四十二歳の異世界冒険記   作:ショウキン

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第二十八話「全力の仇討ち」

「ショウさん、待ってよ」

 

「あ? ちょっと離れて歩いたからってびびりすぎだぞ。しゃきっとしろ」

 

「あ、うん。えーっと、何か食べれそうなものは」

 

 ドリゴドール、ツロロとの戦いから六日後、ボクはショウさんと共に森で食糧捜しをしていた。

 

 しかし、どうも落ち着いて集中できない。

 

 とにかく、頭の中はチィトの事でいっぱいだったのだ。

 

 あの常識外れの強さと殺気、そして自身の能力である石化により絶命していたドリゴドールの謎。

 

 考えれば考えるほど、恐怖と絶望が強くなっていった。

 

「あ、あああ、うう」

 

「おい、大丈夫かよ。顔が真っ青だぜ」

 

「あ? ああああ、そこにチィトが!」

 

「ありゃ、ただのでかい岩だ。何寝ぼけてんだ」

 

「ああああ、あっちにもチィトが!」

 

「ありゃ、銃を構えた男じゃねぇか。ん? 銃を構えた男?」

 

 ショウさんはいきなり身構えると、ナイフを奥の木に向かって投げた。

 

 それと同時に数発の銃弾がボクの足元に命中した。

 

「うわ!」

 

「これは麻酔弾のようだな。敵は......逃げたみたいだな」

 

「敵? でも、殺気のようなものはまるで感じなかったけど」

 

「俺もだよ。つーか、ありゃデビレンじゃなくて人間だったしな」

 

 ショウさんはしばらく何かを考えるようにうつむいた後、口を開いた。

 

 実はここ数日の間、誰かから見られているような感じが何度かしていたという。

 

【挿絵表示】

 

 そういえば、三日前にもスズとマジェリーの荷物が荒らされ、たまたま近くにいたボクが疑われたばかり。

 

 もしも、それらすべてが同一人物の犯行だとしたら、ボクたちを狙っている人間がいるという事になる。

 

 と思っていたら、さっそく人影のようなものがこちらを気にした様子で身を隠していくのが見えた。

 

 ここは今のうちにはっきりさせておいた方がよさそうだ。

 

 途中までは様子見のために泳がせていたが、森の出口に着いたところでショウさんが一気に後退し、逃げようとしていた白髪男を捕まえた。

 

「斬新だな。男にストーカーされるとはな。何者だ、お前」

 

「くっ!」

 

 逃げられないと判断したのか、白髪男はショウさんにつかみかかってきた。

 

 なかなかの力持ちのようで動きもよかったが、ショウさんの方が一枚上手であり、つかみかかった腕をひねられて押さえこまれてしまった。

 

「ぐぅ」

 

「とりあえず、なんでこんな事したか事情を話してみろよ。悪いようにはしねぇから」

 

「こうなった以上はしかたないか。私の名前はタクマ。どうか私のたのみをきいてください」

 

 タクマは抵抗をやめて、話し始めた。

 

 それによると、彼はイジャユというレベルフォーのデビレンを倒そうと追い続けていて、そのためにボクたちの持つミミッギュを盗み出す機会をうかがっていたらしい。

 

 イジャユは茶色いもじゃもじゃひげとオネエ言葉が特徴のデビレンで、ゲーム感覚で人間を殺す癖があると聞いたことがあり、タクマもその犠牲者なのだそうだ。

 

 十年前、婚約者と一緒に夜道を歩いていたところを襲撃され、激しく抵抗するも力及ばず昏倒。

 

 一命をとりとめたものの、彼女は亡くなり、そこからが彼の地獄の始まりだったという。

 

 彼女の唯一の肉親だった母親は傷心のタクマを「何でちゃんと助けてくれなかったの?」、「一人だけ生き残りやがって」と執拗に責め、「手なんか合わせにくるヒマがあったら、犯人を捕まえてこい!」と激しく攻撃。

 

 タクマ自身も彼女を守れなかった事を大変後悔していた事もあり、本来ならば犯人が背負うべきである自責の念を背負う事となってしまったのだ。

 

