ライダーさんの戦闘シーンがすごかったですね。あれほどスピード感のある戦いを槍ニキにやらせてほしかった……。一章の全力疾走だけじゃかわいそうですよ。
しかし、Zero、UBW、HFと冬木を舞台にした作品を10年ほど見てきましたが、これでもう冬木を舞台としたFateのアニメが見れないと思うと、切なさを感じましたね。
冬木教会には、地下室が存在する。
璃正の先代の神父曰く、かつてこの地を所有していた間桐から土地を譲り受けた際に地下設備が残っていたため、教会を建てる際に地下も手を加えたとのことだ。教会も聖杯戦争に備えて、地下設備を活用しようと考えていたのだろうか。
第三次聖杯戦争の直前には既に冬木教会は今日の姿となっていたため、聖杯戦争を機にこの地に赴任した璃正には分からないことではあるが。
そして、その地下室で今、軍議が開かれていた。
「――魔術属性は『風』と『水』の二重属性。降霊術、召喚術、錬金術に通じており、手を出している分野については全て一定以上の成果を残しています。過去の決闘を含め、実戦におけるデータについては今のところ不明です。ですが、時計塔内部では今回の参戦については武勲をあげることで今後のエルメロイ派の躍進に弾みをつけることを目的にしていると分析されています」
未だ学校でも習っていない漢字が躍る報告書を前に、凛の頭脳はショート寸前であった。写真どころか、図も絵もない。ただ大量の文字に埋め尽くされたレポートは、小学生の理解を超えていたのである。
なお、凛は知らないことではあるが、この報告書は聖堂教会のスタッフが突如決まったこの軍議のために三時間という突貫作業で製作したものである。報告書は資料の原文は日本語ですらないため、日本語に翻訳した上で要約されていた。
聖杯から言語に関する知識が与えられるため、本来はサーヴァントには翻訳は不要なのだが、マスターである凛も参加するため、このような配慮がされていたのである。しかし、慌てていたためか、スタッフたちは魔術師の娘でありマスターでもある凛が漢字を読むのに四苦八苦するなどと考える余裕はなかったらしい。
報告書が読めない以上、報告を読み上げながら補足を加える綺礼の声に耳を傾けるしかないのだが、その説明もまた小学生には難解であり、凛は傍目から見てもいっぱいいっぱいであった。幸村も凛がいっぱいいっぱいであることは何となく察していたが、軍議が終わった後でフォローすればいいと割り切っており、この場で彼女を支えるつもりはなかった。おそらく、時臣も同様の考えからこの場では助けをするつもりはないのだろう。璃正も時臣が後でフォローすればいいと考えているものと思われる。
ただ……綺礼については、幸村はなんとなくであるが、敢えて難解な語り口を選んでいるような感触があった。意識してやっているわけではないような気もしていたが、仮に無意識に凛を苦しめようとしているのであれば、よもや英雄王抜きで愉悦に目覚めてしまうのかとも危惧してしまう。
「ロード・エルメロイについては、マケドニアから征服王イスカンダルの聖遺物を手配させているとの情報が入っています。時計塔内に、聖遺物を届けさせた記録が残っていることを聖堂教会も確認しているため、これは間違いないかと。しかし、先日アイルランドでも聖遺物を手配する動きがあったとの情報も入っております」
「ケイネスとやらがイスカンダルの聖遺物を囮にして、別の英霊を本命として手配させている可能性を危惧しておられるのか?」
幸村の問いかけに時臣が答えた。
「ロード・エルメロイがアイルランド方面に手を出したのはここ一ヶ月ほど。彼がマスターになった時期から考えると、聖遺物の手配が随分と遅い。時計塔内部の協力者によれば彼の婚約者の実家である
「あくまで本命はイスカンダルだったが、イスカンダルの聖遺物の手配に失敗したか、あるいはその
