異世界に勇者召喚されたと思ったら、異世界の侵略から地球を守る戦隊ヒーローになった件について。   作:グレン×グレン

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……そして、再び視点は朧に戻ります。


8話 奈落の底にて化生が目覚める。

 

 三人がトリアーチュル遺跡へと向かって行く時から、二十日ほどさかのぼる。

 

 奈落の底へと堕ちる、一ノ瀬朧の視点へと事態は変わって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわぁああああああ!?」

 

 瀬間の悪意の籠った視線を一瞬忘れ、朧は絶叫しながら落下の感覚から生まれる恐怖に震える。

 

 これはまずいと確信する。

 

 これは死んだと確信する。

 

 そして、それは嫌だと心から思う。

 

 死にたくない。死にたくない。死にたくない。

 

 朧にはやりたい事がある。やってみたい事がある。それはほぼ確実になれたはずの事で、だからこそ死ぬなど絶対にごめんであった。

 

 一ノ瀬朧は、ゲーム会社に勤める事がほぼ確定していた。

 

 簡単に言えばコネ入社だ。両親が務めているゲーム会社に、入社する事が八割がた決まっている。

 

 なにせ既に能力は示している。なので、本社の人達からも入社していいと言われている。

 

 高校に通っているのは、「最低でも高校卒業程度の学歴がないと上に言い訳できない」と言われたからだ。本当にそれだけで高校に入学したし、既に卒業できるだけの学力はあったと断言できる。

 

 そんな、ある意味で人生の中盤程度は余裕でクリアできる程度の状況だったのだ。

 

 色々と面倒ごとに巻き込まれ、そしてそこから助けられて、そしてそれが遠因でゲームの時間を削る羽目になった。

 

 だがしかし、それでも将来はほぼ約束されたようなものだったのだ。

 

 それが、こんなところで死ぬなど耐えられない。

 

 絶対に死にたくない、死んでたまるものか。

 

 その決意が、一瞬で行動を引き起こす。

 

「ぱ、パラシュート!!」

 

 なんとなく必要になるかもしれないと思って、うろ覚えな知識で作ったパラシュートを展開する。

 

 それを強引に体全体で掴んで、なんとしても生き残ろうと行動。

 

 そして、それはかろうじて成果を上げた。

 

 地面に激突した衝撃で、朧は言葉も出せないほどの激痛に身もだえる。

 

 だがしかし、生きている。

 

 打撲は確実だ。アバラに罅も入っている。

 

 だがしかし、生きている。

 

 数百メートルを落下してなお、一ノ瀬朧は生き残った。

 

 念の為。うろ覚え。しかし作ったパラシュートは、しっかりと機能した。

 

 幸いなのはそれを持ち運ぶことができる輸送能力。祝才が運び手でなければ、神器(セイクリッド・ギア)も高位の魔法も持っていない朧では、持ち運ぶことなど不可能だっただろう。

 

 ……だがしかし、朧の試練はこの程度では終わりはしない。

 

「う……く……っ」

 

 激痛に身もだえしながら、朧は何とか立ち上がる。

 

 周囲は奈落の底。広間となっている最下層は、会談と、少し奥にある何かの祭壇のような場祖だけだ。

 

 薄靄のような霧に包まれた、その最下層で、朧は何とか立ち上がる。

 

「う…ぐ……っ」

 

 激痛に悶えながらも、しかし朧は帰ろうとする。

 

 其の中にあるのはたった一つの思考。人間が持つ、根源的な本能。

 

 生きたい。

 

 生存本能という、生き物が持つ根源的な本能に従い、朧は何とか脱出しようと試みる。

 

 激痛に思考がマヒしながらも、しかし朧は生きようと必死だった。

 

 なんとしてもこの遺跡から脱出せんと、本能で登ろうと行動する。

 

 だがしかし、そんな希望を打ち砕くのが現実である。

 

 朧が立ち上がり、そして歩き出した瞬間だった。

 

 階段から、何かが下りてきた。

 

 ……それは、見るからに分かる猛威。

 

 そこにいるのは、鋭い爪を持ち、蜥蜴と人間を足して二で割ったような魔獣。

 

 墜落直前の死闘で、騎士団が最下層の敵だと言い切った強敵。

 

 ハンティングリザードが、三匹も降りて来ていた。

 

「ひ……っ」

 

 引きつった声が、本能で出てしまう。

 

 そして、それがよくなかった。

 

「「「ギィ……」」」

 

 ハンティングリザードは、其の声に反応して顔をこちらに向ける。

 

 視線が、合った。合ってしまった。

 

「う……あ……」

 

 怯えながら後ずさる朧に、魔獣達がぎょろりと視線を向ける。

 

 その目は、完璧に獲物を見るそれだった。

 

「うわぁあああああああああ!?」

 

 とっさに本能で走り出したのは、正解なのか失敗なのか。

 

