いちばん小さな大魔王! 外伝:が〜るずあふぇくしょん!!   作:コントラポストは全てを解決する

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他人が分からない日菜ちゃんに、掛け替えのない大切な人が出来た世界線のお話。




PartSechs 天才ちゃんの彼氏君

 あたしには、周囲の人間がよく分からなかった。

 普通にしてれば出来る事が出来ないし、何故かは知らないが勝手にあたしを敵視してくる。全然面白くない。

 そんなつまらない人達と過ごしていたあたしは、Pastel*Palettesでギターをやる事になって、彩ちゃんに会ったり、お姉ちゃんと喧嘩したり、彼に出会ったりした。

 お姉ちゃんは憧れで、彩ちゃんは面白くて、彼は……何だろうか、可愛い?かっこいい?可愛い人の方がしっくりくるから可愛い人だ。

 いつもどこかしら髪の毛が跳ねていて、ガサツなのかなと思っていたけど、実は中身が乙女そのもので。炊事洗濯掃除お菓子作りが出来る顔が可愛い男の子。でも身長はそこそこ高い。百七十前半だろうか。

 

 天文部の後輩でもあり、あたしの大好きな人でもあり、あたしの彼氏でもある人。そう彼氏。ハーレム築けそうな程女の子が寄ってくるので、告白してゲットしてしまった。まさか本当に上手く行くとは思わなかったけど。

 ダメ元で告白して、OKを貰って……そのあとお姉ちゃんに報告して、お姉ちゃんが頭を抱えて……後お母さんとお父さんがとても喜んでいた。どうやら、小学校の頃ぼっちだったあたしの貰い先を心配していたらしい。失礼な人達だ。あたしにだって選ぶ権利くらいある。

 何はともあれ、これがあたしの彼氏である神楽竜介。お茶目……ではないけど、色んな意味で可愛いあたしの後輩。ちなみに本人に可愛いと良うと面白いくらいに不機嫌になる。まあ、面倒臭いから二度と言わないと心に誓っているが。

 

「日菜先輩、星座早見盤ありました?」

「あったよー。竜君は三脚持ってきてくれた?」

「バッチリです。ご飯も準備万端ですし」

 

 そんな彼──通称竜君と、今日は学校の屋上で天体観測デートだ。しかも泊まり込み。ただのお泊まり会じゃない、学校の屋上にテントを貼って、狭い空間を共にする天体観測お泊まりデート。目標は竜君をドキドキさせて、ファーストキスまで持っていくこと。

 お恥ずかしい話だが、あたしが恥ずかしくてまだキスの一つも出来ていない。付き合ってもう一ヶ月なのに。

 だから、今日の目標はキス。何がなんでもキス。というか、このために天体観測お泊まりデートを提案したのが本音だ。無駄には出来ない。

 

「よーしそれじゃあ、レッツゴー!」

 

 テントとご飯と三脚と、望遠鏡と星座早見盤やお泊まりセットを持って屋上に向かった。

 道中、学校の階段を上っている所で竜君があたしの手を握って来た。どうやら、これをするためにあたしより荷物を多く持ったらしい。ずっと片手をぷるぷるさせている原因が分かった。

 まあ、一言。そう言うの良くない。そうやってあたしをドキドキさせるのは良くない。顔が熱い。

 

「半月経ったぐらいから思ってたんですけど、日菜先輩って意外と初心ですよね」

「う、うるさいよ!後輩は黙って先輩に付いてくる!」

「はーい」

 

 竜君の優しい微笑みがあたしに刺さる。耳が常夏だった。

 どうして竜君は、いつもいつもあたしを誑かすのだろうか。照れてるあたしがそんな面白いのか。竜君にからかい返しがしたい。でもその願いは叶わない。虚しい。

 

 

 

 

 ____

 

 

 

 

 

 屋上にやって来た。良い星空だ。

 早速テントを張る。ペグは打てないので、適当に選んだ重しにテントを支える紐を巻いて立てる。だいたい四畳ぐらいの、テントにしては広いスペースが完成した。

 ガスコンロと鍋を取り出し、中にチーズを溶かす。今日の夕餉はチーズフォンデュだ。味が濃いから大好き。

 

「おいひー!」

「喜んで貰えて何よりです」

 

 竜君はあたしを見るばかりで一向に食べ始めない。あたしを見てて面白いのだろうか。

 

「竜君、食べないの?」

「まだ大丈夫です。あ、菓子パン開けますね」

 

 やけにニコニコしていて、何がそこまで面白いのかわからなかった。まあでも、マシュマロフォンデュが美味しいからなんでもいいや。

 チーズって良いよね。濃口で何にでも合うから。今度フルーツ突っ込みたい。

 