「その後、私は仕事をやめ、彼女との結婚のために貯めていた資金を使い、犯人を追う事を決めた。そして、やっと奴が拠点としている場所を見つけた。足りないのはミミッギュだけ」

 

「キミ、もしかして自分でそのイジャユと戦うつもりなのかい?」

 

「ああ、そのためにこの十年めいっぱい鍛えてきたんだ。たのむ、ミミッギュを私に分けてくれ!」

 

「ダメだ、危険すぎる。さっきの戦いを見る限り、なかなかの戦闘能力を持っているみたいだが、俺らプロでさえ、レベルフォーみたいな怪物にはチームを組んで戦ってんだぞ。分かってくれ、一般人を死なすわけにはいかないんだ」

 

「協力してくれないなら、もういい。別の者にたのむまでだ」

 

「待てよ、情報を持ってんなら、協力するのが一般人の義務だ。被害が広がってもいいのか!」

 

 ショウさんはタクマを行かせまいと押し戻すが、必死に抵抗されて殴り合いになってしまった。

 

 ほぼ一方的にショウさんが押していたが、タクマはなんとか耐え抜いた末、隠し持っていたナイフ自分の首に押し当てた。

 

「言うとおりにしてくれないなら死ぬぞ。いいのか? 一般人を死なすわけにはいかないんじゃなかったのか?」

 

「はやまんなよ。そんな事したら、親が悲しむぞ」

 

「親父やおふくろとはすでに絶縁してきたよ。死んだ女のためなんかに人生棒にふるななんて言うから」

 

「なるほどね。もうそんな事までしてきたのか。しかたねぇな」

 

 ショウさんはしかたなく、情報をもらうかわりとしてミミッギュを渡す約束をした。

 

 その情報とは、イジャユは人の寄り付かない山中の古倉庫を拠点としているという事、物の材質を変換させるエンジュウという魔性具を持っているといった魅力的な情報ばかり。

 

 だが、それをすべて聞き出すと、ショウさんはタクマの腹を殴った後で近くの柱に縛りつけてしまった。

 

「すまんな。こんなマネはしたくなかったんだが」

 

「今はしかたないさ。急ごう、ショウさん」

 

 ボクたちは戦闘準備を整え、イジャユの元に急いだ。

 

 ところがしばらくすると、タクマは柱を引っこ抜き、縛られたまま爆走してボクたちを突き飛ばしていった。

 

「待っていろ、イジャユ! 今日こそ彼女の無念をはらす」

 

「しつけぇぞ、コラ。あんたを巻き込むわけにはいかないんだ!」

 

「ふざけるな! 私は誰かにやってほしくて情報を集めたわけじゃないんだ!」

 

「ったくよ、いっそ一軒家にでも縛りつけとけばよかった」

 

「何に縛りつけたって私は追ってくるぞ! だいたいキミは仕事だから、敵を倒して名をあげたいからやっているだけだ! そうだろ!」

 

「バカにすんな! 俺だって悪党を憎む心くらいある。平気で人を殺すようなクズが何の償いもせずに生きてるのは被害者遺族だけの問題じゃなくて社会全体の問題だ。俺だって頭にきてるんだよ!」

 

「それが分かっているなら、ボクの気持ちもわかるだろ! キミはもし恋人を殺されたら、黙っていられるか! 何もせずにいられるか!」

 

 それを聞くなり、ショウさんは止まってしまった。

 

 そして何を思ったのか、タクマの鎖を解くと、ミミッギュを手渡した。

 

「これを奴の顔にある魔化粧っていう赤い部分にうてば、奴はデビレンの力を失う。貴重なもんだから、俺が指示するまでは使うなよ」

 

「ショウさん、一般人を戦いに巻き込んでいいの? 一番の御法度だよ」

 

「今回だけは特例だ。なにかあれば、責任は俺がとる」

 

 そう言うと、ショウさんは先行してイジャユたちのいる古倉庫の前へと進んだ。

 

 できれば奇襲をかけたかったが、すでに情報が行きわたっていたようであり、イジャユと雑兵たちが待ち構えていた。

 

