ひとりぼっちで困ることランキングで圧倒的1位に輝くことはなにか?それは体育でペアを組めを言うことだ。今日はそんな最悪な体育の時間の一部をお見せしよう。
「よーし。じゃあ、いま説明したことをペアでやってみて」
「「はいー」」
先生のその号令でみんながペアを組んでいく。その中で自分は隅っこのほうでぽつんと立っている。そもそもなんで男女一緒に体育をやっているのか。お隣の羽丘では男子の人数が少なくても男女別でやっているらしい。なのにうちは男女一緒でやっている。
おとなしく壁打ちでもしておくか。そう思いテニスコートを出ようとしたら、声をかけられた。
「一ノ瀬さんどこに行こうというのですか?」
「はぁ、出ましたね氷川さん」
「出ましたね、じゃありません。どこに行こうとしたんです」
「どこって、外の壁で壁打ちでもしようとしたんですよ」
「さっきの話を聞いていなかったんですか。ペアを組んで練習をしなさいと言われましたよね」
「ですから、そのペアがいないんですよ」
「それならここにいるじゃないですか」
そう言って氷川さんは胸を張った。
「いや、氷川さんにそんな迷惑はかけられません。なので自分はおとなしく壁打ちでもしてますね」
「だめです!一ノ瀬さんは私と組むことは確定です」
「いや、だからなんで自分が氷川さんと、いやもしかして氷川さん組む相手がいなくて余りたくないから自分と組もうとしているんですか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか。それこそ一ノ瀬さんの妄想に過ぎません」
「素直に認めたら組んであげてもいいですよ」
「だから私は別に」
「なら自分は行きますね」
「待ってください!!」
「なんですか本当に氷川さんは」
「なんでいつもそんな意地悪するんですか」
下を向きポツポツと言った。
「いや別にいじめてなんか」
「嘘です。そうやって一ノ瀬さんは毎回毎回私のことをいじめて楽しんでいます」
「そんなことは」
「最低です。一ノ瀬さんは」
氷川さんは下を向いて顔を覆ってしまった。心なしか肩も震えている気がする。まさか泣いている。いや氷川さんに限ってそんな事はないはず、だと思いたい。
「まあ自分もこのまま授業に参加しないのは心もとないので組んであげますよ」
「本当ですね」
「本当ですよ」
「では、行きましょう!!」
「は?」
氷川さんはさっきのことがなかったかのようなとびきりの笑顔で自分の手を掴み引っ張って行く。
「ちょ、ちょっと待ってください。氷川さん泣いていたんじゃないんですか?」
「私が泣くことなんてありません。いつもいじめてくることに対するほんの仕返しですよ」
この堅物ポテトはほんとになんなんだ。でも最近は氷川さんといてもそんなに悪い気分にならなくなってきている自分がいた。
「いきますよー。一ノ瀬さん」
「はい。いつでもいいですよ」
そう言って氷川さんはボールを打ってくる。ボールの着地地点に入りラケットを振りかぶる。だがいつまでたってもボールを打った感触はこない。
不思議に思い後ろを見てみるとボールがテニスコートの後ろでバウンドしていた。
「なにやっているんですか一ノ瀬さん」
「いや打ったはずだと思ったんですけど」
「次は一ノ瀬さんが打ってください」
「いきますよー」
おもいっきり打つがボールが氷川さんのところまで届くのまでツーバウンドしてしまった。
すると氷川さんはこちらの方までボールを持ってやってきた。
「一ノ瀬さんもしかしてなんですけど運動できませんね」
指摘されたとき心臓がどきりと跳ねた。
「そ、そ、そんなことあるはずないですよ」
「一ノ瀬さんあなた勉強以外は点でダメなんですか」
「・・・・そうですよ。自分は勉強以外できませんよ」
「ふふ、そうですか。一ノ瀬さんも可愛いところがあるわね」
バカにされている。絶対に馬鹿にされている。
「まあ、勉強は氷川さんに負けませんけど」
「そうですね。私は一ノ瀬さんに勉強はまだ勝てません。けどスポーツは負けません」
「クッキーも作れない人が何を言っているんですか」
「クッキーぐらいもう作れます」
「怪しいですね。氷川さんのことですからもう作り方も忘れているんじゃないですか」
「「ふん」」
そのまま言い合っていると先生からの号令がかかり集合となった。
「じゃあ、今組んでいたペアと一緒にダブルスをしてねー」
試合だと。無理だ。さっきのでわかったと思うが自分はてんで運動ができない。なのに氷川さんと組んで試合をしろだと。
「いきますよ一ノ瀬さん」
氷川さんは自信満々といった感じで張り切っている。
