異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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19話 苦渋の逃亡

 

 渡達が絶句する中、真っ先にシャルバに怒りの視線を向けたのは、アザゼルだった。

 

『……シャルバ、てめえ、自分達が何をしたのか分かってるのか?』

 

「ああ、奴らを効率的に運用したい奴がいてな。都合がいいので宣戦布告がてらに少し間引きをしただけだ」

 

 その言葉で、清栄町の惨劇を引き起こしたのが、彼らだという事がすぐに分かった。

 

 そして、アザゼルは目を血走らせて激昂する!!

 

『ふざけるな!! 人間世界に不用意に手を出すなんて、俺達のタブーだぞ!?』

 

「それがどうした? 我々は地球を侵略すると言ったのだぞ? なら表も裏も関係あるないだろう」

 

 そう平然と答えながら、シャルバは指を鳴らす。

 

 そして、渡達の周囲を大勢の兵士達が取り囲んだ。

 

 その数は百を超える。そして、誰もが明らかに尋常でないオーラを身に纏っていた。

 

「やめなさい! 彼らは(わたくし)が保護していますのよ!?」

 

 イーンが我に返って声を上げるも、兵士達は戦意を隠さず武器を構える。

 

「関係ありません。すべてエルル様とその使途の為ですので」

 

「そうです。使徒様の命令ですから、イーン様も死んでいただきます」

 

 平然と言う言葉がこれほどなく似合う声色で、兵士達はそう切って捨てる。

 

 そして、喬樹もまた一歩前に出ながら、周囲の分身達を差し向ける。

 

 誰もが魔法で強化された剣を構えながら、じりじりと間合いを詰める。

 

 それに対して戦闘態勢を取りながら、渡達は攻撃に躊躇を抱いていた。

 

 当然だ。彼らは洗脳されている者が大半なのだ。

 

 いくら必要とは言え、それを躊躇なく殺すのは、ためらうのが人情という物だろう。

 

 そして、喬樹もシャルバもそれを分かっているからこそ、圧倒的有利な状態だと確信しているのだ。

 

 故に―

 

「おい、宝珠先生」

 

 ―それを躊躇しない者が、最適解を選択する。

 

「俺が殿をする。アンタは三人を連れて先に行け」

 

 その言葉に、宝珠は絶句する。

 

 撤退戦において、殿はとても危険な役割だ。死人が出やすい役目と言っていい。

 

 それを、朧が自発的に行うという。

 

「あなた、生き残ること最優先でしょう!? 生徒を守るのは先生の役目よ!?」

 

「仕方ねえだろ。躊躇なくこいつらやれそうなのは俺だけだ。他の奴らを殿にしちまったら、逆に途中で追いつかれてもろともくたばりかねねえ」

 

 そう言いながら、朧は改良型ターニャを構えつつ一歩前に出る。

 

「全員生存の最適解はこれしかねえ。あんたも動揺してんだろうが!!」

 

 その言葉は明確に事実で、しかしそれでも全員生存は不可能に近く―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、殿はこちらの役割だぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―だが、それはあまりにも味方の戦力把握が足りていない判断でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリィイイイイイイイゴリィイイイイイイイ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その奇妙な大声と共に、舞い降りる影が数十人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんというか、特撮の戦闘員のような恰好をした者達が大半。そして、その中央には昭和の戦隊物の幹部みたいな恰好をした、奇天烈な男が一人。

 

 斧を構えたその男を見て、渡は歓喜の表情を浮かべる。

 

「アルマロス様!!」

 

「え、知り合いなの?」

 

 奇天烈すぎる格好の男の登場で喜ぶ渡に、弥左はちょっと引きながら我に返る。

 

 しかし、真実はもっと残酷である。

 

「彼は神の子を見張る者(グリゴリ)幹部のアルマロス様だ。アンチマジックの第一人者でもある」

 

「「「「え?」」」」

 

 宝珠や朧はもちろん、イーンまで含めてきょとんとなった。

 

 明らかに脳筋というか阿保っぽい人物である。実際、特撮の悪役に魅せられたという変人である。

 

 それが、異形の最先端たる堕天使の幹部。それも、インテリが付きそうな立場を務めている。

 