「うふふ、まさかここを突き止めるとはね。あんたたち、ドリゴドールのバカを追い詰めたっていう奴らでしょ?」

 

「バカ? 仲間だった者に対してずいぶんな言い方だね。チィトに無残に殺された彼を憐れむ心はないのかい?」

 

「あんな裏切者、死んで当然だったのよ。フフ、皮肉な事に私たちの結束は奴の裏切りによって強いものになったのよ。少しでも反逆心を抱いてた奴らの心は完全に折られたでしょうからね」

 

「チィトに対する恐怖心からか。いかにも悪の組織らしいこったな」

 

「さーてと、私もしっかり仕事しないとね。消されちゃうのはごめんだしね」

 

 イジャユはすでに手裏剣型の魔性具エンジュウを持ち、戦闘態勢をとっていた。

 

 数秒間にらみ合いが続いた後、イジャユの合図と共に戦闘の火ぶたが切られた。

 

 まず、タクマが雑兵たちを一気に蹴散らし、真っ先にイジャユに飛びかかった。

 

 情報ではエンジュウの材質を変える能力は生物に対しては、効果がなかったはず。

 

 故にタクマは武器さえ持たなければこわくないと思っていたようだが、靴にエンジュウを当てられ、重い鉄のような材質に変えられてしまった。

 

「ぐ、ぐぐ」

 

「厄介な能力だな、おい」

 

 続いてショウさんもイジャユの背後から攻撃しようとするが、すでにこの周辺の地面の半分以上はエンジュウの能力で水のような液体状に変えられていたようで、思いとどまった。

 

 むやみに足を突っ込んだりすれば、そこをさらにコンクリートのような材質に変えられ、完全に固められることも十分考えられるのだ。

 

 この能力の厄介なところは、見た目は元のままであり、実際に触れてみるまではどんな材質に変えられたか判断しづらいところだ。

 

 さっきのように足をつけようとしたところが思いもよらぬ材質に変えられていて、足元をとられそうになったなんてことも十分起こりうる。

 

「マジであぶねぇな。おそらく奴はいずれここに敵が来る事を見越して、自分が有利に戦うためのフィールドを用意してたんだろうな。気ぃつけろ、おっさん」

 

「う、うん。あ! 助けて、ぶぶぶ」

 

「言ったそばから何足とられてんだ! 気ぃつけろって言ったろ!」

 

 こんな事をしているスキにイジャユは魔性の火を飛ばしてきた。

 

 さすがにこんな状況では大きく動く事もできず、ショウさんはナイフでガードするしかなかった。

 

 だが、イジャユは魔性の火を飛ばしつつ、急接近してエンジュウを振り回し始めた。

 

 ショウさんはナイフをふにゃふにゃした物質に変えられ、ボクはやっと這い上がった直後に上着を固いコンクリートのようなものに変えられ、再び液体化した地面に落とされてしまった。

 

「あぶぶぶぶぶ」

 

「おっさん!」

 

「ぶぶ」

 

 ボクはもがきながら上着を脱ごうとするも、コンクリート化しているため、頭や腕を通すことができない。

 

 必死にもがいていると、腹周りの液をを岩のようなものに変えられ、身動きが取れなくなってしまった。

 

 一方のショウさんは、ふにゃふにゃになったナイフを置き、上半身裸になってイジャユに再び向かっていった。

 

「はぁ、はぁ」

 

「なるほど、材質変換のリスクを少しでも減らすためね。だが、本当に勝つ気があるのなら、全裸で向ってくるくらいじゃないとね。ククク」

 

「何笑ってやがんだ、愉快犯が。そうやって何人の人を不幸にしてきたんだ」

 

「フフ」

 

 このときイジャユは、唯一エンジュウの能力が効くショウさんのズボンを狙ってくるものと思われた。

 

 だが、それに反して、ショウさんの頭や首など致命傷となりうるような場所ばかりを攻撃していった。

 

 人体にエンジュウの材質変換の能力は効かないが、普通に武器として攻撃してダメージを与える事は可能だからだろう。

 

「このぉ」

 

「フフ、いいね、その苦悶の表情」

 

「くそ、うかつによけようとして動けば液体化した地面に落ちてしまうし、どうすれば」

 

