ポテト好きの氷川さん 作:主催
「ここは」
あたりを見渡してみるとそこは保健室だった。
「確か体育の授業でテニスをやっていて、それから」
何があったのか思い出そうとすると頭に痛みが走った。
「そもそも今は何時だ」
スマホを取り出し時間を確認する。時間は十二時を少し回ったところだった。
「起きたわね」
するとレースカーテンが開かれた。
「氷川さんなんでここに?」
「一ノ瀬さんが急に倒れたから運んできたんです」
「そうだったんですか。それはありがとうございます。なんで自分は倒れたんでしょうか?」
その質問をすると氷川さんはバツが悪そうな顔をして答えた。
「えっと急に倒れたんですよ。全く一ノ瀬さんは体が弱すぎます」
自分で倒れたか。確かに直前の記憶が無いのであれば氷川さんが言っていることが正しいのだろう。
「えっと重くなかったですか?」
「それについてなんですが、一ノ瀬さんは体重が軽すぎます。ちゃんと食べているんですか?」
確かに自分は身長の割に体重は軽い方だと思う。だけどけして食べていないというわけではない。
「違うんですよ。いくら食べても食べても太らなんですよ。太れるなら太りたいもんですよ」
「太れるなら太りたいですって」
氷川さんが震える声で言う。やばいこれは地雷を踏んだ。
「一ノ瀬さんそんなことは女性の前で言うもんじゃないです。いいですか私はライブ前になるといつもあまり食べすぎないように心がけているというのに、なんですか食べて太らない。そんなことを軽々しく口にしてほしくありませんね」
「は、はい。すみませんでした」
「私じゃなければしばき倒されるところですよ」
「で、でも氷川さんは全然太っているように見えませんよ」
「嫌味ですか」
「いや、本当ですって。ライブのときも見ましたけど氷川さんの体型はモデルさんみたいでキレイですよ」
「お世辞は結構です!」
「お世辞じゃないですよ。氷川さんは本当に魅力的な人だと思いますよ。性格を除けばめっちゃタイプです」
「本当に一ノ瀬さんはいつも一言多いわね」
「それほどでも」
「はぁ、もうわかったからいきますよ」
「行くってどこに?」
「このままじゃ昼休みも終わってしまうわ」
「それはそうですけど」
「いいからついてきなさい!!」
「わかりましたよ」
渋々氷川さんのあとについていった。
「ここは」
「何をしているの早く入るわよ」
氷川さんに連れてこられたところ、そこは食堂だった。
「嫌です!ここに入るとか死ぬとおんなじことですよ」
「食堂に入って死ぬなら、私はとっくに死んでいるわよ」
「氷川さんもわかるでしょう。ボッチの食堂がどれだけ辛いことか」
「あら、私は別に平気だけれど」
なん・・・だと。嘘だろ、氷川さんなんていう精神力をしているんだ。
「それじゃあ、一人でごゆっくり」
そのまま回れ右をして逃げようとしたら腕を掴まれる。
「ほら行くわよ」
「わかりましたわかりましたから手を離して」
「離すとどうせ逃げるでしょう」
「逃げませんて!」
氷川さんはわかっていない。そもそもこの花咲川は共学化したばかりだ。そうなると必然的に男子が少ない。だからこんな場所では嫌でも目立つ。恋愛大好きな女子高生の中に手をつないだ男女が突入していく。そうなるとどういう目で見られるかわかるだろう。
「一ノ瀬さん?さっきから黙り込んでどうかしたんですか?」
「氷川さんのアホ」
「ついに頭がいかれましたか」
「もう好きにしてください」
「はぁ。ならそうするわ」
そのまま氷川さんはズンズンと券売機の方まで突き進んでいった。
「一ノ瀬さんは何が食べたいですか?」
「もう何でもいいです」
「何でもいいが一番困るんです。早く教えてください」
「じゃあ、日替わり定食Aで」
「わかりました」
氷川さんはそう言うと券売機に硬貨を入れて日替わり定食Aを2つ押した。
「どうぞ」
「いや受け取れませんよ。今払いますね」
財布を取り出そうとすると遮られた。
「お金は結構です。ほんの私の気持ちです。受け取ってください」
「いやそれは氷川さんといえど悪いですよ」
「いいから受け取りなさい!」
有無も言わせない迫力で食券を渡してきた。
「なんですかなにか後ろめたいことでもあるんですか?」
「そ、そんな事ないわよ。全く一ノ瀬さんは人の好意も素直に受け取れないのかしら」
これは絶対になにか隠しているな。でも直感が知らないほうが幸せだと告げてきている。
「ならありがたくいただきますね」
「最初からもらっておけばいいのよ」
そのまま二人で列に並び定食を受け取る。さて問題はここからだ。昼休みも半分を過ぎている。そんな中で今から空いている席を探すなんてことは不可能だ。
「困ったわね」