 正直に言おう。誰もが嘘だろオイと思った。

 

 見れば喬樹もあっけに取られている。さもありなん。

 

 だが、シャルバは明らかに警戒の色を濃くして、両手に魔力を発生させながらアルマロスを睨みつける。

 

「忌々しいカラスの幹部が!! いいだろう、アジュカ達の前に貴様を血祭りにあげてくれる!!」

 

「させると思うか! 一般人をたかが示威行為で数万人も殺して、黙っているほど我々グリゴリは外道ではない!!」

 

 即座に激戦が勃発する中、一瞬躊躇した渡達を、戦闘員が引っ張る。

 

「走れ!」

 

「アルマロス様がシャルバ・ベルゼブブ達を押さえているうちに船に急ぐぞ!!」

 

 その叱責に我に返った全員が走り出す。

 

 だが、船に乗ればすぐにでも出港するだろう。

 

 そしてその目的地は地球になるはずだ。それも、逃げ帰るように。

 

 それに躊躇する者もいる。この世界の者なら当然だ。

 

「待ってください! (わたくし)が、逃げるわけにはいきません!」

 

 引っ張られながらも、強引に振りほどこうとイーンはもがく。

 

 だが、それを見逃すわけにはいかないのだ。

 

「イーンさん! お願いですから、今は生き残る事に終始してください!!」

 

 だから、渡は強引にそれを抑え込みながら、イーンに懇願する。

 

「私達が確認できる、正気のこの世界の者は貴方だけなのです!! ここであなたがいなくなれば、私達はこの世界の窮状を伝えられる者がいなくなる。そうなれば、奴らの支配からこの世界を開放した後の事が手詰まりになるのです!!」

 

「………っ!」

 

 渡のその言葉に、イーンはハっとなって動きを止める。

 

 聡明な彼女だからこそ、その言葉の意味が分かる。

 

 分かってしまうからこそ、ここは逃げるしかない事を理解してしまう。

 

 苦痛だろう。悲嘆だろう。だがしかし、ここで彼女が生き残らねば、事態は更に最悪の方向に進むのだ。

 

「……わかり、ました………っ!」

 

 一粒の涙を落としながら、イーンはうつむきながらも撤退を選択する。

 

 この日、クリフォー×クライシスは地球侵略の為のシステムへとなり果てた。

 

 その唯一の抵抗者たる、イーン・クリフォティアにかかる重圧は、察する事すら困難だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それから数分もせずに激戦は終わった。

 

 最初から転移魔法の準備を万端にしていたらしく、アルマロスは撤退態勢が完了した時点で、即座に転移して離脱したからだ。

 

「……チッ! いかにオーフィスの蛇があれど、魔王クラスが相手では防戦に徹されればこうなる事もあるか」

 

 反撃を受けてかすり傷を負った手をを忌々しげに見つめながら、シャルバは吐き捨てる。

 

 しかし、彼は冷静さを取り戻すと一呼吸で切り替える。

 

 そもそも、今回の事は些事に過ぎない。

 

 クリフォー×クライシスの二十億人の人口と、十億を超える魔獣を得た時点で、これから始める戦いは圧倒的優勢に進める事ができるのだ。

 

 ()がこの世界で具現化され続けた心具のデータを基に開発した技術で、数多くの強化施術が行われる。それをもってすれば、震える戦力は圧倒的に高いという他なかった。

 

 警戒するべきは神クラスだが、それにしてもオーフィスを利用する事ができれば十分打倒可能だ。

 

 あの何を考えているか分からない存在は、しかし力の塊である。以外にも愚鈍であったし、上手くごまかす事は可能だろう。決着がついてからグレートレッドとぶつけ合わせて、共倒れを狙えばいい。

 

 余波で相当の被害が出るだろうが、クリフォー×クライシスにまでは及ぶまい。その後荒廃した世界に救いの手を伸ばして、崇拝を集めればいい。

 

 真なる魔王の中でも真に尊いベルゼブブ。彼が統治する地球は、きっとこれまでよりも素晴らしいものになるだろう。

 

 その光景を想像しながら、シャルバはほくそ笑んだ。

 

