運命なき浮世に候へば、日ノ本一の兵に   作:後藤陸将

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 今回はライダー陣営の視点です。


第17話 全く面白くない

 ウェイバー・ベルベットは遠坂、間桐、アインツベルンの御三家の拠点には使い魔のクマネズミを差し向け、その動向を監視していた。

 聖杯戦争に参加することが確実な家であり、かつ、拠点が確定している陣営なのだ。ここに監視の目を入れない理由がない。ただ、現時点ではアインツベルンの城にはマスターが入っている様子がないため、専ら監視は間桐と遠坂の邸宅が中心となっている。

 そもそも、アインツベルンの森は広大であり、それを網羅できるほどの使い魔の監視網を敷くことはウェイバーのような代も浅く天賦の才も持たない魔術師には不可能な芸当だった。なお、ウェイバー本人は、物量を頼みにするような非効率的な魔術なぞ愚の骨頂であり、自身は効率的な、新時代のやり方をしているだけだと自分に言い聞かせてはいるが。

 そして、遠坂時臣がサーヴァントを引き連れて外出する姿をネズミの眼はしっかりと捉えていた。

 使い魔の視界を通じて時臣のサーヴァントのステータスを読み取ったウェイバーは驚愕した。自身のサーヴァント、ライダーのステータスを幸運値以外で全て上回り、さらにはC以下の能力がないのだ。

 サーヴァントの外見からは真名やクラスを読み取れるような特徴は見受けられない。黒髪黒目のモンゴロイド系の20代半ばほどの男性という情報だけではその正体にたどり着くことは不可能に近い。宝具やスキルこそ現時点では不明であるが、軒並み高い能力をそろえた遠坂のサーヴァントは、ウェイバーでも一目見ただけで理解できるほどの強敵であった。

 流石、聖杯戦争の主催者たる御三家の召喚したサーヴァントというだけのことはあるとウェイバーは時臣とそのサーヴァントへの警戒心を強めた。

 そして、時臣のサーヴァントは時臣と共に邸宅の前に止まったタクシーに乗車し、そのまま新都方面へと走り出した。

 しかし、タクシーに乗った時臣を追いかけられるほどの走力は、ウェイバーが視界を借りている鼠にはない。ウェイバーは急遽、家主夫婦に暗示をかけて間借りしているマッケンジー邸から新たなカラスの使い魔を放ち、時臣の行方を追った。

 これまで大きな動きがなかった戦況がついに動いたと息巻くウェイバーであったが、それに対して彼の召喚したサーヴァント、ライダーは呑気なものであった。昼間から煎餅を齧り、レンタルビデオ屋で借りてきたビデオを見るか、ウェイバーに買わせた軍事情報雑誌を読み漁るか。

 そもそも、サーヴァントは実体化しているだけでも魔力を消費する。無駄な魔力の消耗を抑えるために霊体化していろとウェイバーは何度も言い聞かせているのだが、ウェイバーが何を言ったところでライダーは柳に風と受け流すだけだ。

 休日をダラダラとすごす世のお父さんか、あるいはたまの休日を満喫するミリオタの独身貴族と見間違うような怠けっぷりであるが、このサーヴァント、齷齪働く世の企業戦士とは全く違う。未だ挙げた戦果はゼロ、それどころか、ウェイバーの財布と胃壁へダメージを与える以外のことは何もしていない。

 これで、世界史に名を刻む稀代の大英雄、征服王イスカンダルだというのだから、ウェイバーは実物を知らぬくせに適当な人物像を記録に残した歴史家どもに対して文句どころか拳骨をくれてやりたいと思わずにはいられなかった。

 この二〇〇〇年歴史家とやらは一体何をしてきたのだろうか。自分の妄想歴史観を垂れ流してきただけだというなら、許しがたい怠慢である。二次資料だとか、後世に編纂された物語をもとに自分に都合よく歴史を解釈するのなら、それはただの作家である。

 歴史家共にこの征服王イスカンダル(自称)の姿を見せてやりたいとウェイバーは思った。この姿のどこに英雄としての片鱗を感じられるというのだろうか。今が戦時中だという緊張感は欠片も感じない怠けように、ウェイバーはフラストレーションを溜めていた。