「イスカンダルを諦めてでも召喚したいアイルランド方面の英雄となると、限られてくる。それこそ、クー・フーリンぐらいなものだろう。しかし、私はロード・エルメロイの本命はイスカンダルだと睨んでいる」
時臣は続けた。
「アイルランド方面の英雄の日本での知名度は非常に低い。それこそ、ケルト神話筆頭格の大英雄であるクー・フーリンですら、一般人の知名度は無きに等しいだろう。アーチャー、この国でも屈指の知名度を誇る君が大きなステータス補正を受けているように、戦地での知名度はサーヴァントの戦闘力に大きく影響する。無論、各神話の筆頭格の大英雄――先ほど例に挙げたクー・フーリンともなれば元々の地力が凡百の英霊とは別格であるから、弱体化して宝具が減ったとしても十分に脅威となるのだが」
「なるほど、知名度による補正を考えれば、アイルランドの英雄は日本での知名度がゼロに等しいために大きくその力を削がれる。しかし、イスカンダルであればその心配はないと」
「征服王イスカンダル――アレキサンダー大王、アレキサンドロス大王など、呼び名は多数あるが、世界史の教科書にも載っている大英雄ともなれば、日本での知名度も十分。地力も非常に高い大英雄が高い知名度補正を受けられるとなれば、その力は生前からそれほど大きく劣ることはないだろう。マスターがかの神童と謳われたロード・エルメロイとなればなおさらだ。イスカンダルの触媒を手に入れた後で慌ただしく動き出したのは、イスカンダルの触媒の手配に何か手違いがあった可能性が高い。急遽、代理の聖遺物を探していると私は見ている」
史実を知っている幸村は、この場でこれ以上ケイネスについて追及することは避けた。
第五次聖杯戦争におけるクー・フーリンを知る幸村は、あれほどの大英雄ともなれば弱体化してもなお十分な脅威であることを知っていた。実戦経験のない時臣はそのあたりスペックや宝具といった表面的な情報に些か比重が偏っていることように幸村は感じていた。
やはり、この男をマスターにしなくてよかったと幸村は思う。
聖杯戦争を勝ち抜くには、まず人間関係が重要だ。サーヴァントと一定の価値観を共有し、主従として信用できる関係を構築できるか否か。原作でもギルガメッシュとの関係は時臣の末期から分かるように、お粗末なものであった。案外、ただ仕えられる主が欲しいだけのディルムッドとは相性がいいのかもしれないが。
仕事の付き合いなのだから、上っ面の関係と割り切ることも世間では往々にしてあるだろう。しかし、最初からサーヴァントを聖杯に捧げる供物としか考えていないにも関わらず、表面上信頼関係のある主従を取り繕おうとする相手に、好意など抱けるはずがない。
また、幸村の見る限り、時臣という男は用意周到を是とするタイプの人間だ。まぁ、本人が万全と思っている策にも少なくない穴があったりするのだが、そのあたりはその血脈に刻まれた『
戦う前に勝利を確定する状況を作ろうとする姿勢は大いに評価するところであるが、反面時臣は想定外の事態に対する対処が杜撰であるとも原作を知る幸村は感じていた。幸村も実際に身を投じて理解したのだが、戦争というものは、情報の錯綜、判断ミス、神々の気まぐれとも思える奇異な偶然というものが常に付きまとう。事前の計画どおりに一から百までことが運ぶと考える方がどうかしているのだ。
時には計画を臨機応変に変更していく柔軟性も、将たるものには必要だと幸村は考えている。
そして、何よりもこの優雅野郎には運がない。型月のほとんどの世界線でウェイバーがロードになるために死亡が確定しているケイネスほどではないが、ともかくこのラスボスメーカーはついてないのだ。まぁ、そもそも第四次聖杯戦争の参加者で幸運値が高そうなのはぶっちぎりでウェイバーで、後は大概不幸なやつらしかいないのだが。
幸運値が低いから、予想外の不幸に高確率で見舞われる。そのくせして、状況の変化や想定外の事態に対応して臨機応変に対処するのに向いてない。むしろ、この舞台装置野郎が何かすると、よかれと思ったことが大概裏目に出て想定外の事態を引き起こすのだ。本人の用意周到な性格と、そのキャラクターに運命づけられた宿命が致命的なミスマッチ。