「だから言ったじゃないですか。ボッチがむやみに食堂に手を出すとこうなると」
「少し黙っていなさい」
酷い。最近氷川さん自分の扱い雑になってきてないかな。
「あれは」
「何かありました?」
「一ノ瀬さんついてきてください」
氷川さんについていくとそこにいたのはピンク色の髪の人と金髪の人がいた。
「こんにちわ。丸山さん白鷺さん相席しても大丈夫でしょうか?」
「紗夜ちゃんどうしてここに?」
そう言うと金髪の人と目があった。
「ふーんそうゆうことね。ええ大丈夫よ。一緒でもいいわよね彩ちゃん」
「うん!もちろんだよ。紗夜ちゃん一緒に食べよう」
「ありがとうございます。ほら一ノ瀬さんも挨拶して」
「えっと一ノ瀬幸村です」
「そっか幸村くんかよろしくね!!」
「可愛い」
「えっ」
すると頭に鋭い痛みが走った。
「何するんですか氷川さん!?」
「いきなりセクハラをする人がいますか」
「ただ可愛いと言っただけじゃないですか!」
「それがセクハラだと言っているんです」
「もしかして嫉妬ですか」
「そんなわけないじゃない!!」
「二人は仲がいいのね」
「白鷺さん断じて違いますよ。こんな人とは仲がいいはずありません」
「ふーん。そうなのね」
なんとなくだがこの人はやばい氷川さんとか言う次元じゃなくやばい。きっと逆らったらクビが飛ぶだろう。
「紗夜ちゃんはなんで今日食堂に来たの?」
「いつもと違ってもいいのではないかと思ってきてみたんですけどやっぱり疲れますね」
「さながら彼氏と学食で食べようって話じゃないのかしら」
「か、彼氏。だからまだ彼氏ではありません!!」
「まだ、なのね」
「ち、ちがいますよ。こんな人を彼氏にするぐらいだったら一生独身のほうがましです!」
「本人を目の前にしてそこまで言いますか」
「一ノ瀬さんも否定してくださいよ!」
「いや、自分は別に構いませんよ」
「///なっ///」
「嘘です」
「もう知りません!」
氷川さんは怒ってしまったのか黙々と食べ始めた。
「すみません氷川さん。だから機嫌を直してくださいよ」
「フン!」
こうなった氷川さんはもう時間が経つまで機嫌が治らない。そのまま自分も食べ始めた。
「あれ、氷川さん人参ばっか避けてどうしたんですか?」
「別になんでもないわよ」
「もしかして人参嫌いとか」
「人参くらい食べれます!」
そのまま氷川さんの皿から人参と取り上げる。
「ほら、なら食べさせてあげますよ。あーん」
「な、何をしているの一ノ瀬さん!?」
「人参くらい食べられるんでしょう。なら食べさせてあげようと思って」
「一人で食べれます!」
「いいから遠慮しないで。あーん」
「くっ、覚えておきなさい」
氷川さんは涙目になりながら人参を口に入れた。
「どうですか?」
「お、おいしいわ」
「そうですかまだたくさんあるので遠慮しなくてもいいですよ」
「い、いや」
このときの自分はいつもの昼食と違い少しテンションが上っていた。まさかあんなことになるなんて思いもしなかった。
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「じゃあ、一旦休憩ね。各自水分補給をしっかりとすること」
「「「「はーい」」」」
やっと休憩だよ。スマホを開いてSNSを開く。丸山彩、と調べるが特にさっきと同じで変化がなかった。
(それにしても昼休みはすごかったな)
紗夜ちゃんがあんなにうろたえているところ初めてみたかも。
スマホのアルバムを開いてみる。
(これとか完璧だよね)
それは幸村が紗夜に無理やり人参と食べさせている写真だった。
「あ〜やちゃん何してるの?」
「ひゃう」
「あはは、ひゃう、だって変なの~」
「もう日菜ちゃんびっくりさせないでよ!」
「ごめんごめんそれで何見てたの?」
「な、なんでもないよー」
「ふーんそう」
危ない危ないこんなの日菜ちゃんに見られたらと思うとゾッとする。
「えい」
「あ、まって日菜ちゃん」
「・・・・・」
「日菜ちゃん。ど、どうしたのかな?」
「彩ちゃんなにこれ?」
「ひい」
「答えて彩ちゃん」
「えっと、それは」
「これお姉ちゃんと誰?」
「えっと」
「えっと、じゃなくて教えてよ!」
「・・れ」
「何?」
「紗夜ちゃんの彼氏じゃないのかなぁ」
「嘘でしょ」
「私も詳しいことわからないから」
「本当に?」
「本当だよ」
「ふーんなら自分で確かめてみるしかないね」
「えっと日菜ちゃん?」
「はい!彩ちゃんありがとう」
「えっとどういたしまして?」
久しぶりにるんってこないなぁ。
お姉ちゃん待っててね。
丸山ァ!!
あとロリ那可愛かった。(語彙力消失)
誤字報告、感想、評価ありがとうございます!