 しばらくこの攻防は続き、何度もエンジュウの攻撃をガードしたせいでショウさんの体は傷だらけになった。

 

 しかし、イジャユはそんな必死のガードをあざわらうかのように今度はショウさんのズボン部分に狙いを変えた。

 

 完全に上の方ばかり狙っていると思わせたところで、無防備になった下の方を叩くというのがイジャユの作戦だったのだろう。

 

「ほーら、今度は上ががら空きになってるわよ」

 

「くそ、上にも下にも周りにも注意を向けないと、ダメだ、集中できん」

 

「フン、好奇心交じりで格上の相手に向かっていくクソッタレなハエや蚊と同じね。弱さを自覚できずにでしゃばった事をしたせいで殺されることになるのよ」

 

「イジャユ!」

 

 突然、液体化した地面からタクマが飛び出し、イジャユにつかみかかった。

 

 タクマはおそらく開戦後に攻撃を受けた後に靴を脱ぎ捨て、液体化した地面にもぐって奇襲をかける機会をうかがっていたのだろう。

 

「まったく、無駄あがきを」

 

「きっさまぁ!」

 

「何をそんなにムキになっているのよ。あたしがそんなに憎いの?」

 

「当たり前だ、覚えてないとは言わせないぞ! お前に目の前で恋人を殺されたんだからな!」

 

「え? 誰だっけ?」

 

「ふ、ふざけるなぁ!」

 

 タクマは懐から鉱石のようなもので覆われた短剣を取り出し、イジャユめがけて攻撃した。

 

 このスキにショウさんは背後から攻撃をしかけようとしたが、突然エンジュウが飛んできて、両腕を切り裂かれた。

 

「くそ、こいつも魔性具を遠隔操作できるのか」

 

「しばらくそいつと遊んでなさい。この白髪を始末した後でゆっくり相手をしてやるわ」

 

 タクマが相手ならエンジュウを使うまでもないだろうと、イジャユは考えていたようだ。

 

 だが、タクマのいきおいはすさまじく、魔性の火などにもひるむことなく突っ込んできた。

 

 エンジュウを持っていない状態であっても、戦闘能力自体はイジャユの方が圧倒的に上のはず。

 

 それなのにタクマ相手に防戦一方となり、やがて反撃もできなくなった。

 

「ぐ、ぐ」

 

「聞かせろ! お前はどういう理由で殺人を繰り返してきたんだ!」

 

「このバーカ、そんなの決まってんでしょ。人を殺すのが楽しいからよ。泣きじゃくるバカを殺すのはよだれがでるくらい快感なのよ!」

 

 この一言はタクマの怒りを底上げする事となってしまい、さらなる猛攻がはじまった。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

「くそ、こんなはずはない。こんな奴ごときに押されるはずは」

 

「もう彼女の仇討ちだけじゃない。今生きているみんなのためにお前を倒す」

 

「くぅ、しかたないわね」

 

 ショウさんのときとは逆に今度はイジャユがタクマの短剣を素手でガードする事になった。

 

 しかし、タクマの短剣はとても固いようで、少し刃先に触れただけでざっくり切られてしまう。

 

 そのため、傷が再生される前に次々と新たな深い傷ができてしまい、ついにイジャユはひざをついた。

 

「さ、さすがに素手では。エンジュウ、戻れ、戻りなさい!」

 

「残念だが、もうあの武器は使えないぜ」

 

「ショウくん!」

 

「ついさっき、おもりをつけて液体化した地面に沈めてやった。大した暴れぶりだったが、俺の敵じゃねぇな」

 

「う、ううう」

 

「一つお前に教えといてやる。武器ってのは持ち主と一緒に戦ってこそ本領を発揮できるんだぜ」

 

「こ、こんなはずじゃあ」

 

 自分の能力を逆に利用されたイジャユは呆然となってしまい、大きなスキを作ってしまった。

 

 タクマはそれを逃さず、短剣をイジャユの背中に突き刺してグリグリと回した。

 

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」

 

「ありがとう、ショウくん。キミがくれたチャンスを無駄にはしない。さぁ、殺された彼女の苦しみが少しはわかったか! たんと苦しめ!」

 

