背中合わせの二人   作:おとぎの

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#2 力の結晶

「私が来た!」

 

 憧れの存在オールマイトが突然目の前に現れ、何が起きたか分からない。というように立ち尽くす二人。

 筋肉を強調するポーズをとったまま様子を伺うオールマイトを認識し、沈黙を破ったのは桜だった。

 

「か、かかかかっちゃん! お、オールマイトですオールマイト! そ、そうだサイン貰わなきゃ」

 

 いつも微笑みを浮かべ、冷静に物事を俯瞰できる桜にしては珍しい反応だ。

 それもそのはず。二人はオールマイトが出演している番組を何度も見返すのは当たり前。オールマイトがゲスト出演した、「Present MICのぷちゃへんざレディオ」公開収録の当落発表日などは、かなりピリピリしていたものだ。倍率は1500倍で、勿論落ちた。

 

「お、おう」

 爆豪は桜の呼び掛けにそう答えるのがやっとだった。

「かっちゃんしっかりしてください」と桜が声をかけ続ける中で、オールマイトが徐々に煙に包まれ始めていることに二人は気がつかない。

 桜の呼び掛けにやっと反応した爆豪が見たのは、

 

「お、オールマイ……誰だこのクソ骨は!」

「語彙が辛辣だな!」

「なにいってんですかかっちゃん、そこにオール……え? ええ!?」

「私がオールマイトさ」

 

 尋常じゃない量の血を吐き出しながらグッ、と親指を立てる自称オールマイト。

 

「あ、最近はやってるオールマイトの物真似芸人ですか……? 近くで見ると結構似てるものですね」

「本物だからね!」

 

 そういいながら自称オールマイトは自信が着ている服をめくりあげた。

 

「「っ!」」

「急に現れたのだから、疑うのも無理はない……少し昔の話だ」

 

 そこから桜達が聞かされたのは想像を絶する話だった。

 五年前の怪我による呼吸器官半壊、胃袋全摘出。オールマイトに残された活動時間は三時間を切っているとのこと。その話を聞いた二人は思わず言葉を失った。

 

「そんな……」

「急にこんな話をしてすまないね」

「んで、なんでオールマイトが俺達の前に来たんだ?」

 

 冷静さを取り戻した爆豪は、桜も気になっていた疑問を口にする。

 それを聞いたオールマイトは両手を広げ、再び口を開く。

 

「そう、ここからが本題。……私の個性の話だ」

「オールマイトの……」

「個性……」

 

 オールマイトはうむ、と頷く。

 

「そう。私の個性、君達は受け継ぐに値すると感じた」

「オールマイトの個性を……受け継ぐ?」

 

 爆豪は目を細めた。

 

「私の個性は、聖火のごとく受け継がれてきた個性なのだ」

 そして次は君達の番というわけだ。と。

 誰も知らない事実を知り、桜と爆豪は固まる。インタビューではジョークで誤魔化しているオールマイトの秘密。二人が子供の頃はよく個性の予想をしたものだ。

 

「個性を譲渡する個性……それが私の受け継いだ個性! 冠された名は『ワン・フォー・オール』」

 

 一人が力を培い、その力を次に託し。そして出来上がった力の結晶。

 桜はその話を聞き、内心唖然としながら疑問を口にする。

 

「あの……なんで私達なんですか?」

「そうだね……私は、さっきのヴィランとの戦いを見ていたよ。情けないことにね、この体じゃあ何もできない」

 

 桜の疑問に、自嘲するように首を振るオールマイト。

 視線を桜に向ける。

 

「躊躇なく飛び出す君を見ていたよ」

 

 そう言い、今度は爆豪を見る。

 

「飛び出した少女を見た君の目を私は見ていた」

 

 そして一息つき、再び口を開く。

 

「プロヒーローが手を出せない中飛び込んだ君が。それを見て急に力を上げヴィランを吹き飛ばした君が……あの中で誰よりもヒーローだった」

 

 憧れのNo.1ヒーローにそう言われたのだ。表情には出さないが、二人は内心とても嬉しかった。

 

「大体こんなところさ。どうだい……私の個性、受け継いでみる気はあるか少年少女?」

 

 君達はヒーローだと言われたのだ。二人に断る理由など、どこにもない。

 

「はい!」

「たりめーだ!」

「即答か……そう来てくれると思ったぜ!」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 だが……とオールマイトは続ける。

 

「個性を受け継げるのは一人なんだ……君達のどちらかとなってしまう」

 

 申し訳なさそうに言うオールマイトに、爆豪は答える。

 

