異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。 作:グレン×グレン
だが、せめてここまでは……!!
響き渡る銃声。しかし、その弾丸が当たったのはコカビエルではない。
バルパーでもない。戦闘不能になっているフリードでもない。躱されたわけでもない。
アルマロスと呼ばれた堕天使が振るった、斧に当たったのだ。
その光景を冷めた目で見つめながら、渡は覚悟を急速に決め始めていた。
「アルマロスのオッサン。こっちはさっさと終わらせてぇんだけどよ」
朧は不満げな顔で文句を言うが、しかしアルマロスは譲らない。
静かに首を振って、そしてまっすぐに朧を見つめて。
「では変身だろう」
―沈黙が響いた。
「……変身?」
今代の赤龍帝らしき少年が、首をかしげる。
その眉間を狙って朧は速攻で拳銃をぶっ放した。左腕の籠手で防がれた。
「あぶねえ!! 部長のおっぱいが吸えるという情熱が無けりゃぁ、当たってたじゃねえか!!」
「んな理由で防ぐんじゃねえ!! 後ゴム弾に設定したから死なねえよ!!」
速攻で文句を飛ばす赤龍帝に、朧は額に青筋を浮かべながら怒鳴り返す。
さらにぶっ放そうとした朧を、しかし宝珠が抑え込んだ。
「はいはいストップ―。先生思うんだけど、それやると今後の展開に差し障るから我慢しようねー」
などと宝珠の説得を受けるが、朧はすごく打ちたがっていた。
顔は真っ赤である。因みに憤怒ではない、恥辱だ。
そして弥左もまた顔が恥ずかしさで赤くなっている。宝珠も渡も少し顔が赤い。
赤くなってないのはイーンだけだ。なんというか、異文化交流の一環と思っているのだろう。
「さあ、変身するのだ!! 技術提供の代わりに提示した条件、忘れたとは言わせんぞ!!」
「ぐががががががが!!」
アルマロスに催促され、朧はもだえ苦しんだ。
だがしかし、そこに同情の視線が向けられることはない。
むしろ、イーン以外は責める視線だった。
「巻き込まれた私たちが言うべき台詞であろう、それは」
「先生流石にちょっと恥ずかしいんだよー」
「付き合ってあげるんだから、朧くんは我慢してよね!!」
その状況に、誰もがどういうことだかさっぱりわからない。
そして、赤龍帝たちがわからないでいる間に、イーンが一歩前にである。
「さあ、敵がいつまでも待っていてくれるとも思えません!! 変身しますわよ、皆さん!!」
「「「「ちくしょー!!」」」」
そして絶叫と共に、五人は腕時計のようなブレスレットを構える。
そして誰もが全く状況が読めずにぽかんといている中、それは起きた。
「「「「「五心変身!!」」」」」
四人ぐらいヤケクソで、一人だけちょっと戸惑った様子で、その音声認証が駆動する。
そして光輝き、その瞬間五人の姿が変わっていた。
「し、し、シンレッド!!」
「し……シンブルー!!」
「シンイエロぉおおおおお!!!」
「………シンブラック」
「シンホワイト!!」
なんか、五色の似たような恰好の戦士がそこにいた。
「こ、心の力で邪悪を砕く!!」
渡が変身する、赤い戦士が叫び、そして五人全員でポーズをとる。
「「「「「心具戦隊、シンレンジャー!!」」」」」
「ほっと」
そしてポーズをとった瞬間、アルマロスが指を鳴らし魔法を発動。
五色の爆発が、五人の後ろに発生した。
………………………………………………………………
沈黙が、響いた。
「……アルマロス。お前の趣味は悪役であって、戦隊ヒーローではなかっただろう」
「それは仕方あるまい、侵略者と戦うのなら、戦隊ヒーローが適任ではないか!」
会話の内容が異次元に突入しかけている。
だがしかし、それに困惑する赤龍帝たちを無視して、状況は刻一刻と変化していた。
「……とりあえず死ねやぁ!!」
マスクの内側が真っ赤になっているだろう声色で、朧は躊躇なく拳銃を乱射する。
散弾、榴弾、徹甲弾。それぞれ弾丸の種類を変えながら、連発で銃撃を叩き込む。
それを瞬時に翼で弾き飛ばしながら、コカビエルは楽しげに笑う。
「いいな! おまえはなかなかいいぞ!!」
その言葉と共に、光力が収束され槍として放たれる。
瞬時に放たれる四本の光の槍。それぞれが超高速で迫り、詰め将棋のように回避困難かつ回避できるところに次弾が当たる方向に放たれる。
それはコカビエルが正真正銘実力者であることの証明。仮にも三大勢力の争いを生き残り、聖書に名を記されたその事実は伊達ではない。
だがしかし、それを黙ってみているような愚か者はいない。
