異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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こんかい、ちょっと長めかな?


21話 決意表明

 

 どうやら、シャルバ達は逃げられたら逃げられたで構わないと判断していたようだ。

 

 船は高速で移動していたが、それでも音速突破までには時間がかかる。シャルバクラスなら追撃する事は不可能ではなかっただろう。

 

 だが、次元を破って異世界間航行状態に突入するまで、追撃はなかった。

 

 後は迂回路を通って、地球に帰還するまでこの船の性能なら二週間。大規模改造を施し手探りで探しながらではないので、一月もかからない。

 

 この調子でいけば、7月に入るか入らないかの時期で地球に着けるだろう。

 

 だが、皆はそれを喜ぶ事は出来なかった。

 

 帰還最優先でクラスメイトも大半は気にしていないと公言し、実際そうだろう朧ですら、うつむいていた。

 

 そして、拳を握り締めながら食いしばる歯の隙間から、声が漏れる。

 

「父さん……母さん……!」

 

「朧……」

 

「朧くん……」

 

 その光景に、渡も宝珠も何も言う事ができない。

 

 当然だ。いきなり知らされたその事実は、元の世界に戻る事を目的としていた朧にとって酷過ぎる。

 

 清栄町の殆どの人間が殺された。朧の両親も死んでいる可能性は、非常に大きいだろう。

 

 その状況下で、一体何を言えばいいのか。下手な慰めなど、返って傷つけるだけかもしれない。

 

 それを察しているのだろう。朧はうつむきながら、しかし明確に皆に向けて声を絞り出す。

 

「……悪い、今は、一人にさせてくれねえか?」

 

「分かった。宝珠先生、行きましょう」

 

「ええ、そうね」

 

 そして誰もが朧から離れ、そして朧は一人になる。

 

「……クソッタレ」

 

 一ノ瀬朧は大きく変わった。誰が見てもそう思うだろうし、自分自身自覚している。

 

 そうでもしなくては生き残れなかったし、後悔などない。

 

 ただ、それでも不安な事はあった。

 

 両親は、今の自分を受け入れてくれるのだろうか?

 

 それが不安で不安で堪らなくなる時が偶にあって、だが、それを知る事はもう二度とできないのだろう。

 

 それが、堪らなくショックだった。

 

 朧は、ゲーム会社に就職して、ゲームを作る事が夢だった。

 

 そしてそれは実現までの道筋も半ば見えていた。

 

 この事態でとても大変な事になったが、それでも可能性は十分あった。堕天使業界でもゲーム関係をやっているらしいし、そういった方面ができるかもしれないなどと、能天気にも思っていた。

 

 だが、それも今や色あせている。

 

 復讐でもするべきだろう。憎悪に燃えるべきだろう。理不尽に対する報復を望むべきだろう。

 

 だが、そんな気になれない程、朧は沈んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてのどが渇いたので、なんとなく船内を歩いて飲み物を探す事にした。

 

 自分の異能力で飲料水を運んでいる事を失念している。それほどまでに、朧は精神的に追い込まれていた。

 

 船内は意外とうるさいというか、慌ただしい。

 

 異世界からの侵略という、非常時極まりない事態の所為だろう。それも、こちら側の者達がそもそもその異世界を支配しているのだから尚更混乱の度合いは大きい。

 

 だが、それもどうでもいい。

 

 何か大事なことを忘れている気がするが、しかしそれを思い出す事すら億劫だ。

 

 死ぬ気力もなくなった状態で、朧はうつむきながら船内を歩き―

 

「……お願いします!!」

 

 ―その、聞き覚えのある声を聴いた。

 

 視線を向けると、そこは食堂のようだ。

 

 都合がいい。冷たい水でも貰うとしよう。

 

 そう思って入ろうとして―

 

「私に、堕天使流の訓練を積ませてください!!」

 

 ―そう言って頭を下げる、弥左の姿を見つけた。。

 

「……まちたまえ、弥左」

 

 渡は、一度呼吸を整えてから、まっすぐにそんな弥左に視線を向ける。

 

「何を考えているのかは分かる。おまえも、両親を殺されて奴らが憎いのも分かる。だが―」

 

