市営多古場海浜公園。
海流の流れによりこの海岸は漂着物が多く、それにつけ込んでゴミの不法投棄が多い場所だ。
美しかった海岸線はゴミで埋まり、いつしか市民は誰も寄り付かなくなった。
しかし、そこは誰も寄り付かないが故に個性を使ってもバレにくく、桜と爆豪の特訓場所ともなっていた。
「驚きましたねかっちゃん。まさかオールマイトに指定された場所がいつもの場所だったなんて」
「こんなゴミ溜めで何すんのか知らねぇが、取り敢えず……」
「はい。やりましょうか」
桜がふわりと微笑んだ次の瞬間。
二人は互いに距離をとり、構える。
桜の表情には『女神』と冠された微笑みの面影は既に無く、真剣そのもの。対する爆豪は、それを見てニヤリと口を歪ませた。
現在の時刻は四時半。
オールマイトとの待ち合わせの時間まで、後三十分。
◇◇◇
オールマイトは驚きに目を見開いて二人の組手を見ていた。
二人が組手を始めてから二十五分後、待ち合わせの五分前に海岸に来た彼は、今巨大な冷蔵庫の影に隠れている。
二人の邪魔をしたく無いのと出方を見失っていたのもあり、どうしたものかと頭を悩ませる。
しかし、見れば見るほど二人のそれが洗練された戦闘技術だと分かった。
一見大雑把に見えるが、時折フェイントを挟み込み、見切られてしまう様な同じ攻め方はせず、一挙一動を全て次の攻撃の威力に変えている爆豪。
それを相手取るのは、彼の強烈な攻撃を柳に風というように受け流し、時折隙を見て反撃をする桜。歴戦のオールマイトでさえも『美しい』という言葉が頭をよぎる。
オールマイト二人を見て、思わず表情筋がつり上げた。
彼は一旦距離をとった二人を見て、マッスルフォームに姿を戻し声をかけることにした。
「私が早朝の海岸に来た! おはよう爆豪少年、桜少女!」
「あ、おはようございますオールマイト。ほら、かっちゃんも」
「ああ!? んなもんわざわざしねぇよ。 さっきからゴミの後ろでこそこそしやがって」
「あ? ばれてた? あと、三人だけのときは八木さんで頼むぜ!」
そう言って煙を出し、トゥルーフォームに戻るオールマイト。
「見ていたよ二人とも。凄いじゃないか! おじさん君達がそんなに戦えるなんて思っても無かったよ。これなら心配も要らないな!」
「心配……とは、なんでしょうか」
「ああそれはね、『
「はぁ!? 爆……って、桜は大丈夫なのかよ!」
オールマイトから発せられた衝撃の言葉に爆豪が声を荒げる。
それを見たオールマイトは人差し指を立て、左右に振る。
「本当だったらここのゴミ掃除をして、同時に私の個性を受け取れる身体を作ろうとしていたんだがね……。さっきのを見て、その心配は無いと確信したんだよ」
今度は桜を見て告げる。
「あれほどの動きをできる君なら、もう受け取れる身体は既にできてるってね!」
だから大丈夫! と爆豪に向けて今度は親指を立てるオールマイト。
「そうかよ」
「そう! だから早速、今日渡してしまいたいと思うよ」
「え? 急ですね」
「まあそうだな……君達、来年受験だろう? どこ受けるんだい?」
爆豪と桜は一度顔を見合わせ、
「もちろん雄英です」
「雄英だ」
当たり前だと即答する。
「やっぱりそうか! 君達の実力ならもう心配ないと思うけど……どうせなら早いうちから使えるようになりたいだろう?」
その言葉に爆豪は好戦的な笑みを浮かべる。
「そうだな……どうせなら、俺は一位をとってやる」
もとからそのつもりだったがな。と言う爆豪にオールマイトは豪快に笑う。
「HA-HA-HA-HA!! そうかい爆豪少年。実技試験の歴代最高得点は、私の248Pだ! 楽しみにしてるぜ?」
248P、それがどれ程凄いものかは分からない。
だが桜達と同じ時期のオールマイトとはいえ、相当なポイント数なのは容易に想像がつく。
「桜! お前もだ。俺と勝負しろ!」
「ええ……まあいいですけど……」
「はっ! 没個性の奴等、良個性で胡座かいてる奴等、全員ぶっ殺してやるぜ!」
「冗談だろうが、ぶっ殺しちゃだめだからな? ま、取り敢えず渡しちゃうか」
一旦話を区切り、オールマイトは桜に向かい合った。
「そう言えば、どうやって受け継ぐんですか?」
桜の疑問に、彼は「当然の質問だな!」と答えながら何故か髪の毛を一本抜いた。
「?」
「なに、要は簡単さ。私のDNAを身体に取り込めばいいんだ」
そして抜いた髪の毛を桜に差し出す。
「というわけで……食え」
「え? ええ……」
躊躇う桜にオールマイトは自分の髪の毛を押し付ける。端から見たらガリガリのおじさんが女子中学生に自分の髪の毛を食べろと強要している、なんとも危ない光景だ。
「ふざけんなオールマイト! んな汚ねぇモン桜が食うわけねぇだろ!」
「な!? 失礼だな爆豪少年。髪の毛は毎日洗っていて綺麗だぞ」
「そういうことじゃねぇ!」
◇◇◇
時は過ぎ、二月中旬。
今日は雄英高校ヒーロー科の受験日。
私とかっちゃんは雄英高校の正門前に来ていました。
ワン・フォー・オールを受け取り(ちょっと酸っぱかったです……)、二人で50%ずつ分けることはできたのですが、結局使えるようになったのはかっちゃんが25%、私が20%程度まででした。それ以上は無理して使うと、骨に響いてくるのでまだ使えません。
それと、ワン・フォー・オールをもらってから私達の個性の成長が著しく速くなったのを感じたのですが……どうやらオールマイト自身無個性だったので、知らないらしいです。気のせいでしょうか?
ともかく、結局海岸のごみも綺麗にし、オールマイトから戦い方とワン・フォー・オールの制御方法を教わり、ついにこの時が来たわけです。
「おい桜、落ちたらぶっ殺すからな」
「大丈夫ですよかっちゃん。自分の心配はいいんですか?」
「はっ! 心配? 俺にはそんなもん必要ねぇ」
一見すると慢心。そのように見えてしまうかもしれません。
ですが、ずっと隣にいた私だから分かります。それは慢心なんかではなく、長い鍛練の果てに出来上がった自信だと。
「なら、大丈夫ですね」
「ああ」
私たちは校門を抜け、夢への一歩を踏み出しました。
回りから視線を集めていたようですが、何故でしょうか……?
どうも、フィヨルドです(´・ω・`)
いきなりこんなに評価貰えて嬉しいです。
二人とも強すぎると思いますよね。でも大丈夫、その分A組メンバーに
ではまた近いうちに。
次は五等分の方かもしれないなぁ。