異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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では、禅話で触れられた朧の生死不明。それについての詳しい話になります。

まあ、この辺に関してはプロローグでも触れられましたが、アレを参考にしている節があるので、そこのところはご容赦ください。


5話 トリアーチュル遺跡の悲劇

 

 トリアーチュル遺跡は、優れた魔法によってつくられたと思しき遺跡だった。

 

 遺跡の壁や床はわずかに発光しており、たいまつなどの必要がない程度には明るい。

 

 その神秘的な光景はファンタジー世界ならではといったところだ。地球ではお目にかかることはまずないだろう。

 

 詮索しないことを条件に渡から魔法を少しだけ教わっていた朧も、この光景には少しテンションが上がりかけた。

 

 クラスメイトの大半が、テーマパークに来たような雰囲気になっている気持ちも、わからなくはない。

 

 しかし、とはいえこれはまずいのではないだろうかと思っていると、イーンの声が飛んできた。

 

「皆さん! 遊びでいくわけではないのですから、もっと真剣になりなさい!!」

 

『『『『『『『『『『はーい!』』』』』』』』』』

 

 絶対聞いてない。

 

 そんなことが丸わかりの反応に、イーンは額に手を当てるとため息をついた。

 

 これには正直同情するが、しかしまあ、大丈夫なのではないかとも思ったりはしてしまう。

 

 なにせ、この世界に来て訓練をしてからの彼らは超人だ。

 

 まるで仮面ライ〇ーの世界だ。

 

 身体能力は百メートルを十秒未満で走り切れるものが大半。腕力もウェイトリフティングの選手が持つようなバーベルを片手で持ち上げられるものだらけで、女子すらできる者が多い。すでに斬鉄を行っている猛者までいる。

 

 それに比べると自分はあまりにも弱いが、しかしまあ、荷物持ちができるだけでも充分だろう。

 

 ぶっちゃけ前線で暴れるのは怖い。死ぬのは勘弁ではあるのだから、まあそれでいいような気がするが―

 

「それでは朧さん。貴方は私のとなりにいなさい」

 

 ……などと名指しされて、面食らった。

 

「……イーンさん、守られるより守りたい系……?」

 

「美少女王女に守られるとは、カス祝才のくせに……!」

 

 無粋な勘繰りやら明らか無っとやらが突き刺さるが、断る度胸も全くない。

 

「す、すいません。足を引っ張るような形で―」

 

「それは違いますわ」

 

 恐縮する朧だが、しかしイーンは首を横に振る。

 

「物資の輸送は重要な役目。前線で戦うためにはそれ以上の数の後方支援が必要ですわ。そんな人たちを守るのは当たり前のことですもの」

 

 そうあっさりと答えるイーンに、クラスメイト達はなんとなく押し黙る。

 

 特に語気を荒げてもいない、平然とした口調。それが、彼女がそれを心から思っていることだということを証明する。

 

 騎士団の者たちもまた、それに同意するようにうんうんとうなづいていた。

 

「だな。それがあるから俺たちは戦えるんだよ」

 

「見習い兵士だと勘違いしがちなんだよなぁ」

 

 その言葉に、クラスメイト達は納得できないながらも反論をしたりはしなかった。

 

 そしてトリアーチュル遺跡の中に入ると、真っ先に目についたのは大きな穴だ。

 

 直径五十メートルぐらいはあるだろう。なんとなくのぞき込んでみるが、一階層一階層が十メートルぐらいあるせいで、底が見えない。

 

 堕ちたら絶対助からないだろう。実はパラシュート擬きを作ってなんとなく異空間に入れているが、試してないのでまったく自信がない。試したくもない。

 

 そんなことを思いながら、朧はイーンのとなりに立ちながら遺跡内部をついていく。

 

 イーンたちの判断で半分けされて、ある程度の隊列を組んでクラスメイトは歩いている。

 

 そしてそれを囲むように、騎士団が周りをガードする形だ。

 

