マイナー太陽神ヘリオス、人になる   作:歌詠

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8話 魚座の会遇

 

 

 

 

 天高く輝く光球は、木の葉に防がれ、その威光を地表まで届けられずにいた。

 僅かに零れる陽光と、若葉達が生み出す影、そして血色に咲き乱れる、赤薔薇の世界。 

 

 静寂に包まれる、極彩色の空間で、俺は、小さく息を呑んだ。

 

 男の放った言葉が頭の中を駆け巡り、形を成していく。

 

 魚座の、アルバフィカ。

 死者の蘇生、生ける屍(リビングデッド)

 ロドス島における異変、毒薔薇の元凶。

 そして──この島の主神を意味する、神の名前。

 

「・・・太陽神、ヘリオス、だと」

 

 低く呟き、『虚言など、直ぐにばれるぞ』と、男の目を見遣る。

 しかし、そこにあったのは悪意では無く、透き通った、空の瞳だった。

 

 俺を騙そうという気概は一切感じられない、愚直なほどに、真っ直ぐな眼差し。

 

 俺は、この眼光を識っている。

 何度も見てきた、これは、嘘を云う者には到底浮かべられない──真実の光だ。

 この人間の言葉は信じて良い、そう断言できる。

 だとすれば。

 自らを太陽神ヘリオスと名乗る、不届き者がいるのだと考えるのが妥当か。

 

「──ふ、ふふ・・・あはははは!! そうか、そうきたか!」

 

「・・・っ!?」

 

 途端、笑いがせり上がってきた。

 よじれる腹を抱え、肩を大きく震わせながら声を荒げる。

 唖然とした視線を向ける者の前で、俺は自らの口から流れる言葉を、せき止められずにいた。

 

「手段としては最悪だが・・・この島においては悪くは無い戦略だ。なにせ、ここは俺を崇めてくれた民達の想いが積層した土地だからな。その名を使えば、多少の力は得られるだろうよ・・・──卑賤な輩め、父上達から賜った大切な名を汚すとは、恥を知れ」

 

 静かな怒声と共に、虚空を睨み付ける。

 どうやら、俺がこの島に来ることになったのは、単なる偶然ではなかったらしい。

 俺が相手をしなくてはならない何者かが、この島のどこかに居る。

 苛立ちを隠す余裕もなく顔を顰めていると、驚いた表情を浮かべる人間と視線がかち合った。

 

「・・・あぁ、そうだ、まだ名乗っていなかったな。俺の名は、ヘリオス。父上と、母様から、太陽を冠する名を与えられた者だ」

 

「──っ!? まさか、お前は・・・あの神の追手だったのか・・・!」

 

「違う。お前のいう神とは面識はない・・・というか、追われてたんだな」

 

 驚愕の表情で硬直した人間に、間髪入れずに言葉を返す。

 完全なる風評被害だ、大神クロノスと時の神クロノス並にややこしいことになりかねない・・・やめろ、探るような目で俺を見るんじゃない。

 溜息を吐き出しながら、宥めるように言葉を発する。

 

「安心しろ、といっただろう。俺が来たからには、もう偽太陽神の好きなようにはさせない」

 

「なに・・・偽、太陽神だと?」

 

「そうだ、お前を蘇生させた者は偽物だ。何せ本物は、こんな異変を起こすような阿呆ではないのだからな」

 

「・・・まるで、本物の太陽神に会ったことがあるような口振りだな」

 

「ははは、鏡越しであれば毎日会っているとも表現ができるな。なにせ、俺がその太陽神ヘリオスその者なのだから」

 

「・・・・・・は・・・?」

 

 笑顔で締め括り、俺は止めていた治療を再開することにした。

 今すぐにでも、太陽(ヘリオス)を名乗る不届き者を成敗しに行きたいが、こういうときは順序が大切だ。

 

