クラスにすら通用する、心具使いを選定する試練。

 

 それを、単独で撃破した。それも、攻略の前提となっている心具の顕現も無しに。

 

 渡も朧も宝珠も絶句している。三人ですらこうなのだから、弥左が絶句するのも当然だろう。

 

 それを見て、イーンは少々分かってない風だった。

 

「えっと……。心具顕現者は精神力を具現化して戦闘能力を上げるのでしょう? (わたくし)、それほどまでの覚悟で挑んだつもりでしたが……」

 

「だからって限度があるだろ!?」

 

 朧のツッコミは仕方がない。

 

 件の悪魔とやらは数十人がかりの心具顕現者を一蹴した恐れがあるから、それだけの領域に到達できるのはありうるだろう。

 

 だがしかし、それでも習熟機関とかあるあろうと思うのは当然だ。素体のポテンシャルも必要不可欠だろう。

 

 三十層の魔獣に手こずったイーンが、最下層の魔獣を一蹴した渡や宝珠より強いなど、言い方は悪いが不自然だ。

 

 しかしイーンはそれを意に介さず、というか意に介する余裕がないようだ。

 

 そのまま、うつむくと言葉を振り絞る。

 

「……唯一存在エルル様が、邪悪である可能性があるという事は分かりました。もしくは偽物が代行している可能性もありますが」

 

 その言葉に、全員がはっとなる。

 

 そうだ。イーン・クリフォティアというクリフォティア王国の王女があの遺跡を攻略したという事は、彼女はあの言葉も聞いているのだ。

 

「正直信じられませんが、あれだけの遺跡の攻略難度の高さから言って、欺瞞情報と考えるのも難しいのです。……その為、どうしても真相を確かめたかったのですが、本当に真実ならうかつに動けば騎士団の者はもちろん、貴方方のクラスメイトまで巻き込んでしまいます」

 

 どうやら、彼女が単独行動しているのは、こちらのことまで気遣ってくれたかららしい。

 

 宝珠と同じ危機感を抱いて、そして行動してくれたのだ。

 

 ありがたい話だ。本来、彼女からすれば清栄学園の者達はこの世界から見ても異物で、気にする度合いは低いというのに。

 

「あー、その、なんだ……」

 

 それにたいして、朧がぼりぼりと頭を掻きながら視線を逸らす。

 

「俺はイーン(あんた)達以外は気にもしてねえから、その気遣いは俺には向けなくていいぜ?」

 

「いえ、そうはいきませんわ」

 

 朧の気遣いなのか切り捨てなのか分からない言い回しに、しかしイーンは真剣な言葉を告げて首を振る。

 

 その目にはしっかりとした決意があった。

 

「真実だとするのなら、貴方方は完璧な被害者です。(わたくし)はもちろん、クリフォティア王国明は問答無用であなた方に謝罪する責任があります」

 

「お、おう…‥」

 

 その表情に、朧は気圧されたのか少しどもった。

 

 そして、そっぽを向き直すとポリポリと頬を掻く。

 

「まあ、そこまで言うなら気を使ってくれてもいいんだけどよ。それよりそっちは大丈夫なのかよ?」

 

「朧くん、この世界の事は基本どうでもいいとか言ってなかった?」

 

 宝珠のツッコミを、朧はスルーした。

 

 それを苦笑しながら見守りながら、弥左は渡に視線を向ける。

 

「ねえ、渡君。イーンさんなら―」

 

「皆まで言うな、弥左。彼女のこの態度なら信用できる」

 

 そして、速攻で通信機のスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『事情は分かった。少なくとも、二年A組はカウンセラーが面倒を見ているわけだな?』

 

「はい。(わたくし)は責任を追及されて、A組の皆さんの対応は別の騎士団に回されてしまいました……」

 

 アザゼルの質問に、イーンはしょぼんとしながら肯定する。

 

 どうやら単独行動できたのは、そういった事情があったかららしい。

 

 最初は通信機ごしのアザゼルとの会話に戸惑っていたが、適応力が高いらしいイーンは速攻で受け入れたらしい。すぐに人を指導する立場同士で会話はスムーズに進んだ。

 

 そして即座に方針は決定された。

 

『よし、とりあえず王都に着いたらアンタの権限で王様と会わせてくれ。そっから先は俺が話を付ける』

 

「よろしいのですか? お言葉ですがそちらから見れば、(わたくし)たちは誘拐犯とみられてもおかしくありません。強引に連れ帰られても文句を言う資格はないのですが……」

