博麗霊夢は試合開始前の投球練習を行っていた。
「うん、伸びのある良いストレートだよ、霊夢さん!」
「それはどうも」
霊夢は気だるげな様子でパワプロの言葉に答える。霊夢の左腕から放たれるストレートは女性のものとは思えないくらい力のあるものだった。投球練習を終え、パワプロはマウンドに駆け寄る。
「霊夢さん、初めての試合で緊張するだろうけど、しっかりと腕を振って行こう!」
「緊張? 今まで私は様々な異変を解決してきたわ。この程度の球遊びで緊張なんてするわけないでしょ?」
「はは……。とにかく頑張って投げてほしい。期待してるよ!」
パワプロは全く緊張してなさそうな霊夢に対して、乾いた笑いを出した。しかし、すぐに霊夢に対する信頼に変わった。投手というポジションにおいてもっとも大事なものはメンタリティだ。心臓に毛が生えているくらいがちょうどいい。言い方は悪いがお山の大将的性格が必要なのだ。そういう意味では霊夢の図太そうな神経は投手向きと言える。精神的に崩れることはなさそうだと、パワプロは安心してキャッチャーボックスに戻った。
「プレイボール!」とストライクカウント等と同じくどこかしらから野太い声が聞こえてきた。
「一番ショート 十六夜 背番号16」
これまた、甲子園が造り出した声なのだろうか。ウグイス嬢がバッターコールを行う。
「悪いけど、お嬢様とお嬢様のご友人のため、あなた達には負けてもらうわ」
左バッターボックスに入った十六夜咲夜は土をならしながら霊夢とパワプロに聞こえるように呟く。
「まったく、相変わらずのお嬢様好きメイドね。サクッと打ちとらせてもらうわよ?」
パワプロのサインに頷いた霊夢は外角低めボール一個分外に外れたコースにストレートを投げ込む。
(よし、サイン通り、様子見には最高のコースだ!)
パワプロが心の中で霊夢のボールを褒めていると、咲夜のバットが動き出す。
(多少ボール気味なのに初球のこのコースを打ちに来るか。でも体勢が崩れている。これなら凡打になるはずだ!)
しかし、パワプロの予想は外れる。咲夜はバットを巧みに操り、体勢が崩れた状態でもしっかりとボールを芯で捉える。流し打った打球はレフト前にぽとんと落ち、レフトを守る小鈴が慌てて内野に返球する。
(……決して強い当たりじゃないけど、まぐれのヒットじゃない。多少ボール気味でも打ちに来たのはバットコントロールに自信があったからか……。もっと慎重に大きく外すべきだった……!)
パワプロが反省していると、霊夢が大声をだして怒りだした。
「ちょっと、パワプロ! アンタの言った通りに投げたのに打たれちゃったじゃない! どうしてくんれんのよ!?」
「れ、霊夢さん……。配球をばらすようなこと言わないでよ!?」
「あん? 言っちゃダメなの?」
試合慣れしていない霊夢をパワプロは焦った様子で制止するのだった。