 しかし、この役立たずの筋肉達磨に怒鳴っている余裕もウェイバーにはない。時臣を見失ってはならぬと必死に上空から捜索を続けた結果、どうにかウェイバーは冬木ハイアットホテルの前に停車したタクシーを見つけることができた。

 時臣とそのサーヴァントがタクシーから降りて建物の中に入ったことを確認したウェイバーは、その後も隣接する建設途中のビルの足場に潜ませたカラスの視界を借りて、動きがないか観察を続けた。

 できればこのホテルの中にも使い魔を放ち、時臣の動向をつぶさに観察したいところであったが、建物の中にネズミやら猫やらの動物を放っても自由に行動することは難しい。

 使い魔が客やスタッフに見つかれば即座に駆除されてしまうだろうし、仮に駆除を免れたとしても広い建物の中を人の目を盗んで移動するとすれば大きな制約を受ける。

 使い魔そのものに認識を阻害する魔術をかけるなり、ホテルのスタッフに暗示をかけて使い魔を補助させるなり、魔術の使い方次第ではホテルの内部の様子を伺う方法はそれなりにあるのだが、やはりウェイバーの技術ではそのようなことはできないため、結局はホテルの外に使い魔を待機させ、外から様子を探ることしかできなかった。

 サーヴァントまで引き連れて、時臣がホテルの中で何をしているのか。内部の様子が分からないことに焦れていたウェイバーであったが、偶然にも使い魔のカラスが頭を上げたタイミングで視界の中に時臣の姿を捉えた。

 ホテルの高層階、ガラス張りのレストランの窓際の一席に遠坂時臣がいた。時臣とそのサーヴァントとテーブルを挟んだ向かい側は、二人の男の姿。時臣と向かい合う男の内、一人はウェイバーも見知った顔だった。

 その男の名は、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。

 時計塔で教鞭をとっていた講師の一人であり、ウェイバーもその教え子の一人である。

 一瞬、ウェイバーはケイネスの登場に思わず息を呑んだ。

 しかし、考えてみれば、この結果は当然のことであった。

 あの傲慢で鼻持ちならない権威主義の権化とも言うべきケイネスが、聖杯戦争に参加を表明しながら途中で降りるなどということはありえないことなのだから。それも、触媒が奪われたなどという理由で。

 ウェイバーがサーヴァントの召喚に使った触媒--征服王イスカンダルのマントの切れ端は、元々ケイネスが用意していたものだ。偶々、管財課の手違いによってケイネス宛の荷物の引き渡しをウェイバーが任されたために窃盗の憂き目にあったのであるが。

 おそらく、ケイネスは自分の家の権力や婚約者の実家である学部長のコネにものを言わせてどうにか別の触媒を用意し、聖杯戦争に間に合わせたのだろう。

 そして、ウェイバーの視界には、ケイネスとその隣に侍るサーヴァントの姿が捉えられている。

 幸運にもウェイバーはケイネスのサーヴァントのステータスを読み取ることに成功した。

「ハハ……ふ、アハハハハ!!」

令呪が手に浮かんだ瞬間に匹敵するほどの歓喜。ウェイバーの顔は悦に歪み、口からはとめどなく笑い声がこみあげる。

 月刊○を読み耽っていたライダーも突然のウェイバーの豹変に、訝しげな表情を浮かべながら振り向いた。

「なんだ、あのあれだけ偉そうなこと言っといてこの程度のサーヴァントしか召喚できなかったのか!!ざまぁみろ!!」

 思わず、歓喜の叫びがあふれ出る。最高にスカッとした気分をウェイバーは味わっていた。

 ウェイバーが読み取ったケイネスのサーヴァントのステータスは、敏捷値を除けば全てライダーに及ばない。

 あの鼻持ちならない貴族きどりのエリートが召喚したサーヴァントの力を、自身のサーヴァントが上回ったことを知ったウェイバーは、痛快でたまらなかった。

 これは、己の悲願の証明。その第一歩である。

 代を重ねて増やしてきた魔術回路の量でも、魔術刻印の密度でもない。優秀な魔術師とは、少年漫画の主人公のように優秀な血統や生まれ持った特殊体質で決まるものではなく、より真摯に魔術と向き合い、魔術に対する深い理解と、最小の労力で最大の効果を得る効率を突き詰めることによって至るものなのだ。