 最前列にいるのは、比較的優秀な者たち。彼らに実戦経験を積ませるついでに、後ろの者たちにそれを見せるという判断だろおう。

 

 縦横10メートル前後の道をあるいていると、ふと丸いスライムのようなものが出てくる。

 

「お、スライムじゃね?」

 

「やべぇ、テンション上がるわ」

 

 などという者たちが出てくる中、イーンは視線を朧に何となく向けながら、微笑を浮かべる。

 

「さて、あれはジェルゴーレムと呼ばれる類ですわ。……詳しく知っている方はおられるかしら?」

 

 それは騎士団ではなく、A組生徒たちに対して向けられた言葉だった。

 

 それに対して誰もがぽかんとする中。朧は視線を向けられたこともあっておずおずと手を上げる。

 

 視線が集まる中、騎士団がかばってくれるうちに朧はなんとなく説明する。

 

「たしか、瞬間硬化の能力があって、とびかかる時はそれを使うのでカウンターとかはしない方がいいって、本で読みました」

 

「その通りですわ。冷静に攻撃をかわしてから、冷静に攻撃を入れればいいだけですわよ」

 

 朧の説明に正解点を出しながら、イーンは騎士団の者たちをカバーにつかせながら、生徒たちに実戦を経験させる。

 

 その後もジェルゴーレムは何度も出てきて、ひどいところでは十体ほど出てくることもあった。しかし、それもすぐに片づけられる。

 

 実際、ジェルゴーレムはかなり弱い部類だ。これに負けるのは相当才能がないレベルだと本で朧は読んでいる。

 

 だがしかし、イーンは静かに真剣な表情を浮かべながら、生徒たちに声をかける。

 

「トリアーチュル遺跡には様々な魔物がおり、闇大陸からも魔物はたくさん出ます。敵を知り己を知れば百選危うからず……と、貴方方の世界にはあるそうですが、それを肝に銘じておいてほしいですわ」

 

 そういいながら、イーンは最前列に朧を連れて行きながら同じく最前線で警戒を続ける。

 

 ちなみに、回復薬として最前列近くが定位置蜷田真白がほっこりしているが、これはまあいいとしよう。

 

 朧としては彼女が毎回話しかけてくるせいで、いろいろ大変で困ったところもあるが、悪人でないのも分かっている。

 

 そんなこんなで、トリアーチュル遺跡も十層までたどり着いた。

 

 最近は謎の霧が出てきて三十層から地下には行けないそうだが、十層に到達できるのもなかなかいない。

 

 騎士団は優秀だから当然だが、クラスメイトもまた、優れた能力を持っていることの証左だった。

 

「とりあえず、今日のところはここで退き返します。ここから先は古代の魔法によるトラップがあり、実戦とは別の意味で危険がありますので、念のための対応ですわ」

 

 その言葉にクラスメイトは残念そうな声を上げたが、それとは別に騎士団たちは警戒心を強くしていた。

 

 なまじ能力が高いせいで、生徒たちは未だに物見遊山な状態だった。そのせいで危険というものに対する感覚がマヒしている。

 

 危機感の麻痺は油断を生み、それは致命的な事態につながる可能性がある。余裕と油断は全く異なるものなのだ。

 

 それを知っているからこそ、騎士団者たちは警戒を入れている。故にこれ以上の深入りはしない。

 

 最低限の連携もとれたし、実戦の空気も少しは感じれただろう。まだ物見遊山なのは残念なことだが、それでも今回はこれでいい。

 

 とりあえず複数種類の魔物との戦闘を経験させて、闇大陸の魔物たちとの戦闘に近しい環境を経験させるのが今回の予定だった。それができれば、彼らの能力なら実戦で通用するだろう。

 

 だがしかし、此処でトラブルが発生する。

 

「……あれ? なんだろ、あのキラキラしたの」

 

 真白が、ふと崩れた壁を見て声を上げる。

 

 見れば、崩れた壁の中から直径十センチ以上の赤い石があった。

 

「あら、こんなところにルビーがあるとは意外ですわね。この手の宝石はもう撮り尽されたものだと思ってましたが」

 