「舐めないでいただこうか、コカビエル様」
振るわれる鋼鉄の手甲が、その攻撃をすべて弾き飛ばす。
傷一つなく、同様一つない。最上級堕天使の攻撃を、一切の痛痒すら感じずに弾き飛ばす、その籠手の防御は、魔王クラスですら突破困難だろう。
その圧倒的な頑強な籠手を持った、渡は静かに拳を構える。
「この現状でのこの凶行。……クリフォー×クライシスとつながっていると判断させていただきます」
その詰問の視線に、コカビエルは不敵に笑い―
「―そういうわけだから覚悟してねー!」
「お話を聞かせていただきます!!」
左右から迫る、青と白の戦士の攻撃を、コカビエルは両手の件で受け止める。
圧倒的な出力の光の剣は、魔剣創造や聖剣創造で作られる程度の刃ならたやすく両断しただろう。それほどまでの出力を発揮できなければ、魔王クラスとすら戦える実力を発揮することなどできはしない。
だがしかし、それを二人の戦士―宝珠とイーン―は防ぎ切る。
それをなすのは二人が保有する剣。
柄の永い短剣と形容するべきその剣は、オーラによって長剣といってもいいレベルにまで刃が構成されている。
少なくとも、これに対抗するには聖魔剣クラスや合一化したエクスカリバーが必要だろう。それほどまでにコカビエルの光力はすさまじい。
―すなわち、2人の持つ装備は強度だけなら聖魔剣に匹敵している。
「面白いな! それほどまでの得物が、俺の知らない範囲で存在していたのか!!」
その事実にコカビエルは笑い、しかしそれが好きになる。
「そりゃ全員分作ったからな!!」
吠える朧に追随するように、渡と弥左がコカビエルに接近する。
そして、まったく同じ剣を取り出すと一斉に切りかかった。
合計五本の斬撃を、コカビエルは両手の剣だけで迎撃する。
二名の剣術はさすがに手こずるが、しかし残り三人の斬撃はまだまだ甘い。というより大したことがない。
すなわち、警戒するべきはイーンと宝珠のみ。朧、渡、弥左の三人の攻撃は、目をつぶっていても迎撃できるレベルだった。
目をつぶっていても迎撃できるレベルの技量だ。だがしかし、武器の性能は違った。
「……これだけのレベルの武器を、同種複数本用意するだと!?」
「ハッ! なに寝言をほざいてやがる、オッサン!!」
かなり驚いているコカビエルに、あっさり弾丸を迎撃された意趣返しといわんばかりに、朧は吠えた。
「技術ってのは量産性も重要だろうが!! 俺は芸術品じゃなくて武器造ってるんだぜ、ロートル!!」
そう吠えながら、朧は斬撃を連続で叩き込む。
それらの技量はまだまだ足りていないが、しかし身体能力だけは上級の上クラスは到達している。
そして、そのレベルに到達しているのは五人全員だ。
その後人がかりの猛攻に、やがてコカビエルは若干押されていく。
性能だけなら上級の上クラス。最上級のそのまた上級クラスのコカビエルなら、ギリギリで対抗できるレベルだった。
だがしかし、それを武器と技量が追い抜いていく。
朧と弥左は斬撃の技量だけなら大したことはない。渡は中堅どころといったところだ。この三人レベルなら、対抗の余地はいくらでもある。
だがしかし、宝珠とイーンのスペックがシャレにならないレベルだった。
間違いなく断言してもいい。コカビエルとアルマロス。この場における二強は自分たちである。
だがしかし、その次の位階は間違いなく目の前の青と白の戦士だった。
その二人を中心とする圧倒的な攻撃密度に、コカビエルは防戦に押されていく。
さらにその数を減らすことができない。
気づけば、黄色の戦士である弥左が後退して、ダガーを投擲している。
其の間に攻撃を叩き込んだことで、朧たちに負傷を与えることには成功している。
だがしかし、それが意味をなさない。すこしずつ確実に負傷を与えることに成功しているのに、弥左が投擲する不死鳥の羽のようなダガーが突き刺さることで、完全に負傷が治療されていく。
このままいけば、かすり傷を負っているコカビエルが先に倒れるのは自明の理だった。
「なるほどな! いうだけのことは……ある!!」
ゆえに、コカビエルは自爆覚悟でランダムに光の槍をはなつ。
それでうまれたすきを利用し、コカビエルは強引に離脱。
そして宙で止まりながら、コカビエルは莫大な出力の光の槍を形成する。
一発一発が内の最上級クラスの最大出力。それらを複数本。
神クラスにすら通用するだろう攻撃を、コカビエルは遠慮なく放とうとしていた。
「この威力……! へたをすれば駒王町が半分は吹き飛ぶわよ!?」
