駐車場を飛び出したカズマは霊夢の最後の着信の残った場所だけを特定してそこへ向かった。
距離はそう遠くない位置だったので一般車を避けながらも10分程で到着した。
車を降りて辺りを探すが霊夢の姿はどこにもなくGPSで探そうにもどうやら位置情報を切ってあるようだった。
「くそっ!霊夢どこ行ったんだよ!歩きだからそんなに遠くへ行ってないはずなんだが.......」
再び車に乗り込み車を走らせる。
市街地の方へ向かって走っていると見慣れた姿の女の子を見つけた。
「おい!アスカ!お前一人で何してるんだよ!霊夢はどうしたんだ!?」
「え?カズマ.......どうしてここにいるの?」
「どうしてじゃないよ!霊夢からさっき連絡あって私の事忘れろとか言ってたんだよ!」
「え.......」
アスカはそれを聞いて血の気が引いたように顔が青白くなる。
「とりあえず乗れ!お前も傘刺さずに歩いてたら風邪引くっての!」
「う、うん.......」
アスカを車に乗せてタオルを渡す。
「飛ばすからシートベルトしっかり締めて捕まってろ」
アクセル全開で発進するとそのまま市街地の方へ向かう。
一方霊夢は.......
「私何してるんだろ.......こっちじゃ何も出来ないくせにあんなことカズマに言っちゃったし.......アスカとは溝が出来ちゃったから連絡取ろうにも繋がらない.......」
ふと辺りを見回した霊夢は見覚えのある景色に立ち止まる。
「そう言えば、ここで連れていかれそうになった時にカズマに助けてもらったのが初めて会った時だったよね.......」
そう呟くと後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ?もしかして霊夢さん?」
「あなたは.......」
後ろを振り返るとそこにはカズマの後輩のタツヤだった。
霊夢はタツヤに事の発端を伝えるとタツヤは少し考え込んだ。
「つまりアスカさんにスッパり言われてカズマさんの所に帰る勇気がないってことでいいですか?」
「そうなの.......」
「とりあえずそのままだと風邪引いちゃいますし服乾かすのにうちに来ますか?」
「そうさせてもらうわ.......」
タツヤは車を回し霊夢をのせて自宅へと向かった。
「カズマさんの家程豪邸じゃないですが上がって下さい」
「え、えぇ.......」
明らかにカズマの家とは違う豪邸が霊夢の目の前に飛び込んできた。
「ただいま」
「おかえりなさいませタツヤ様」
「霊夢さんの服を乾かしてくれ、後彼女に別の服を用意して」
「かしこまりました。それでは霊夢様こちらにどうぞ」
「あの、タツヤくん?これは.......」
「大丈夫です、うちの専属メイドです。皆女性なので心配ありません。終わったら客間に通してくれ」
「そ、そうなのね.......分かったわ」
こうして霊夢はタツヤのメイドについて行き着替えることが出来た。それと同時にお風呂も浸からせてもらって新しい服に着替えた。
そして客間へ通された霊夢はソファに座る。
しばらく待っているとタツヤと彼の両親が入ってきた。
「霊夢さん、とりあえず家に招いたので両親を紹介しようかと思いまして」
「いきなりの登場で申し訳ない、ただタツヤから話を聞いたのでこれからに関して話をしたいと思ったのでね、おっとその前に私は父親の宝条将光と申します。こっちが妻の摩耶です」
「霊夢さんよろしくお願いしますね」
「博麗霊夢です、よろしくお願いします」
「それで本題に入ろう、まず衣食住はこちらがちゃんと提供させてもらう。無論霊夢さんはうちの施設を自由に使ってもらって構いません。霊夢さんの心の傷が癒えるまで存分にお過ごしください」
「でもそれでは申し訳が.......」
「いいのよ霊夢さん、これも何かの縁、人はお互いに助け合って生きていかなくてはこの世の中を生きていくことは至難です。私達は由緒ある名家、地元を助けていく義務があります。それはすなわち地元で生活を送っている人たち皆を助けていくことなのです。霊夢さんが困っているのでしたら私達が手を差し伸べなくてはこの義務に反しますのよ」
「という訳なんですよ霊夢さん。うちの両親もこう言ってます。今は落ち着くまでうちでゆっくりしていってください」
すると霊夢は涙を流した。
彼女が今までこんなにも厚意を貰ったことが無いからだ。
「ありがとうございます.......」
タツヤの母は霊夢を抱きしめて、
「泣きたい時は泣いていいのです。我慢せず存分に」
こうして霊夢はしばらくタツヤの家にお世話になることになった。