 と、イーンが言った言葉に女子たちが色めき立った。

 

 宝石。それは女子たちの多くの永遠の憧れである。

 

 これに対して、生徒の一人が得意げな表情を浮かべながら、前に出る。

 

「んじゃ、戦利品ってことでもらっておこうぜ?」

 

「あ、ずるいぞ! おれがとる!!」

 

 と、慌てて取り合いになりかける勢いで、宝石に手が伸びる。

 

 それに対して、イーンは眉をしかめると声を飛ばそうとする。

 

「待ちなさい、トラップの可能性がありますから、攻めて調べてから―」

 

 その瞬間、一瞬で風景が変わった。

 

 一階層からあった巨大な吹き抜けがすぐ近くにあり、しかも雰囲気がどことなく違う。

 

 なんとなく上を見上げてみれば、第一層は遥か高みにあった。

 

「……周囲の風景から判断して、ここは二十層よりしたです!!」

 

 騎士団の一人がそう言って叫び、イーンは舌打ちをしながら周囲を確認する。

 

「全員気を付けなさい、急いで上層部に逃げ―」

 

 その瞬間だった。

 

 天井から、最低でも数百はあるだろうジェルゴーレムが落ちてくる。

 

 通常状態なら、この程度のことで問題にはならないだろう。

 

 騎士団も生徒たちも優れた能力を持っている。総人数は100人近いこともあり、まともに戦えば負けることはできない。

 

 だが、トラップに巻き込まれて、いきなり難易度が倍以上になったことで生徒たちはパニック寸前だった。

 

 そして、生徒の一人が悲鳴すら上げて拳を構える。

 

「こ、この野郎!!」

 

 彼は雷撃術士。雷の魔法を使うことに特化した祝才を持っている。

 

 そして、彼は威力重視の特訓を詰んで鍛え上げていた。

 

 その火力は、絶大だ。

 

 そう、絶大すぎるのだ。

 

「待ちなさい!! 冷静に対応を―」

 

 イーンが止めようとするが、それより先に雷撃が放たれる。

 

 その一撃はジェルスライムを一瞬で吹き飛ばし、離れたところにある壁すら一撃で粉砕した。

 

 そう、粉砕してしまったのだ。

 

『『『『『『『『『『よっしゃぁああああ!!!』』』』』』』』』』

 

 大歓声を生徒たちは上げるが、それがさらに良くなかった。

 

 崩れ落ちる壁に、それによって発生する土煙。

 

 それにテンションが上がる生徒たちの耳に、地響きが響く。

 

 ズシン、ズシンと音が響き、土煙を割って出る何かが出てくる。

 

 ……その光景を見て、騎士団すら頬を引きつらせる。

 

 そこにあったのは、地球の者たちがゴーレムと形容する、最も一般的なイメージ。

 

 岩石でできた巨人が、軽く十匹はいた。

 

「ランドゴーレム!? 三十層レベルの敵が、なんでここに―」

 

 そう驚愕しながら騎士団員の一人が剣を構え―

 

「伏せなさい!!」

 

 それをかばうようにイーンが割って入り、剣を振るう。

 

 それに切り裂かれたのは、ゴーレムではない。

 

 そこにいたのは、ちょうど遺跡内部の壁に近い色合いの、蜥蜴と人間を足して二で割ったかのような魔獣。

 

 鋭い爪を持った、そんな危険な魔獣が軽く十体はいた。

 

「な、ハンティングリザード!? たしか最深部近くに生息しているレベルのはずだぞ!?」

 

「全員警戒! どうやらここは、かなり本気のトラップだと思われますわ!!」

 

 イーンたち騎士団が本気の警戒をするほどのレベル。

 

 その事実に、生徒たちは警戒心を通り越して、パニックになった。

 

「う、う、うわぁああああ!!!」

 

「や、やってやるぜぇええええ!!!」

 

 生徒たちの何人かが、勢いよくゴーレムたちにとびかかる。

 