「―違うよ、そうじゃないの」

 

 弥左は、渡のその推測を否定する。

 

 静かに首を振って、弥左はまっすぐに渡を見つめる。

 

「仇は討ちたい。彼らが許せない。だけど、それだけじゃないの」

 

 弥左は、そうはっきりと言い切った。

 

 両親の無念を晴らしたい。殺された恨みを晴らしたい。

 

 理不尽に対する怒りはある。不条理に対する反感もある。

 

 だが、それ以上に大切な事があると、言外に告げていた。

 

「多分だけどさ、皆、あいつらに支配されているんだと思う」

 

 その言葉に、朧は言いたい事が何となく分かった。

 

 清栄学園二年A組。その生徒達は、おそらくエルルの手の内なのだろう。

 

 喬樹は自発的に参加しているようだが、他の者達は素直に首を縦に振るとは思えない。だが、それが何の意味があるのだろうか。

 

 洗脳技術は地球の異能にはあるのだ。なら、傀儡の尖兵として送り込む程度の事は考えられる。

 

 そもそも、最初からそのつもりだったのかもしれない。

 

 奴らの悪辣さは思い知った。あいつらは、最初から遊びとして勇者召喚などを行ったのだろう。

 

 あのシャルバの戦闘能力から考えて、生徒達が束になってかかっても、手こずる事すらないだけの化け物なのは言うまでもない。だが、態々皆殺しにするなら最初から召喚する必要もない。

 

 おそらく、もっと悪辣な手段を使っている可能性がある。洗脳して操って人殺しをさせる、そんな真似だ。

 

 ……正直、朧はどうでもいいと思っている。

 

 多少は同情するに値する者達も何人か入る。だが、その程度だ。

 

 朧にとって大切なクラスメイトは―

 

「私がしなきゃいけない事は分からない。だけど、したい事は分かるの」

 

 そんな朧に気づかず、弥左は告げた。

 

「私は、私が助けてくれた朧くんに胸を張れる人になりたい」

 

 その言葉に、朧は軽く目を開く。

 

 それに気づかず、弥左は胸に手を当てて告げる。

 

「これから何が起こるのかなんて、私の想像をきっと超えてる。だから、覚悟があるなんて言わない」

 

 目を伏せながら、弥左は、しかし震えているだけではいない。

 

 決意でもない、覚悟でもない。

 

 それはきっと―

 

「でも、せめて頑張りたい」

 

 ―誓いだった。

 

「朧くんに助けられて、朧くんがああなっちゃうきっかけになった。だから、せめて朧くんに胸を張りたい。私はそれだけの価値があったんだって、いつでもいえるようになりたい」

 

 そこにある確かな想いを言葉にして、弥左は目を開き、まっすぐ渡を見る。

 

「いきなり巻き込まれて、まだ分からない事も多いけど、だけど、それに流されるだけじゃない生き方がしたい。……だから、その為の努力をさせて」

 

「……まったく。あの夜から思っていたが、君は本当にすごい奴だと思わせてくれるな」

 

 はあ、とため息をついてから、渡は肩をすくめた。

 

「そこまで言うなら仕方がない、あとでアルマロス様に進言しておこう」

 

「うん。ありがとうね、渡君」

 

 その弥左の姿に、朧は大切な事を思い出した。

 

 そして―

 

「あ~、ちっといいか?」

 

 なので、表情を引き締め、朧は一歩前に出る。

 

 そこでようやく気付いたのか、2人は少しぎょっとしながら振り向いた。

 

「朧。もう、いいのかね?」

 

「朧くん!? あ、まさか、聞いて!?」

 

 二人の言葉に沈黙で返しながら、朧はまっすぐ二人を見る。

 

 言うべきことは、一つだ。

 

「渡、弥左。俺に何をしてほしいか、言ってくれ」

 

 そう、それが一番大事だ。

 

 あの奈落の底で、一ノ瀬朧は化生と化した。

 

 生きる為なら何でもすると決め、その為なら人殺しすら辞さないと覚悟を決めた。

 

