いちばん小さな大魔王! 外伝:が〜るずあふぇくしょん!! 作:コントラポストは全てを解決する
『南の島だー!』
『海だー!』
『素潜りだー!』
『鮭だー!』
赤道周辺の南の島。視界いっぱいに広がるプライベートビーチ。当然ながら周囲に人はいない。
日本での季節で言えば今は冬の一月。今年は寒波が迫っているとか何とかでとても寒く、やってられないという事で冬休みだったのを利用し、こころの自家用ジェットで南の島までやって来た。どこの国にいるんだろ。俺も知らないし、多分こころも知らない。
「こころ、この鮭どうする?」
「そうね……そうだわ!うちで飼えば良いのよ!」
「さすがこころ!」
鮭は黒服に連れて行かれた。
「さ、泳ぎましょ!」
「おう、そうだな!」
お互い水着を服の下に着ていたので、後は脱ぐだけで海に入れる。砂浜の砂があちぃ。
レジャーシートとビーチパラソルを砂浜に突き刺し、俺とこころは海ではしゃぎ倒した。酸素ボンベを持ってスキューバダイビングに洒落こんだり、クルージングで近所の島にお邪魔したり、それはもうふざけ倒した。楽しい。
こんなに楽しい時間を、なんの対価もなしに味わって良いのだろうか。冬に海。真冬に海水浴。こころだからこそ出来る芸当だ。
ハロハピの皆も連れて来ず、俺だけを連れて来たこころ。その真意はわからないが、きっと俺が恋人だからとかだろう。こころもそういうのに拘りがあるのだろうか。皆一緒が良いって言いそうだけども。
まあ、今はこの南国の時間を楽しむとしよう。じゃないと、連れて来てくれたこころに申し訳が立たない。
「それ!竜介に水鉄砲よ!」
「ウワップ……。やったなこの!」
こころから思いっきり水鉄砲の放水を食らったので、お返しに海水をかけ返した。このやり取りが最高に恋人っぽい。俺は満足。こころにもう一回水をかけてやる。それそれ。
「竜介、楽しいわね!」
「おう。最っ高だ!」
俺の髪の毛がぴょんと跳ねた。
暖かいし景色は綺麗だし、文句の付けようがないバカンスだ。こんなハッピーなワールドをくれたこころに感謝カンゲキ雨嵐。でもやっぱり俺一人だけで良かったのだろうか。こころだったらガールズバンドの皆を連れて来ることぐらい出来た筈だ。容易いだろう。
「こんな楽しい世界、二人だけで満喫するのはもったいないな。やっぱり皆と来たかった」
「ふふっ。竜介は優しいはね。でも、あたしの心が分からない竜介にはおしおきよ!えい!」
「ウワッ!」
こころにまた水をかけられた。おしおき、こころの心を理解していないとはどういう事だろうか。俺はこころに関する問題ならなんでも答えられる自信があるほどこころを理解しているのだが。そんな俺でも理解出来ない事があるらしい。
「あたしはわね、竜介と二人きりになりたくてここに来たのよ?」
「俺と二人きり?」
「ええ!」
こころがにかっと笑った。笑っているけどどこか不機嫌そうだ。怒ってらっしゃる。
「竜介ったら、バイトや家の事やらでずっと構ってくれなんだから。詰まらないじゃない。あたし退屈してたのよ?」
「それは……すまなかった」
こころを退屈させてしまった。それはこころの彼氏としてはあるまじき失態。
「悪いこころ。忙しさを理由にこころに合わないなんて、彼氏失格だよな」
「そう思うなら、今日はたくさん楽しみましょう!そのためにあなたを連れて来たんだから!」
こころがまたニカッと笑う。今度はこころの底からの笑みだった。この太陽のような笑顔に俺が惚れたのだ。
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こころとの海水浴をひとしきり楽しんだ後、いつの間にか準備されていたBBQセットと食材達を使って昼食に洒落こんだ。ジュージューと肉の焼ける音に耳を燻られながら、俺とこころは食材達が焼けるのを待つ。
「そういえばお母様がね、あたしの将来を聞いてきたの」
「こころの将来か。大事な話だよな。家を継ぐにしても、独立するにしても、ちゃんと話合うんだぞ」