「あ、いちごありますよ」

 

 竜君があたしの心を読んだ。これが相思相愛。

 

食べる食べる(たふぇるたふぇる)!」

「はいはい。そんな慌てなくてもいちごは逃げませんよ。まずはその口の中の物飲んでください」

 

 竜君に言われ、あたしは口の中のマシュマロを飲んだ。美味しい。

 それから竜君からいちごを貰って、またチーズにぶっ込んだ。美味しいそう。

 

「はい、あーん」

 

 おっと、ピンチ到来。

 竜君が恋人定番儀式のあーんをしてきた。

 あたしの心臓がマッハの勢いで動き出す。

 竜君はさっき、あたしが初心だと言っていた。自分から言っていた。なのにこの仕打ち。絶対面白がってる。覚えていろ神楽竜介。

 

 あたしは、物凄くぎこち無い動作でそれを食した。おかしい、濃口チーズフォンデュの筈なのに味がしない。味覚がエマージェンシー。いや、エマージェンシーなのはあたしの顔か。

 

「あはは。日菜先輩顔真っ赤っかですね」

「う、うるさいなー。竜君のバカ……」

「あ、今のバカってやつもう一回お願いします。可愛かったので録音を」

「も、もお〜バカバカバカ!」

 

 彩ちゃんがからかわれた時みたいな声が出た。彩ちゃんはからかわれた時こんな気持ちなのだろうか。これからは少し控えようか。これは心臓に悪い。

 なんて考えてる間にも、竜君は次のいちごチーズフォンデュを準備してる。あたしはすかさず、竜君の手から串を奪い取った。

 

「何するんすか、日菜先輩」

「お返しだよ!はい、あーん!」

「……もう少し楽しみたかったのに」

 

 今楽しむと言っただろうかこの人は。

 

「あーん……ん、美味しい」

 

 なんの恥じらいもなく竜君は食べてしまった。なんで恥ずかしくないんだろうか。あたしは不思議でならない。

 

「可愛くないなー。もっと反応してよ」

「そう言われましても……」

「あたしじゃドキドキしないのー?」

「うーん……どちらかと言うと、幸せの方が勝ってしまいまして」

 

 何だかその言い方だと、ドキドキしてるあたしはおかしいって言われてるみたいだった。

 

「あたし、やっぱりおかしいのかな?」

「いや、多分これは俺がおかしいんだと思います。本当はもっとドキドキするもんですし」

「やっぱりドキドキしてないんじゃん」

「うーんめんどくさい」

 

 めんどくさいって言われちゃった。

 

「そうですねぇ……なんて言えば良いんでしょうか。俺は日菜先輩といると、幸せしか感じないんです」

「幸せ?」

「はい。ほっこりしたり、微笑ましくなったり、凄く愛おしいって思ったり。すみません、俺が普通の高校生だったら、もっと色んな体験をさせられたんだと思いますが……」

 

 竜君は申し訳なさそうに微笑んだ。ちょっと悲しそうだった。

 そう言えば、竜君って家に家族がいないんだっけ。両親は仕事でずっといなくて、おじいちゃんは死んじゃってて。

 子供の頃からあたしと同じ……いや、あたし以上の一人ぼっちで、毎日寂しく日々を過ごしていた。

 もしかしたら、そんな竜君は愛に飢えているのかもしれない。普通の人が普通に貰う愛を、竜君は貰えなかったから。

 あたしだって、皆から普通じゃないって言われて来た。きっと、竜君も同じなんだと思う。

 

「それで良いと思うよ」

「良いんですかね?」

 

 竜君は、ドキドキ出来ないんじゃなくて、ドキドキの仕方を知らないだけ。

 あたしも竜君と付き合うまでドキドキの仕方なんて知らなかった。でも、竜君が教えてくれた。

 だから、今度はあたしが教えてあげよう。

 

「竜君、目つぶって」

「……?こうですか?」

「そうそう」

 

 やっぱり、竜君はあたしの運命の人だ。

 あたしと同じ、普通が分からない人。

 

 

「……んっ」

 

 

 あたしは竜君にキスをした。正真正銘、あたしのファーストキス。

 

「……日菜先輩」

「うん。どんな感じだった?」

「分かりません……でも、不思議な感じです。今まで以上に日菜先輩が愛おしい」

「じゃあ、きっとそれが竜君のドキドキだね!」

 

 彼にファーストキスを捧げた。

 

 マシュマロとチーズといちごの味だった。

 

 




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もっと僕を笑顔にしてよ!(自然発火)(パイロキネシス)
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