 今でもその本質は残っている。ついでにいえば、どっちにしても突き落とした下手人は殺すつもりだった。

 

 だが、それでも残っている他の何かはあるのだ。

 

「俺は、正直ってあいつらのことはほとんどどうでもいい。ぶっちゃけあの奈落の底で、人情なんてものは捨てきったつもりだ」

 

 だが、しかし、それでも。

 

「……でもな、譲れないものはあるんだよ」

 

 拳を握り、震わせながら。

 

 一ノ瀬朧は、これだけは譲れない誓いを言葉に変える。

 

「宝珠先生や、渡や、弥左を。裏切る事だけは……したくねえ」

 

 そう。それが、絶対に譲れなくなった一つの枷。

 

 朧のその言葉に、弥左も渡も、ふと笑みを浮かべた。

 

「これは責任重大だな」

 

「うん。朧くんの更生は私達にかかってるって事だよね」

 

「そういう方向かよ」

 

 その言い方に呆れながら、朧はしかし微笑を浮かべる。

 

 そもそも言うまでもない。分かりきっている事だ。

 

「まあ、俺の力はきっと役に立つぜ? だからよ……いうことは一つだろ?」

 

 そう悪ぶっていえば、渡は降参したかのように肩をすくめる。

 

「……朧、弥左。力を貸してほしい」

 

 渡は、そう言って頭を下げる。

 

「本来なら、私ができる限り背負うべきなのだろう。だが、それが難しいのも事実だ」

 

 そう、真実を言えば、巻き込むしかないのだ。

 

 心具顕現者。敵の戦力の中でも精鋭であろう、オンリーワンを持つ敵達。

 

 それらに対抗するには、こちらも心具顕現者の研究が必要不可欠だ。被験者は確実にいるだろう。

 

 それらすべてを渡は背負うべきだと考えたが、しかし二人の決意を見て、考えを改める。

 

 二人に戦う意思があるのなら、それに頼らないという状況は現状ではない。

 

 それを、渡は受け入れた。

 

「……あちゃー。三人とも覚悟完了しちゃったか。先生どうしたもんか」

 

「仕方がありませんわ。あれだけのことがあれば、覚悟を決めてしまう者もいるでしょう」

 

 そして、新たなる参入者も現れる。

 

「宝珠先生、イーンさん」

 

 渡が振り返りながら声を上げれば、2人は憔悴を感じさせながらも、強い意志を込めた表情を浮かべて一歩を踏み込む。

 

「ま、先生は最年長だし付き合いますとも。そもそも、生徒にふざけた真似してただで済ませるなんて、教師として失格でしょうしね」

 

「もとより私達の世界の問題ですわ。……ここで、へこたれてはいられません」

 

 二人もまた、戦う意思を示している。

 

 ……その視線を受けて、渡達も頷いた。

 

 そして、弥左はにっこり微笑みながら手を前に出す。

 

 次に、その意図に気が付いた渡と宝珠が、その手に同じく手を伸ばして乗せる。

 

 朧は反目になるが、肩をすくめるとそっぽを向きながら、それに応じる。

 

 そして、よく分かっていないながらもイーンもまた、手を伸ばす。

 

「ちょっとした決意表明です。こう、チームで気合を入れる的な」

 

「先生はスクラムの方が気合入りそうだけど、ここは若いものに合わせるわ」

 

 弥左がイーンに説明して、宝珠はふふっと微笑を浮かべる。

 

「めんどくせえが仕方がねえな、おい」

 

「わ、分かりましたわ。……なんというか元気がでてきそうですわね」

 

 ツンデレ極まりない態度を見せる朧に、慣れていないのでちょっと戸惑っているイーン。

 

 それを見て苦笑しながら、渡は此処に誓いを立てる。

 

「……エルル達には報いを受けさせる。皆、死ぬなよ!!」

 

「おう」

 

「うん」

 

「了解了解」

 

「分かりましたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そこは返事を合わせるのが基本だろうに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 微妙に、締まらない展開だった。

 




これにて事実上の序章終了。ここ迄が秦のプロローグといっても過言ではないです。

次の話からD×D本編へと突入します。時期的にはエクスカリバー編ですね。
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