「んなことは予想ついてる……受け継ぐのは桜だ」

 

 チラリと桜に視線をやる。

 

「え、ええ!? わ、私でいいんですか?」

「いいも何も……桜は自分じゃほとんど何もできなねぇが、ワン・フォー・オールと()()()()だろぉが」

「そうですけど……いいんですか?」

「あ? 何がだよ」

「だって……オールマイトの個性ですよ? かっちゃんも受け継ぎたいですよね?」

 

 構わねぇ。と爆豪は小さく首を振る。

 

「桜は危なっかしいんだよ。さっきのヴィランの時も突っ込んできただろ……」

「で、でも!」

 

 食い下がる桜に爆豪は、はぁ。と大きなため息をついた。

 

「そんなに言うんなら……半分貸せ。出来るだろ?」

「そっか! ……わかりました。そうしましょう」

「ち、ちょっと待ってくれ。話が見えないんだが……ワン・フォー・オールと相性抜群? 貸す? 君達の個性はなんなんだ?」

 

 慌てたように二人の話に割り込むオールマイト。どうやら二人の話についてこれてなかったらしい。

 爆豪の個性はヘドロの時に見ていたが、桜の個性はバリアーのようなものを出したことしか知らないのだ。オールマイトにとっては当たり前かもしれない。

 

「すいません……置いてけぼりにしてしまいましたね」

 

 桜の謝罪の後、爆豪が口を開いた。

 

「俺の個性は見た通り『爆破』だ……桜」

 

 そのまま自分の個性の説明をするよう桜に促す。

 

「私の個性は『御旗(みはた)』です」

「御旗?」

 

 オールマイトが細い首をかしげる。

 それを見た桜は、背負っていたケースから()()()()を取り出した。

 

「これは……飛び出した時に持っていた旗か。改めて見ると大きいな」

 

 取り出した旗は桜より頭二つ分大きいものだった。

 旗の布部分は細長く、後方は二股に分かれており、金色で縁取られ中は金と青の刺繍が施されている。

 柄の先端は槍の様に鋭く尖っていた。

 

「はい。この御旗を地面に突き立てることで、自分以外の他人の身体能力、個性を強化できるんです。それと障壁も張れます」

 

()()()()母の個性『応援』と、同じく父の個性『幸運』の複合型。

 この大きな御旗は桜にとって、両親の形見の様なものだった。

「他人の個性を強化する!? そんな個性が…それで、貸すというのは?」

 

 オールマイトは深く頷き話の根幹を桜に問う。

 

「この個性は御旗の力を他人に貸すものなんですが、個性は体の一部と言われていますよね。事実、この御旗も同じで、私の成長と共に伸長しているんです」

 

 四歳で個性が発現した時の御旗はその時の桜の背の半分くらいしかなかった。

 そして今に至るまでに自身と共に成長したのだ。もちろん他人に貸す力──御旗の内包する力の大きさも一緒に。

 つまり、御旗を桜の一部と捉えるのなら、この個性は()()()()()()()を他人に貸し与えるものということになる。

 桜に内包する力。それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「つまり、私自身の力を他人に貸すというのは、私の個性もまた然り。ということです」

 

 桜が一度切り、爆豪が説明を引き継ぐ。

 

「そう言うことだオールマイト。桜がワン・フォー・オールを引き継いで半分の力を俺に渡してもらう。桜も戦えはするが……あくまで俺が前に出て桜が後方支援。それなら俺らの個性を最大限に生かせる」

「成る程……そんなことができるのか。……分かった。あと、一つだけ約束してくれ」

 

 オールマイトは感心したように頷いた後、人差し指を立て、真剣な表情になる。

 

「なんですか?」

「ワン・フォーオールの貸し借りは……君達の間だけにしてくれ」

「それなら大丈夫です。世間に公表しないような秘密ですもんね。貸しませんし、オールマイトの秘密も誰にもいいません……ですよね、かっちゃん」

「ああ」

 

 それを聞いたオールマイトは安心したように頬を緩めた。……肉はほとんどついていないが。

 

「そうか! なら早速、明日携帯に送る場所に来てくれ! もう遅くなってしまうし、続きはその時にしよう……だから……」

 

 そう言ってオールマイトはポケットからスマホを取り出した。

 

「ID、交換しよ?」

 

 




どうもフィヨルドです(´・ω・`)
個性説明回でした。
補足すると、桜の御旗は力を内包していますが、それ自体に破壊力が加算されているわけではありません。超頑丈ではありますが。それ以外は追々作品内で。
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