異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。 作:グレン×グレン
とりあえず、この世界の異能の一つを明かすといった感じです。
不幸中の幸いなことに、何を考えているかわからないリチャードも、最低限の理性はあったようだ。
「ですがカーディナさん。俺は戦闘経験があるからいいですけど、皆はただの学生……と教師ですよ」
一瞬だけ渡に視線を向けながら、しかしリチャードはそう懸念を口にした。
「は!? 実戦経験があるのかよ!?」
龍造寺猛が目を見開いたその瞬間、リチャードは一瞬で手を振るう。
そして次の瞬間、光でできた刃を持つ剣を構えていた。
周囲の大半のものが目を見開く中、リチャードは苦笑しながらさらに銃も取り出す。
「……バチカン法王庁に所属する、悪魔祓いの教育を受けているんだ。過去に悪魔や堕天使を裁いたこともあるんだよ」
「え、エクソシストってやつか!?」
「まじ!? 悪魔や堕天使って、実在してたの!?」
途端にざわめく生徒たちだが、リチャードはそれは気にせずカーディナに頭を下げる。
「お願いします。戦うかどうかを決めるのは彼らですけど、攻めて戦えるようにするための技術だけでも教えてくれませんか……?」
「それはかまいません。勇者さまは戦える方だとエルル様も仰っていましたが、ほかの方々は祝才を持っているだけだとの仰せでしたので」
妙なところで気の回る唯一存在である。渡はそう思った。
ならせめて、信託とか何かで前もって事情を説明して了承を取ってほしかったと切に思う。最低でもそれなら神の子を見張るものに相談できた。
異世界という前代未聞の秘境では、持っている発信機も届くかどうか不安極まりない。
魔法の心得はいくつかあるから、とにかく通信魔法を電報の形で送って救難信号を出すつもりだが、しかしそれもどこまでできるかわかったものではない。
悔しいが、ここは当面したでに出るほかない。
双覚悟したその時、カツンと足音が響いた。
「では、その役目は私にお任せいただけませんこと?」
そう答えるのは、美しいと形容するほかない軽装の鎧で身を包んだ女性だった。
歳は二十歳前後といったところか。金色の髪をロールさせた、可愛さをわずかに残した美しい女性である。
「お初にお目にかかりますわ。
そういって優雅に一礼するイーンは、静かに苦笑しながら一同を見渡す。
「エルルさまが評した以上、大半のお方がすぐれた祝才を持っているとは思いますが、しかしそれも訓練で磨かねば輝きません。それを
「「「「「「「「「「うっひょぉおおおおお!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「コラ男子!!」」」」」」」」」」
男子生徒の多くが目を見開いて鼻の下をのばし、女子たちから叱責の声が飛ぶ。
そして次の瞬間、より黄色い悲鳴が響き渡った。
「うわぁお! 金髪ロールのお嬢様キタコレー!
「ちょ、真名っち落ち着いて!!」
テンションを上げているのは、自分の心は親父であると公言する、スケベ男子と平然と会話できるムードメーカー、
それに対して、悠然と微笑みながら、イーンは軽く手を振った。
「うふふ、かわいらしい子がいらっしゃいますのね」
それだけで済ますと、イーンは皆を見渡しながら、鋭い視線を向ける。
「さて、それでは皆様には、先ず祝才がどんなものかをしらべさせていただきますわ」
(なんか、あやしいなぁ)
一ノ瀬朧がそう思ったのは、単純にオタク知識によるものだった。
偉大なる神による勇者召喚。これは古今東西よくある話である。
誰もがそういった話があることぐらいは聞いたことがあるだろう。そのせいで、クラスメイトの大半は愚か、教師である中荷闇僅ですらテンションを上げている。
だが、オタクであり、最近のトレンドをよく知っている朧は知っている。
最近の定番は、その勇者召喚をした神とか勢力が実は悪い奴だというのが定番だということだ。
とはいえ、侵略戦争とかではなく魔獣との戦いだというのなら、考えすぎなのかもしれないとは思う。実際創作物でよくあるからといって、現実でもそうだとは限らない。
だが、化け物との殺し合いなどできれば勘弁願いたいのが本音だった。
まあ、いまの流れでそんなことを言えば袋叩きに合うだろう。完全にムードは「皆でリチャードと一緒に勇者になろうぜ!!」なのだから。
そんな中、魔法陣の中に入ったクラスメイト達が、喝さいを上げる。
「やっほう! 俺、暗殺者だってよ!!」
「俺なんて重戦士だぜ? なんかかっこいいな!!」
「真名は結界術士だったよ! なんか縁の下の力持ちっぽくていいね!! 龍造寺君は?」
「よっしゃ鉄拳士!! ボクシング部の面目躍如!!」
などと、クラスメイト達は明らかにかっこよさそうな祝才とやらを得ている。
祝才。それは文字通りの職業の天賦の才を得るというこのクリフォー×クライシスという異世界の異能だった。
持っているのと持ってないのとでは雲泥の差。対手のものは祝才があるのならその才能を生かすことを選び、選ばないのはよほどの酔狂か馬鹿者かといいうレベルだ。
例えば剣士の祝才を持つものは、剣で鋼鉄の塊を一刀両断することもできるという。
中には火炎術士とかいう魔法使いみたいな力を得てテンションが上がっている者もいるが、それに関して朧は醒めた目で見るしかない。
「墜落天くん、何で言わないのさ、地球にもあるって」
「一ノ瀬、空気は読め」
つい言いたくなる朧を、渡が肩に手を置いて制する。
そして渡が魔法陣へと歩いていくのを眺めながら、朧はため息をつきながら軽く手を開く。