これで仕えがいのある魅力があれば支えてあげようとも思うのだが、あいにくこの顎鬚優雅うっかりさんに人間的な魅力を幸村は全く感じていなかった。真面目すぎて面白味がないのだ。優秀かつ天才肌であるのに、朝が弱かったりうっかりだったりと欠点も併せ持ち、冷徹な魔術師であろうとしても心のぜい肉が捨てきれず結果的にツンデレな側面も併せ持ってしまった凛とは大違いである。
因みに、時臣から主替えを求められて拒絶した幸村の本音は、優雅たれよりもあかいあくまの方がろくな死に方をせずにすみそうというというものであった。
「――これまで説明した四人に凛を加えたこの五人が、現在判明しているマスターです。質問がなければ、以上でこちらからの補足を終わります」
綺礼が資料の説明を終え、さらなる質問がないことを確認し一礼して席についた。
既に、キャスターは幸村が仕留め、そのマスターもキャスターの手で葬られている。現時点で判明していないマスターは実質一人だけだ。
しかし、
「未だ、マスターのうち一人の身元は不明であるが、既に七騎のサーヴァントは出揃い、聖杯戦争は始まっている。我々は戦争の序盤においては積極的に動くことはせずにアサシンによる諜報活動に徹し、全てのサーヴァントの情報が出揃ったところで一気に動き出す予定であったが、状況は当初の想定を大きく外れている。我々の計画は大幅に見直す必要があるだろう」
当初、時臣らが立てていた計画については、既に璃正の口から説明を受けていた。
その計画では、時臣は英雄王ギルガメッシュを召喚する予定であった。そして、アサシンには脱落したかのように偽装した上で各陣営の偵察を行わせ、各陣営の情報が出揃ったところでギルガメッシュが強襲する手はずになっていた。敵サーヴァントの真名さえわかれば、この世の全ての財を有するギルガメッシュならば相手に合わせた最適の戦い方を選ぶことができる。この星の英雄である以上、ギルガメッシュはその全てに対抗する手札を持っているため、常に優位に立つことができるという算段だ。
「今後の方針についてですが……時臣君はどのようにお考えですかな?」
璃正はまず、時臣に話を振った。
アーチャーが主と仰ぐのは凛であるが、彼女はまだ幼い。実質的な戦略を立てる役割はまだ当主たる時臣にあると璃正は考えていた。
「戦略を立てるにあたり、まずは、こちらの戦力を把握しておくべきでしょう」
時臣は、アーチャーに遠慮がちに視線を向けた。その視線の言わんとするところは幸村にもすぐに理解できた。
「私の宝具を知りたいということか。まぁ、当然であろうな」
幸村は席を立つと、その手に一丁の火縄銃を出現させた。
「馬上宿許筒。日ノ本一の鉄砲鍛冶に打たせた一品でな、私がアーチャーのクラスに選ばれた理由は、これを持っていたことにあるだろうな。後、私はスキルの効果で槍と刀を持つこともできる。一対一であれば、遠距離から近距離まで遅れをとるつもりはござらんよ」
幸村は馬上宿許筒を消すと、含みを持たせた笑みを浮かべる。
「そして、私の切り札……まぁ、言わずともしれておりますがな。私の伝説そのものでござる」
これまで会議の流れにまったくついていけていなかった凛が目を輝かせて立ち上がった。
「もしかして!!」
興奮を隠し切れない凛とは対照的に厳かな表情を浮かべる時臣たち。
「城塞宝具という種別になる。そう、私の城――真田丸よ」
幸村は不敵な笑みを浮かべる。
「その真価は、真田丸を以って迎え撃つに相応しい英傑が現れたなら、存分にお見せしよう。そのような敵が現れるかどうかは分かりませぬが」
ヘヴンズフィール見て、熱が冷めないうちに執筆してたら、どうにか4話分ストックができましたので、連続投稿していきたいと思います。
5話目は間に合えば載せるつもりです。