ああ、なんでボッチの体育はこんなに時間が経つのが遅く感じるのだろうか。
「ほら一ノ瀬さん早く来てください」
「はいはい。わかりましたよ」
対戦相手は自分と氷川さんと同じで男女のペアだった。その男子はクラスで自分以外の唯一の男子生徒だった。
(いやこの人絶対に自分と違って運動バリバリできるタイプじゃん。身長も高いし)
「よろしくおねがいしますね。白金さん」
「は、はい。こちらこそお願いします氷川さん」
「えっとお願いしますね」
「ふん。バカップルが。せめて見えないところでいちゃついてろ」
「バ、バカップル」
な、なんだと。誰がバカップルだ!いいかげんにしろよ。なんて言えるはずもなく試合は始まった。
「いいですか一ノ瀬さんははっきり言って戦力外なのであなたは前の方でラケットを構えているだけでいいです」
「わかりましたよ」
ここで反論するほど馬鹿じゃない。ここはおとなしく氷川さんの支持に従う。すると向こうも同じなのか女子のほうがネットの前に立っていた。
「「・・・・・」」
き、気まずい。直感でわかった。この人もボッチなのだと。おそらく向こうの人もわかっているはずだ。
仕掛けるか。
「えっと、お互い大変ですね」
まずは軽いジャブを仕掛けてみる。どう出てくる。
「は、はい。・・・そうですね」
「「・・・・・」」
なん・・・だと。まさか軽く受け流されるとは。
それにしてもこの人どこかで見たことがある気がする。じっと顔を見つめていると向こうも視線に気がついたのかさっと目をそらされた。そうだこの人はたしか。
「えっと、もしかしてバンドとかやってたりしますか?」
「!」
ステルスを見つけられたかのような勢いで驚かれた気がした。
「それも氷川さんと同じバンドとかですよね?」
「は、はい。そうです。キーボードをやっています」
「ホントですか!いやーまさかこんな近くにRoseliaのメンバーがいるなんて。あ、こないだのライブ行きましたよ。キーボードの全体をまとめる力って言うんですかね。とにかくすごかったです!」
「あ、ありがとうございます」
そのとき頭に強い衝撃が走った。そのまま意識がおちるように倒れた。
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ラケットをしっかりと握り直す。さて相手の方も白金さんを前衛に配置しましたか。まあ普通ならそうでしょう。これは事実上私とあの方との一騎打ちというわけですか。
「ふっ」
速い。なんとか打ち返す。だけど甘く入ってしまいチャンスボールになってしまう。そのスキを逃さず逆サイドに決められる。
「ここまでやるなんて。さすがは男子と言ったとこでしょうか」
「あんたもやるな。俺の本気のサーブを女子で返すやつなんて初めてだ」
「そうですか」
「悪いが本気でいかせてもらう」
「ええ、こちらも本気でいきます」
それからは壮絶なラリー合戦となった。取られては取り返す。その繰り返しだった。
「よし!」
なんとかこのゲームを奪いこちらのサーブゲームとなる。
「ハッ」
渾身の力でサーブを打つ。だけれどそれすらも対応されて軽々と打ち返される。そこからは先程のようにラリー合戦となる。
(それにしても一ノ瀬さんは何をやっているのかしら)
ふと一ノ瀬さんの方を見てみると、白金さんと楽しそうに話していた。
(な!!)
そのスキをつかれて決められる。
「しまった!」
(落ち着いて氷川紗夜。そうよただ白金さんがしょうがなく話に付き合ってくれているだけ)
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
(よし!いける)
その時ふと、二人の会話が聞こえてきた。
「ホントですか!いやーまさかこんな近くにRoseliaのメンバーがいるなんて。あ、こないだのライブ行きましたよ。キーボードの全体をまとめる力って言うんですかね。とにかくすごかったです!」
は?なにを言っているのかしら一ノ瀬さんは。こないだは私のギターが一番とか言っていたくせに。そう思うと段々とイライラしてきた。
ボールを高く投げおもいっきり打つ。するとそれは一ノ瀬さんに吸い込まれるかのように直撃した。
・・・・・・・・ハッ!い、いや私は悪くないわ。そうよ一ノ瀬さんが白金さんにセクハラをしないように止めただけ。
そのまま試合は中断となり、そのまま一ノ瀬さんをおんぶして保健室まで運んだ。
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