「・・・しかし、酷い傷だ。それにこの瘴気、よくこんな質の悪いものを身に受けて正気を保っていられたな。・・・不浄は清められそうだが、今の俺の小宇宙では、傷を塞ぐので精一杯だ。治すと言った矢先にこの体たらく、済まないな」

 

「・・・いや、謝罪は不要だ・・・・・・だが、一つ、いいか」

 

「うん、なんだ?」

 

「私には、お前はただの子供にしか見えないのだが・・・お前は、本当に自らを太陽神だと思っているのか。それとも、私を揶揄して言っているのか?」

 

「はぁ? なんでそんな益の無いことをしなくちゃいけないんだ。確かに、俺を助けてくれた人間は、俺の話を頭を打ってできた妄想だとか、記憶の混濁だとかと言って信じてはくれないが・・・俺は、こんな見た目でもちゃんとした神なんだぞ」

 

 唇を尖らせて、小さく俯く。

 別に、俺自身が、俺の存在を肯定できているから、信じろと強制するつもりはない。

 それに、今の俺は、神の威光も感じられない、虚弱で儚い存在だ。

 信じられないのも、仕方が無いとは思う。

 だがやはり、疑念を抱かれ、存在を否定されるのは・・・けっこう、悲しいんだ。

 

「・・・成る程、お前の事情は、薄らではあるが理解した。しかし、お前が自らを信じているのなら、俯くな。他者の言葉に惑う必要はない、堂々と顔を上げて、前を向け」

 

「・・・あぁ、そうだ、お前の言う通りなんだろうな。・・・それに、今は、弱音を吐いている場合ではなかった」

 

 顔を上げ、人間の身体から吹き出る、得体の知れない瘴気を祓い、傷を癒やしていく。

 小宇宙は、その者の心の在り方に応じて、小さくも、大きくもなる。

 だからこそ、今は気を強く持ち、アルバフィカの傷をいち早く、塞いでやらなければならないのだった。

 浄化と治療に奮闘していると、眼前の人間が、複雑そうに声を出した。

 

「今更ではあるが・・・お前は、私がこの毒薔薇の園の元凶であると聞いて、何故当たり前のように施術を続けているんだ。この島の異変を解決しに来たのではなかったのか」

 

「・・・? だからこそ、逆に続けないと不味いだろ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──っ、何故、それを・・・」

 

「簡単に出せる結論だと思うぞ。お前の話を前提に考えれば、この島に咲いている赤薔薇は、魚座の魔宮薔薇(ロイヤルデモンローズ)なんだろう? 本来ならば、触れた者の命を奪う猛毒の香気であるはずが、島の民達は昏倒するだけで済んでいる。・・・だとすれば、魚座の聖闘士が、小宇宙を操って毒を弱めていると考えるべきだ」

 

 森に拡がる香気に潜む、微かな小宇宙・・・そして、それと同一の、アルバフィカの小宇宙。

 

「・・・気づいていたのか」

 

「あぁ、だけど、お前に近づくまでは気づけなかった事から鑑みるに、香気に混ざる小宇宙は、追手から身を隠す、隠れ(みの)の役割も担っていたらしいな。細かな小宇宙の制御が得意な辺り、流石、魚座といったところか」

 

「・・・・・・聖闘士ではない人の子が、随分と、魚座の聖闘士に詳しいのだな」

 

「そりゃ、毎日のように毒薔薇を食らっていれば嫌でも詳しくなる。・・・アフロディーテも小宇宙を使って魔宮薔薇の毒を一時的に消したりしてたからな、魚座の聖闘士は当たり前のように出来る技なんだろ」

 

「・・・アフロディーテ? 誰だ、その者は」

 

「魚座の黄金聖闘士。さっき言った、この島の異変を解決するために派遣された人の子だ」

 

「! ・・・そうか、私の死した後に、魚座を継いだ者が・・・」

 

 自らの傷口を流れる血に視線を移し、男は美麗な顔を歪めた。

 

「魚座の"誇り"は・・・今の世代にも、継がれているのだろうか」

 

