尚文「……おいそこの兵士。ラフタリアを離せ、今の四葉を止められるのはそいつしか居ない」
四葉の大声に周囲の人間全てが呆然とする中、尚文はラフタリアを捕らえていた兵士へそう告げた。
「は、はい!」
言われるがままに兵士はラフタリアを必要最小限動けるようにしてから解放した。
尚文「ラフタリア!四葉を頼む!!」
ラフタリア「は、はい!」
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城の庭は今、決闘会場と化し、辺りには松明が焚かれ、宴を楽しんでいた者達がみんな勇者の戦いを楽しみにしている。――訳でもなく
一花「…そんな…どうして…」
錬「…避けられない運命、ってやつか」
樹「とは言え一時はどうなるかと思いましたが、まさかあの状態の四葉さんの抑止力になれてるなんて。…あの亜人の女性は一体何者なのでしょう?」
五月「…それについては直接本人に聞いてみないとわかりませんが…ひとつ言えるのは、私達姉妹と上杉君、岩谷さんと同じくらい四葉が大切に想ってる人だと言う事でしょう」
風太郎「いずれにせよ、四葉と二乃が戦闘に参加する事態を避けられたのは良かったが、セコンドとはいえ下に居て大丈夫なのか?」
三玖「それは、始まってみないとわからない。…けど、嫌な予感がする」
不参加の勇者とパートナーの中野姉妹はそれぞれ不安や戸惑いを隠せずに、二階の観客席で様子を見守っている。
元康「…レベルは俺の方が低いかもしれないが、負ける気は無いからな」
尚文「…俺もちょっと負けられない事情があってな。悪いが勝たせて貰う」
「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること。では――」
その合図によって構える両者。
「勝負!」
元康「うおおおおおおおおおおおおお!」
尚文「でりゃあああああああああああ!」
こうして、決闘の火蓋は切って落とされた。
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二乃「……ねぇ四葉、聞いてもいい?」
四葉「なに、どうしたの二乃?」
決闘が始まってすぐに、二乃は四葉に疑問だった事を聞くことにしていたので早速問う。
二乃「あんたは何で1対1の決闘をOKしたのよ?……正直レベルに差はあるけど攻撃力の無いアイツが勝てる様には見えないんだけど」
四葉「あぁ、その点なら大丈夫だよ。……確かに私も頭に血が上っちゃってあんな事言っちゃったけど、冷静に考えたら尚文君がそもそも対人戦で負けるわけ無いんだったの忘れてたんだ」
二乃「負けるわけ無いってあんた、攻撃ができないのにどうやって戦うのよ!?」
四葉のあっけらかんとした言いように思わず二乃の語気を強めてしまった。
だが四葉の台詞が本当であるとすぐに分かった。何故なら――
ガブガブガブ!
元康「いて、いて!」
尚文「オラオラオラ!」
――闘技場と化した城の庭にバルーンが現れ、元康に食いついていたからだ。
…その正体は尚文がマントの下に潜ませていたオレンジバルーンな訳だが。
四葉「ね?大丈夫でしょ?」
二乃「呆れた……まさか、自分を噛ませた魔物で攻撃するなんてね」
四葉「最初に見たときは流石に私もどうかと思ったんだけど…一花から決闘の話を聞いてた尚文君が攻撃手段に困るのは目に見えてたから私も仕方なく、って感じだったんだ」
二乃「ふぅん。……あいつ、思ってたより賢そうね」
四葉「間違いなく私達よりは頭良いよ!大学生だし」
二乃「いや、そういう意味じゃ……っ!?」
四葉「!」
その時、誰にも分からないレベルの風が尚文を襲った。
尚文「ぐあっ……!」
尚文が後ろを振り返ると、観客席からは影になっている入り口にマルティ王女が立っており、尚文たちの方へ向けて手をかざしていたのだった。
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三玖「今の…っ!」
風太郎「あぁ。間違い無いな」
錬「…何が起きたか分かるのか?」
一花「ウイングブロウ。確か風の魔法だったと思うけど…フータロー君」
風太郎「あぁ。一花の言う通り、あれは風魔法の初級にあったウイングブロウだ」
五月「という事は……!!」
樹「えぇ、これは恐らく陰謀でしょう」
観客席から見ていた一行は魔法までは特定できても、その犯人までは見えなかった。
――だが、犯人が見えていた人物は、尚文以外にも2人いた。
そう。セコンドとして戦場に居た四葉と二乃である。
次回は衝撃の展開です。……きっと