決闘者のハイスクール 作:豆肉
コカビエル戦から2日後、部室に向かおうとしたところにイッセーに呼び止められた。
放課後の普段なら教室にはだれもいない時間だ。夕日が教室内をオレンジ色に染める。どこかロマンチックな空気の中、そこには2人の男子生徒が......これ以上考えるのはやめよう。
さっきまでのわけのわからない思考を振り払うためイッセーに問いかける。
「そんで、話ってなによ」
「俺、もっと強くなりたいんだ!そのために浩次に協力してほしいんだ!」
なんだそんなことか。つまりは特訓に付き合ってくれって事だろ?
「まぁそんくらいならお安い御用だ。だけどやけに真剣だな。何かあったか?」
特訓に付き合うのは別にいいのだがイッセーの真剣さというか必死さが気にかかった。心当たりがあるとしたらコカビエル戦の時だろうが、俺が知っている限り特にこれといってここまで真剣になるようなことが起こった覚えはない。まぁ遠目でしか見てなかったから確信はないがな。
「……お前とコカビエルを一騎打ちなんてさせちまっただろ」
気まずそうに言う。
「あの状況じゃ仕方がないだろ。お前が気に病むことじゃない」
「俺がもっと強けりゃ助けに行けたはずなんだ」
俺のことを心配してくれるのはうれしい。だがこのままじゃ少しまずい気がするな大げさかもしれないがほっとくと自分を追いつめて無茶をするかもしれに。俺が言えたことじゃないけどね。
「自分を責めるなよ。俺はこの通り怪我なんてしてない。そんな必死にならんでもゆっくり強くなれば―」
「俺はお前が戦ってるとこを見てるだけなんて嫌なんだよ!お前を守りたいんだ!」
俺の言葉を遮りイッセーが大声をだす。そのとき普通の人間なら聞き逃していただろう音を俺の耳は聞き逃さなかった。教卓のところからガタッという音が鳴った。それはつまりそこに誰か潜んでいるということだ。
「少し待てイッセー」
静止をかけ教卓に近づく。イッセーは音に気づかなかったようで不思議そうな顔をしている。教卓の中を覗き込むと三つ編みで眼鏡をかけたクラスメート、桐生がいた。さらにボイスレコーダ付属だ。
「なにしてやがる?」
「フヘヘヘッ……」
ひきつった顔でおかしな声で笑う桐生。
「あっ!あそこに小猫ちゃんが!」
桐生は突然立ち上がり扉の方を指す。何とも古典的というか馬鹿にしてんのかこいつは。
「お前は俺を嘗めているのか?というかなんで小猫ちゃん?」
「えっ草間君ってロリコ小猫ちゃんのことが好きなんじゃなかったけ」
どこからそんな噂がたったんだろうか。嫌いではないがあの子は何というか恋愛対象として見れない。だって体格が子供なんだもん。劣情なんてもてないって。
いや今はそんなことはいい。それよりもなんだか嫌な予感がする。
「まさかと思うがそのふざけた妄想を誰かに話したとかないよな?」
「女子ってさ……おしゃべりなんだよね」
つまりは話したって事か。先輩のことといいもうこいつ許さん。
「そこに正座しろ。もうお前許さん」
「おこなの?」
「マジ切れだ大バカ女」
ここにきてもふざけるかこの女。桐生を無理やり正座させようとしていると教室のドアが開いた。そこにいたのは小猫ちゃん。とても悪いタイミングでのご登場だ。
「……何をしてるんですか?」
現状、俺が桐生に掴みかかっている体勢になっている。これを見られたのは少しヤバいかもしれない。
「助けて小猫ちゃん!犯される!」
「てめっ桐生!このアマおまえ本当やめろ!」
これはまずい!今までのパターンから考えると小猫ちゃんが殴りかかってきて俺だけが不幸をおっかぶる。小猫ちゃんに殴られるのはもう慣れたらかよしとするが問題は桐生にボイスレコーダーを持っていかれることだ。そのなかには俺とイッセーのさっきの会話が録音されているだろう。そしてこの女は確実にそれを広める。そんなことをさせるわけにはいかないのだ。何としてでも止めなくてはならない!いやまじで腐った妄想のネタにされるのはイッセーと佑斗だけで勘弁してください。
「……浩次先輩」
「まってまって落ち着いてってば!」
小猫ちゃんがじりじりと近寄ってくる。
なんていえば小猫ちゃんは止まる!?小猫ちゃんが殴りかかってくるまであと1秒もないだろう。それまでに小猫ちゃんを止めることができる一言は何かあるか?
短くて動きが止まるほどのインパクトがある言葉……これだっ!
