ポテト好きの氷川さん   作:バーサク戦士

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どたばた!?おかしなお菓子教室

 今日はお菓子作り教室だ。そのためにいつもよりはやく家をでてきた。今はその準備中だ。

 

「それにしても定員ギリギリまで来るなんてなぁ」

 

「あはは、そうですね。昨日の最後の方にも応募があったみたいですし」

 

「まあできるだけ頑張ってみるかなぁ」

 

 つぐみさんと一緒に準備をしていると続々と人が集まってきた。するとあっという間に人で一杯になった。

 

「わわ、思ってたよりも人が多いよ」

 

「落ち着いてつぐみさん。自分たちはあくまでサポートで、わからない人がいたら声をかけていくぐらいでいいと思うから」

 

「はい!そうですよね。昨日夜遅くまで手順も確認したし大丈夫なはずです」

 

 そう言って胸の前でガッツポーズをとって気合を入れている。やっぱりつぐみさんは天使だなぁ。どこかの堅物ポテトさんとは違ってほんといい子だ。

 

 そのとき店のドアが開き見慣れた人影が視界にはいった。

 

「なんでここに氷川さんがいるんですか!?」

 

「一ノ瀬さんこそなんでここにいるんですか!?」

 

「ここでアルバイトをしているに決まっているじゃないですか」

 

「私は今日のお菓子作り教室に参加しにきただけです」

 

 嘘だろ。自分がしる限り氷川さんはお菓子とは最もかけ離れた人だと思うんだけど。

 

「氷川さん残念ですが今日はお菓子作り教室であってポテト作り教室ではないのでお引取りください」

 

「一ノ瀬さんは私のことを何だと思っているんですか!!」

 

「え、だって氷川さんお菓子なんて興味あったんですか!?」

 

「そ、それは」

 

「何の目的できたんですか氷川さん!」

 

 ぐいっと氷川さんに詰め寄ると顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「それにしても氷川さんがこんな可愛いことに興味を持つなんて意外でしたね」

 

 どんどんと氷川さんが顔を赤くしていく。さていじめるのはこれぐらいでいいだろうと離れてあたりを見渡して見ると主婦の皆様方がニヤニヤしてこちらを見て、若いっていいわねー、今どき男のほうがガツガツ行くなんてやるわね、なんて会話が聞こえてきて無性に恥ずかしくなった。

 

「すみませんでした。氷川さん」

 

「一ノ瀬さんなんて知りません!!」

 

 氷川さんは完璧に怒って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、幸村。女連れてきたのか」

 

「違いますよマスター。あの人はただの知り合いです」

 

「えぇーホントかよー。傍から見てると明らかにカップルの会話だったぜあれは」

 

「だから違いますよ!!」

 

「はは、まあ隠したくなる年頃なのはわかる。それが若さだもんな」

 

 マスターは笑いながら背中をバシバシ叩いてくる。

 

「ほんとに違いますからね!」

 

「わかったわかった。まあ何にせよ知り合いなんだろ」

 

「・・・まぁ。一応そうですけど」

 

「ならあの子のところに行ってやれ。さっきからあの子戸惑って何やっていいかわからないみたいだからな」

 

「ええ、自分ですか」

 

「おいおい。幸村お前があんなきれいな子のがしたらチャンスは二度と回って来ないぞ」

 

「いやだから」

 

「いいからいけ!」

 

 マスターは無理やり背中を押して氷川さんのところまで押し出した。氷川さんは教室にいるようにボッチスキルを発動してキョロキョロしている。

 

「氷川さん、どこがわからないんですか?」

 

「い、一ノ瀬さん!なぜここに!?」

 

「明らかにあたりを見渡してキョロキョロしてたじゃないですか。だから仕方なく教えに来てあげたんです」

 

「別に何もわからないことなんてないわ。一ノ瀬さんに教えて貰うんでしたら、一人でできます!」

 

「なら一人で頑張ってください。自分は後ろから見守っていますから」

 

「そうしてください!」

 

 そう言って氷川さんはテーブルの上にある材料をボールに入れていく。だけど入れるたびにこちらをチラチラと見てくる。

 