 断言できるのは、ここで距離を取らなければ死ぬという事だけだ。

 

 故に本能で走り出す。全力をもって走り出す。

 

 間違いなく生涯最速。生存本能によって解放されたリミッターが、火事場の馬鹿力となって限界を超えた。その速さは、移動速度を重視しない戦闘系祝才を持った者達を超えるだろう。

 

 まず間違いなく、一ノ瀬朧は限界を超えた全速力を出す事に成功した。

 

 だが、そんなものはハンティングリザードの前では時宜に等しい。

 

 戦闘系祝才持ちですら、相当の練度が無ければ太刀打ちできないハンティングリザードは、文字通り全身全霊の朧を遥かに超える速さで走り出す。

 

 朧が墜落地点から、会談の反対側にある祭壇に到達するまで、十秒足らず。

 

 そして、会談から奈落を超え、祭壇にハンティングリザードが到達するまで、僅か十秒。

 

 ハンティングリザードが()()()祭壇の前に入れず、壁に激突するよう止まらなければ、朧は死んでいただろう。

 

 そして、不幸な事に朧はそれを意識する事がなかった。

 

 恐怖心のままに、生存本能のままに、狂った獣の用に走り続ける。

 

 その祭壇には、文字が書かれた石碑と魔方陣があった。

 

 そいて石碑に躓いて、朧は魔方陣へとぶつかるようにして倒れこんでしまう。

 

 ……倒れこんで、しまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あれ?」

 

 気づけば、朧は洞窟の中にいた。

 

 なんというか、トリアーチュル遺跡とは毛色が違う洞窟だった。

 

 直径は五メートルあるかないか。暗さもトリアーチュル遺跡より酷く、周りを確認するのが難しかった。

 

 そして、後ろを振り返ってみればそこは生き止まりだった。

 

 中には植物が自生していて、食べれそうな気の実があったがそれだけだ。

 

 本来、光がろくにない洞窟で食べ物がある事すらイレギュラーだが、それはそれとする。少なくとも、魔法が存在する異世界なら何でもありだという認識が朧にはあった。

 

「こ、ここ……どこ?」

 

 我に返った朧は、周りを見渡す。

 

 まったく訳が分からない。

 

 なにがあった? またしても異世界召喚か?

 

 そんな事を考えながら、朧はなんとなく歩き出す。

 

 どちらにしても前にしか道がないのなら、前に進むしかない。そういう意味では前向きな対応だった。

 

 そして、崩落したと思われるわき道を見るが、そこには何もない。

 

 どうやら一種の迷宮らしい。迷路といった方が近いのかもしれない。

 

 なので引き返して、道をまっすぐ進み―

 

「………嘘だろ」

 

 曲がり角を曲がった先に、ハンティングリザードがいた。

 

 否、それはハンティングリザードではない。もっと凶悪な面構えで、誰が見てももっと強いと分かる風貌だった。

 

 勝てない。倒せない。殺される。死んでしまう。

 

「ひ……っ!」

 

 とっさにそれを理解した朧は、本能で悲鳴を押し殺す。

 

 しかし、それがよくなかった。

 

 ハンティングリザードを超える存在は、それに反応して振りむこうとする。

 

 とっさに走り出したのは僥倖だった。それが無ければ、一瞬で殺されていただろう。

 

 そして、三度目の窮地故に朧は比較的冷静だった。

 

 このまま走って行き止まりに行っても殺される。かといって逃げる場所などない。

 

 それに気づいた朧は、とっさにわき道に突入する。

 

 そして、運び手の祝才ゆえに持たされていた荷物を乱雑に展開、狭い横道は一瞬で障害物に包まれた。

 

 そして本能のままにへたり込み、頭を抱えて震えだす。

 

「死にたくない……死にたくない……死にたくない……死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!」

 

 そう呟きながら震えている間も、追撃しようとしたハンティングリザードの上位互換が、突破しようと爪を突き立てたが、やがて興味をなくしたのか面倒くさくなったのか、離れていく。

 

 だがしかし、朧はそれに気づかず震えたままだった。

 

 死にたくない。生きていたい。とにかく死にたくない。

 

 そう思いながら震えて何日もその中に隠れていく。

 

 そして飢えて餓えながら、朧は恐怖に震え続ける。

 

 その脳裏によぎるのは、瀬間の嘲笑や自分に手を伸ばそうとする弥左の姿。そして、日常の風景だった。

 

 なぜ、あの日常から放り出される羽目になった?

 

 なぜ、こんな事になっている?

 

 なんで、こんな助けも来ないような環境に送り込まれている?

 

 自分は、瀬間喬樹という男に殺されるほどの事をしたというのか?