「……別にそんなに慌てな―」
「好きだっ!愛している!」
教室に静寂が訪れる。俺以外の全員が目を見開き静止している。そして俺は冷や汗がドバァーしているわけですが。自分で言っといてなんだけど流石にここで告白はないわ。こういうときは速攻で訂正するに限る。下手に時間を置くとよけいに面倒なことになる。ただこの場の空気で普通に言っても効果が薄いような気がするので少し茶目っ気をいれておこう。
手を上にして幼稚園とかでやるようなウサギのポーズをとり、さらに満面の笑みをつくる。さぁいくぜ!
「うっそぴょーん!」
とたん白い影が突撃してきた。かつてない衝撃が俺を襲う。
「がッ……アッ……」
脚に力が入らなくなりその場に崩れ落ちる。喉が詰まり息ができない。目の前が徐々に暗くなっていく。意識が途切れる寸前に見たのは今までで一番冷たく濁った小猫ちゃんの眼だった。
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「ハッ!……なんだ夢か」
目を覚さますと学校の保健室だった。
「現実です」
声のした方を振り向くと仏頂面の小猫ちゃんがいた。周りを見渡したところどうやら部室に運び込まれたらしい。そうだ、桐生はっ!?
「小猫ちゃん!桐生、あの眼鏡の女はどこにいったかわかるか!?」
それを聞いた途端、小猫ちゃんの眉間にしわが寄った。
「それより、まず私に言うことがありませんか?」
「マジすんませんでした」
速攻土下座して謝る。いやね、冗談で流してくれると思ったんすよ。
どうしようもないものを見る目で小猫ちゃんが見てくる。まっずったねこれ。
「……ハァ、部長たちが呼んでました。早く部室に行ってください」
そういうと立ち上がって小猫ちゃんは部屋から出て行こうとする。このまま行かすのは少し、いやだいぶまずい。このままだとふざけた野郎として認識されてしまう。まぁこの際それは仕方ないとしても、せめてちゃんと謝っておこう。
「教室でのことは本当にわるかった。アレは流石にふざけ過ぎた。俺にできることなら何でもするから許してくれないか?」
扉へ向かう足を止め小猫ちゃんがこちらを振り向く。
「浩次先輩、何でもするっていえば許してもらえると思ってません?」
「うっ……」
痛いところを突かれた。確かに最近この言葉を使いすぎてる気もするがべつにやる気がないというわけじゃないんだ。何でもする覚悟はできている。
「それに前にもそう言っておきながら、何もしてませんよね」
「うぐぅ……」
まぁそうなんだけどさ。だってなにも言ってこないじゃん。俺の反抗的な内面を感じ取ったのか小猫ちゃんの眉間にしわが寄る。
「前に『無茶をするな』といったのにコカビエルと一騎打ちしましたよね?」
「あの時はあれが最善だったと思うし、それに無茶をしないのは無理って―」
「何か、いいましたか?」
「なにも言ってないです」
今までの行いもあってなにも言い返すことができない。
「……何でもするというなら、一つお願いがあります」
俺が押し黙っていると小猫ちゃんが口を開いた。これは名誉挽回するチャンスかもしれない。そのお願いとやらを完ぺきにこなせば多少は見直してくれるかもしない。
「言っても無駄なのでもう無茶をするなとかは言いません」
言っても無駄って……まるで俺が学習しないバカでしたねすいません。
「そのかわり私の特訓に付き合ってください。」
「まぁそれくらいなら構わんけどね。俺が小猫ちゃんに教えれることなんてないよ」
小猫ちゃんはインファイターだ。モンスターを出して戦わせるだけの俺が特訓に付き合ってもそんなに意味はないと思う。
「いえ、実戦経験を積みたいだけなので先輩はモンスターを出してくれるだけで構いません」
「はい」
あぁそういうことね俺には用はないって事ね。どうせ俺なんてモンスターを出すしか能がないしね。悲しくなんてないし。
「そういやイッセーも特訓に付き合ってくれって言ってたな。ならイッセーとついでに佑斗も呼んでって忘れてた!桐生がどこ行ったか知らない!?」
大事なことを忘れてた。桐生からあのボイスレコーダを奪取しないといけないんだった!
「あの眼鏡の人なら帰りましたけど」
「なん……だと……」
いや、普通に考えれば普通なんだけどさ。これヤバくね?明日からイッセー×俺が流行っちゃうよ。ちょっとまてよくよく考えろ。本当にそんなことが起こるのか?
佑斗×イッセーが流行ったのはあの二人が良くも悪くも有名人だからだ。俺みたいな地味な野郎がそんな話題になるか。否、ならない。ならない。
「凄い顔してますけど、大丈夫ですか?」
「……小猫ちゃん、俺×イッセーってどうよ?」
「気持ち悪いです」
即答ですか。
「本当に大丈夫ですか?」
「まぁ大丈夫。それより部長たちが呼んでたんだっけ?なら早く行こうか」
いろいろあって部長たちをだいぶ待たせてしまったぽいし今は部室に急ごう。ボイスレコーダーの件はもう桐生の良心にかけるしかない。頼むから広めないでくれよ……本当にお願いだから。
やっべ