 

 話し合いで解決の姿勢を見せるアザゼルに、むしろイーンが困惑する。

 

 だが、通信機越しのアザゼルは静かに首を横に振った。

 

『二の舞になるのは避けるべきだからな。こっちとしても垂涎物な異世界と交流できるかもしれねえわけだ。話し合いで解決するならそれに越した事はねえ』

 

「……ご配慮、感謝いたします」

 

 その言葉に、イーンは涙ぐみながら頭を下げる。

 

『気にすんな。自分達の世界や国をどうにかしたいと思うのは、一国の要人としちゃぁ褒められるべき美徳だ。やり方は問題あるとはいえ、エルル万歳な価値観じゃ、エルルの神託が最優先だろうしな』

 

「重ね重ね、ご迷惑をおかけします……!」

 

 その光景に、渡と弥左は静かにほほ笑む。

 

 朧は興味なさげにしながらも、しかし聴き耳だけはしっかりと立てていた。

 

 そして、宝珠は―

 

「……」

 

 静かに、通信機とその映像のアザゼルを見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして深夜。交代で見張りをする事になり、今は宝珠の番だった。

 

 とは言え運転担当なうえに、さっき事故を起こしたばかりである。その時間配分は最短だった。

 

 だが、それで十分でもある。少なくとも、宝珠の目的を果たす為には、十分すぎた。

 

「アザゼル総督。……あなた、何か裏があるでしょ?」

 

『ああ、気づいてたか。何か分かるか?』

 

 隠す事なくそう嬉々返すアザゼルに、宝珠はため息と共に告げる。

 

「交流して利益が得られるのは良い。エルルが強引に再誘拐を試みるのも避けたい。だけど、それ以外には……イーンさんが知らないだろう事を調べたい。そう思ってるじゃないかって先生思ってるわ」

 

『ああ、正解だ』

 

 アザエルは、あっさりと答えた。

 

『エルルは信用できない。手法が明らかにあれだし、奴がそれだけ能力を持っているなら、俺達に接触して交渉した方が確実だ。それに、トリア―チュル遺跡の件もある』

 

「どういうこと?」

 

 宝珠はそこが疑問に思える。

 

 トリアーチュル遺跡の真相を知っているのなら、件の悪魔は確実に潰すはずだ。少なくとも、自分の息のかかった者達以外には入れないようにする程度の配慮は見せるだろう。

 

 つまり、エルルはそもそも気づいていないと判断するしかないのだ。それが常識的だ。

 

 だがしかし、アザゼルははっきり言った。

 

『世の中に入るんだよ。遊びを入れずにはいられず、それで人が右往左往したりするのを楽しむ、生粋の外道ってのが』

 

 その言葉には、感情が籠っていない。

 

 嘆きでも、怒りでも、もう死んでもなく、ただ事実として認識している。

 

 ゆえにこそ、宝珠もそれが本当なのだと確信する他ない。

 

 そして、それゆえにアザゼルは警戒しているのだ。

 

 あの遺跡を残しておいた理由は、わざと真相を知って反旗を翻す者が出てくる可能性を残す事だと。

 

『今回の件、エルルがその手のタイプだとするなら、その目的は遊び半分だ』

 

「こんな事を、遊び半分でやるって言うの?」

 

『ああ、いるんだよ。こういう愉快犯ってのが、世界には何人もな』

 

 その言葉が真実なら、真剣に世界の為に動いているリチャードも、テンション任せで後悔した生徒達も、奈落の底で地獄を味わった朧も浮かばれない。

 

 その想定に絶句する宝珠に同情の視線を向けながら、アザゼルは更に続ける。

 

『利益がないわけじゃねえ。だが、それ以上に何か悪辣な事を考えている場合もある。……宝珠、気を付けろよ』

 

「堕天使の長が、悪魔祓いまがいを心配するの?」

 

『たりめーだ。部下の恩師に気づかいぐらいするさ。……それに、アンタが一番警戒してるからな』

 

 そう答えながら、アザゼルははっきりという。

 

『救援部隊を急がせる。宝珠、お前は、とにかく注意を払ってくれ』

 

「了解。先生は先生らしく頑張るわ」

 

 その言葉を最後に、宝珠は通信を切る。

 

 そして、空を見上げる。

 

「……後二日もあれば、王都に着くわけなのよねぇ」

 

 そう、後二日で大きく事態は動くだろう。

 

「何とか、生徒(あの子)達を、全員助けてあげたいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉は、決して叶わない。

 

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