「もうギブアップしますか?」

 

「馬鹿なことを言わないでください!これくらい簡単にできます」

 

「では次は何をするんですか?」

 

「そ、それは」

 

 そろそろいいだろう。

 

「次はバターが白くなるまで混ぜるんですよ」

 

「え」

 

「ほら、しっかりとボールを抑えて」

 

「は、はい!」

 

 やっぱり氷川さんは何でも起用にこなすな。バターを混ぜているだけなのに様になっている。

 

「一ノ瀬さん白くとはどのくらいですか?」

 

「そうですね」

 

 氷川さんの後ろに回り込んで手を重ねて一緒にかき混ぜる。

 

「い、一ノ瀬さんなにを!?」

 

「いいからしっかりとバターを見てください」

 

「は、はい」

 

 それから2分ほどかき混ぜたらだいぶ白くなってきた。

 

「このくらいでいいですよ氷川さん。これがバターの白です」

 

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

「では次は生地を混ぜます。氷川さんどうかしたんですか?」

 

「い、いえ何でもありません。次は生地ですね。わかりました」

 

 やけによそよそしいと言うかどうしたんだろうか。

 

「このくらいで大丈夫ですか?」

 

「そのくらいで大丈夫です。そしたら次は冷蔵庫で30分ほど冷やしましょう」

 

「30分ですね。わかりました。では、冷蔵庫に入れてきます」

 

 そのまま氷川さんはそそくさと冷蔵庫まで行ってしまった。

 

 さてとテーブルの上でも片付けておこうかな。

 

「ただいま戻りました」

 

「おかえりなさい氷川さん。次はテーブルの上を片付けてもらっていいですか」

 

「はい。わかりました」

 

 これと言った会話もなく片付けていく。すると氷川さんの手に少しあたってしまった。

 

「きゃっ!」

 

「氷川さん!大丈夫ですか!?」

 

「な、なんでもありません。ただボールを落としてしまいました」

 

「自分が拾いますよ」

 

 そう言ってしゃがんだときに滑ってしまい氷川さんの方に倒れこんでしまった。

 

「いったた。怪我はないですか氷川さん?」

 

「だ、だだ、大丈夫です」

 

 今、自分は氷川さんに床ドンをしてしまっている状態だ。や、やばいやられる。とっさに目をつぶるがいつまでたっても頬に痛みが来ない。目をゆっくり開けてみると、顔を真っ赤にして見つめられていた。

 

「す、すみません。すぐどきます」

 

「は、はい」

 

 先に立ち上がって氷川さんの手を掴み起こしてあげる。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「は、はい。一ノ瀬さんが倒れてきたときはびっくりしましたが大丈夫です」

 

「なら良かったです」

 

 その気まずい雰囲気のまま30分ほどチラチラと見つめ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一ノ瀬さん持ってきました」

 

「そうですか」

 

「それでこのあとはどうすればいいんでしょうか?」

 

「次はこの生地を伸ばしていきます」

 

「わかりました」

 

 き、気まずい。さっきのことがあってからお互いなんとなく顔を合わせづらい。

 

「一ノ瀬さん。厚さはどのくらいでしょうか?」

 

「そうですねだいたい5mmほどです」

 

「5mm・・・・?さて、どうしたものか?」

 

「どうしたんですか?」

 

「一ノ瀬さん、定規はありますか?」

 

 何を言い出しているんだこの人は。

 

「なんで定規を?」

 

「だって定規がないと5mmがわからないじゃない」

 

「大体で大丈夫ですよ」

 

「いえだめです!少しでもずれていたら大変じゃないですか!!」

 

 なんだろう最近少しずつ氷川さんがポンコツになってきている気がする。

 

「自分が見ていますからとりあえずやってみてください」

 

「はあ、わかりました」

 

 氷川さんは渋々と言った感じで生地を伸ばしていく。

 

「そのくらいで大丈夫です」

 

「このくらいが5mmですか。だいたいわかりました。そうしたら次はなにをすればいいのかしら?」

 

「次は型抜きを使って、生地を切り取っていきます。型はどれにしますか?」

 

「そうね。これにするわ」

 