この地を担当する上級悪魔が戦慄するが、しかし、渡たちは動揺しない。
「朧! あれを使うぞ!!」
「心底使いたくねぇ!!」
「朧くんが作ったんだから、そんなこと言わない!!」
心の底から使いたくないと、朧は絶叫するが弥左にたしなめられる。
そもそも作ったのは朧である。今更の発言だろう。
「すぐに撃ちますわよ! 出なければ犠牲が増えますわ!!」
「うん、これ先生も恥ずかしがってる場合じゃないってわかるかなー!!」
「畜生がぁ!!」
イーンと宝珠にもせかされ、朧は絶叫しながら構えを取る。
戦闘の
それは、四つのソケットが付いた大型のキャノン砲。
それを戦闘で渡が構え、四つのソケットに残り四名が剣を突き立てる。
そしての瞬間、絶大な力が砲口より漏れ始める。
それを見た瞬間、コカビエルは嬉しそうに吠えた。
「いいぞ! こういう戦いがやりたかったんだ、俺は!!」
「だったら冥途の土産にしてやるぜ!!」
「あなたの愚行、ここで終わらせてもらいます!!」
朧と渡が吼え、そして同時にコカビエルは光の槍をはなつ。
一つ一つが都市を数ブロック灰燼に帰す、ICBMクラスの破壊力を込めた砲撃。それら複数本の攻撃は、下手な核兵器すら超えるだろう。
しかし、それを五人は―シンレンジャーは真正面から迎え撃つ。
「はなて必殺!!」
「「「「「
大半が半ばヤケクソで放つ大声と共に、その砲撃は一瞬でコカビエルを光の槍ごと包み込んだ。
「なんて戦闘能力、なの……!」
その光景を、リアス・グレモリーは唖然となりながらつぶやいた。
最上級堕天使のそのまた最上級。聖書に名を刻んだ堕天使。
自分たちでは逆立ちしても勝てない相手で、それでも負けるわけにはいかないと戦意を燃やして立ち向かおうとした。
だがしかし、目の前の激戦を見せられれば、それが無謀極まりないことなのがすぐにわかってしまう。
それほどまでに壮絶な戦いだった。
「シンレンジャー……!
「いや、
リアスの感嘆の言葉を聞きとがめ、黒の戦士がそう漏らした。
それに対して、赤と黄の戦士が肩に手を置く。
それは慰めではない。むしろ、アイアンクローといった方が正しかった。
「朧が先走るのが原因であろうが」
「朧くん。巻き込まれた先生達にいうことは?」
ぎりぎりと食い込む二組の五指。誰が見てもかなりキレていることがわかりきっている。
それに対して、朧と呼ばれた黒の戦士は、視線をそらしてうつむいた。
「……マジで悪かった」
心底から謝罪の言葉が出てきた。
「うんうん。悪いと思ったら謝る。先生そういう子のままで嬉しいわー」
「よくわかりませんが、朧さんは何かしてしまったのですか?」
何やら上から目線でうんうんとしたり顔(みえないが多分そんな感じ)をしている青の戦士と、全く状況がわかっていないらしい白の戦士。
そんなよくわからない五色の戦士たちにぽかんとしていると、毛色の違うアルマロスが、一歩前に出る。
「グハハハハ! 手間を掛けさせてすまなかったな、グレモリー!! とりあえず怪我がなくてなによりだ!!」
「え、ええ。とりあえず、助かったわ」
流れから言ってコカビエルを止めに来たのだろう。実際、倒れ伏しているコカビエルを堕天使たちが拘束している。
コカビエルは独断で動いていたようだったが、そのため討伐部隊が編成された、ということなのだろう。
もう少し早く来てほしいとは思うが、まあ、結果的にこちらの人的被害は教会の悪魔祓いが治療する必要に迫られただけだ。
これを責めることは、できないだろう。
しかしどう反応したものかと、リアスが思案した時だった。
「……って、あれ!? コカビエルが倒されたってことは、俺のおっぱいは!?」
ようやく状況を飲み込めたらしいイッセーが、そう悲鳴を上げた。
大半から「そっち?」といった感覚の視線が集まるが、イッセーはそれを意に介さない。
その様子を見て、全員が脱力した。
「残念だけど、また今度ね」
「そ、そんなぁああああああああ!!!」
リアスの宣告に、イッセーは絶叫をするほかなかった。
アルマロスが救出部隊なのは、半分ぐらいこのためです(キリッ
具体的には……
朧、怨敵に報復するための技術の取り込みがしたくてたまらず、アルマロスに直談判→アルマロス、8割趣味に走って交換条件として「強化装備を戦隊ヒーロー風に」と発言→渡たち、巻き込まれて戦隊メンバーにされる。
……とりあえず朧はそれ以外のメンバーに謝るべきですね。ひどいパワハラを書いちゃったもんだぜ。