異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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3話 夜の邂逅と不吉の前兆

 祝才がないものまで前線に出すことはない。

 

 その判断の元、渡たちは後方支援に集中することができた。

 

 何故かノリノリで活動している中荷闇がうえとの折衝を引き受けてくれるのをいいことに、渡と宝珠は文字を勉強して、とにかく少しでもこの世界の知識を縁としていた。

 

 特に気にするべきは唯一存在エルルだ。

 

 このエルルが正真正銘力を持った存在なのは間違いない。おそらく、この世界における神に相当する存在だと考えられる。

 

 だからとにかく調べて、交渉することができないか同化を考慮しながら渡たちは調べていた……が。

 

「先生あきらめていいかな?」

 

「すみませんが、私も我慢しているのでそれはやめていただきたい」

 

 疲れてだれていた。

 

 と、いうより手詰まりだった。

 

 色々と文献を調べてみたが、あまりにも情報が少ないのが実情だ。

 

 唯一存在エルルは偉大である。唯一存在エルルは祝才を授けてくれる存在である。唯一存在エルルは、心の形を具現化するすべを持っており、その力によってクリフォー×クライシスを統一した。

 

 長々しく仰々しい分が書かれているが、極端にまとめるとこれで済んでしまうのが実情だ。

 

 これでは手が付けられない。どうしたものかと真剣に悩んでしまう。

 

「墜落天君? 通信とか、きた?」

 

「全然ですね。幸い発信機はまだ機能していますが……」

 

 だからといって、果たして異世界にいることまでわかってくれているかどうか。

 

 そんな不安を隠せなくなっている渡の方に、宝珠は手を置いた。

 

「ま、気にしすぎはよくないと先生は思うわ」

 

 力なさげに微笑みながら、宝珠はしかし慰める。

 

 実際問題、これは渡がどうにかするべき問題ではない。

 

 渡は堕天使の一員としてリチャードの監視を任務として行動していたが、だからといってこんな前代未聞の事態に対応城などとは言われてないのだから。

 

 それを言外に込め、宝珠は告げる。

 

「ま、ここは大人が頑張りるしかないから頑張るわ。先生、一応リチャード君以外が後方中心で動かせないかそれとなく聞いてみるから」

 

「はい。お願いします」

 

 渡は、悪魔祓いになるのをやめたという宝珠に感謝した。

 

 敵といっても過言ではない自分を励ましてくれる。そんなことができるのは、彼女がすごい人物だからだとそう思う。

 

 そんな彼女が教師として、事情を知るものとして協力してくれたことに、渡は心から感謝しつつ、一旦分かれる。

 

 そうして歩きながら、ふと渡は視線を向ける。

 

 そこには、イーンと話している朧の姿があった。

 

 ……ここは姿を消すべきだろうか。

 

 などと思ったその次の瞬間、2人の視線がこっちに向いた。

 

 どうやら思ったより動揺して、気配を隠すことを忘れていたらしい。

 

「ちょうどよかったですわ。伺いたいことがありましたの」

 

 と、イーンがこちらに手招きをする。

 

 何事かと思いながら渡が近づくと、朧が近くの馬車の方に近づいて、指さした。

 

「墜落天君、すごいよ、これがあればだいぶ変わるかもしれない!!」

 

「ん?」

 

 テンションが上がっている朧の様子に首をかしげながら、渡は樽の中身を見る。

 

 そこにあったのは、炭と硫黄に硝酸。

 

 一言で言おう、火薬の材料だった。

 

「……この世界に火薬があったとは」

 

 思わず感心するが、苦笑したイーンが首を横に振る。

 

「いえ、カヤク……というものは発明されておりませんわ。朧さんからこれらを混ぜ合わせると、強力な力になると伺ったもので、取り寄せましたの」

 

 イーンの言葉に、渡は目を見開く。

 

 火薬は確かに強力だが、話だけ聞いても信じる者は少ないだろう。

 

 それをすぐに話を聞いて信じて、これだけのものを擁しするとは思わなかった。

 

「イーンさん、話が分かるというか聞きすぎて騙されないか心配というか……」

 