 あの高慢なケイネスが召喚したサーヴァントのステータスを自身が召喚したサーヴァントが上回った。それは、決して自身がケイネスに劣る存在ではないことを示している。時計塔では、血統だの一族の歴史だのが幅を利かせていたが、こと戦闘ということになればそのようなものは全く役に立たないことを証明している。

 ケイネスに、勝てる。今まで具体的なイメージが全くなかった勝利のビジョンが、ウェイバーの脳裏に浮かぶ。ライダーの戦車が、ケイネスの貧弱なサーヴァントを撥ね飛ばす姿を幻視したウェイバーの興奮はさらに高まった。

 なお、ウェイバーはケイネスの用意した触媒があってこそライダーを召喚できたのだが、そのようなことはケイネスに対する優越感に浸るウェイバーの脳裏からはすっぽりと抜け落ちている。

 この日本には、人の褌で相撲を取るという諺があるのだが、生粋のイギリス人であるウェイバーには通じないだろう。

「おい、坊主。何を高笑いしておるか。何かを勘違いした間抜けのような笑いなぞ、気色悪いぞ」

 突然のハイテンション、さらに意味不明な高笑い。気持ち悪いものを見るかのような視線をライダーはウェイバーに向けていた。

 しかし、ライダーが何を言おうと、有頂天となったウェイバーの耳にはその言葉は届かない。

「何が名門だ!何がエリートだ!何が歴史を重ねた一族だ!あの程度のサーヴァントしか召喚できないで、よくもあそこまで偉ぶれるもんだ!ざまぁみ」

「いい加減、鬱陶しいわ!!」

 ライダーのデコピンがウェイバーの額に炸裂する。

 デコピンとは思えぬ鈍い音とともに、ウェイバーの頭が半円の軌道を描いてベッドへとたたきつけられた。

「坊主、何を見たのか知らんが、なんだあの浮かれようは。聖杯戦争に勝利したわけでもあるまいに、浮かれるのは早すぎるだろうが」

 声にできない痛みに悶えるウェイバーにライダーは呆れたような視線を向ける。

 額を襲った激痛と、脳を揺らす衝撃の余韻。加えて、これでもわからないなら、もう一発食らわせるぞという無言の圧力を秘めながら第二射の用意をするライダーの人差し指を向けられたウェイバーの頭の中からは、先ほどまでの身を浸すほどの激しい高揚感は吹きとんでいた。

「それで、何を見たのだ」

 ようやく正気に戻ったかと言いたげな溜息をつきながら、ライダーはウェイバーに問いかけた。

「ああ、遠坂のマスターとサーヴァントが動いた」

 ウェイバーは再び意識をホテルを見張るカラスの使い魔に集中させる。しかし、既に先ほどまでケイネスらが座っていた席には人影がない。どうやら、ケイネスたちは会談を終え、席を立った後のようだった。

カラスをホテルの入り口近くに立つ街路樹の枝に移動させ、ホテルから出てくる時臣らを待ちながら、ウェイバーはライダーに向けてこれまでの経緯を説明する。

「遠坂の屋敷を使い魔で見張っていたら、遠坂のマスターがサーヴァントと一緒に出掛けて、ホテルでケイネス先生--僕を教えていた時計塔の講師と会っている現場を目撃した」

 ライダーは無言で続きを促す。ウェイバーは、使い魔の視界ごしにホテルをタクシーに乗って後にする時臣を見送りながら続けた。

「遠坂のサーヴァントは軒並みステータスが高かった。多分、狂化のスキルがあるようには見えなかったし、三騎士クラスのどれかだと思う。東洋の英雄だと思うけど、スーツに着替えてたし、アクセサリーの類もつけてなかったからどこの英雄かは全く分からない。ケイネスのサーヴァントも、ステータスは読み取れたけど、敏捷を除けばライダー以下で大した敵じゃない。あの陰険講師の化けの皮がはがれたってことだ。あのエリート気取りのデコ」

