はじまりは唐突に
「……ここは何処だ?」
上杉風太郎が目を覚ました際の第一声である。
それもそのはず。ついさっきまで中野姉妹のお世辞にも広いとは言い難いアパートの一室で家庭教師をしていたのだから。
「こんな前例聞いた事もないぞ…早く王様へ報告せねば!!」
「あ、おい!!」
風太郎の質問を無視して目の前に居た魔術師のコスプレ(実際は本物の魔法使いだがその事実を風太郎は知らない)をした人物はこの怪しげな部屋(石造りのいかにもな感じの一室)から出て行った。
「……本当に何なんだ?」
「う、うーん…」
「…あれ?」
「……フータロー?」
「ふあぁ~っよく寝たー…ってここ何処ですか!?」
「上杉君…これは一体…?」
魔術師のコスプレをした人物が出て行った扉を見ていた風太郎に後ろから5人の声が聞こえた。そう。風太郎が家庭教師をしている問題児こと中野姉妹である。
(ちなみにかなりそっくりな世にも珍しい五つ子である)
「……お前らが1人も欠けずに居るということは、あの部屋に居た全員が飛ばされたって事か。……面倒な事になったなこれは」
「それよりこの状況でよく冷静でいられますね…」
そう風太郎に声を掛けたのはアホ毛と星のヘアピンが特徴の中野家末っ子こと中野五月。
「……どっかの誰かさん達のおかげで想定外の事には慣れた、って感じだがな。…だがまぁ、流石にこの状況には驚いている」
「そんな風には見えないんですけど…」
風太郎の返答に対して苦笑気味に答えたのは緑色のリボンをウサギの耳のように付けている中野家の四女、中野四葉。
「もしかしてフータローは今どんな状況かわかるの?」
風太郎の方を見ながらそう質問するのは首にかけたヘッドホンと前髪で片目を隠しているのが特徴の三女、中野三玖。
「まぁ、ある程度は理解したが納得してはいないってところだがな」
「それでも理解できる辺りがあんたらしいわ…てか一花はそろそろ起きなさいよ」
風太郎の返事に肩をすくめながらも隣で未だに目を覚まさない長女を起こしているのは大きなリボンでハーフアップツインにした髪形が特徴の中野家次女、中野二乃。
「う~ん…あと5分…」
そして、こんな状況でも目を覚まそうとしないショートカットの髪型に片耳のみのピアスが特徴の中野家の長女、中野一花。
彼女は昨日夜遅くまで女優の仕事(今回は映画の撮影)があって睡眠時間が少なかったこともあり絶賛寝不足なのである。
「……家ならこのまま寝かせておきたいとこだけど」
「こんな所で寝てたら風邪引いちまうしな。…あとこんな所で全裸になられても困る」
「そうね……ほら一花!」
「…も~…うるさいなぁ…てここ何処!?私いつの間にか夢遊病に!?…それとも撮影の途中?あれ!?」
「落ち着け一花。お前が夢遊病な訳でも撮影の途中で寝たわけでもない」
起きてから自分の置かれた状況に混乱気味の一花に風太郎が声を掛ける。
「そうよ。あたしも正直今の状況なんてさっぱりだわ。だからこのおかしな状況を理解したみたいなこと言ってるあいつがむしろおかしいのよ」
「おかしいってなんだよ……まぁいい。それよりもお前ら、想像以上にまずい状況だぞ」
「「「「「えっ?」」」」」
「落ち着いて聞いてくれ。……今、俺達は<異世界>にいる可能性がある」