昔、ピクシブかなんかで紅魔郷キャラをパワプロ風に描いた絵を見たことがあって、それを思い出したら書きたくなりました。拙い文章ですがお読みいただけたら幸いです。
「何よこれ……」
先ほどまで黒髪の美少女巫女だった「博麗霊夢」は茫然と突然現れた巨大な建造物に目を見張る。
「間違いなく異変だわ……。体の形もおかしくなってるし……」
博麗霊夢の体は二頭身になっていた。頭にはあまり見たことのない帽子が被せられている。顔からは口が無くなっている。このままでは大好きなお団子も食べられない。何故だかわからないが、足は大腿部と下腿部が消滅し、足首から下の部分しかなくなっている。胴体に足が付いているわけではなく、元々大腿部と下腿部があった部分が無くなり胴体部分が宙に浮いているような状態だ。上手くデフォルメ化された二頭身で不思議と嫌悪感を与えるようなデザインではないのは不幸中の幸いだろう。
「赤蛮奇の首ってこんな感じなのかしらね?」
自身の体にとてつもなく大きな変化が起こっているというのに、のんきなことをいうこの巫女はかなり肝が据わっているらしい。
「とりあえず、中に入ってみようかしら。壁に何か書いてあるわね……。『はんしんこうしえんきゅうじょう』? って読むのかしら?」
霊夢は「阪神甲子園球場」と書かれた建物に空を飛んで上空から入ろうとする。
「本当に大きな建物ね……。いや、屋根はないから正確には建物ではないのかしら」
そう言いながら阪神甲子園球場の敷地内に入り込む。すると……。
「え? お、堕ちる……!?」
阪神甲子園球場内に入ったと同時に霊夢の体から空を飛ぶための霊力が失われ、客席に落下してしまった。
「いたた……ちょっとどうなってるのよ!? ……空を飛べなくなっただけじゃないみたいね。お札も、陰陽玉も、二重結界も発動しない……」
霊夢は起き上がり、球場内を観察する。客席は円を描くように設置され、真ん中には大きな空間があった。よくわからない白色の小さな四角形が四角形に並べられている。そこから何本か線が引かれている。
「黒い土の所と芝生で分けられてるわね。一体何の意味があるのかしら。皆目見当もつかないわ。……取りあえず、あそこで気を失ってる二頭身の連中を叩き起こして聞いてみるしかないわね」
博麗霊夢は椅子がたくさん並べられている場所に二人の男と思われる二頭身がいるのを見つける。なんとかフェンスをよじ登り、グランドに降り立った霊夢はゆっくりとベンチに向かう。
「ちょっとアンタ達、これはどういうことなのよ。起きて説明しなさい!」
霊夢の怒号に気付き慌てて一人の男が目を覚ました。
「うわぁ! って、え? ここはどこ?」
「寝ぼけてんじゃないわよ。この異変の正体を教えてもらうわよ。何が目的なの。答えによってはここで死んでもらうわ」
「し、死んでもらう!? 何て物騒なことを女の子が言うんだ!?」
「良いから私の質問に答えてくれるかしら。まずは名前を教えなさい」
「は、はい……」
二頭身の男は霊夢の圧倒的なプレッシャーに押され自己紹介を始める。
「オレはパワプロ! パワフル高校3年、野球部キャプテンだ!」
「パワプロ? おかしな名前ね。……私は博麗霊夢。この幻想郷の博麗神社の巫女よ」
「幻想郷?」
「ええ。どうやらアンタたち外の世界から来たようね。といっても私の知る外の世界とちょっと違う場所からきたようね。並行世界からのお客さんってとこかしら?」
「外の世界? 並行世界? 君大丈夫? ちょっと病院に行った方が……」
ガツン!
「うわあ!? いきなり何するんだ! そんな木の棒で殴ったら痛いじゃないか!」
「木の棒じゃないわ。大幣っていうのよ。アンタが私を頭おかしいみたいに言ったから悪いのよ」
霊夢がパワプロと言い争いをしていると、もう一人の眼鏡をかけたブ男が目を覚ます。
「うーん、ここは? でやんす」
「矢部くん! 気がついたんだね!」
「パワプロくん……。ここは一体……。って誰でやんすかその美少女は!? もうパワプロくんは仲良くなってるでやんすか!? むっきー! いつもいつもパワプロくんばっかりずるいでやんす! たまにはオイラに譲るでやんす!」
「なに、この不快な生き物は?」
「そ、そこはせめて、人間扱いしてあげてよ……。彼は矢部明雄。オレと同じパワフル高校野球部の部員だ」
「さっきから、なんとか高校だの、野球だの言ってるけど一体何なんなのよそれは?」
「え? 野球を知らない?」
「知らないわよ。ま、いいわ。とりあえずこの大きな建造物を消してもらえるかしら? 邪魔でしょうがないのよ」
「この野球場を消す? そんなことできないよ!? 魔法使いじゃないんだから!」
「パ、パワプロくん! 大変でやんす! ここってもしかして……」
矢部が何かに気付き、騒いでいる。
「どうしたんだよ。矢部くん」
「パワプロくん、この球場ってもしかして……でやんす!」
「すごく広くて綺麗な球場だな? でもどこかで見たことがあるような……。……この銀傘、バックスクリーン……。ま、まさか……!?」
「甲子園でやんす! 間違いないでやんす! 本物の甲子園でやんす!」
「甲子園? 確かに建物の壁にそんな漢字が書かれていた気がするけど……アンタ達なんでそんなにテンションが上がってるのよ?」
霊夢には理解できるはずもなかった。全ての高校球児の憧れの聖地「甲子園」。そんなところに突然召喚されたパワプロと矢部。状況がよく飲み込めない状態で自分達の知る場所に立っていることに、二人は不思議な安心感と興奮を覚えるのだった。