そこに生まれた魔方陣をみて、朧は小さな優越感が霧散するのを感じる。
地球には魔法が存在すると、渡に言われたときは驚いた。
だがまあ、悪魔祓いが存在するなら、魔法が存在してもおかしくないだろう。実際使ってみたこともある。
まだまだ勉強中で、ファンタジー作品みたいな魔法のアイテムを作るのには一年ぐらいかかりそうだが、それでも使えるというのはちょっとした内緒の自慢だった。
だが、それもこれで終わりだ。
よりにもよって、天才的な魔法の才能とかに目覚めるクラスメイトがいる中、ちょっとした手品レベルの魔法が使えたところで意味がない。
とはいえ、教えてくれた渡には感謝している。
渡は「学生の本文に最低限向き合うための交換条件」として簡単なものを教えてくれただけだが、それでもちょっとした自慢だった。
その渡は、なんでも裏の世界では有名な異能勢力の一因らしい。
だとするなら、きっとすさまじい祝才が得られるのだと思い―
「……ふむ、どうやら私はスカのようだ」
―その言葉に、一同がぽかんとなった。
イーンは冷静に腕を組みながら、踏むと考えこむ。
「確かに、エルル様も全員が祝才持ちだとは仰ってなかったそうですわね」
そういえばそんなことをカーディナが言っていた。
エルルが伝えたのは「
とは言え、クラスどころか学園でも一目置かれている渡が祝才を持っていないというのは、驚きだった。
「ブフッ!」
「あの墜落天がスカかよ! 天は二物を与えないたぁよく言うぜ」
普段から渡ににらまれている、火山と水野がそう言って馬鹿にしてくるが、しかし渡は気にせず通り過ぎる。
そして五歩ほど進んでから、何かを投げた。
「っと、手癖が悪かった。すまぬ」
「「ああ……んぅ!?」」
受け取った二人が、それが自分の財布だということに気が付いて大きく慌てる。
その早業に唖然とするクラスメイト達の前で、イーンはジト目になると火山と水野をにらむ。
「
「ったくだ。おまえらは祝才の練習もしてねえだろうが。さすがにいきなり墜落天は無理だっつの」
イーンだけでなく、親分的立場の瀬間にすら呆れられ、2人はうぐぐとうなりながら黙り込む。
因みに、瀬間は魔導剣士。勇者ほどではないが、非常に優れた祝才らしい。どよめきが起こったのは言うまでもない。
「あ、先生もスカっぽいわね、中荷闇先生は?」
「残念ながら、ここは生徒たちに任せるほかないようです」
と、八重垣と中荷闇もスカだった。
そして、タイミング悪く最後になってしまったのは朧だった。
「一ノ瀬君、頑張れ!!」
「え、あ、どうも」
どう頑張ればいいのだと、エールを送ってくる真白に適当に答えながら、朧は一歩前に出る。
正直言って、真白には困っている。
朧がいろいろと絡まれたのは、半分ぐらいは真白が悪い。学園のマドンナがクラスでも好かれていない奴にべったりなのでは、そりゃむかつく奴もいるだろうという話だ。
というより、何が原因で自分によって来るのだろう。そういう疑問符が本気で浮かんでくる。
そんな事を想いながら、少し期待しつつ魔方陣へと足を踏み入れ―
「……あの、イーン女王様」
「そこ迄かしこまらなくてもいいですわよ。それで、どうなさいました?」
結構フランクな女王様に感謝しながら、朧は苦笑いする。
不幸中の幸いか、スカではなかった。
だがしかし、これはスカの方がよかったのではないだろうか。
「は、運び手……って何でしょうか?」
運び手。それは、モノを運ぶことに優れた才能を発揮する祝才である。
ちょっとしたアパートの一室ぐらいの規模の格納空間を持ち、そこに荷物を放り込んで、おもさを感じずに運ぶことができるという能力である。
シンプルに言おう。裏方だ。
渡が速攻で睨みを利かせていなければ、瀬間たちがあからさまに馬鹿にしてくるだろうことは想像に難しくなかった。周りのクラスメイト達も、同情の視線を大量に向けていた。
だが、イーンはむしろほっとしたようだった。
「これは、なかなか良かったですわね」
「へ? な、何でですか?」
思わず朧自身がそう言うほかなかったが、イーンは本心から安どしていた。
「できることなら、ご学友の方々でチームを組むのが一番ですもの。輸送担当故に部隊編成で一人は組ませる運び手が、ちゃんといるのはいいことですわ」
その言葉に、瀬間たちが不満げな表情を浮かべていることだけは覚えている。
とは言えそれから数週間、訓練の日々が続いていた。
走り込みから魔法の訓練、武器を使った鍛錬など、半日ほどかけて過酷な訓練を積んでいた。
それに対して、優れた祝才をえたクラスメイト達は、まさに超人の如き動きをしていた。
オリンピックの選手など物の数ではない。全力でジャンプすれば、まるで仮〇ライダーのような田坂まで飛べるものまでいるぐらいだ。というか、八代は平然と飛んでいた。
なんでも舞剣士とかいう祝才らしい。戦闘の雨量もそうだが、見栄えがいいため士気向上の役に立つらしい。
しっかり者でクラスでもまとめ役になりやすい彼女らしいと思いながら、朧はとりあえず走る。
……一人、せいぜい高校の全国大会に出る程度の身体能力にとどまりながら、それでも朧は走っていた。
理由は単純だ。あまりにも単純だ。
死ぬのは、いやだ。
そう、ただそれだけだ。
其のために、できることは何でもしなければならない。
そう、死にたくはないのだから。
戦闘には役に立たないが、しかしそれはそれで役に立ちそうな能力。
とはいえ、戦闘にかかわることになった子供の観点からすれば「なんの役に立つんだ」という認識になってしまうのが残念なところです。