「失礼な。これから実験もする予定ですわ。本格的に集めるのはその後です」

 

 渡にそう言い返すイーンだが、しかしその口元には微笑が浮かんでいる。

 

 火薬は人類の発明の中でも、すさまじい成果を上げたものだ。これがあったからこそ銃火器が発明されたといっていい。

 

 むろん、この世界の祝才持ちの身体能力から逆算して、銃が開発されたからといってどこまで通用するかはわからない。

 

 だが、イーンの反応を見るに価値はあると思わせてくれるものがある。

 

「ジュウやバクダンというものがこの世界でも作られるようになれば、魔獣達に対抗する手段が大きく増えるでしょう。下級の魔獣程度なら、祝才を持たないものでも倒すことができるようになりますわ」

 

 感動すら覚えている様子のイーンに、朧はあきれるやら同情するやらの表情だ。

 

「この世界、戦闘系の祝才持ち以外は数人がかりで一体の下級魔獣を倒すのがせいぜいらしいんだよ」

 

「なるほど、それほどまでに魔獣は強大なのか」

 

 どうやら、狼に毛が生えた程度という認識ではいけないらしい。

 

 祝才を持ってないとわかった段階で、渡は前線に出ないように言われただけのことはある。予想以上い強大なようだ。

 

「ええ、話に聞くしゅりゅうだんなるものが開発されれば、祝才を持たぬものでも、一人で下級の魔獣なら倒せるようになるでしょう」

 

 その言葉に、渡は警戒心を強める。

 

 確実に勝てるではないあたり、魔獣の戦闘能力は地球の異形にも匹敵するだろう。

 

 これは、銃火器で倒すのなら対物狙撃銃ぐらいは用意するべきかもしれない。

 

 ふと渡はそう思うが、その時、イーンは表情を変える。

 

「……この度は、本当に申し訳ありません」

 

「え?」

 

 いきなり何がどうしたのか。

 

 そう思った渡だが、イーンは人がいないのを確認してから、頭を下げる。

 

「無関係な方々を異世界から召喚してまで、私達の世界の問題に問答無用で巻き込む。……エルルさまの神託だとは言え、もう少し方法がなかったと思います」

 

 その言葉に、渡は面食らった。

 

 この世界はエルルが絶対な世界である。エルルが白といえば黒も白に代わる世界なのだ。

 

 そんな世界で、エルルの神託をうけながら、その行動に罪悪感を得る。

 

 ただの人間にできることではない。相当、難しいことのはずなのだ。

 

 それを、イーンはしてのけた。

 

「はっきり言えば、エルルさまもお人が悪いと―」

 

「そこ迄ですよ、イーンさん」

 

 渡は、続けざまに放たれそうになったイーンの言葉をさえぎる。

 

 そして、苦笑しながら首を横に振る。

 

「何処に耳があるかわかりません。この世界でエルルの否定は死に直結するでしょうし、お戯れはよした方がいいですよ」

 

「あ、気を使っていただいてありがとうございますわ……」

 

 渡の心遣いに、イーンは感謝の気持ちを見せる。

 

 実際、この神権政治の世界でこれ以上のエルルを貶める発言は自殺行為だ。いかに王女とはいえ、聞かれればただでは済まないだろう。

 

 無理やり巻き込まれた立場でありながら、そこに気を使ってくれる渡を、イーンは素直にすごいと思った。

 

 そんなことなど露知らず、渡は馬車を見て夢中になっている朧を見る。

 

「……朧は、どうですか?」

 

「ええ、彼が一目置かれていないのが意外なぐらいですわ」

 

 そう答えながら、イーンは目を細めて朧を見る。

 

「彼、魔獣について調べたいからなにか資料は無いかと聞いてきましたの」

 

「なるほど、私の国では、敵を知り己を知れば百選危うからずという言葉が他国から伝わっております。それを参考にしたのでしょう」

 

 他国という概念があるか不安だったが、イーンはなんとなく読み取ってくれたらしい。

 

 実際問題、敵の情報を確保できるかどうかはとても重要なファクターだ。

 

