ポテト好きの氷川さん 作:主催
最近どうも調子が悪い。バンド練習にしても勉強の方にしても調子が悪い。
「はぁ」
「紗夜。最近調子悪いけど、どうかしたの?」
「湊さん。何でもありません」
「そんな事ないわ。ここ最近明らかに調子が悪いわ」
湊さんにも気が付かれていましたか。
「最近何をするにも調子が出ないんです」
「何かあったの?」
確か調子が悪くなったのは一ノ瀬さんに日菜のことを打ち明けた日からだ。
「それは」
「紗夜ー。何あったの?」
「今井さん」
今井さんまで話を聞きつけてきた。
「確かに最近の紗夜は調子が悪い感じがするねー」
まずいこのままじゃめんどくさいことになるわ。
「大丈夫ですよ。今日はもう帰りますね」
そのまま荷物を片付けて帰ろうとしたら今井さんに肩を掴まれる。
「どこに行こうとしてるのかな紗夜~」
あぁ、一ノ瀬さんはいつもこんな気持ちだったのかしら。
「さーて。それじゃあファミレスに行こうか!」
「み、湊さんは反対ですよね」
湊さんはニッコと微笑みうなずいた。
「さて、行くわよ。紗夜」
そのままファミレスまで連行された。
「さて、紗夜。最近のあなたが調子が悪いのはみんな薄々感じていたのよ」
「そうですか」
「それで何があったの?」
「それは」
正直に話すか悩ましくなる。こんな事今までになかったから。
「確か紗夜が調子が悪くなったのは二週間ぐらい前だよね」
二週間前。そうそれはまさしく一ノ瀬さんにおんぶしてもらって帰った日のことだった。
「でも、氷川さん学校にいる時は・・・・・・別に普段通りですよね」
「そうなの燐子」
「ちょっと白金さん!」
「紗夜は黙ってて」
今井さんに遮られてしまう。
「紗夜さん。ポテト食べますか?」
「ああ、宇田川さん今はあなただけが私の味方よ」
「それで燐子学校での紗夜はどんな感じなの?」
「・・・・それは」
白金さんがこちらを見てくる。
「大丈夫、紗夜なら私がちゃんと見てるって」
「そうですか」
「そうそう。だからさ教えてよ」
全く今井さんの行動力にはいつも驚かされるわ。
「そうですね。学校での氷川さんはいつもより・・・・・テンションが高いといいますか。・・・・ニコニコしている気がします」
「へえ、それってどんなとき?」
「ある、生徒と話している時は・・・・・いつもより楽しそうです」
「ある生徒ねぇ」
今井さんがこちらを見てニヤニヤしてくる。
「なんですか。その目は」
「いやー。なんでもないよ」
「燐子その生徒って男子生徒かしら」
「湊さんそれは!白金さんも答えなくて大丈夫です!」
「ええ別に答えなくてもいいわよ燐子。今の紗夜の反応でわかったから」
湊さんまでニヤニヤした顔で見てくる。
「ここまでの話を聞いてだいたいわかったわ」
「何がわかったんですか?」
湊さんが自信満々に答える。
「紗夜あなたは今その生徒に恋をしているのよ!!」
「恋ですか?」
恋とは、特定の相手のことを好きだと感じ、大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情。辞書的に言えばそんな感じだろう。
私が一ノ瀬さんにそんな事を思うはずないわ。別に好きでもないし。でも、彼は大切な友達で一緒にいたいとは思う。
「そんなことはありえませんよ湊さん。だいたい彼とはただの友達です」
「私も確かに最初は戸惑ったわ。でも一度自覚してしまったら、もうそうとしか考えられなくなってしまったわ」
「それは湊さんに限った話です。私は別に」
「でも、こんなに楽しそうな表情してるよ~」
今井さんがそう言って見せてきたのは体育祭で私が一ノ瀬さんを抱っこしている写真だった。
「こ、これをどこで!!」
「あはは、紗夜はわからないかもしれないけどだいたい今じゃみんな知ってるよ」
「どれ」
湊さんが今井さんのスマホを覗く。
「あら、なかなかかっこいいじゃない。まあ、正宗ほどじゃないけれど」
その一言にムッとする。
「あら湊さんそんなはありえません。どう考えても神宮寺さんよりも一ノ瀬さんのほうがかっこいいです」