「またあの気持ち悪い笑いを余に見せるつもりか?」

 ウェイバーが再び悦に浸りそうな空気を感じたライダーが牽制するかのように人差し指と親指で輪を作った。

 ライダーの指から放たれる圧を察し、悦に浸りかけていたウェイバーも、正気を取り戻す。

「……い、今遠坂がホテルからタクシーに乗った。多分、進行方向からすると屋敷に帰るんだと思う。ケイネスは出てきてないから、まだホテルにいると思う」

「そうか。坊主、ホテルからそのケイネスとやらが出てきたらすぐに知らせよ」

 それだけ言い残すと、ライダーは部屋の隅に積まれたミリタリー雑誌を手を取り、再び読書を始めた。

 ライダーのデコピンへの恐怖がなくなったウェイバーはホッと息をつき、再び使い魔の視界に意識を向けた。どうやら、時臣らは寄り道もせずにまっすぐ屋敷へ向かっているようだった。

 それからしばらく時臣の乗るタクシーをウェイバーの操るカラスが尾行していたが、結局はどこにも寄り道することなく時臣らは屋敷に帰宅した。念のためホテルに向かわせたもう一匹のカラスは、いまだホテルから出てくるケイネスの姿を捉えてはいない。

 定点カメラと化した使い魔の制御にはそれほどの労力を必要としないため、ここでウェイバーは思索をする余裕を取り戻すことができた。

 それと同時に、疑問を抱く。何故、遠坂時臣はケイネスと会談をしたのか。それも、態々自分のサーヴァントを白昼堂々連れまわしてまで。

 ケイネスはいまだにホテルから出てくる気配はないが、まさかあのホテルの中で既に戦いが行われ、ウェイバーの視界から消えた僅かな時間でケイネスが敗退しているなどということは考え難い。

 ケイネスがホテル内にある店で呑気にショッピングを楽しむ性格ではないことを、ウェイバーは知っている。であれば、ケイネスがホテルからいまだに出てこないのは、ホテルにケイネスが宿泊しているからだと考える方が自然である。

「ケイネスが泊まってるホテルに、遠坂のマスターが、サーヴァントを連れてやってきた……?」

 ウェイバーの脳裏に、ある可能性がよぎった。

「まずい、ライダー!!遠坂がケイネス先生と組んだぞ!!」

 ウェイバーの脳裏に浮かんだ可能性。それは、ケイネスと遠坂の同盟だった。態々直接対面し、サーヴァントを引き合わせる意味なぞ、ウェイバーにはそれしか考えられなかった。

 そして、もしもウェイバーが予想した遠坂とケイネスの同盟が事実だとした場合、無視できない状況である。

 単純に、サーヴァントが二体いるというだけで、数的に不利となるし、場合によってはマスターが直接敵サーヴァントの脅威にさらされる可能性もあるのだ。

 これが、代行者や執行者といった戦闘のプロであれば話は別であるが、ウェイバーの戦闘力は一般人とほとんど変わらない。大概のサーヴァントはウェイバーが抗える相手ではないのだ。つまり、敵サーヴァントに直接マスターを狙われた場合、ウェイバーは確実に死ぬことになる。

 ウェイバーが焦るのも無理からぬことだった。しかし、それに対し彼のサーヴァントであるライダーの態度はあっけらかんとしたものであった。

「ふむ、それで」

 煎餅をかじりながら、ミリタリー雑誌を読み続けるライダーの姿に、ウェイバーは眉を顰めた。

「それでってお前……」

 何故連戦連勝の征服王が、この危機的状況を理解できていないのかウェイバーには理解できなかった。仕方なく、自分が分析した現在の状況を懇切丁寧にこの怠け者に説明してやろうとしたその時、ライダーの空気が変わった。

「この程度の揺さぶりを一々大げさに受け取ることもあるまいて」

「……揺さぶり?」

 ライダーの言葉の意味を、ウェイバーは理解できないでいた。それを察したのか、ライダーは大きなため息をついた。

「いいか坊主。遠坂とケイネスとやらが組んでいる。まぁそれは間違いないだろう。だがな、重要なことはそれではない。問題は、何故やつらが白昼堂々と仲良くしているところを見せつけたかということだ」

「見せつけた?……いや、そうか。確かに、組んでいるとしても、別に態々サーヴァント同伴で会いに行かなくてもいい。それこそ、白昼堂々と会わずとも、内密に会う方法だっていくらでもあるはずだ」