「わかりました。じゃあ切り取ってください」

 

「はい。わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 氷川さんは真剣な表情で型を切り取っていく。

 

(それにしても疲れたな)

 

 どんなことに対しても真面目というか。肩肘が張っているというか。

 

「・・・・ふう。できました」

 

「なかなかキレイじゃないですか」

 

「ありがとうございます」

 

「次はこのクッキングシートに並べてオーブンで焼きましょう」

 

「わかりました。では、並べてオーブンで焼いていきますね」

 

 氷川さんはこれまた丁寧に並べてオーブンに持っていった。

 

「ただいま戻りました」

 

「ちゃんとセットできましたか?」

 

「はい。170度で20分、でよかったでしょうか?」

 

「はい大丈夫です」

 

「それじゃあ洗い物でもしましょうか」

 

「はい、わかりました」

 

 そのまま会話もなく洗い物をしていく。さっきから氷川さんの顔を見るのが妙に恥ずかしい。氷川さんもそうなのかさっきから顔を合わせないし。

 

(あーもう。なんなんだよこの空気は)

 

「あの、一ノ瀬さん」

 

「え、どうかしたんですか氷川さん」

 

「えっと今日はありがとうございます」

 

「なんで急にお礼なんか」

 

「きっと私一人ではここまでこれなかったでしょうから。だから一ノ瀬さんには感謝しています」

 

「そ、そうですか。わざわざありがとうございます」

 

 その後は会話もなく過ごした。

 

「それで最後はどうするんですか?」

 

「最後は仕上げのアイシングをやります」

 

「アイシングですか。難しそうですね」

 

「そんな事ないですよ。砂糖と着色料を混ぜたものを使って、このクッキーに絵を描くだけですから」

 

「わ、わかりました。やってみます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「氷川さん調子はどうですか?」

 

「今は、ギターの細かい部分を書こうとしているのだけれど・・・・・・。難しいわね」

 

「ギターですか。氷川さんらしいですね」

 

「こっちのは犬と猫ですか?」

 

「はいそうです。ですが目や鼻のバランスが難しくて、少し歪な顔になってしまいましたが・・・・」

 

「そうですか?普通にうまいと思いますけど」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「やっぱり犬好きなんですか?」

 

「ち、違います。たまたま犬の型があったので選んだまでです」

 

「・・・・・そうなんですか」

 

「誰かに送るつもりですか?」

 

「ええ、一応バンドの練習中に差し入れとして持っていこうかと」

 

「もしかして、そのために今日ここの教室に来たんですか?」

 

「はい、そうです。練習中にお菓子でもあればリラックス効果があると思い、今日ここに習いに来たんです」

 

「そうだったんですか」

 

「・・・・できた。どうでしょうか」

 

「うん。いい感じだと思いますよ」

 

「それじゃ、最後の仕上げにクッキーをラッピングしましょう。袋とかリボンはここにあるものを使ってください」

 

「わかりました。・・・このリボンの色・・・素敵ね」

 

「ああ、それはこないだ自分が買い出しに行ったときに買ったものですね」

 

「そ、そうですか。これを一ノ瀬さんが」

 

 氷川さんはそのリボンでラッピングをしていった。

 

「お疲れ様です。なんとか無事に終わりましたね」

 

「ええ、一ノ瀬さんもありがとうございました。一ノ瀬さんのおかげでなんとか作ることができました」

 

「それじゃあまた明日学校で」

 

「・・・・・」

 

「どうしたんですか。もしかして忘れ物とか」

 

「い、いえ違います」

 

「そしたらなにが」

 

 すると氷川さんは顔を赤くしてさっき作っていたギターの形をしたクッキーを突き出してくる。

 

「えっとこれは」

 

「良ければ受け取ってください!!」

 

「いいんですか?」

 

「はい。こないだのことや今日の感謝の気持ちです」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「それではまた明日」

 

 そのまま氷川さんは逃げるように帰っていった。平然を装っていたが心臓の鼓動が早くなっている。

 

 そのまま袋を開けて食べてみたがとても甘く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




時系列バラバラだけど許してヒヤシンス。

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