 

 そんな事を恐怖と共に考えながら、朧は震えながら誰かが助けに来てくれるの待つ。

 

「だれか……誰か……だれか……」

 

 一時間経った。誰も来ない。

 

「早く来て……来てくれよ……」

 

 二時間経った。誰も来ない。

 

 半日経った。誰も来ない。

 

 一日経った。誰も来ない。

 

 二日経った。誰も来ない。

 

 三日経った。誰も来ない。

 

 五日経った。結局、誰一人として助けになど来てくれなかった。

 

 生存本能に従い、水と保存食糧を口にしながら、朧は震え続けるしかない。

 

 生きたい。生きたい。生きたい。生きたい。生きたい。

 

 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

 

 そんなことを本能のままに考え、朧は震えたまま考え………。

 

「‥‥‥‥は、ははは」

 

 プツンと、何かの糸が切れた。

 

 ああ、駄目だ。このままだと駄目だ。

 

 誰も助けに来てくれない。冷静に考えれば、三十層から下には誰もいけなくなっているのだから当然だ。

 

 自分が死なない為に、このまま食料がなくなるのを受け入れない為には、動くしかない。

 

 なら、どうする?

 

 武器がいる、それも、強力な武器が。

 

 そうだ、銃がいる。

 

 剣では駄目だ。斧では駄目だ。槍では駄目だ。槌では駄目だ。弓では駄目だ。

 

 銃だ。それも、大口径で貫通力もある、装甲車ぐらいならどうにかできそうな強力な銃が。

 

 それに爆弾も欲しい。クレイモア爆弾とかあれば最高だ。それだけあればあの魔獣も殺せるだろう。

 

 それも一丁や二丁じゃダメだ。弾丸も含めて、何十丁もなくてはいけない。

 

 材料はあるのだ、しかし、それを作る為の施設がない。

 

 ……そうだ、施設が欲しい。

 

 工場が欲しい。作業所が欲しい。道具が欲しい。工具が欲しい。

 

 作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。作りたい。

 

 このままだと死ぬのだから、なんとしても手に入れなければならない。

 

 化け物に対抗する武器がいる。なんとしても手に入れなければならない。

 

 欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい星欲しい。

 

 そうだ、化け物から生き残るために何としても欲しい。

 

 其のためなら―

 

「―()は、化け物にでもなってやる」

 

 その決意が、意思が、覚悟が―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 形となって、具現化する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が光輝を宣誓する」

 

 それは、この世界の真なる力の起動詠唱(パスコード)

 

 今ここに、トリアーチュル遺跡の真の機能が覚醒する。この遺跡の()()を乗り越えるための力が目覚める。

 

 そう。一ノ瀬朧という少年は、今この場においてはじめて、真の意味でこの世界の洗礼を受けているのだ。

 

「我は深淵の魔獣。生きるために殺し、生きるために食らう。奈落の底に住まう化生なり」

 

 それは自己宣誓。自分がどういうものかという、光を掲げる世界への宣言。

 

 その言葉はどこか闇をまといながらも、しかし確固たる前に向けられた意識がそれを光として宣誓する。

 

 朧は人として生きること捨てる覚悟を決めた。生き残るためなら何でもすると決めた。それこそ、化け物と呼ばれることも自然と飲み込んだ。

 

 ゆえに、それは前向きな決意として認定され、光り輝く意思として具現化する。

 

「故に我は欲す。殺すための、喰らうための、生きるための利器を、欲すがゆえに用意せん」

 

 だからそうしよう。

 

 殺そう。喰らおう。そして生きよう。そのために必要なものがあるのなら遠慮はしない。

 

 自分なら作ることそのものはできるのだ。だから、どんな手段をもってしてでも用意して見せると今決意した。

 

 そして、その決意が具現化して形となる。

 

 朧自身から放たれる光の粒子が、その両手に集まって物体となっていく。

 

 それは、機械的なパーツがいくつも付いた手袋。

 

 まるで工場を思わせるその手袋を眺め、朧はそれがどういうものなのかをすぐに理解する。

 

「お膳立ては整えたんだから、やってみろってか?」

 

 そうだ。この能力は、断じて単純攻撃力を高める武器ではない。

 

 この能力は、魔獣達の攻撃を防ぎ切る、盾として使える防具でもない。

 

 だがしかし、それを圧倒するだけの強大な力を、この手袋は秘めていた。

 

 故に、朧は宣言する。

 

 己の光に名前を付ける。そうする事で、これは完全に形となり、この世の物体として確立すると知っているから。

 

「心具、顕現」

 

 生き残ってやるという決意が、獣のような笑みを朧に浮かべさせる。

 

化生万手(デモニック・ファクトリー)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、奈落の底に化け物が誕生した。

 

 その化け物が人に戻れるか否かは、彼を追いかける三人の戦士達の努力次第としか、言う事はできなかった。

 




本作オリジナルの異能が登場しました。モデルとしてはLightのバトル系を参考にしております。詠唱って、テンションが上がるよね!!
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