「誇り? "毒の薔薇"のことなら、しっかり次代に継承されているぞ」

 

「・・・・・・毒の薔薇・・・そうか、"赤い絆"は・・・」

 

「赤い絆・・・?」

 

「・・・なんでもない。厳しき修羅の・・・毒の道が断たれたとしても、その者が誇りを持つ戦士であるのなら、私がその在り方を否定するのは筋違いなのだろう」

 

 言って、アルバフィカはどこか哀しそうに微笑んだ。

 ・・・まぁ、一度死に、蘇った人間だ。

 色々と思うところがあるのだろう。

 見守っていると、男は遠くを見るような瞳で、静かに口を開いた。

 

「・・・その、アフロディーテとかいう聖闘士は、どのような者なんだ」

 

「どのような、って・・・」

 

 中々、返答に困る質問だ。

 少し迷った俺は、記憶に刻み込まれた日々を思い返していくことにした。 

 

 道端に倒れた、見ず知らずの俺を救った者。

 十歳の人の子で、自分の容姿が大好きで、容赦が無い乱暴者。

 年相応ではない思想を持ち、毒の薔薇に誇りを持つ、女神の聖闘士。

 

 いくつか候補を並べ連ねて、適切な表現を見つけた俺は、一つ頷き、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「一言で表せば──悪魔か邪神の生まれ変わり、だな」

 

「・・・は、悪魔、邪神?」

 

「まず、すぐ手を上げてくる。前に、鏡に向って自分の容姿を褒め称えているところを目撃してどん引きしてたら毒薔薇を投げられた。というか俺を薔薇あての的と勘違いしている節がある・・・とんでもない人間だ。しかも俺のことを三流神とか自称太陽神とかと言って貶してくる不敬者で・・・──」

 

「・・・それは」

 

「──聖闘士となっても日々の鍛錬は怠らないし、十年しか生きていない癖に、実力は相当だ。周りには興味を抱いていないように振る舞うのに、大切なところは見逃さず、きちんと捉えられている。・・・本当に、質が悪いと感じるのはあの目だな。・・・俺の百分の一も生きていない人の子が、己の誇りを掲げて、そこらの神共よりもギラギラと光った瞳で前を向くんだよ・・・末恐ろしいとはこのことだ」

 

「・・・・・・」

 

 苦笑と共に、言葉を連ねた。

 改めて振り返ると、途轍もない不敬具合に笑うしかないな。

 そして、それを補える程の実力と、要領の良さ。

 もうあと十年も経てば、どれほどの戦士になってしまうのか。

 

「・・・よほど、その者に信頼を寄せているらしいな。素行は気になるが、そのアフロディーテという者は、良き女神の聖闘士になるのだろう」

 

「信頼・・・? いいや、そういう意図で言ったわけじゃないぞ」

 

「ん?」

 

「俺はただ、人一倍この地上の平和を願うくせして俺のことをぞんざいに扱う、最低最悪、悪魔や邪神にも勝る人間がいるという話をだな・・・」

 

「ほう、その人間とはまさか、私のことを言っているのではないだろうな、ヘリオスよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

 俺の後ろから、聞こえてはならない声が聞こえた気がする。

 

 ギギギ、と滑りの悪い首を後ろに回すと、形の良い唇に弧を描いた、美麗な少年が立っていた。

 頬や鎧を赤い血で汚して、綺麗に微笑むその姿は、冥界に連なる神の如く。

 

「間の抜けた君の笑い声が聞こえたから、何事だと思い駆けてみれば・・・前に私の悪評は広められないとか何とか言っていたのはその口か? いいだろう、今すぐ私の黒薔薇で塞いでやる」

 

「まままま待てっ!? 悪評では無く正当な評価を言っただけなんだ、ピラニアンローズは止めてくれ!! ・・・というかその血はどうした、怪我でもしたのか・・・!」

 

「・・・はぁ、余計に質が悪い・・・これはただの返り血だ。・・・──それよりも」

 

