城を出た尚文チーム(四葉とラフタリアしかいないが)は、ラフタリアの希望もあり城下にある治療院へと来ていた。
医者「……ふむ、刺されたという部分に特別異常は見られませんね…むしろ、本当に重傷を負っていたのか疑う程だ」
ラフタリア「…そうですか……良かったです…」
四葉「もー、ラフタリアは心配症だなぁ…大丈夫だって言ったのに」
尚文「四葉……お前はもう少し反省しろ」
ポカっ
四葉「あたっ!?」
四葉を心配するラフタリアに対して苦笑する四葉へ、尚文のゲンコツが炸裂した。
それはそうだ。何せ文字通り身体を張って尚文を守り、重傷を負ったのだ。むしろ今の様にピンピンとしてる方がおかしい。
挙句、本人にまるで自覚が無いのである。その為、事前に四葉の学力が壊滅的である事を聞いていた尚文は言い聞かせるのは難しいと悟り、こう結論付けた。
"身体で覚えさせるしかない"
と。
ラフタリア「そうですよ!姉さんはもう少し自分を大事にしてください!!」
四葉「くぅーっ…って、2人とも酷くないですか!?私頑張ったのに怒られるだけとかおかしくないですか!?」
ラフタリア・尚文「むしろお前(姉さん)の感覚がおかしい」
四葉「ううぅ……刺される(物理)より刺される(精神)方が辛い……」
そんな即興コントをしつつも医師へお礼を言って外へ出た一行。
しかし、診療所から少し街中へと歩く道中で尚文はずっと気になっていた事を話し出した。
尚文「…前々から気になってたんだが、お前自分を犠牲にし過ぎてないか?」
四葉「えっ?」
尚文「いや、えっ?、って…お前気づいてないのか?」
四葉「ええと……どういう意味ですか?」
尚文「どういう、って…お前…」
ラフタリア「…ヨツバ姉さん」
四葉「ん?」
ラフタリア「ヨツバ姉さんは、魔導書の勇者…フータロー様の事が好きなのではないですか?」
四葉「っ!!」
ラフタリア「…しかもその事を隠してまでナオフミ様の仲間になった。自分の気持ちを隠してです。……これを自己犠牲と言わずに何というのですか?」
四葉「…………」
尚文「……沈黙、って事はラフタリアの言ってた通りか」
四葉「…言ってた、というのは?」
尚文「さっきラフタリアが言ってただろ?…実はラフタリアから相談はされてたんだが……正直言って俺にはどうしようもない事だし、四葉に決めてもらうしかないんだが、これだけは言える」
ひと息入れてから、尚文は告げた。
尚文「四葉。もし本当に俺の境遇に対して同情して、自分の気持ちを偽ってるんなら、…俺がお前を風太郎のパーティに入れる様にする。それが俺の義務だからな」
四葉「!!……ま、待ってください!」
尚文「だがまぁ、四葉だっていきなりこんな事言われても困るだろうし、……今日1日考える時間をやるから、自分自身と向き合え。いいな?」
四葉「…そんな事、いきなり言われても…私は…」
尚文「……行くぞ、ラフタリア」
ラフタリア「…はい」
告げ終えた尚文は街の外れに向かい、ラフタリアはそれに付いて行った。
----そして、それを呆然と見送った四葉は
四葉「……私に…どうしろって言うんですか…尚文君……」
そう呟くとその場で崩れ落ち俯いた。
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ラフタリア「…良かったのですか?ナオフミ様」
尚文「…さぁな…こればっかりは俺も分からん」
ラフタリア「……私は、ああは言いましたがヨツバ姉さんと離れたくはないです。…ナオフミ様も…」
尚文「…そうだな。俺個人としては四葉との旅は続けたい。…だが」
ラフタリア「…今は姉さんを待ちましょう」
尚文「そうだな…」
ラフタリア「ではナオフミ様、姉さんの決断を待つ間にやれる事をやってしまいましょう」
尚文「あぁ」
ラフタリア「では最初に奴隷商の所へ行って奴隷紋を再取得を…」