 ウェイバーも、コンプレックスである魔術の才が絡まなければ柔軟な思考の持ち主である。僅かな考察で、ライダーが言わんとするところを察した。

「左様。こやつらは、組んでいることを我々に見せつけたかったのだ。己のサーヴァントの姿を晒せば、監視の目が確実に食いつくことを見込んでな」

「でも……どうして、そんなことを。組んでることがバレたら対抗されるだけだろう?」

 ウェイバーには、組んでることを見せつけるメリットが分からなかった。敵が手を組んでることが分かれば、こちらもそれに対抗して味方を集い、対抗する。それが常道だ。組んでいることが分からなければ、挟撃される危険もあるが、分かっていれば警戒だってできる。裏で手を組むならともかく、正面から手を組んでいることを見せつけることの意味が理解できなかった。

「だから、言ったであろうが。見せつけるためだと」

 ライダーは続けた。

「確かに、監視させることそのもののメリットはない。自分の手の内を晒しただけであるからな。おそらく、自分の手の内を晒して、敵の動きを誘っておるのだ。その遠坂のマスターとやらはな。そのくせ、実際に晒したのはサーヴァントの容姿のみ。生前の顔見知りが聖杯戦争に参加しているか、写真でも残っていない限りその程度の情報に何の意味もない。つまりは、デメリットもないに等しい。」

「メリットもないし、デメリットもない……」

「だから、揺さぶりなのだ。この会合を見ていた奴らは坊主、貴様だけではあるまいて。そやつらは今、動くか動かないかの選択を突き付けられた」

 ウェイバーにも、理解できた。

 今まではアサシンによるマスターの暗殺を警戒したり、序盤から積極的に戦いを仕掛けて自分の手札を晒すことを躊躇していたマスターも、同盟が明るみに出た以上は静観してばかりではいられまい。

 自分たちも対抗して同盟を組むか、あるいは挟撃により潰される前に各個撃破するか。どちらにせよ、動かなければ状況は不利になるだけだ。

「同盟を組むなら、アインツベルンか、マキリか。どっちも拠点はわかってるけど、抱えてるサーヴァントも分からないし、いや、でも…………」

 いきなり同盟を組むといっても、ウェイバーにはケイネスと遠坂以外の陣営のマスターの情報や、サーヴァントの情報など皆無に等しい。

 しかし、だからと言って孤立無援のまま戦うことも避けたい。ウェイバーは頭を抱えるが、それに対してライダーは何も気にするような様子を見せていなかった。

「おい、坊主。頭を抱えている暇があるならまず出陣の支度をせんか。日が沈んだら出るぞ」

 ウェイバーはいきなり出撃を主張するライダーに訝しげな視線を向ける。

「どうするんだよ。どこと同盟を組むのか、もう決めたのか?それとも、ケイネス先生か遠坂を連携される前に叩くのか?」

「いや、どこか適当にその辺にいる奴を狩っていく」

「ふざけるなよ!!」

 遠坂がこちらに揺さぶりをかけているという推理から、いきあたりばったりの戦いを挑むという結論を導き出した方程式が理解できないウェイバーは、その苛立ちをぶつけるかのように腰かけていたベッドに拳を叩きつけた。

「遠坂が揺さぶりをかけてる中なんでそんな無策に動くんだよ!?こっちも対抗する手段を考えないと」

「揺さぶりを受けたのは余のみということはあるまいて。他にも、揺さぶりに耐えかねて動く奴は必ず出てくる。そやつらを、見つけた端から狩っていく!どのような敵と相まみえるかも分からぬが、そのような戦こそ心躍るではないか!」

 敵の策を見破っておきながら出たとこ勝負を挑むライダーの精神がウェイバーには理解できない。

 どこに心が躍る要素があるのか全く理解できないまま、その夜ウェイバーは強引にライダーの戦車(チャリオット)に積み込まれ、悲鳴と共に夜空に連れ出された。




 どうにか、次話も書き上げられたので、来週もこの時間に投稿する予定です。

 やはり、前回のあとがきで書いた不調をほっとおくのはまずいので、一度病院行くべきなんですかね。
 しかし、どこの科にかかるべきか……
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