「この戦いは圧倒的にこちらが有利だ。アジュカめ、俺からベルゼブブの座を奪った事を後悔しながら滅びるがいい」

 

 いずれ確実に起きる勝利の瞬間を思い浮かべながら、シャルバは戦意を滾らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、喬樹は舌打ちをしながら空を見上げていた。

 

 訳の分からないオッサンの所為で、せっかく殺せるところだった朧や渡を取り逃がしてしまった。あれが無ければ確実に殺せていたと確信する。

 

 それほどまでに、祝才で得たポテンシャルと自身の神器の相性がいいのだ。その上、真っ先に自分をスカウトする事を選んだ優秀な()は、積極的にこちらを優遇してくれている。

 

 優れている自分を取り立てる。実に当たり前の人材登用だ。気分がいい。

 

 確かに今回は朧も渡も取り逃がした。だが、そんなものは次の機会に殺せばそれでいいのだ。

 

 まだ自分は才能を磨き切っていない。もしかすれば、万が一のミスがあって危険にさらされたかもしれない。

 

 まずは神器を磨く事だ。この天賦の才を最大限に生かせば、忌々しい渡も、鬱陶しい朧も殺す事ができるはずだ。

 

 そして心具も使いこなそう。この力は使い方を選ぶので、そこを考えなければならない。そういう意味ではまだ本領を発揮できない現状で挑んだのは気がせいていた。

 

「まってろよぉ。おまえらは俺が殺してやるからよぉ?」

 

 その時は、きっとこの上なく気持ちいいのだろう。

 

 あの時朧を殺し損ねた時も、とても気分が良かった。気持ち良すぎて失神してしまいそうだった。産まれてから一番最高の瞬間だったといえる。

 

 今度こそ確実に、そして自分の手で殺せば。もしそうなれば、きっともっと気持ちいいはずだ。

 

 それを実感する時を夢見て、喬樹は身震いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよっしゃぁ! これでようやく準備の第二段階ができるってもんだぜ!」

 

「それはようございました、エルル様」

 

「サンキューねカルディー君! 君がいてくれなけりゃ、禍の団(カオス・ブリゲート)との同盟を結ぶのは無理だった! 三つ巴はめんどくさそうだったから、助かったぜ!!」

 

「全てはエルル様の為にあるのですから当然です。だからこそ、その意を伝える私はこの世界でも特に恵まれた生活を送れるのですから」

 

「うん、カルディーくんのそういうところ、俺ちゃんは結構気に入ってるぜ!!」

 

「……失礼します」

 

「お、どうしたよ? 何かいいことでも?」

 

「はい。今回の襲撃に参加させた清栄学園の生徒は、全員最後の一線を越えさせました。これで自発的に酔いしれよ、破滅に誘うこの美酒に(メイヴズミード・バッドトリップ)が解かれることはないでしょう」

 

「それはいい。あれならば心具に目覚める事もできるでしょうからな」

 

「うんうん。しかも、これでタガが外れりゃ、万が一解けても暴走してくれそうだ。面白くなってきたぜ!!」

 

「それではエルル様。第一陣を出発させる事になりますが、ご出立なさいますか?」

 

「おいおいカルディー君。悪の親玉ってのは、もっとこう、どっしり腰を落ち着ける者さ。まずはお馬鹿さんのシャルバ君達に任せようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、俺が誘いをかけるまでくすぶったままだった三馬鹿が、どこまでできるか、ギャンブルでもして名乗りを上げるのを待ってようぜ?」

 




さて、何とか脱出できた渡たちですが、その逃亡は苦痛極まりないですね。

助っ人としてでてきたのはアルマロス。ほかの幹部だとこの後の展開でイッセー達と絡める際にキャラ描写が足りてなかったり絡ませるとややこしかったりで適任がいなかったのです。そして彼が担当になってしまったがゆえに渡たちは……。









そして大規模戦力をもってして地球に仕掛ける禍の団。敵の規模が大幅に強化されて、ハードモード開始です。これは和平を急がないとまずいぜぇ、まずいぜぇ!!









そして最後の会話をしている奴の一人は、大体想像がつくでしょう。まあ、そういうことです。
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