 初見の敵より手の内がわかっている敵の方が、たいていの場合は戦いやすい。情報戦は現代戦の最重要ファクターなのである。

 

 それをイーンはなんとなく理解しているのだろう、とても頼もし気に目を向ける。

 

「訓練兵は自分の体を鍛えることに意識を向けがちです。(わたくし)も新米の時は、本を読んでいる暇があるなら素振りをした方がいいと思っておりましたもの」

 

「技術力や情報の価値は、理解するのにも学が要りますからねぇ」

 

 などとしみじみしながら、会話が続く。

 

「なんというか、能力が低いなりにできることを模索している方ですわね。ああいう方が生き残ったり戦果を挙げる者です」

 

「まあ、普段はいい加減なので好まれてないことが多いのですが、優秀ではあるんですよ」

 

 苦笑交じりに朧をそう表す渡に、イーンはおかしくなってほほ笑んだ。

 

「あらあら。まるで朧さんの御父上みたいなものいいですわね」

 

「面倒を見ている自覚はあります」

 

 そう渡が言うと、なんとなくお互いに苦笑してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、朧は夜風に当たりたいと思って中庭に出ていた。

 

 銃火器の作成は時間がかかりそうだ。カヤクの材料を融通してもらっているが、概念すらなかった銃を開発するには、鍛冶師でも苦労するとイーンが言っていた。

 

 せめてグレネードランチャーでもあれば、自分でも戦うことができるのにとは思う。

 

 死ぬのは怖いし、戦う羽目になっているし、ならば攻めて魔獣達を鎧袖一触できる力がほしい。

 

 榴弾砲でも手に入れば変わると思って聞いてみれば、イーン曰くクリフォー×クライシスにはカヤクの概念すらないという。

 

 黒色火薬の知識ぐらいはあったので、とりあえず教えたらすさまじく喜ばれてしまった。

 

 おかげで、自分専用の魔獣辞典をプレゼントしてもらったのは僥倖だった。それにイーンに気に入られれば、晩御飯のグレードがランクアップするかもしれない。

 

 などと思いながら、朧はなんとなく中庭のなかの園芸庭園を散策し―

 

「あ、一ノ瀬くん」

 

「ほ、宝幸さん……」

 

 苦手な人と出くわしてしまった。

 

 宝幸真白は悪い子ではないのだが、こっちの都合を考えてくれないところがあるから困ったものだ。

 

 自分が人気があることを理解していない。そのせいで、悪目立ちしている身としては気を使ってほしかった。

 

 だがしかし、真白は今回もお構いなしだった。

 

「一ノ瀬くん、なんか炭のにおいがするね」

 

「え? ああ、爆弾でもあれば僕でも戦えるんじゃないかって思って、ちょっといろいろと人に聞いてみたんだ」

 

 とは言え、そもそも火薬の概念すらなかったわけだが。

 

 それを話していると、真白はちょっとぽかんとしてから、ぱちぱちと手を叩いた。

 

 心からすごいと思っているようだ。ちょっと照れ臭い。

 

「すごいよ一ノ瀬君! とってもすごい!」

 

 そうかなーなどとは思うが、しかし真白は聞いてない。

 

「一人が強いよりみんなが強い方がすごいもん! 一ノ瀬君はみんなを強くした英雄になるかもしれないよ!」

 

「いやいや、僕なんて大したことないよ。奉公さんの方が強いじゃないか」

 

 そういいながら適当にお茶を濁して帰るべきだろうと朧は判断する。

 

 夜に大声を上げているのでかなり迷惑になるだろう。ましてや、こんなところをクラスメイトに見られたらさらにややこしいことになる。

 

 これ以上ヘイトを挙げられるのは勘弁だ。できれば今すぐにでも逃げたいところである。

 

 だが、真白はなぜか頬を赤らめる。

 

「大したことあるよ。だって、一ノ瀬くんはすごいもん」

 

 そういうと、真白はどこか遠くを見る目つきになる。

 

「入学式の日の裏庭で、一ノ瀬君は小鳥を助けてたよね」

 

「………え?」

 