「が、ああああ!」

 

 結局、イジャユは拷問に近い形でショウさんとタクマの攻撃を受け続ける事になった。

 

 最終的にはボロぞうきんのようになるも、まだ悪あがきのようにして薄ら笑いを浮かべたため、二人の攻撃はよけいエスカレートして最後はタクマに顔面を踏みつけられた。

 

「が、あ」

 

「ま、これくらいでいいだろ。さぁ、再生を終える前にミミッギュでトドメを」

 

「や、やめ、うう」

 

 イジャユはタクマにミミッギュをうたれ、人間の姿へと戻った。

 

 しかし、それでもなお薄ら笑いをやめず、まるで反省の態度を見せなかった。

 

「フフ、おめでとさん。よかったわね、不運なバカ女の仇討ちができて」

 

 この一言が引き金となり、タクマはまたイジャユを殴り始めてしまった。

 

 悪辣なイジャユは殴られながらも舌を出したりしてふざけ、もはや救いようがなかった。

 

「へへへ、あっかんべー」

 

「バカが、よけいな事を言うからだ」

 

「ショウさん、止めなくていいの? さすがに殺しちゃまずいんじや」

 

「責任は俺がとるって言ったろ、黙って見てろ。死んだ恋人をあんなふうに言われて何もするなって方が無理な話だ」

 

「はぁ、はぁ」

 

 タクマは手の皮がむけてもなお殴るのをやめなかったが、イジャユが気を失うと拳を止めた。

 

 その後は少し躊躇した様子を見せるも、結局は追い打ちを加えなかった。

 

「すまない。もう大丈夫だ」

 

「いいのか? やり足りなければ別にいいんだぞ」

 

「いや、これ以上やったら理由はどうあれ、私はこいつと同じクズになってしまう。あとは法律が裁いてくれるさ」

 

「そうだよ。こんな奴のためにキミが手を汚すことはない。どのみち極刑は免れないだろうし」

 

「さて、後始末といくか」

 

 ショウさんはイジャユを息があった部下たち共々拘束した。

 

 タクマはこの後、傷の手当てもそっちのけで亡くなった恋人の母親のところへ向かい、イジャユを捕まえた事を報告した。

 

 それを聞いた母親は床に手をついて号泣し、タクマに対して感謝とともに今まで辛くあたってきた事を謝罪した。

 

 おそらくは、彼を本気で憎んでいたわけではなく、本来ならばイジャユにぶつけるはずの怒りを仕方なくぶつけていたにすぎなかったようだ。

 

 遺族との確執は消え、ようやくタクマはイジャユの呪縛から解放されたのだった。

 

「終わったな。ありがとう、ショウくん、ニシくん。キミたちの協力がなければ奴には勝てなかっただろう」

 

「ああ。だがな、恋人の元に行こうなんてバカな真似はするんじゃねぇぞ」

 

「ぐ!」

 

「俺もな、あんたと同じなんだ。昔、今と同じように一緒に旅する四人の仲間がいて、その中の一人が俺の恋人だった。彼女は身勝手な人間に襲われ、いつ起きるか分からない眠りについた」

 

「ショウさん、それってブガイと戦った時に話してたあの?」

 

「ああ。もう彼女は目を覚ますことはないと言われたが、俺は生きる希望を捨てなかった。今でも平和を愛した優しい彼女の意思を尊重して戦い続けている」

 

「ショウさん、やっと分かったよ。私を理解してくれた理由も一緒に戦ってくれた理由も。うう」

 

「約束だぞ。あんたは絶対に死んじゃいかん。辛いかもしれねぇが、意地でも生きていくんだ。恋人もそれを望んでいるはずだろ?」

 

「う、うう」

 

 タクマはショウさんに強く背中を押され、涙を拭いながら去っていった。

 

 目的を達成したとはいえ、その後ろ姿はやはり寂しく暗く見えた。

 

 しかし、ボクには戦いの手助けはできても、死んだ人を生き返らせることはできない。

 

 今は、ただタクマが間違った道へと進まない事を祈るしかできなかった。

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