 アフロディーテは酷く不機嫌そうな様子で、言葉を区切り、鋭い視線でアルバフィカを捉えた。

 

「貴公が、魚座のアルバフィカという者か・・・まさか、私よりも先にヘリオスが当りを引くとはな」

 

「・・・お前が、魚座のアフロディーテか」

 

 二人の視線が宙でぶつかる。

 等しい守護星座を持つ者同士の会遇。

 同一の瞬間に、同一の聖闘士が二人現れることは、本来では有り得ないことだ。

 だからだろうか、互いに、一言目に迷っているようにも感じられる。

 

「・・・えっと、お前達は初対面のはずだよな? どうしてアフロディーテはアルバフィカのことを知っているんだ?」

 

「・・・先ほど、抗戦をした者達が探していたのだ。・・・アルバフィカという名の、空色の長髪をした、美しい魚座の聖闘士をな。・・・お陰で、特徴の一致した私に雑兵共が殺到することになったが」

 

「な、なるほど・・・それは散々だったな」

 

 他人と間違えられた挙句に襲撃されるというのは、余り気持ちのいいものではなかったらしい。

 疲れた様子で話す少年に向かい、労いの意を込めて言葉を返した。

 

 しかし、自らが美しい者であるということを前提に話す辺り、流石としか言い様がない。

 アルバフィカも『あぁ、そういう性格なのか・・・』みたいな目で見ているし・・・ここは、相互理解に繋がったと前向きに考えておこう。

 若干名が微妙な気持ちに晒されていると、アフロディーテが治療を受ける男に歩み寄って、言葉を放った。

 

「アルバフィカよ、先に言っておくが、私は、雑兵共や貴公の話す言葉全てを信じることはできない。・・・私を襲った者達が口にしていた、この地に降臨したらしい、太陽神へリオスという存在に対しても、懐疑の念を抱いているのが現状だ」

 

 一瞬、少年は俺を見やったが、すぐさま男へと視線を戻した。

 なんだ、アフロディーテも俺の名を騙る者のことを知っていたのか。

 話が早くていいとばかりに眺めていると、アルバフィカが静かに頷いた。

 

「・・・適切な判断だ。そちらのヘリオスを名乗る子は、私の話全てを信じているようだが、敵地にいる者の言葉は、話半ばに聞くくらいでいい」

 

「然り、だ。・・・しかし、今の私達には、元凶に関する情報が著しく不足している。故に、()()()()()()()()()よ、貴公が小宇宙で包む、この島で何が起ったのか・・・それを、私達に聞かせてほしい」

 

 対等の相手に、敬意を表するように。

 誠実な態度で、少年は、魚座を名乗る青年に言った。

 直感か、現状からそのように振る舞うにたる相手だと判断したのか。

 自らの後継に当たる聖闘士の言葉を受けて、アルバフィカは、真剣な表情で口を開いた。

 

「分かった・・・寧ろ、私から聞いて貰おうと思っていたくらいだ」

 

 強い意志を内包した瞳で、男は語り始めた。

 

「・・・冥王との聖戦の最中で命を落とした私は、冥界の淵で同胞達と共に、輪廻の時を待って、眠っていた。・・・しかし、突如として私の魂は翠色の極光に包まれ──気が付けば、この地に屹立していた」

 

「翠色の、光・・・」

 

 囁くように呟き、記憶を廻るが、死者を蘇生する際にそのような色の小宇宙を放つ神には、心当たりが無かった。

 アルバフィカは一瞬、口の端を引き結び、眉間に皺を刻みつけて、言葉を続けた。

 

「自らの意識も朧気で、ただ生き返ったのだという漠然とした思考しか存在しない中、私の身体はあろうことか・・・魔宮薔薇でこの森を一瞬のうちに覆い、その恐ろしい勢いのまま、今度はこの島全域を毒薔薇の園へと変えようとしたのだ」

 