「紗夜こそおかしなことを言うのね。どこをどう見ても正宗のほうがかっこいいわ。それに彼紗夜に抱っこされている時点でどうなのかしら」
「彼は運動こそできませんが勉強は常に学年一位でトップです。いつか彼に大差をつけて勝つために勉強だって根気強く続けられます」
「別に勉強はそこまでできなくてもいいわ。それに紗夜じゃわからないと思うけれど勉強は競い合うよりも教えてもらったほうがお互い有意義な時間だわ。それに正宗は顔だけじゃなくて性格も優しいのよ」
「確かに一ノ瀬さんは性格は最悪ですが顔に至っては最高の人です。ですが私のお願いもちゃんと聞いてくれますし、何よりも一ノ瀬さんが作ったポテトはこの世の何よりも美味しいです!」
「あら、それを言うなら正宗は料理が得意だわ。特に手作りのオムライスは世界で一番美味しいわ!」
「あと湊さんはわからないと思いますが、一ノ瀬さんは私のギターを聞いてギターを初めてくれました。いつか彼が弾けるようになったら彼とセッションすることが今の目標です!!」
「私だって正宗とデュエットをする予定よ。それに歌うことだったらギターと違ってすぐにできるわ!!」
「「はぁ、はぁ、はぁ」」
全く湊さんはわかっていません。絶対に神宮寺さんよりも一ノ瀬さんのほうがかっこいいです。
「えーと、ふたりともちょっと落ち着いて。お互いの主張はわかったから」
「なら、今井さんに聞きますが。今の話しを聞いてどちらのほうが魅力的に聞こえましたか」
「え、えーっとそれは」
「そうね第三者からの意見のほうがわかりやすい。リサはどっちほうがいいかしら」
「えっと私は、世話を焼ける人がいいなぁ。なんて」
「そう。なら、燐子はどちらのほうがいいかしら」
「え!わ、私ですか。私は優しくて守ってくれる人が・・・・いいです」
「なら、あこはどう」
「はい!あこはかっこいい人がいいです!!」
「そう。まぁ自分のタイプなんてバラバラだから一概には言えないわね」
「そうですね」
「それで話を戻すけど紗夜はその人が好きなんだよね」
「そ、そんなはずありません!私が一ノ瀬さんの事を好きなんて」
「好きじゃないならさっき言ったことみたいにポンポン出てこないよ」
私が一ノ瀬さんの事が好き?そんな事あるはずがない。
「まあ、紗夜が認められない気もわかるわ。最初は誰でもそんなものよ。でも紗夜はその人のことを自然と目で追っているんじゃないかしら」
確かに最近は一ノ瀬さんのことを自然と見ていることが多い気がしますがそれとこれは別問題です。
「でもね紗夜。いつか必ず彼のことを意識してしまうときがかならず来るから」
「・・・・そんな日は絶対に来ません」
私が一ノ瀬さんのことを好きになるなんてあるはずないんだから。
「紗夜はさ、この人のことまだ名字で呼んでるの?」
「何を言っているんですか今井さん。当たり前でしょう」
「ならさ、名前で呼んで見れば?」
「なぜ、私がそんな事を」
「えぇ。だって友達なんでしょ。普通友達どうしなら名前で呼び合うって」
「別に名前で呼びあうことだけが友達の定義ではないでしょう」
「ふーん紗夜がそれでいいならいいんだけどね。でもさっきの話しを聞いている限り紗夜彼にきつくあたってるんでしょ」
「そ、そんなことは」
「少しは優しくしてあげないと彼、紗夜のこと嫌いになってどっか行っちゃうかもよ」
一ノ瀬さんが私のことを嫌いになっていなくなってしまう。そんな事はあるはずがない。ここ最近なんか別に厳しくなんか。
そう思い少し思い返してみると、テニスでボールを当てたり、種目も勝手に決め、あまつさえこないだなんかポテトを日菜と一緒に山程おごってもらった。
(もしかして私一ノ瀬さんに迷惑ばかりかけているかしら)
「肝に銘じておきます」
明日から少しは優しく接してあげようかしら。そんな事を考えながらやっときたポテトをつまみながら考えていた。
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