「馬鹿! ここは隊列を組みなおして―」

 

「野郎、ぶっ潰してやる!!」

 

 イーンが声を張り上げるが、半ば恐慌状態になった生徒たちは話を聞いていない。

 

 明らかに激戦というほかない戦いが起き、そして乱戦が勃発してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご要望通り、最下層の魔物を転移させておきました」

 

「OK♪ これで半分ぐらい死んでくれると、オジサンやりがいあるんだけどなーっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、朧は慌てて周囲を見渡していた。

 

 敵と味方が混ざり合って、下手すれば孤立してしまう。

 

 とにかくイーンから離れないようにしながら、朧は異空間から休場の物体を取り出した。

 

 見よう見まねで作った閃光手榴弾。この乱戦状態では、これぐらいしかまともに使える武器は存在しない。

 

 銃火器を何とか造れるかどうか試すため、火薬や金属は大量に入れている。金属塊を使えば鈍器ぐらいにはなるだろう。

 

 だが、朧の身体能力では、銃もなしにまともな戦闘はできない。

 

 そして、目の前の魔獣達は拳銃やそこらでどうにかできる代物ではない。最低でも大口径の猟銃クラスが必要だろう。

 

 だから、出しゃばらないよう気を付けながら―

 

「……わぁ!?」

 

 その時、悲鳴がやけにしっかりと聞こえた。

 

 見れば、パニックを起こしていて周囲の確認を怠ったのか、生徒の一人が穴に落ちかけていた。

 

 確か、咲花弥左(さきはな やさ)という少女だった。クラス内であまり好かれていない朧にも、視線が合えば挨拶をしてくれる少女だ。祝才は投擲主であり、投擲武器の扱いに非常に優れているが、接近戦はそこまで優れたわけではない。

 

 その彼女が慌ててバランスを取ってほっとしたところに、ハンティングリザードが忍び寄っていた。

 

 とっさの判断で、朧は閃光手榴弾を投げつける。

 

「咲花さん、目を閉じて」

 

「え、うん?」

 

 声をできる限り張り上げたのがよかったのだろう。弥左は素直に目を閉じた。

 

 その瞬間、閃光手榴弾の光がハンティングリザードの目を焼いた。

 

 そして勢いよく朧は体当たりを仕掛けると、勢いよくハンティングリザードは穴から落ちていく。

 

 それに気づいて、弥左はちょっと顔を青くした。

 

「大丈夫、咲花さん?」

 

「え、あ、一ノ瀬君?」

 

 ぽかんとする弥左に、一ノ瀬はできる限り力を込めて笑顔を浮かべる。

 

「大丈夫だよ。僕以外はみんなすごいんだから。パニックを起こさなければ大丈夫さ」

 

「う、うん。ありがと―」

 

 動揺しながらも、弥左がそう言いかけたその時だった。

 

 どん、と、何かに突き飛ばされるような衝撃があった。

 

 風の魔法の一環だ。それがあたって、突き飛ばされたのだろう。

 

 そんなことを想いながら、朧は衝動的にその方向に視線を向ける。

 

 そこには、見慣れない顔をした男が手を向けていた。

 

 クラスメイトにそんな人物はいない。騎士団の恰好でもない。

 

 なら、だれなのかと思ったその瞬間に、その人物は溶けるように消えていく。

 

 そして朧は流れるように魔法の衝撃で体が動く。

 

 その視線が、一人の男をとらえた。

 

 瀬間喬樹(せま きょうき)。自分を目の敵にする、不良グループのリーダー格。

 

 その彼が、完膚なきまでに悪意のこもった嘲笑を浮かべていた。

 

 ……理屈はわからない。だが、直感的に理解した。

 

 この男が、何かしたのだ。

 

 それを理解した次の瞬間、朧の身体は落下した。

 

「一ノ瀬君!?」

 

「え、一ノ瀬……くん?」

 

 その、弥左と真白の声が聞こえて、

 

「う、うぁああああああああ!?」

 

 朧は、そのまま奈落の底に墜落した。

 

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