実況パワフル東方甲子園   作:向風歩夢

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吸血鬼パワー

「ボール一個分外にはずれた球だったけど……、私には関係ないわ」

 

 一塁ベース上で立っている十六夜咲夜が不敵な笑みを浮かべている。

 

「……あのきわどいボール球を見切っていたのか!? 凄まじい選球眼だ……」

 

 パワプロが感嘆の言葉を漏らしていると、レミリアが咲夜への苦言を口にする。

 

「咲夜……。敵に自分の能力を漏らすのは良くないわ」

「も、申し訳ございません! お嬢様!」

 

 咲夜は青ざめた顔でレミリアに謝罪する。

 

「でも、よくヒットを打ったわね。さすがは紅魔館の誇る瀟洒なメイドだわ」

「お、お嬢様……。ありがとうございます……!」

 

 咲夜は青ざめた顔から一転、にやけきっただらしない笑顔を見せる。

 

「な、何アレ……?」

「見たらわかるでしょ? 変態よ」

 

 パワプロが咲夜のジェットコースターのような感情の起伏に少し引いていると霊夢が答えた。

 

《二番 レフト 早川 背番号10》

 

「さあ、試合を再開しよう」

 

 ウグイス嬢のコールと早川の言葉で我に返ったパワプロはキャッチャーミットを構える。

 

(あおいちゃんか……。テレビで見たことあるけど……正直バッティングはそこまで良かったイメージはない。とにかくまずはワンアウトを取って試合を落ちつけたい。バントをしてくるならやらせよう……! といっても簡単にはさせないけどね……!)

 

 パワプロは一球外角にボール球を霊夢に投げさせる。予想通り、あおいはバントの構えをするが、ボール球だったため一旦バットを引く。

 

(よし。十中八九送りバントだ。それなら……!)

 

 パワプロは内角高めのストレートを要求する。やや、構えより真ん中に入ってしまったが、大きな問題ではない。あおいのバントはバットの上っ面に当たり、小フライになってしまう。

 

「霊夢さん!」

「わかってるわよ!」

 

 霊夢はフライを取ろうと前に出る。しかし、グローブの土手に当ててしまい、こぼしてしまう。キャッチャー方向に転がったボールにパワプロは素早く対応し、二塁に投げようとしたが、既に咲夜は二塁に到達しようとしていた。肩が弱いパワプロでは到底間に合いそうにもない。

 

(は、早い!? 仕方ない)

「矢部くん!」

「がってんでやんす!」

 

 パワプロは二塁への送球を諦め、一塁の矢部に転送する。

 

「危なかったぁ」

 

 あおいがホッとした様子でベンチに戻る。

 

「まったく、咲夜ったらあんなギャンブルスタートして一歩間違ったらダブルプレイじゃない!」

 

 レミリアが激昂していると、美鈴がフォローを入れる。

 

「大丈夫ですよ。お嬢様。咲夜さんは霊夢さんがボールを弾いてから動きだしてました。あれは好走塁ですよ」

 

《三番 センター フランドール・スカーレット 背番号13》

 

「よーし! やっと私の番! すごいの打っちゃうんだから!」

 

 小さな背丈で長いバットをぶんぶんと振り回しながら、吸血鬼の幼女フランドール・スカーレットが金髪をたなびかせて左バッターボックスに入って来た。

 

(こ、こんな小さな子が三番……。霊夢さんが吸血鬼だから甘く見るなって言ってたけど……)

「霊夢さん、パワプロくん! こんな小さな子に本気になったらいけないでやんすよ。打たせていこう、でやんす!」

「打たせたら負けちゃうじゃない!」

「霊夢さん。心持ちのことを言ってるんだよ。本当に打たせるわけじゃないよ……。とはいえ矢部くんも油断しすぎだよ! ワンアウト二塁、外野は中継まで、内野はボールファースト! ツーアウト目を確実にとろう!」

 

 パワプロはゲキを飛ばすと、キャッチャーマスクをつけ直して構える。

 

(吸血鬼っていうのがどこまで凄いのかわからない。取りあえず、打ってもファールにしかならないくらいの内角高めのボール球を投げてもらおう。身体能力はともかくこのフランちゃんは精神的にはこどものようだし。少々のボール球には手をだしてくれるに違いない)

 

 しかし、霊夢の投じた球はパワプロが構えたところよりも若干真ん中の方に入ってしまう。

 

 ぐゎき!!

 

 パワプロが今までに聞いたことがない打球音が甲子園に響き渡る。

 

(え……? 今スイングした?)

「ぐぁあああああああああ!! でやんすぅううううう!!」

「や、矢部くぅううううううううん!?」

 

 矢部ノ悶絶する声とパワプロの心配する声が球場にこだまする。あまりに早いフランの打球に矢部くんは反応することができず、腹に直撃を受けたのだ。しかし、矢部も男である。悶絶しながらもボールを取り直しファーストベースに触れる。

 

「タ、タイム!」

 

 プレイが途切れたところでパワプロはタイムを取ると矢部のもとに駆けよる。

 

「矢部くん、大丈夫か!?」

「バ、バカな……。何か白いものがパっと動いたようにしか……、でやんす……。が、がく……」

 

 矢部くんは自分で効果音を口にして力尽きるのだった。

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