 そう言われて、朧は一瞬考えこむ。

 

 しかし、記憶を掘り返すより先に真白は言葉を紡いだ。

 

「防犯用の有刺鉄線に引っかかってた小鳥を助けるために、一ノ瀬君、手を傷つけてでも有刺鉄線をどうにかしてたの」

 

 そこまで言われて、朧は思い出した。

 

 入学式のあと、子供じみた遊び心で校内を探検していた時にそんなことがあった。

 

 なんというかかわいそうになったのだが、あれは結構いたかったりする。

 

 ちなみに、数日程指をたくさん動かすアクションゲームの類ができなかったのが残念でならない。後悔はしていないがもう少しうまくやりたかった。

 

 みられてたのかと思い恥ずかしがるも、真白はにっこりと微笑んだ。

 

「その時思ったんだ。あ、一ノ瀬君は本心から心優しいんだって」

 

 真白は、そういいながらほほ笑んだ。

 

「誰も見ていないところで身を削れる。そう言うのって、本当にすごいことだと思う。一ノ瀬君は、たぶん墜落天君や西堂君と同じぐらい凄いと思う」

 

 そういいながら、真白の頬は赤くなる。

 

 そしてちょっと戸惑いながら、真白は朧にほほ笑んだ。

 

「だから、一ノ瀬君は落ち込まなくていいからね? 一ノ瀬君が大変な時は、私が助けてあげるから」

 

 その言葉は、本心からのものだろう。心から、真白は善意でそう言っている。

 

 だが、朧はそれを素直に受け取る気にはなれなかった。

 

「……まあ、とりあえずありがとうね」

 

 とはいえ、断る勇気も特にないわけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見ている影があった。

 

 使用人の一人が、その光景を虚ろな目で見ていた。

 

 虚ろでありながら、その体からは敵意が見える。

 

 そして、顔を真っ赤にして真白が去り、それをなんとなく見つめている朧に、静かに視線を向ける。

 

 ……近くにあった縁石に手が伸びたその瞬間―

 

「……そこ迄だ」

 

 静かに、渡の声が響く。

 

 其の声に跳ねるように振り返れば、渡は鋭い視線を向けて、使用人をにらみつけていた。

 

「貴様が下らぬ嫉妬に捕われていることはわかった。……というより貴様、私が不良に絡まれた後に後ろから襲い掛かったやつと同じだな?」

 

 その言葉は、普通に聞けばわけのわからないものだっただろう。

 

 地球とクリフォー×クライシスは別世界だ。その使用人が、地球にいたときの渡を襲うことなど不可能だった。

 

 だが、その使用人は渡をにらみつけると、殺意すらにじませる。

 

 そして次の瞬間、その使用人は消え失せた。

 

 飛び上がったのでも走り出したのでもない。まるで初めからそこにいなかったかのように、消え失せたのだ。

 

 それを見てから、渡はため息をつく。

 

「……脅しはかけたはずなのだがな。まさか、私達のクラスの人間が保有者だったとは」

 

 そうため息交じりに告げながら、渡は額に手を当てる。

 

 ……神の子を見張るもの(グリゴリ)の一員として、どうやら帰還後にするべき仕事が増えたようだった。

 

 そう判断すると、渡はとりあえず背を向ける。

 

 警告はした。うかつに即座に何かすることはないだろう。

 

 だがしかし、それでも不安が一抹程度だがよぎってしまう。

 

 何か、嫌な予感がする。

 

 人ひとりの人生程度では済まないだろう、壮絶な何かが起きるかもしれない。

 

 そんな予感に、襲われるのだった。




インフレ激しく地形も変わるD×Dのクロスなので、魔獣も強い奴は軍隊を単独で相手できるのもいます。ですがインフレが激しいということは下はかなり下なので、大砲とカが開発されれば、ある程度対抗できるものは対抗できるのです。文明って、すごいね!

そして、一ノ瀬朧に宝幸真白がアプローチをしている理由も判明。彼は主要人物なので、相応の人物にはしております。

そして同時に不吉な状況も発生ですね。そろそろ事態は急変していきます。
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