「あら、何を言ってるの?竜介も一緒に考えるのよ?」
「俺もか?」
「当たり前じゃない。竜介とあたしの将来なんだから」
「わぉ」
将来ってそういう……。なんだ、こころんちよりデカい家を建てたりだとか、挙式は英国の貴族を巻き込んでだとか、子供は一姫二太郎だとか。そんな感じだろうか。
「そうだなぁ……俺は黒服さんかこころの秘書にでもなってこころを支えるよ。そんで、安定してきたらどっかの国で式をあげよう。こころはどうする?世界を笑顔にした後は何するんだ?」
「世界を笑顔にした後……そうね……」
こころはしばしの間思い悩む。そしてその後、閃いたと言った様子で俺の顔を見ながら言った。
「世界の笑顔を守る会社を作るわ!」
「ほほう。そりゃまた大層な」
世界を笑顔にすることは簡単だ。ライブ配信でバンド活動すれば、笑顔なんて簡単に手に入る。でもそれを守るとなると話が大分変わって来る。笑顔を保持し続ける事はそう容易い事ではない。
「世界中の笑顔を守って、あたし達がいなくなっても皆が笑顔でいられる世界を作りたいわ!」
「良い理想だと思うよ。こころならきっと叶えられる」
大層な夢も、それを叶える力もこころは持ってる。だからきっとこの夢を叶える事だって出来るはずだ。俺も全力でサポートしようと思う。
「お、こころ。肉焼けたぞ。食うか?」
「ええ!あーん……」
「あーん…………おう、いい食べっぷりだ」
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『こころとヤる時はゴム忘れないでね。赤ちゃん出来たら法律変わると思った方がいいよ』
旅館で風呂に入って夕食を食べた後、一休みしている時に美咲からそんな連絡がやってきた。
こころと子供を作ったら…………当然ながら俺は今十六。こころと結婚は出来ない。すなわちデキ婚も使えないという事だ。だが、仮にそうなる状況になったら、法律の方が変わってこころと結婚出来るようになると美咲は伝えたかったようだ。さすがの俺でもそこまでしないさ。
「竜介、誰と話してるの?」
「美咲だよ。バカンスは楽しいかだってさ」
『そんな事一言も言ってないんだけ──』
こころの教育上宜しくないため、電話はここで切らせて貰います。
「あたしもそのスマホ?って言うのが欲しいわ!」
「お母さんに頼んでみたらどうだ?すぐ買って貰えるだろ。でも、どうして急に?」
「だって、それがあればいつでも竜介とお話が出来るのでしょう?とっても素敵じゃない!」
「まあ、そうだけど」
確かにこころがスマホを買えば、電話で一晩中お話が出来る。
「まあ、でも、俺と話たくなったら黒服さんに頼めば良いだろ?そうすれば勝手にこころの所に俺が連れて来られる」
「それは……そうだけど……」
こころは時々、寂しさで不安定になって心の拠り所を探す事がある。そんな時に呼ばれるのが、こころの初めての友達である俺という存在だ。
「そろそろ俺なしでも大丈夫になったか?こころから離れる気は無いはないけど、あの状態のこころを見てるとどうも不安でな」
「もう。心配し過ぎよ。最近は竜介がいなくてもへっちゃらなんだから」
「じゃあ試しに、一度別れt──」
「嫌よ」
こころが俺の服の裾をキュッと掴んだ。
「……ハイハイ。こりゃしばらく俺がついていないとな。可愛いお姫様のために」
「竜介は意地悪だわ……」
こころが俺の胸の中に飛び込んでくる。ギューっと俺を抱きしめ、離れようとしない。
こころは独占欲が強い、俺を無理矢理恋人にしてしまうあたり、その威力は計り知れない。今こそこうやって円満に事が進んでいるが、最初は何かと苦労した。ものだ。
まあ、今が幸せだから良いけど。
「こころ、大好きだ。愛してる」
「あたしも──貴方の事が大好きよ。愛してるわ!」
キスをした。甘くて柔らかいキスだ。
いやーこころん回だよこころ回。僕が初めて病ませた女の子。ついに竜介君と幸せになる時が来たよ。
いつかいちばん小さな大魔王が櫻川めぐさんに読まれると良いな。あこちゃんの魅力をたっぷり詰め込んだんだからさ。