尚文「待て待て!確かに奴隷商の所へ行くがあくまでフィロリアルの卵を買いに行くのであってだな…」
ラフタリア「……朝も言いましたが、私はナオフミ様に信用されている証が欲しいのです。だから止めないで下さいナオフミ様」
尚文「……はぁ。わかった、そこまで言うなら止めないがあとで後悔するなよ?」
ラフタリア「ありがとうございます。では行きましょうか」
尚文「はいはい…(全く。この強引さは誰に似たんだか…)」
☆☆☆☆☆
奴隷商「これはこれは勇者様!本日はどの様なご用件でしょうか?」
尚文「今日は魔物の卵を買いに来た。…それと」
ラフタリア「私の奴隷紋を再び刻んで貰いたいのですが…」
奴隷商「ほほー…あの痩せこけて死にかけていた奴隷がこれ程の上玉に!…驚きの変化ですが…」
奴隷商はそう言うと、ガックリと肩を落として
奴隷商「もっと私共のような方かと思っていたのですが期待はずれでしたな」
と言うが、それに対して尚文は少しドスを効かせながら
尚文「お前の知る奴隷とは使い捨てるものなのだろうな。だが生かさず殺さず、それでいて品質を上げるのが真なる奴隷使いだと知れ」
奴隷商「……ふふふ。そうでしたか、私ゾクゾクしてきましたよ」
尚文の回答に満足した奴隷商は早速道具を持って来て対応を始める。
その際、ラフタリアは恥ずかしそうに胸当てを外して胸を露出させ
ラフタリア「あ、あの…どうでしょうか?」
と問いかけるも
尚文「ん?どうしたんだ?」
と返されてラフタリアがため息を吐く、という茶番はあったが無事奴隷紋は復活した。
尚文「さて、後は…」
そう言ってから尚文はテントの隅に卵の入った木箱に視線を移し
尚文「おい奴隷商。アレがフィロリアルの卵か?」
と問いかける。
奴隷商「いえ、銀貨100枚で一回挑戦出来る魔物の卵くじですよ!」
尚文「ん?…そう、なのか…」
奴隷商「確かにフィロリアルも含まれてはおりますが、全てではありませんよ。…まぁ、フィロリアルの卵を御所望でしたら別に用意する事も可能ですが…」
尚文「ふむ……」
尚文は困っていた。
その理由はシンプル。
そう、詳細は四葉しか知らない為どうしていいのか分からないのだ。
…だが
ラフタリア「ナオフミ様。ここは卵クジの方にしましょう」
ラフタリアはそう尚文へと進言した。
尚文「……理由は?」
ラフタリア「前に姉さんが卵クジ楽しみだな〜って言っていたからです」
尚文「はぁ〜…」
意外な事にラフタリアが答えを知っていた事に訝しみ聞いてみたが案の定、本人から聞いた情報だったので頭を抱えため息を吐く尚文。
ラフタリア「ナオフミ様?」
尚文「…なんでもない。奴隷商、1個買わせて貰うが良いか?」
奴隷商「ありがとうございます! 今回は奴隷の儀式代込みでご提供させていただきます」
尚文「随分と太っ腹だな……よし、これにしょう!」
尚文が選んだのはなんとなくの直感で、右側にある一個。
それを取り出し奴隷商へと尋ねた。
尚文「この後はどうしたらいい?」
奴隷商「では、その卵の記されている印に血を落としてくださいませ」
尚文「わかった」
奴隷商の指示通りに血を落とすと、ラフタリアの時に出てきた設定項目が出てきたのでラフタリアの時より厳しめに設定を入れた。(ちなみにこれは一花からの指示だったりする)
尚文「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」
奴隷商「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない勇者様に脱帽です!」
尚文「はぁ……これで用件は済んだ。行くぞラフタリア」
ラフタリア「あ、はい」
奴隷商「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」
こうして、尚文は魔物の卵––既にフィロリアルと分かっていたりする––を手に入れた。
孵化するまで、あと24時間。