「・・・一瞬で、だと? 馬鹿な、いくら黄金聖闘士であろうとも、この広大な森を瞬時に魔宮薔薇で埋めるなど、不可能だ」

 

「あぁ、魚座の聖衣を纏っていたとしても、人の力では到底叶わぬ現象だ・・・だが、そのときの私は、神の力をこの身に受けていた」

 

「っ・・・それが、太陽神・・・ヘリオスか」

 

 眉を顰めるアフロディーテに、「そうだ」と肯定し、男は忌々しげに言葉を連ねる。

 

「私を蘇らせた神の威光は、正しく、太陽の名に恥じぬ鮮烈さだった・・・森を毒薔薇で覆った私に、その神はこう宣った。『我が名は太陽神・・・ヘリオス。女神の聖闘士だった者よ、この瞬間よりお前はコロナの聖闘士となり、私の意に従う戦士となった・・・私の力が回復するまで、我が身を守る盾となれ』・・・と」

 

「・・・・・・」

 

 それは、つまり・・・力を失っている状態であっても、その神はアルバフィカを蘇らせる程の力を有していたことになる。

 俺の名を騙るくらいだから弱い輩だと決めつけていたが、考えを改める必要がありそうだ。

 

「身を守れと命じながら、その神はこの島の民を、私の毒によって殺めようとしていた。・・・故に私は、抗った。自らの身を覆おうとする、神の小宇宙をこの身体ごと引き裂いて、なんとか支配の軛から逃れることに成功したのだ。追手として蘇った兵達も、黄金に届く程の実力者は居なかったからな。辛うじて、命を繋ぐことが出来た」

 

「・・・そして、今に至るか。・・・そうか、貴公はこの数日間、一人で戦い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「フッ・・・私もまさか、次代の魚座に出会えるとは思わなかったのだがな」

 

 穏やかに笑って、アルバフィカはゆっくりと立ち上がった。

 

「まだ完全には治っていないが・・・良いのか?」

 

「あぁ、これでも大分良くなった方だ、感謝する。・・・あの太陽神の凍てつくような瘴気を、君の温かい小宇宙は浄化してくれた・・・これで、私も、戦うことが出来る」

 

 力強く拳を握った男は、決意に満ちた眼差しで、空を、太陽を仰ぎ見た。

 

「──案内しよう。一刻も早く、人の平和を脅かすあの太陽を、穿たなければならない」

 

「・・・あぁ、急ぐとしよう」

 

 毅然とした態度で、アルバフィカは毒薔薇の中を進み始めた。

 

 ・・・理解は、しているのだろう。

 自らを蘇らせた神を倒せば、再び、命を失うということぐらいは。

 それでも、自らの命を燃やし尽くすことになっても、この人間は民の平和のために、戦う道を選んだ。

 

「・・・人は、凄いな」

 

 命を懸ける姿勢を、手放しで賞賛することはできない。

 だが、自らの命を賭してでも、平和を守ろうとする姿は、気高く、美しい。

 矛盾を抱えた自らの思考に苦笑し、俺は魚座の二人を追って足を踏み出した。

 

「はぁ・・・これから、自らと等しい名を持つ神の元へと赴く者の顔ではないな。君はもう少し、緊張感を持て」

 

「別に良いだろ、偽物退治に必要なのは本物としての矜持と余裕だ。・・・それよりも、お前の方こそらしくない雰囲気だな? 何か心配事でもあるのか」

 

「・・・・・・」

 

 普段よりも元気の感じられない少年に問い掛けるが、沈黙が満ちるばかり。

 まぁ、年齢を考えれば、今回の異変は少々情報過多だったのかもしれない。

 返答のない少年の心情を勝手に結論づけて、片付けようとする。

 

「憂いなど、あるものか」

 

 すると、前方の小さな背中越しに、声が届いた。

 

「・・・ただ、私は、この島で異変を起こしている迷惑な輩に比べれば、君が真の太陽神であった方がましだと・・・そう思っただけだ」

 

 

 

 

 






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